職場の課題は、明確に認識されている「顕在課題」と、見えにくくなっている「潜在課題」の2種類に分けられます。顕在課題はすぐに対応が求められる一方で、潜在課題は深層に潜むため発見が簡単ではありあません。本記事では、職場の課題について解説します。課題を発見する方法から解決の手順・手段まで、具体例もまとめているので、ぜひ参考にしてください。
職場の課題は2種類に分けられる
職場の課題は、顕在課題と潜在課題の2種類に分けられます。それぞれの課題について解説します。
顕在課題
顕在課題とは、社員や組織が明確に認識できている課題のことです。課題が浮き彫りになっているため具体的な解決策や対応策を検討しやすく、実行に移しやすいという特徴があります。すでに解決に向けた取り組みが求められていたり、言語化されていたりすることが多いでしょう。
しかし、すべての社員が課題として把握できているとは限りません。一部の社員しか課題として認識していない場合も多々あります。次のようなものは、代表的な顕在課題です。
顕在課題 | 詳細 |
---|---|
人手不足 | 人材の数やスキルが不足している |
業務効率 | 残業やミスを増加させるような手作業の多さ |
離職率 | 新入社員の離職率が高い |
業績 | 業績が昨年と比較して低下している |
潜在課題
顕在課題のように表面化しておらず、組織や社員が認識できていない課題を潜在課題と呼びます。また、気づいているものの言語化しにくい課題や、将来的に発生することが予想される課題も潜在課題です。
潜在課題は、課題として表面化していないため、積極的に「課題を発見しよう」と行動しない限り、見つけることが難しい傾向にあります。顕在課題に比べて、解決までの道筋が複雑な課題といえるでしょう。代表的な潜在課題には次のようなものがあります。
顕在課題 | 詳細 |
---|---|
目標や価値観の不一致 | 企業の目標や価値観と、社員の実感に差が生じている |
社内におけるストレス | 相性の悪い上司や部下とのやり取りにストレスを感じている |
管理職や人材の不足 | 管理職やリーダー候補となる人材が不足している |
社員の意思決定 | 社員の意思決定の質に問題がある |
職場の課題を発見する方法
職場の課題は、次のような方法で発見できる可能性があります。
社内アンケート
社内アンケートを実施することで、社員が認識している課題を、組織単位で見つけられます。社内の改善点や提案などを質問項目に設定すれば、社員の意見を収集しやすくなり、課題発見につながりやすいでしょう。
自由に記載できる欄をアンケート内に設けることで、より課題を発見しやすくなります。オンライン上で実施できるので、リモートワークをしている場合にも有効です。
社内アンケートの目的や必要な項目は?質問例や作成のポイントも紹介
面談
管理職や上司が、社員と個別に面談して課題を把握する方法もあります。面談は、アンケートよりも具体的な意見を聞き出せることが利点です。しかし、発言によって立場が不利になることを危惧し、社員が課題について言及しない可能性もあります。そのため、あらかじめ発言によって不利にならないことを伝え、面談の失敗を防ぐことが大切です。
専用ツールの活用
専用ツールを活用すると、表面化していない潜在課題も見つけやすくなります。なぜなら、客観的なデータを収集・分析し、事実に基づいた課題の調査ができるためです。専用ツールの活用は、主観的な評価や判断ミスを防ぐのにも役立ちます。アンケートや面談に専用ツールを活用することで、効率的な実施や集計が期待できるでしょう。
ブレインストーミングによる意見交換
複数人で意見を交換する行為をブレインストーミングと呼びます。社員が集まって、組織における問題点や懸念点を話し合うことで、新たな課題の発見につながるかもしれません。
ブレインストーミングは他者の意見を聞ける場でもあるため、新しい考えやアイデアの発見も期待できます。あえて会議よりもラフな雰囲気で実施することで、心理的安全性の醸成にもつながり、課題の早期発見を実現できるでしょう。
マインドマップの活用
マインドマップとは、特定のテーマから連想されるアイデアや情報をつなげて、思考を拡大する手法です。この手法では、ちょっとした違和感を言語化することができるため、潜在課題を認識するきっかけになる可能性があるでしょう。
マインドマップを実施すると、テーマに関する情報を1枚の白紙にまとめられます。そのため、課題についての関連事項や突破口を探す初期段階において、情報の整理にも役立つのが利点です。
職場における課題の具体例
職場における課題には、具体的に以下のようなものがあると考えられます。
コミュニケーションが不足している
