職場環境改善とは、社員が働く環境を整えることです。この記事では、自社の職場環境を改善したいと考えている担当者に向けて、職場環境の概要、職場環境で重視すべき要素、改善が必要な理由、メリットなどを解説します。職場環境を改善するためのアイデアとともに、具体的な成功事例も解説するため、ぜひ参考にしてください。
そもそも「職場環境」とは?
職場環境とは、働く社員を取り巻く環境の総称です。物理的、社会的、精神的な環境のすべてを含みます。たとえば、仕事に対応するオフィスのレイアウト、設備、空調、照明、音などです。また、労働条件、人間関係、職場の雰囲気なども職場環境に該当します。
自社の職場環境を改善すれば社員のモチベーションを高めやすく、業務の生産性向上も実現可能です。そのため、企業は積極的に職場環境の改善に取り組む必要があります。
職場環境の5つの要素
職場環境を改善するには、5つの要素に着目する必要があります。ここでは、5つの要素についてそれぞれ解説します。
物理的環境(温度・照明・レイアウトなど)
物理的環境とは、オフィスの温度や湿度などの空調、照明の明るさ、騒音レベル、受動喫煙防止対策などの室内の環境です。仕事に取り組む執務スペースに限らず、食堂、休憩室、トイレなどの設備や衛生管理なども含まれています。社員が快適に過ごせる物理的環境を整備し、仕事に集中できるようにすべきです。
人間工学的側面(作業スペース・作業姿勢)
人間工学的側面とは、作業スペースの広さ、作業に使用するデスクの高さ、椅子の質、パソコンや機器の使いやすさなどのことです。人間工学的側面に配慮された職場環境なら、社員が長時間作業しても体に大きな負担がかからず、疲れも感じにくくなります。働きやすさを左右する重要な要素です。
労働条件・福利厚生
労働条件は、労働時間、休暇、賃金などです。社員にとって魅力的な労働条件を設定すれば、仕事に対するモチベーションを高められます。福利厚生とは、社員の健康や生活に役立つサービスや施策のことです。福利厚生を充実させると、自社への満足度が向上しやすくなります。
人間関係(コミュニケーション)
職場の人間関係は、社員が仕事を通して感じるストレスや満足度に大きな影響を与える要素です。たとえば、交流を目的として定期的な飲み会を開催していても、人によってはかえってストレスのもとになっている可能性もあります。人間関係の悩みを減らすためには、社員が同僚や上司に気軽に相談できる環境を整備することが大切です。
社内のコミュニケーションを円滑にするため、研修やセミナーを実施したり、共同で利用できる作業スペースを設置したりしている企業もあります。また、ハラスメントに特化した研修の実施や相談窓口の設置なども、社員が安心して働くために必要です。
仕事内容(負荷・裁量権)
職場環境には、仕事内容も含まれます。経験やスキルに適した業務を割り振り、特定の社員に仕事の負荷が集中しないようにすべきです。また、現場の声を積極的に取り入れ、社員の自由度を高めたり裁量権をもたせたりする必要があります。仕事内容の見直しは、それぞれの社員がモチベーションを維持しながら高いパフォーマンスを発揮するために重要です。
職場環境の改善が重要視される理由
労働安全衛生法第71条の3の定めに基づき、厚生労働省は1992年に「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」を示しました。
この指針では、事業者は労働者にとって快適な職場環境の整備に努める必要があるとされています。具体的には「作業環境の管理」「作業方法の改善」「労働者の心身の疲労の回復を図るための施設・設備の設置・整備」「その他の施設・設備の維持管理」について対応が必要です。
また、労働安全衛生法の改正により、2015年12月から労働者が50名以上いる事業者に対してストレスチェックの実施が義務付けられました。社員のストレスを軽減するための対応が求められています。
※参考:事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針 | 厚生労働省
ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等 | 厚生労働省
職場環境を改善するメリット・期待できる効果は?
