風通しの良い職場とは
風通しの良い職場とは、職場の人間関係を表す比喩表現の1つです。職場は、目標達成を目指す功利的な側面と、人間関係の心理的安全性を保つ精神的な側面が併存する集団です。そして、風通しの良い職場は、職場における精神的な側面に関する考えとされています。
具体的には、社員それぞれが立場に左右されずに自分の意見を主張したり、コミュニケーションを取ったりできる環境のことです。このような環境ではアイデアが出やすく、スムーズな情報共有が実現しやすくなります。
風通しの良い職場に対するよくある勘違い
風通しの良い職場は、勘違いされやすい部分がいくつかあります。以下は、具体例とそれぞれの詳細です。
なんでも好き勝手に言って良い職場ではない
風通しの良い職場では、社員1人ひとりが自分の考えや主張を発信しやすくなります。しかし、相手や場所を問わず意見や愚痴を発言してよいわけではありません。
社員1人ひとりが自分の役割を理解し、企業が定めた規則や行動方針に基づいてコミュニケーションを取ることが求められます。
そのため、フラットな上下関係を標榜していても、上司と部下の関係を崩してよいわけではありません。友達のような感覚で接するのではなく、マナーや立場を配慮したコミュニケーションが必要です。
誰にとっても「良い環境」だとは限らない
風通しが良いという言葉は、意見の言いやすさや話を聞いてくれる環境をイメージされがちです。しかし、あくまで社員1人ひとりがコミュニケーションを取りやすいことを指す言葉であり、自分にだけ風通しが良い職場というのはありません。
自分の意見を相手に聞いてもらいやすい一方で、相手も自分に対して意見を言いやすい環境でもあります。
また、ポジティブな話だけでなく、ネガティブな話もしやすいことが風通しの良い職場の条件です。そのため、厳しい言葉が行き交うコミュニケーションを望まない場合、風通しの良い職場が向かない可能性もあります。
風通しが良い=仲良くなることではない
風通しが良いという言葉から、社員同士の連携を深めて仲を良くすることだと思われがちです。しかし、風通しの良い職場の目的は、社員同士の仲を良くすることではありません。
あくまで、社員が自身のポテンシャル以上の力を発揮することが目的です。そのために、社員1人ひとりが意見を言いやすい環境を構築し、コミュニケーションを活発化させます。
風通しの良い職場の特徴
風通しの良い職場には、いくつかの特徴があります。具体的な特徴とそれぞれの詳細は、以下の通りです。
コミュニケーションが活発に行われている
風通しの良い職場は、社員同士が意見を交換し合える環境が整っている状態です。そのため、コミュニケーションが活発に行われる傾向にあります。
円滑なコミュニケーションが実現できると、さまざまな効果があります。たとえば、課題や問題に迅速に対応できたり、精度の高い情報共有が行えたりするなどです。また、社員同士の信頼関係も良好になりやすいため、心理的安全性の高い環境を構築しやすくなります。
上司と部下の関係がフラットである
社員の意見がオープンに受け入れられる環境が整っていると、考えやアイデアを発信しやすくなります。そして、風通しの良い職場では、風土的に役職や立場などにとらわれにくいです。そのため、階層の垣根が低くなり、上司と部下の関係がフラットになります。
また、規定やマナーを守ることで、単に人間関係的な距離が近いだけでなく、心理的安全性が担保された環境になります。社員が自身の考えを積極的に表現できるだけでなく、組織全体の創造性も向上させることが可能です。
定期的なフィードバックを実施している
風通しの良い職場は、社員に対する指摘や評価も行いやすく、そのためフィードバックも定期的に実施される傾向にあります。
成長や業績について定期的に評価されることで、社員は自身の現状を把握し、適切な目標を設定しやすくなります。
また、風通しの良い職場はポジティブな意見だけでなく、ネガティブな意見も伝えやすいです。そのため、フィードバックが具体的かつ建設的になりやすく、モチベーション向上とスキルアップにつながります。
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会社の方針やルールに透明性がある
