こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
キャリアを選択する際に、軸となる価値観を「キャリアアンカー」と言います。個人がキャリアを考えるときだけでなく、企業の人事担当者が従業員のキャリアマネジメントを行うときにも参考にしたい概念です。
この記事では、キャリアアンカーの8つの分類から活用方法まで、キャリアアンカーとは何かを詳しく解説していきます。
キャリアアンカーとは?
近年、テレワーク・在宅勤務などの時間や場所にとらわれない働き方が一般的になり、キャリアの選択肢が増えました。そんななか「どうすればより幸せなキャリアプランを描けるか」と考える人も多いのではないでしょうか。
キャリアアンカーとは、仕事をするうえで「これだけはゆずれない」というような価値観や考え方を指す言葉です。アメリカの心理学者であるエドガー・ヘンリー・シャインが提唱した概念で、具体的にはキャリアの軸には8つのタイプがあるとしています。
「キャリアアップしたいと強く望む人」「興味のある分野を突き詰めたい人」「リスクや挑戦よりも安定性を求める人」「仕事だけではなく自身のライフスタイルを重視する人」など、企業にもさまざまなタイプの人がいるでしょう。
自分のキャリアを考えるときに、自分がどの軸に当てはまるのか把握することで、より自分に合った働き方や職業を選べます。企業側は従業員のキャリアアンカーを把握することで、適職や適性を把握し、長期的な人材戦略を立てられるでしょう。
キャリアアンカーで得られる効果
キャリアアンカーは、キャリアの軸を把握するための概念です。個人のキャリア軸を理解することで、企業にとっても従業員にとってもさまざまなメリットが生まれます。
以下では、具体的にキャリアアンカーで得られる効果を2つ紹介します。
自分が望んだ働き方が選択しやすくなる
キャリアアンカーで自己理解を深めることで、個人が本当に望んでいる働き方を知ることができます。
働き方が多様化する現代では、2拠点生活やサテライトオフィスなども取り入れた企業も増え始めており、必ずしも出社して働く必要はなくなりました。
しかし、働き方の選択肢が増えたなかで、自分にとってよりよいワークスタイルはなんなのか、迷う人もいるでしょう。
誤った働き方を選ぶと、ストレスを抱えて仕事や生活の質を落とし、働きづらくなります。そうした自体を避けるためにも、自身のキャリアアンカーを知ってキャリアの軸を形成することが重要です。
企業とのミスマッチによる離職を減らす
働き方や社風の合わない会社での仕事は長続きしません。そのため、自分に合った働き方ができる企業を選ぶことで、自分にとっても企業にとってもよい選択ができます。
企業の人事担当者は、従業員の人員配置を決める際にキャリアアンカーを活用しましょう。多様性を重んじる企業では、さまざまな考え方を持つ人が一緒に働いています。ひとりひとりに合わせた環境を提供することで従業員のモチベーション向上につながり、事業の成長を加速させることにもつながるでしょう。
キャリアアンカーによる8つのタイプ
キャリアアンカーには大きく分けて8つのタイプがあります。これらは、提唱者であるエドガー・ヘンリー・シャインが何百人ものビジネスマンにインタビューを実施し、得た調査結果から導き出しています。
以下で、それぞれの内容を見ていきましょう。
管理能力
出世意欲が強く、組織をまとめたいという思いを持っているタイプです。管理職が向いています。このタイプの人は、社内で大きなプロジェクトを立ち上げる際にリーダーとして抜擢された場面で力を発揮するでしょう。
例えば、社内で複数のチームが関わる新規プロジェクトが立ち上がったとき、各チームのリーダーがうまく協力できずにプロジェクトが進まない状況に陥ってしまったとします。このような場合に、管理能力タイプの人は、プロジェクト全体を見渡して、各チームのリーダーに指示を出し、協力を促す行動をとるでしょう。
管理能力タイプの人は仕事に対する意識が高く、資格取得や自己研鑽にも積極的に行う人が多い傾向です。
専門的・機能的能力
特定の仕事に対して高い熱量を持つタイプです。企画職、営業職、技術職が向いています。
このタイプの人は、一つの目標に向かって地道にスキルアップに取り組み続けることができます。そのため、特定の分野に特化した知識を身につけている人が多い傾向です。