職場環境を改善すれば、さまざまなメリットや効果に期待できます。ここでは具体的な内容について確認しておきましょう。
社員のストレスを軽減できる
職場環境を改善すると、社員のストレスの軽減につながります。ストレスが多い職場環境ではミスが起きやすく、パフォーマスも低下しがちです。休職や離職の原因になる可能性もあります。そのため、社員がストレスを抱えやすい職場環境については、迅速な改善が必要です。作業しやすい設備、風通しのよい雰囲気、適切な仕事量などを実現すれば、社員のストレスも軽減できます。
作業効率・生産性が向上する
社員にとって働きやすい職場環境なら、作業効率や生産性も高まります。働きやすい執務スペース、温度をはじめとする室内環境、疲れにくいデスクや椅子、便利な機器などをそろえれば、よりスムーズな作業を実現可能です。また、コミュニケーションの活性化や人間関係の改善なども、作業効率や生産性の向上につながります。
社員のエンゲージメント向上・離職率低下につながる
社員にとって働きやすい物理的環境や労働条件などを整えると、社員のエンゲージメントも高まります。自社に貢献したいという意欲をもつ社員が増え、離職率も低下させることが可能です。その結果、優秀な人材の流出防止につながります。なお、社員エンゲージメントについては詳しい資料も用意しているため、ぜひ参考にしてください。
コミュニケーション活性化・人間関係の改善が期待できる
職場環境の改善により、上司、部下、同僚とのコミュニケーションも活性化できます。仕事でかかわる相手と円滑にやり取りできるようになるため、日々の業務もスムーズに進みやすいです。社内のコミュニケーションが活発になると、良好な人間関係の構築も期待できます。
作業品質・顧客満足度の向上につながる
職場環境を改善して社員のエンゲージメントやモチベーションが高まると、結果として作業品質も向上します。社員が意欲をもって仕事に取り組むようになり、高いパフォーマンスを発揮できるからです。作業品質が上がれば提供する商品やサービスの品質も高まるため、顧客満足度の向上が期待できます。
企業イメージアップ・優秀な人材の確保につながる(リクルート効果が図れる)
物理的環境や労働条件・福利厚生などを改善すれば、社員のエンゲージメントとともに企業イメージも改善されます。社員にとって働きやすい企業という印象が強くなるためです。企業イメージが向上すると、新しく人材を募集する際に応募者の増加を見込めます。その結果、自社に必要である優秀な人材も確保しやすくなるでしょう。
職場環境を改善するアイデア【6選】
職場環境を改善するためには、さまざまな方法があります。ここでは、具体的なアイデアを紹介します。
働きやすいオフィスへのリフォーム・設備の整備をする
作業効率を高めるには、社員にとって居心地がよく働きやすいオフィスを作る必要があります。たとえば、古い設備を新しくしたり、明るく作業しやすい照明に変えたりすると効果的です。また、オフィス、休憩室、洗面所、トイレなど、社員が毎日使用する場所を清潔に保ちましょう。清掃業者と契約すれば、常に衛生的で気持ちよく過ごせる環境を維持できます。また、喫煙ルームを設置し、喫煙しない社員の受動喫煙を防ぐことも大切です。
社員1人ひとりに合った業務量・業務内容か見直す
社員それぞれの経験やスキルを考慮し、最適な業務量になるよう調整することも大切です。また、特定の社員や部署に業務が集中しないよう、分担を工夫する必要があります。人員配置や業務内容についても改めて見直し、社員1人ひとりにとって最適な状態であるか確認しましょう。
フレックスタイム制・テレワークなどの働き方を導入する
それぞれの社員の状況を考慮し、ニーズに合わせた働き方ができるよう選択肢を増やすことも重要です。たとえば、勤務時間を柔軟に設定できるフレックスタイム制や、オフィス以外の場所で働けるテレワークの導入が挙げられます。働き方の自由度を高めると、仕事と育児や介護などを両立したい社員も無理なく働くことが可能です。その結果、適切なワークライフバランスの実現につながります。
さまざまな休暇制度を導入する
多様な休暇制度を取り入れると社員がリフレッシュでき、仕事に対するモチベーションも高まります。休暇制度の例としては、育児休暇、介護休暇、アニバーサリー休暇などです。休暇制度を導入する場合、社員ごとに差が出ないよう配慮する必要があります。すべての社員が同じ条件で休暇制度を利用できるようにしましょう。
情報共有ツール・コミュニケーションツールを導入する
コミュニケーションや情報共有をスムーズにするには、専用のツールの導入も効果的です。情報共有ツールやコミュニケーションツールを活用すると業務の進捗を把握しやすくなり、作業効率も高まります。
フレックスタイム制やテレワークを導入すると社員が顔を合わせて働く機会が減りますが、ツールがあれば細かいやり取りも可能です。グループや1対1など、状況に適した方法でコミュニケーションを図れます。
相談窓口の設置やストレス管理についての情報提供をする
社員が仕事や人間関係などについて悩んでも1人で抱え込まないよう、相談窓口の設置やカウンセリングサービスの提供などを検討しましょう。ストレス管理の知識を提供したり、セルフケアについての研修を実施したりしても効果的です。社員が安心して働くための環境を整える必要があります。
職場環境を改善するためのステップ
職場環境を改善するには、まずストレスチェックや社員サーベイを実施して自社の現状を把握しましょう。結果を踏まえて課題を洗い出し、職場環境を具体的にどのように改善する必要があるか確認します。改善計画を作成して実行に移しましょう。
