タレントマネジメントで目指す経営戦略と人事戦略の連動
課題:人材の見える化、キャリア開発、経営の意思決定支援
課題:人材の見える化、キャリア開発、経営の意思決定支援
業種 エネルギー
従業員数21,159名(連結)/1,137名(単体)
先ほどの通り、当社の事業は多岐にわたり、かつ、さらに新しい事業に取り組むにあたっても、その領域で活躍できる人材が必要です。
当社では、中長期的な企業価値向上のためには非連続なイノベーションを生み出すことが重要であり、その原動力となるのは多様な個人の掛け合わせであると考え、
一人ひとりの従業員を重要資産である「人的資本」と捉えています。
そのため、
優秀な人材の獲得・育成、そして「適所適材」の配置が重要な人事施策の一つであると考えており、
タレントマネジメントの考え方を導入した人事施策の取り組みを始めました。
経営計画に基づき事業を進めていくには、いわゆる「ヒト・モノ・カネ・情報」が重要と⾔われています。 いくら「モノ」「カネ」や情報が充実していても、肝⼼の事業を進めていく「ヒト」が⽋けている限り、事業は進んでいきません。したがって、 「事業内容」とその事業に従事する「⼈材」のマッチングが⾮常に重要です。
これまで、配属や異動において⼈事を検討する際の基礎情報は、上司などの属⼈的、感覚的な評価に基づく⾯もありました。これを 客観的な情報に基づく⼈事、つまり、各ビジネスユニット(事業部)と⼈事部が共通の⾔葉で評価できる仕組みを作る必要があると考えました。
そこで、いわゆる⼈事基本情報に加え、私たちが 「経験領域」と呼んでいる事業に関する知識や経験といったテクニカルスキルと、部⾨や事業を問わず共通で必要とされる能⼒である「ポータブルスキル」 を収集・整理し、「適所適材」を実現する⼈事施策に活⽤することを決めました。
これらの情報は多岐にわたり、またその情報量も膨大になるため、そのプラットフォームとして、タレントパレットを導入し活用することとなりました。
当社では以前より⼈事施策は積極的に⾏っており、約40年前から社員にアセスメントを⾏うほか、社内経歴や⽬標管理シートなどのデータも蓄積してきました。このように⼈事データは豊富にある⼀⽅で、これらのデータが点在していたことから、それぞれのデータを集めて活⽤するにはハードルが⾼い状態になっていました。
タレントパレットを導⼊したことにより、年齢などの基本情報、社内経歴、資格情報等とともに、⽬標管理シートやアセスメント結果、⾯談記録といった⼈事基本情報と、経験領域を⼀元管理することが可能となりました。
まず、テクニカルスキルの⾒える化を⽬的に、経験領域の整理に取り組みました。当社グループの全業務を、ガス製造や⼈事総務などの18 領域に分類し、さらに段階的に中・⼩分類までの細分化を⾏いました。
ただ、全社員のこれまでの社内経歴を今回整理した経験領域に紐づけるためには、過去45年分、約12,000チーム分の組織名について18 の経験領域のいずれに該当するかを定義づける作業が必要でした。
これには、⼈⼿ではかなりの⼯数がかかりますので、グループ会社であるさくら情報システム(株)のAI技術を活⽤し分類、紐づけを⾏うことで作業を効率化しました。
その結果、約5,000名分のこれまでの経験領域と経験⽉数を可視化することができ、2024年度から本格的に活⽤を始めました。
各社員の経験領域ごとに、年次と職責等級のマッピングが可能となり、いわゆるサクセッションプランの⾒える化が実現できました。これにはタレントパレットのダッシュボード機能が役に⽴っています。
事業で必要とされる経験領域のサクセッションプランがダッシュボード上でマッピングできるようになったので、中⻑期的に必要になる役職の層が確認できます。マッピングで⼈材的に薄い部分があれば、他の領域から異動させたり、若い年次から昇格させたり、場合によってはキャリア採⽤を⾏うなど、組織⻑や管理者の配置・選抜等に活⽤しています。
当社では将来のキャリアプランや異動希望について社員と上司が話し合う「⾃⼰観察⾯談」を年1回実施しています。これは、社員⾃⾝が現状の仕事の質や量、満⾜度ややりがい、適性、キャリアプランなどを記⼊した「⾃⼰観察表」に基づいて⾏われるものです。
異動にあたっては、上司やそれぞれの組織、⼈事部などがタレントパレット上の⾃⼰観察⾯談の結果や経験領域の内容などを踏まえて調整できるようになったので、エビデンスに基づいた「適所適材」の⼈事ができるようになったと考えています。
また、これまでも⼈材公募は⾏っていましたが、新たに「育成期間付き」の⼈材公募も開始しました。⼈材が不⾜している経験領域へのシフト促進と、社員のリスキリングや育成の両⽴を⽬的として、対象領域の経験がない社員に対し約半年間の育成期間を設けた上で異動させるという施策です。
例えば海外経験がない社員に現地法⼈における業務を担当させるようなことを想定して、育成期間中は専⾨知識の習得や語学⼒の向上といった研鑽を現組織の業務と並⾏しながら進めるなど、こちらも⼈材不⾜を解消するものとして期待しています。
当初、⼈事部と⼀部の管理者層にだけタレントパレットが使えるようになっていたのですが、2024年度からは「キャリアポータル」という形で⼀般社員にも公開し、利⽤できるようにしました。
キャリアポータルは、主に若年層を対象としたもので、⾃分が⽬指す業種・職種についている先輩社員のこれまでの経験領域を⾒ることで、必要なスキルやキャリアを知ることができるものです。また、キャリアポータルを通して、実際にその先輩にコンタクトして話を聞くことも可能です。昨年度の実績では、対象者約350名に対して、⼀⼈当たり35.5件の閲覧がありました。また、実際に⾯談も53件ありました。これらにより、⼈材の活性化につながっていると考えています。
閲覧できるキャリア情報には、産休・育休の履歴もあります。キャリアパスだけでなく、産休・育休後の復帰の経験なども聞くことができるので、今後はライフプランも含めた活⽤も期待しています。
判断⼒や企画⼒、コミュニケーション能⼒など、どのような業務・職種でも共通で必要とされポータブルスキルは、まず異動における⼈材マッチングの精度を向上させるための情報としての活⽤を考えています。異動調整において、各ポストに必要とされるポータブルスキルと、社員の持つポータブルスキルを紐づけすることで、マッチングの精度を⾼められると期待しています。
また、将来的には社員⾃⾝が⾃分の強みを⽣かしたキャリアプランを考える起点として活⽤してもらうことも考えています。ポータブルスキルと、キャリアポータルの情報を組み合わせることで、⾃分では意識していなかった部署や職種を⾒つけることが可能になってくると思います。
また、ポータブルスキルの情報が蓄積されてくれば、いわゆるハイパフォーマーの可視化が容易になり、該当者のポータブルスキルや経験領域を分析することで、⼈材育成に効果的なローテーションプランを策定し、社員の配置や異動に役⽴てることも可能になってくると考えています。
現在タレントパレットは、キャリアポータルなどの一部を除くと管理職や人事部などの人事関係者の利用が中心ですが、将来的には全社員が育成や研修、キャリア開発などさまざまな面で活用できる状況を目指していきたいと思います。
人事の「今」と経営の「未来」を変える、
タレントマネジメントシステムです。