例えば、ある企業の営業部門に所属する人は、営業に特化したスキルや知識を持ち、顧客とのコミュニケーションに長けています。得意分野を発揮できて、営業職を天職と感じている人もいるでしょう。
飛び抜けた才能がある一方で、専門的・機能的能力タイプの人は職種が変わると力を発揮できず、モチベーションが下がる傾向があります。人事担当者は、その人の専門性を高める環境を整え、十分に発揮できるように配慮が必要です。
安定性
冒険をせずに一つの企業で安定したいと考えているタイプです。大企業の従業員や公務員に多い傾向にあります。
このタイプの人は、安定した収入を得て、家族を養うことができる仕事に満足感を覚えています。そのため転職や異動などの変化を嫌い、変化の少ない職場環境を求めているでしょう。安定思考の人は、公務員や大手企業といったような長く働き続けられる環境が向いています。
また、安定を求める人はリスクを避けようとすることから、危機管理能力に長けている人が多い傾向です。そのためリスクマネジメントの業務を行うことで、その能力を発揮する人も多いでしょう。企業の損失を回避して、長く事業を続けるために、安定思考の人は欠かせない人材です。
創造性
クリエイティブをゼロから生み出したいと考えるタイプです。新規事業の立ち上げや商品の開発、社内ベンチャーなどが向いています。
このタイプの人は新しいことを始めるときにやる気を持って取り組んでくれます。新しいビジネスを立ち上げる際には、自分自身でアイデアを生み出すことが可能です。社内に創造できる人材がいることで、新しい方向にビジネスを展開できるでしょう。
創造性タイプの人は、同じ企業に長く勤めるというよりも、自分でビジネスを立ち上げることができるフリーランスや起業家に多い傾向です。企業では一から事業を立ち上げる際に、大いに活躍することが期待できます。人事担当者は、創造性タイプの人との面談では将来やりたいことを深掘りして聞くことが大切です。
自律と独立
企業で決められたルールにとらわれず、柔軟性のある働き方がしたいと考えるタイプです。このタイプの人は、指示されたとおりに業務を遂行するよりも、自分のやり方で仕事ができる環境を望んでいます。
自分自身で考え、自分のやりたいことを実現するために、どんどん先に進んでいく自走力がある人材です。
企業では集団行動よりも単独行動を好み、テレワークといった自分で環境を整えられる職場が向いています。一方で、規律の厳しい会社や監視の強い上司がいる環境などは相性が悪く、注意が必要です。
奉仕・社会貢献
自分の仕事を通じて社会に貢献したいと考えているタイプです。このタイプの人は、人から「ありがとう」と言われることといった、人のためになる仕事にやりがいを感じています。そのため、医療や教育、サービスの開発に関わる人が多い傾向です。
また、社会に貢献することが自分の使命だと考え、公務員やNPO、ボランティアなど、人々の役に立つことができる職種についている人もいます。
社内の不正行為やよくない仕事ぶりを嫌うため、社内の監査や人事につくことで能力を発揮できるでしょう。
ワークライフバランス
仕事とプライベートを両立させたいと考えるタイプです。このタイプの人は、仕事にも真剣に取り組みながらも、同じように私生活を大切にしています。近年、注目されているワークライフバランスを大切にしたライフスタイルを望んでいる人が多い傾向です。
そのため、フレックスタイム制度のある企業や、ワークライフバランスを重視する企業など、仕事とプライベートのバランスを取りやすい職場を好みます。そのため、人事担当者は、ワークライフバランスタイプの人もいることを踏まえて、柔軟な働き方の導入を検討することが必要です。
チャレンジ
挑戦を好むタイプです。このタイプは、困難とも思えるような課題や、新しい環境に飛び込んで、誰もなし得なかったことを達成することにやりがいを感じています。そのためには、自主的に自己研鑽を積むことも欠かせません。失敗してもそこから学んで、さらなるチャレンジへとつなげています。
チャレンジタイプの人がいることで、企業のビジネスはどんどん加速していくでしょう。日々さまざまなテクノロジーが生まれ、競争の激しいビジネス社会において、こういったタイプの人が多く求められています。
