職場環境の改善ポイントとは?効果やアイデア、注意点、成功事例などを解説


職場環境の改善ポイントとは?効果やアイデア、注意点、成功事例などを解説

職場環境の改善は、生産性向上や社員のモチベーションアップなど多くの効果が見込める施策です。しかし、いざ実行するとなると、どうしたらよいか迷う場合も多いのではないでしょうか。この記事では、職場環境の改善とは何か、メリット、注意点、具体的なアイデア、企業の注意点などを解説しています。自社に合った職場環境の改善に取り組む際の参考にしてください。

企業が取り組むべき職場環境の改善とは

職場環境の改善とは、設備やオフィスレイアウトの改善、業務内容の変更、社内文化の見直し、人間関係の構築などの多岐にわたる活動です。職場環境の改善というと、空調設備の更新や騒音対策といった物理的な施策をイメージするかもしれませんが、社員のストレスを減らし、生産的な活動を後押しする改善すべてが含まれます。一例を挙げれば、残業時間を減らしたり、業務フローを効率化したり、メンタルヘルス対策の相談窓口を設けたりといった施策も職場環境の改善です。


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労働安全衛生法で求められている職場環境の4つの改善措置

快適な職場づくりは、労働安全衛生法第71条3項に定められた事業者の義務です。この義務を企業が順守できるように、厚生労働省は「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」(快適職場指針)で4つの措置を挙げています。


職場環境の改善に取り組む際は、まずはこの4つが十分に満たされているかチェックすることが必要です。


1.作業環境の管理

作業環境の管理とは、快適に集中して業務に取り組める職場環境を整備し、維持管理していくことです。具体的には、職場の換気や臭気対策、快適な室内温度の維持などです。作業しやすい明るさの照明や、疲労を感じにくいチェアなどの整備も作業環境の管理に含まれます。作業環境は高いレベルを目指せばきりがありませんが、快適職場指針では、社員が「不快を感じないよう」な水準が想定されています。


2.作業方法の改善

肉体的、精神的に過度な負担やストレスがかかっている業務があれば改善が必要です。たとえば、短い休憩時間で長時間労働をさせたり、過度なプレッシャーやノルマをかけたりしている問題があれば改める必要があります。個人レベルと職場レベルの両面から、改善すべき点がないか検討していくとよいでしょう。


3.疲労回復支援施設の設置・整備

疲労回復支援施設とは、疲労やストレスを癒せる休憩室やフリースペースなどです。業務内容によっては快適なシャワー室や仮眠所なども必要になるでしょう。これらの疲労回復支援施設が整っていれば、社員は業務に必要な心身の力を回復できます。個人によって望むものが違う場合も多いため、社員の意見を聞き取る必要もあるでしょう。


4.その他の施設・設備の維持管理

その他の施設・設備の維持管理として快適職場指針に挙げられている内容は、洗面所、トイレなど職場生活で欠かせない設備を衛生的で使いやすい状態にしておくことです。こうした日常的によく使われる施設・設備では、良好な状態に保つための継続的かつ計画的な取り組みが欠かせません。


近年注目されている職場環境の改善要素

ここでは近年注目されている職場環境の改善ポイントとして、コミュニケーション活性化、ハラスメント対策、メンタルヘルス対策、働き方改革推進の4つを紹介します。


コミュニケーションの活性化

コミュニケーションの活性化のために、職場環境の改善に取り組む企業が増えています。たとえば、固定席を廃止して交流機会を増やすフリーアドレス制の導入や、休憩や食事の際に集まれるフリースペースを確保するなどです。


背景には、企業に対する帰属意識が低い社員や、多様な価値観を持つ社員の増加によって、職場のコミュニケーションが少ない企業が増えている現状があります。


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各種ハラスメントに対する職場意識の向上

職場におけるハラスメント対策は企業の責任です。安心して働ける職場環境を求める人は増えており、相談窓口を設けたり風通しのよい社風を目指したりと、組織的な対策に乗り出す企業も増えてきました。


近年はハラスメント事例がメディアやSNSなどで拡散され、社会から厳しい目を向けられる事例も珍しくありません。企業の危機管理としても、職場環境を改善する必要に迫られています。