経営陣が意思決定のプロセスやマネジメントについて情報公開することで、会社の方針やルールに関する透明性が高まります。社員が取るべき行動を理解しやすくなる状態は、風通しの良い職場の特徴の一つです。
いわゆる暗黙の了解に縛られたり、取ってはいけない行動を考慮したりする必要がありません。そのため、余計なことにリソースを割く必要がなくなり、働きやすさが向上します。また、自分のやるべきことが明確になると、業務に対する責任感を持ちやすくなります。
社員同士の交流が促進されている
風通しの良い職場は、自分が思ったことや意見を主張しやすい環境です。また、上司と部下の関係がフラットな傾向もあります。そのため、社員同士の交流が促進されます。
業務に関する議論や意見のやりとりが活発に行われるほか、反対意見や異論を主張できるため、建設的な内容にすることが可能です。
また、風通しの良い職場では、交流イベントやチームビルディング活動も積極的に実施されます。交流の機会の多さは、職場の雰囲気を良くし、仕事の効率の向上も期待できます。
風通しの良い職場のメリット
風通しの良い職場を実現できると、さまざまなメリットを得ることが可能です。ここからは、具体的なメリットとそれぞれの詳細を解説します。
業務の効率が上がる
風通しの良い職場は、意見交換がしやすい環境です。そのため、仕事に関する認識の齟齬が減り、問題が発生しても迅速に解決できます。
また、会社の目標や方針が共有されているため、自分たちが行うべきことが明確になります。結果的に、高いモチベーションを保ちながら業務に取り組むことが可能です。
これらの要因から、業務が停滞する事態が減少し、業務の効率が上がります。また、社員1人ひとりの意見が尊重される環境は、職場全体の生産性向上も期待できます。
離職率の低下につながる
職場の環境は、社員の満足度やエンゲージメントに大きな影響を及ぼす要因です。風通しの良い職場は、働きやすいと感じる社員が多く、その結果、長期的に働きたいと考える社員も増えます。その結果、風通しの良い職場の構築が離職率の低下につながります。
また、社員1人ひとりが意見を伝えやすい職場では、成長しているという実感が得やすいです。モチベーションを高い水準に保ちやすくなり、離職率が低下します。
離職率が低下すると企業にとっても良い影響があります。たとえば、人材の確保や育成のコストを削減することが可能です。
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問題やトラブルを早急に解決できる
風通しの良い職場は、ポジティブな意見だけでなく、ネガティブな意見も出しやすい環境です。心理的な安全性が保証されていると、何か問題が発生しても抱え込まず、周りの人に伝えやすくなります。
結果的に、問題が大きくなる前に解消を目指せるため、損失や損害の発生を抑えることが可能です。
また、意見を自由に出し合える環境では、効果的な解決策を素早く見つけることが期待できます。課題の発見と改善のサイクルが素早く繰り返されることで、組織としての成長が早くなるメリットもあります。
風通しの良い職場のデメリット
風通しの良い職場には、デメリットもあるため注意が必要です。以下は、注意するべきデメリットとそれぞれの詳細です。
社員によっては居心地が悪くなる
風通しの良い職場にはさまざまなメリットがありますが、全ての社員にとって居心地が良いとは限りません。特に、コミュニケーションが活発に行われる状況は人を選びます。
個人のスペースで活動することや、静かな環境を好む社員にとっては、居心地が悪くなる可能性があります。
モチベーションの維持や離職の防止などの観点から、企業が適切に対策を講じることが大切です。たとえば、多様な働き方ができるように制度を整えるなどです。
職場の緊張感が失われやすい
上下関係がフラットになりやすい風通しの良い職場環境では、人間関係にメリハリが失われやすくなります。リラックスした雰囲気を作り出すことに役立つ側面もありますが、緊張感が失われやすいという面もあります。
適度な緊張感がない状態では、業務への集中力や取り組み方に悪影響が出かねません。その結果、業務効率や生産性が落ちてしまう可能性もあります。