また、改善の取り組みを進めるだけでなく、どの程度の効果があったか検証することも大切です。さらに改善できる点ができないか検討し、必要に応じて新たな施策に着手していきます。
職場環境改善の成功事例【4選】
多くの企業が職場環境の改善を成功させています。具体的な事例を紹介します。
株式会社ニチレイの事例
36のグループ会社が存在する株式会社ニチレイはデータの統合に課題があり、全体の状況を可視化できていませんでした。たとえば、人事データを経営判断の参考にしたい場合も工数がかかるため、ツールの利用は人事部門に限られていたそうです。
そこで、グループ会社にメリットを説明したうえでタレントパレットを導入しました。その結果、グループ横断で社内公募がしやすくなり、応募数が2倍に増加しています。別の業種や職種への異動が容易になり、社員のキャリアプラン支援、リスキリング、離職防止なども実現しました。グループ会社ごとに担当者を決め、月1回の定例会で意見交換をしています。
また、女性や次世代を担う人材に関するデータの整理や分析にも対応でき、わかりやすく可視化できるようになりました。さらに、すべての社員を対象にTPI適性検査を実施し、統一のデータの取得を実現しています。
※参考:株式会社ニチレイ|タレントマネジメントシステムならタレントパレット
株式会社オリエントコーポレーションの事例
約7,000人の社員がいる株式会社オリエントコーポレーションでは、適材適所の人材配置、人事異動、登用などに課題がありました。人事情報、キャリアアンケートの結果の集計、面談の内容の記録をそれぞれ別のシステムで管理していたため、情報を一元化したいと考えていたそうです。
タレントパレットを導入した結果、従来は外部に委託して実施していた社員意識調査を内製化できました。タレントパレットの活用により、人事部から各事業部門に対してスムーズに改善策をフィードバックできています。スムーズなPDCAサイクルを実現しました。
また、紙のサンクスカードからタレントパレットのサンクスポイントに移行したところ、利用する社員が増加しています。これにより、社員のエンゲージメントが向上しました。
※参考:株式会社オリエントコーポレーション|タレントマネジメントシステムならタレントパレット
綾羽株式会社の事例
多岐にわたる事業を展開する綾羽株式会社では、科学的根拠がない属人的な価値観による人事異動が行われていました。さらに、各事業所の後継者不足が課題となり、後継者に必要なスキル、経験、能力を明らかにすべき状況でした。そこでタレントパレットの導入を決めました。
それまで紙で対応していた評価をタレントパレットに移行した結果、郵送費を削減したりスケジュールに余裕をもたせたりできています。
また、タレントパレットのアンケート機能を活用して社員の不安を把握する仕組みを構築し、経営層や経営幹部が社員全体の傾向を把握しやすくなりました。人事へ相談が必要な内容をシステムで管理し、見落としがなくなっています。タイムリーに効果的なアクションが可能になりました。
※参考:綾羽株式会社|タレントマネジメントシステムならタレントパレット
ブリッジインターナショナル株式会社の事例
インサイドセールスのアウトソーシングを請け負うブリッジインターナショナル株式会社は、営業活動やマーケティング活動には従来からデータを活用していたものの、人事評価については紙で対応を続けていました。また、社員のエンゲージメントも向上させたいと考えており、タレントパレットを導入したそうです。
タレントパレットでは自社の情報を定期的に配信でき、常駐先の社員も社外からアクセスできます。評価もペーパーレス化でき、どこからでもMBOの評価と承認ができるようになりました。必要に応じて過去の履歴もすぐに確認可能です。
さらに、eラーニングを利用したインプットや評価によるアウトプットの循環も実現できました。人事FAQも導入したところ、問い合わせが激減して担当社員の負担が減少しています。
※参考:ブリッジインターナショナル株式会社|タレントマネジメントシステムならタレントパレット
職場環境改善に取り組む際の注意点
職場環境を改善する場合、注意すべきこともあります。ここでは具体的な注意点について解説します。
不利益が生じる場合もある
職場環境の改善に取り組んでも、すぐに効果を感じられるわけではありません。最終的には高い効果が見込めるとしても、取り組み始めたばかりのうちは一時的に不利益が発生する可能性もあります。着実に効果を得るには、取り組みの効果を検証・分析しながら長期的な目線で改善を進めるべきです。
不公平になっていないか注意する
職場環境の改善を進める際は、社員によって不公平が生じていないか常に意識する必要があります。改善の内容によっては一部の社員しか恩恵を受けられない可能性もあるため、要注意です。すべての社員が公平にメリットを感じられるようにしましょう。
続けられる改善計画を選択する
すでに述べたとおり、職場環境の改善に取り組む場合、効果が表れるまでに時間がかかります。そのため、長い期間をかけて無理なく進められる改善計画が大切です。
まとめ
職場環境にはさまざまな要素が含まれています。改善に取り組めば、生産性の向上、離職率の低下、顧客満足度の向上などを期待できるでしょう。まずは自社の現状を把握し、課題に合わせて必要な施策を取り入れる必要があります。
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