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メンタルヘルス不調の予防

ストレス社会といわれる現代では、うつ病や適用障害といった病気になる人が少なくありません。メンタルヘルス不調の予防策の1つとして、職場環境の改善が重要視されます。


またメンタルヘルス対策は、人材確保の点でも重要です。日本でも終身雇用制が崩れ、転職が当たり前になってきました。企業にとっては人間関係のもつれや職場内のいやがらせのストレスなどで離職する人を職場改善で減らすことが、人事上の重要な課題となっています。


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働き方改革につながる職場環境の改善

働き方改革においては、長時間労働の是正やテレワークの推進、短時間労働などによる多様な働き方の推進が求められています。この働き方改革推進の一環として、職場環境の改善に取り組む企業も多くあります。


働き方改革は、多様な人材がワーク・ライフ・バランスをとりながら、やりがいを持って働けるようにすることが目的です。職場環境の改善と並行して取り組みやすいでしょう。


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職場環境を改善するメリット・効果

職場環境を改善すると、どのような成果が見込めるのでしょうか。業種や規模を問わず共通のメリット・効果を4つに分けて解説します。


社員のパフォーマンスが向上する

集中できる職場環境があれば、社員の業務効率は高まり、本来の能力を発揮しやすくなります。たとえば、十分な広さのデスクが使えたり、おしゃれなオフィスデザインであったりして快適な職場環境に満足すると、仕事への意欲が高まる場合もあります。


組織連携やチームワークが向上し生産性が高まる

職場環境の改善は、コミュニケーションを活性化したり人間関係をよくしたりする効果もあります。たとえば、スタンディングミーティング用の机を1つ置くだけでも、アイデアを交換したり、雑談を交わしたりする機会が増えるかもしれません。こうした効果が出ると、組織連携やチームワークがよくなり、組織としての生産性向上が見込めます。


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社員のストレスが減る

職場環境を充実させると社員のストレス軽減につなげられます。休憩スペースを充実させたり、誰もが安心して発言や行動ができる「心理的安全」を確保したりと、企業によって方法はさまざまです。いずれにしても、社員のストレスが減れば活力ある社員が増え、職場も活気づいてくるでしょう。


多様な働き方を実現できる

ワーク・ライフ・バランスに考慮した働き方を導入したり、個人に合わせた働き方を選べる制度を構築したりすると、多様な働き方を実現できます。たとえば、子育て中の社員が無理なく働けるようにテレワーク環境を整えれば、休職者を減らせるかもしれません。また、企業側からみると多様な人材を雇用できるため、人的リソースを確保しやすくなることもメリットです。


離職率を下げられる

快適な職場は、離職率を下げるためにも効果的です。さまざまな調査により、安心して働ける職場は社員の満足度やエンゲージメント(会社や仕事に対する愛着、思い入れ)が高まり、人材が定着する傾向があることが知られています。


新卒社員の短期離職や、優秀な人材の転職に悩みを抱える企業は少なくありません。こうした企業にとって、人材定着の効果のある職場環境の改善はメリットが大きい取り組みです。


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企業ブランディングにつながる

職場環境の改善に熱心に取り組む企業は、社員を大切にする企業として、よいイメージを持たれる傾向があります。結果として、顧客や取引先を増やす企業ブランディングの効果を見込めるでしょう。また、自社で働きたい求職者が増えれば、採用活動の成果も上げやすくなります。


職場環境を改善するための具体的なアイデア

ここからは、職場環境を改善するための具体的なアイデアを紹介します。自社の課題に合ったアイデアがないか探してみてください。


1.リフォーム・リノベーションを行う

職場が老朽化している場合、リフォームやリノベーションによって環境改善を図れます。一例を挙げれば、老朽化したエアコンや椅子を買い替えたり、汚れた壁紙や床材を張り替えたりするなどです。トイレや洗面所などの水回りを修繕して、衛生面や使い勝手を改善することも効果的です。居心地のよいオフィスになれば、職場の雰囲気がよくなる効果を期待できます。


2.フリーアドレス制を導入する

テレワークとオフィスワークを併用するハイブリッドワークの職場で、フリーアドレス制の導入が進んでいます。フリーアドレス制であれば、欠席者の空デスクがなくなり、職場スペースを最大限活用できるからです。