コミュニケーション不足は、一見して「ただ不足しているだけ」のことですが、さまざまな問題を引き起こす可能性のある課題です。たとえば、業務効率や生産性に悪影響が出て、プロジェクトが遅延することはよくあります。
また、社員間の信頼の欠如や、組織全体の士気の低下も懸念されるでしょう。これらはコミュニケーション不足により、社員の間で認識のずれが生じやすくなることが原因です。
コミュニケーション能力を高める要素とは?高い人の特徴や会社で鍛える方法を解説
労働環境に不備がある
労働環境の不備は、さまざまな課題へとつながっています。たとえば、空調設備やインターネット環境に不備があると、社員の業務効率に悪影響を及ぼし効率を下げてしまうでしょう。照明や通気、騒音や温度なども、快適でなければ社員のストレス増加につながります。DX化が進まない環境下でのアナログ作業の多さも、社員の業務効率を左右する大きな課題です。
戦略への理解が足りていない
戦略に対する理解が経営層だけに留まってしまい、現場社員にまで浸透していない状況も、職場における課題として挙げられます。現場の社員が戦略や理念に基づいた行動を起こしていないと、企業としての成長は見込めません。
戦略の理解以前に、そもそも明確な戦略がない状態では、部門やチームが同じ方向に進めなくなる可能性も高いでしょう。社員それぞれが役割や責任について自覚できず、モチベーションの低下につながりかねません。
組織全体を俯瞰して見ていない
社員自身が組織全体を俯瞰して見る視野の広さがないと、目の前の業務やゴールにとらわれてしまいがちになります。その結果、組織としての利益や業績の向上に必要な行動を取りづらくなり、成長が阻害されてしまう可能性があるでしょう。この課題は、戦略への理解やコミュニケーションが不足していると発生しやすいといえます。
事務作業が簡略化できていない
事務作業の簡略化は、開発や営業といった業務に多くの時間を割くための課題として捉えられます。事務作業に時間を取られるとリソースが占有され、企業の成長にも支障を来すことがあるでしょう。
しかし、事務作業を短縮しようとしてツールを導入した結果、ミスや修正が発生して逆効果になるケースもよくあります。結果、余計に手間がかかり、新たな課題となってしまう可能性もあるため注意が必要です。
人材育成が進んでいない
人材育成は通常業務と並行して行う必要があり、多忙のなかではリソースを割きにくい部分といえます。研修制度に注力しても思うような効果を実感できない、成果が得られないといった場合は、課題として捉えるべきです。
特に、次の管理職や経営に携わる人材が育成できていないと、次世代の組織運営に不安が残ってしまいます。研修対象の社員や研修内容について精査し、問題点を発見して改善に努めましょう。
主張の強い人の意見が優先される
主張の強い人の意見は、現場の声として認識され、優先されがちです。しかし、必ずしもその意見が現場の総意とは限りません。社員の考えや立場によって意見は異なるため、注意が必要です。主張の強い人の意見に流されてしまい、組織全体の戦略を適切に立てられない状況そのものが、解決するべき課題であるといえます。
職場の課題を解決するための手順
職場の課題解決は、次のような手順で行うとよいでしょう。
1.課題を把握して共有する
まずは職場における課題を把握することから始める必要があります。先述のとおり、アンケートや面談など、さまざまな手段を用いて課題を見つけましょう。見つかった課題は社員全員に共有し、「このような課題が存在する」という認識を持つことが大切です。認識が共通していれば、解決に向けた動きの方向性を統一でき、全員が協力して取り組みやすくなります。
ただし、そのためには客観的な視点から課題を整理し、誰にでもわかるように言語化することが求められます。課題を放置する危険性も併せて伝え、社員に当事者意識を持ってもらうことが大切です。
2.課題に優先順位を付ける
課題を洗い出せたら、それぞれの課題に優先度を付けます。いくつかある課題の解決を一気に目指すと、効率が悪くなりがちです。重要性や緊急度などを考慮して、事業への影響が大きい課題から取り組むことをおすすめします。
3.課題が発生した原因を究明する
迅速に課題を解決に導くためには、課題の存在を把握するだけではなく、その課題が発生している原因についても探るべきでしょう。原因が分からない状態では、根本的な解決に至ることができません。同じ課題が繰り返し生じる事態を避けるには、原因から解消する必要があります。
4.対処法を決めて実行する
解決するべき課題が決まり、原因究明が済んだら、対処法を見きわめて実行に移します。具体的な行動計画を立て、分担する作業についても社員ごとに計画表を作成するのが望ましいでしょう。計画表には、対策を実施するタイミングや担当者、作業の詳細などを記入しておきます。