人事担当者は、チャレンジタイプの人が十分にその能力を発揮できるような環境を作ることが大切です。チャレンジして失敗しても受け入れられる環境や、日々の業務がルーティン化していないかなど見直しを行いましょう。
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キャリアアンカーの診断方法
キャリアアンカーを使用すれば、従業員の思考タイプを判断して、人員配置に活用できます。キャリアアンカーは、診断サイトや専用のシートを作成して実施するのが一般的です。
例として、以下のような診断サイトがあります。ここでは、仕事に関する価値観について出題される40問の質問に答えることで、自分のキャリアアンカーがわかります。
https://chikaku-navi.com/carrier/
具体的には、「やりがいを感じるポイント」や「どうしてもやりたくないこと」「人生において大切にしたいこと」などについての設問があります。仕事とプライベートを分けずに、回答できることがポイントです。
キャリアアンカーは「何をしたいのか」「何ができるか」「何に価値を感じているか」が合わさったところにあるとされています。ただし、診断結果が必ずしも当てはまるわけではなく、それがすべてではないことも留意しておかなければなりません。
キャリアアンカーの活用法
キャリアアンカーの診断により出た結果は、さまざまなことに活用できます。それは従業員にとっても、企業にとってもプラスになることです。
以下では、キャリアアンカーの具体的な活用方法について3つ解説します。
自己分析に活用する
キャリアアンカーの質問では、自分自身でも気づけなかったコアの部分を知ることができる可能性があるため、より自己分析を深められます。
日々なんとなく仕事ができてしまっていたとしても、自分の働き方について振り返ることは、仕事や生活のクオリティを今以上に向上させるために重要なポイントです。自分自身を理解することで自分に合った働き方が分かり、キャリアプランの見直しを行う機会にもなります。
また、自分だけでなく周りの人の考え方や働き方を知ることもできます。同じ会社にいたとしても、働く目的はさまざまです。業務で関わる人の価値観・考え方を知ることで、仕事をスムーズに行うことができるでしょう。
研修に役立てる
キャリアアンカーは、企業の研修内容に活用することもできます。例えば、新卒・中途採用での研修や、10年以上の実務経験のあるキャリア研修などでも有効です。キャリアに対する考え方は、ライフスタイルの変化や年齢を重ねるごとに変わっていきます。
そのため、研修の機会を利用して、従業員のキャリアの価値観や軸を明確にして、向き合う時間を定期的に作ることが大切です。
また、キャリアアンカーの結果に沿って、新たに能力開発が行えるような研修内容を検討するといった、従業員のニーズを把握できる活用方法もあります。従業員が自身のキャリアアンカーに合う研修を受けることで、キャリアアップにつながるスキル・知識を身につけることができるでしょう。
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異動や人員配置に活用する
企業は、従業員のキャリアアンカーの診断結果を利用し、適正な人事異動や人材配置を行うことができます。
異動は従業員にとっても企業にとっても、時間やコストのかかる大掛かりなものです。しかし、ここで合わないポジションに配属されたことによって離職するケースは少なくありません。企業の人事担当者は、人事異動前の面談で個人の意見を聞くだけではなく、適切なデータとしてその人に合うポジションが提案できると、双方にとってよい結果が生まれるでしょう。
特に、キャリアアンカーの専門的・機能的能力タイプや安定性タイプの人にとっては、大きな変化がよい影響を与えないこともあるため、注意が必要です。
まとめ
キャリアアンカーは、仕事をするうえで大切にしたい価値観のことです。40問の質問に答えることで、自身のキャリアの軸を再確認できます。企業の人事担当者は、従業員それぞれのキャリアアンカーを把握することで、研修や人事異動などに役立てることができ、公正な人事データを収集できます。
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