また、コミュニケーション活性化を目的にフリーアドレスを導入する企業もあります。固定席がないため、普段接点がない人とも話をしやすくなるでしょう。共同作業をするメンバーで集まれば業務もはかどります。


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3.ABWの実現

ABW(Activity Based Working)とは、業務内容に応じて社員が働く時間や場所を自由に選べるオフィススタイルです。職場内で場所を選ぶフリーアドレスと異なり、職場や自宅、カフェなど、オフィスの内外を問わず、社員が働く環境を主体的に選べることが特徴です。ABWを実現すると、業務効率が高まるだけでなく、創造性が高まる効果もあるとされています。


4.短時間労働やフレックス制度への対応

社員の働きやすさを考えて、短時間労働やフレックスタイム制を導入する企業もあります。こうした制度によって、子育て中の人や介護中の人などが個人の事情に合わせて働きやすい方法を選べるようになります。結果として離職率の低下や、人材の定着、多様な人材の活用などにつながるでしょう。


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5.ITツールの導入

ITツールの導入で業務効率化を図る方法もあります。たとえば、負荷が大きいマネジメント層がいるなら、勤怠管理ツールやプロジェクト管理ツールで業務を軽減できるでしょう。また、スケジュール管理ツールやコミュニケーションツールなどを導入すれば、作業量が多くなっている社員をみつけ、サポート人員を回したりすることも容易になります。ITツールは多種多様ですので、自社の課題に合ったものを選びましょう。


6.カフェスペースやフィットネス設備の整備

社内にカフェスペースやフィットネス設備を整える企業があります。これらは直接仕事とは関係ありませんが、社員がリフレッシュすることで能率が上がる効果を期待できるからです。休憩スペースは部署や役職を横断した交流の場ともなるため、コミュニケーションの活性化にも効果があります。


7.分煙対策の徹底

受動喫煙による健康への悪影響が問題視されるようになってから、専用の喫煙室を設置する企業が増えています。受動喫煙防止対策は企業の義務ですので、たばこを吸わない社員から苦情が出ていれば、直ちに改善するべき職場環境といえるでしょう。施設内の全面禁煙に移行する企業もありますが、喫煙者の権利も考えると、分煙対策の方がバランスをとりやすい面があります。


8.メンタルヘルス対策の強化

メンタルヘルス対策の強化として、残業時間の削減や十分な休憩時間の確保、ハラスメント研修などに取り組む方法もあります。適切な方法は企業によって異なるため、ストレスチェックの実施結果を分析するなどして、効果的な対策をとるとよいでしょう。


たとえば、高ストレス者の割合を自社データと全国平均データで比較すると、どの部署や役職、業務内容で問題が生じているか発見しやすくなります。


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9.相談窓口の設置

職場環境の不満を相談できる窓口を設置する方法も効果的です。パワーハラスメントに関しては相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知することが義務となっています。しかし、それ以外のハラスメントや職場環境についての相談などを受け付ける窓口もあれば、社員のセーフティーネットになり、問題を発見するきっかけにもなります。


人材不足やノウハウ不足の場合は、知見を持った外部企業のサポートを受けるとよいでしょう。


職場環境を改善する際の注意点

ここでは、職場環境を改善する際の注意点を紹介します。注意点を知っておくと失敗リスクや改善による弊害を未然に防げます。


改善ではなく改悪になるリスクもある

職場環境が必ずしも改善になるとは限りません。職場環境に対しては個々の考え方があり、一般的に改善といわれる施策が改悪と受け取られるリスクもあるからです。


たとえば、フリーアドレスを導入した場合、自由に座席が選べて満足する人もいれば、固定席がなくなって不満を持つ人もいます。改善施策の担当者は施策実行後に不満が生じていないか、不公平が生じていないかなどをチェックすることが必要です。


社員のニーズを無視しない

経営層や人事部がトップダウンで職場環境を改善すると、社員のニーズと合わない可能性があります。施策を実施する前に、社内アンケートを実施して、社員の意見をヒアリングするとよいでしょう。また、衛生委員会で職場環境の改善を提案し、同意を得ることもよい方法です。