行動を起こしやすくするためにも、それぞれに期限や目標数値を定めておくことがポイントです。また、実行の候補に挙がった複数の解決方法は、一度に取り組んでも効果が分かりにくいので1つずつ試しましょう。
5.効果を検証して改善を目指す
何らかの対処法を実行した後は、その効果を検証します。原因の特定から対処法の実行に至るまでの流れを振り返り、それぞれのプロセスのよい点や悪い点を洗い出す作業も必要です。対処法そのものや途中のプロセスにおける改善点を探し、次回以降につなげる意識を持ちましょう。
なお、一度対処法を実行するだけで課題が解決することは、あまりありません。改善を繰り返し、その場に合った解決方法を模索することが大切です。
職場の課題を解決する手段
職場の課題を解決するには、解決に直接関係のなさそうな作業も行う必要があります。以下にあげる方法は、職場の課題解決につながりやすいでしょう。
コミュニケーションを活性化させる
職場でのコミュニケーションを活性化させることで、情報共有が円滑に進みやすくなり、さまざまな課題が解決に向けて動き出す可能性があります。具体的な施策としては、企業文化やルールの変更、コミュニケーションツールの導入などです。社員間の認識を統一するために、定期的なミーティングやフィードバックの実施も効果を期待できます。
社員の意見を集める
職場における課題は社員によって捉え方が異なるため、実際に現場で働く社員の意見を集めて、解決策を模索しましょう。たとえば「情報共有の手段がアナログで、相手の顔色やタイミングの見きわめが負担に思う」という意見があったとします。課題の詳細が分かれば、情報共有ツールを導入するなど、適切な対策を取りやすくなります。
複数の意見を集めることで、1つの課題をさまざまな角度で捉えられるのも利点です。多角的な視点は課題の本質や解決の糸口を探すことにもつながるため、社員の意見を集めることは大切といえます。
課題の解決方法や優先順位を明確にする
課題の捉え方は、社員が担当する業務や立場によって異なります。そのため「何が課題であるか」を提示するだけでなく、解決策や施策の目的を明確にすることが重要です。取り組む課題とそのアプローチを社員間で共有し、認識の統一を図る必要もあります。
複数の課題が存在する場合には、優先順位を設定して対応することが推奨されます。社員間で優先順位に差が生じないよう、基準を明確にし、全員で共有しましょう。
職場の課題解決に役立つフレームワーク
職場の課題解決には、次のようなフレームワークが利用できます。解決したい課題によって、適したものを組み合わせましょう。
PDCAサイクル
PDCAサイクルは、一定のサイクルを繰り返すことで業務改善を目指すフレームワークです。
・Plan:計画
・Do:実行
・Check:評価
・Action:改善
PDCAサイクルは一度で終わりではなく、複数回繰り返すことで効果を得られるようになります。改善の結果を活かし、新たな計画へと進みましょう。
SWOT分析
自社の外部環境や内部環境を、いくつかの要素から分析するフレームワークがSWOT分析です。「いくつかの要素」とは以下の4つを指します。
・Strength:強み
・Weakness:弱み
・Opportunity:機会
・Threat:脅威
このような自社を取り巻く要素を多角的な視点で分析することで、自社が置かれている状況の整理や把握につなげられます。
ロジックツリー
ロジックツリーは、情報を整理しながら現状を分析するのに役立つフレームワークです。ロジックツリーでは、解決したい事象に対して「なぜ」「どうやって」を繰り返して深堀することが特徴です。根本的な原因を分析することで、課題に対して効果的な解決案を探し出せます。
7S
7Sは、組織として重要な7つの要素に関するフレームワークです。7つの要素とは、具体的には以下のとおりです。
・1.Strategy:戦略
・2.Structure:組織
・3.System:システム
・4.Skill:組織のスキル
・5.Staff:人材
・6.Style:スタイル
・7.Shared Value:価値観
1~3までの要素は「ハード面」と呼ばれており、短期間で改善が目指せる要素と考えられています。これに対し、4~7までの要素は「ソフト面」です。長期間に渡って時間や労力をかけなければ改善が望めない可能性があります。
まとめ
職場の課題には、把握しやすいものから表面化しにくいものまで、さまざまな種類があります。いずれのケースでも、課題の解決には社員の意見を取り入れつつ、丁寧な対応が必要になるでしょう。さまざまなツールを用いてコミュニケーションを改善すると、課題が大きく改善に向かう可能性があります。
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