継続できる職場環境の改善策を選ぶ

職場環境を改善しても、多くの施策は短期間で結果は出ません。たとえば、「ハイブリッドワーク環境を整えたから生産性が上がるはずだ」などと即効性を期待するのは早計でしょう。あまり短期的に考えると、効果がなかったから元に戻すなどして一貫性がなくなってしまいます。このため、成果が出るまでにどれくらいの期間が必要か見積もり、成果測定の方法も決めておきましょう。そして、その期間は継続的に取り組みます。


勤務制度や人事制度の更新も検討する

職場環境の改善にともない、勤務制度や人事制度の更新も必要になる場合があります。仮にフレックス制度やノー残業デーを導入すれば、就業規則の見直しが必要になるでしょう。職場環境の改善に合わせて制度も定めていかないと、社員が働きにくくなったり、メリットを感じられなくなったりします。そのため、改善意識が低下すると元に戻ってしまう恐れがあります。


職場環境を改善する流れ

先に述べたように職場環境の改善は長期的な施策になります。PDCAサイクルを回して改善を続けていきましょう。


1.Plan(計画):自社の課題を把握する

改善策を実施するには、まず自社の課題を洗い出します。社内でアンケートを実施したり、改めてストレスチェックの結果を分析したりするなど、情報収集を進めていきましょう。職場でグループディスカッションを実施することも、現場主導の改善ポイントをみつけるよい方法です。


2.Do(実行):職場環境の改善策を実施する

続いて職場環境の改善策を立案し、実施していきます。この際、「いつ、だれが、何を行うのか」を具体的に決めてから実施することが大切です。職場環境の改善における予算や工数は限られているため、ゴールを明確にした施策を実行していきましょう。


3.Check(測定・評価):職場環境の改善成果を測定する

施策を実施したら、成果測定と評価を行います。施策前後でストレスチェックを比較したり、アンケート結果をスコア化して推移を分析したりするなど、なるべく成果を数値化することがポイントです。なお、改善結果を可視化して発表すると、社員のモチベーションアップにつながります。


4.Action(対策・改善):問題点を改善する

成果測定の結果、問題があれば改善施策を見直し、軌道修正します。職場環境の改善は長期的なスパンで取り組むものですので、フィードバックを行いながら、PDCAサイクルを回すことが大切です。


職場環境の改善に成功した事例

ここでは、実際に職場環境の改善に取り組み、成果を出した企業事例を3社紹介します。


テレワークやダイバーシティに対応したワークスタイル変革:日本航空株式会社

日本航空株式会社は、テレワークやダイバーシティ推進にともなって、常時在席率が全体の70%に下がり、オフィス空間にムダがある問題を抱えていました。そこで導入した施策が、出社しない人数分の余裕スペースを活用できるフリーアドレス制です。導入後、小さな打ち合わせスペースを設けることができ、コミュニケーションの活性化につながりました。


介護職員の働きやすい職場環境づくり:地域密着型特別養護老人ホームささづ苑かすが

地域密着型の特別養護老人ホームを営むささづ苑かすがでは、働きやすい環境の創出を目的に職場環境の改善を実施しました。介護ロボットやICTを効果的に活用し、業務効率化と人出不足の解消を図りました。また、女性職員同士のメンター制度を導入し、女性のキャリアアップを支援しています。


これらの施策によって、時間外勤務が減り、人件費をカットできました。また、女性管理職の割合増につながり、「令和5年度介護職員の働きやすい職場環境づくり内閣総理大臣表彰」を受賞しています。


ムダを排除する片づけの徹底:トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社は、必要なものを、必要な時に、必要なだけつくる「ジャスト・イン・タイム」の生産方式で有名です。同社はこのメソッドを、オフィス環境の改善にも適用しています。


単なる整理整頓にとどまらず、「動作経済」の一等地に使用頻度の高い物を配置することや、多種多様な物の保管場所はマップ化するといった「カイゼン」を常に続けているのが特徴です。ムダを排除する片づけの徹底によってオフィス業務の成果を高めた同社の事例は、多くの企業が取り入れられるでしょう。


まとめ

職場環境を改善すれば、生産性の向上や社員のエンゲージメント向上などが見込めます。企業ブランディングの効果や離職率の低下といった、波及的な効果も期待できるでしょう。


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