あくまでビジネスにおける人間関係であることを意識し、適切にコミュニケーションを取ることが重要です。
風通しの良い職場をつくる8つの方法
風通しの良い職場をつくる方法はいくつかあります。ここからは、8つの方法とそれぞれの詳細を解説します。
1.フリーアドレス制を導入する
フリーアドレス制とは、社員ごとに席を固定せず、空いている席を自由に選んで仕事ができる仕組みです。フリーアドレス制を導入すると、社員同士の交流が促進され、社内の風通しが良くなることが期待されます。
また、オープンなコミュニケーションが増えることで、スムーズな情報共有も実現されます。新規のプロジェクトやチームを組む際に、メンバー同士の面識がある状態で始めやすいことも利点です。
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2.社内アンケートを実施する
現状の職場を把握し、目標とする風通しの良い職場までの道程を決めることが効果的です。そして、現状の職場を把握するためには、定期的に社内アンケートを実施することが推奨されます。
社員に自身が感じている問題点や不満を書いてもらい、改善点を洗い出しましょう。また、改善点に優先順位を付けて、適切な順番で問題点を解決すると効果的です。
なお、アンケートの結果はオープンにし、施策の策定に役立てていることをアピールしましょう。社員視点でアンケートに答えた意味が分かると、納得感や信頼感を得やすくなります。
3.積極的に挨拶する
挨拶には、相手に心を開いていることや存在を認めていることを示す効果があります。そのため、積極的に挨拶をすることを促しましょう。挨拶はコミュニケーションの起点にもなりやすく、社員同士の交流を促すことが可能です。
また、挨拶は簡単な行為ですが、信頼関係の構築にも役立ちます。リーダーや上司が率先して挨拶し、職場全体の雰囲気を良くすることが推奨されます。
4.社内イベントを実施する
社員同士の交流を深める機会を提供することも、風通しの良い職場をつくるために重要な施策です。具体的には、社内イベントを定期的に実施することが効果的です。
イベントは、職場以外のシチュエーションでのコミュニケーションを促進します。そのため、社員同士の信頼関係の構築や、チームの一体感を高めるのに役立ちます。
なお、イベントの内容は多岐にわたるため、社員の意見を反映し、参加意欲を削がないことが大切です。
5.雑談しやすい場所を設ける
オフィス内に雑談しやすい場所を設けることで、業務とは関係のないコミュニケーションを促すことが可能です。たとえば、コーヒーコーナーを設けたり、休憩スペースを充実させたりすることが考えられます。
リラックスした環境での会話は、業務に関するアイデアの交換や、問題の解決方法の模索などに役立ちます。結果的に、風通しの良い職場をつくることにつながります。
6.オープンドアポリシーを導入する
オープンドアポリシーとは、上司や経営陣に対する相談や意見を自由にできる環境を構築する考えです。そして、オープンドアポリシーを導入することは、職場の風通しを良くすることにつながります。
また、オープンドアポリシーは組織の透明性を高め、信頼関係を強化するのにも役立ちます。しかし、重要性の低い相談や雑談をしてしまうと時間の無駄になりかねないため、注意が必要です。
7.透明性のあるフィードバックを心がける
フィードバックはただ実施するだけでは良い効果が期待できません。具体的かつ建設的なフィードバックを提供することが重要です。
また、その結果に至った理由や過程も併せて説明することで、透明性が高まります。透明性のあるフィードバックは、社員が自分の業務に関する評価を理解するのに役立ちます。
公正な評価が行われていると社員が感じると、モチベーションの向上や成長を促すことが可能です。
8.健康とウェルビーイングをサポートする
風通しの良い職場環境を実現するためには、社員の健康やウェルビーイングが良好な状態で保たれていることが重要です。
そのため、社員個人に一任するのではなく、企業が健康とウェルビーイングをサポートすることが推奨されます。
たとえば、健康管理プログラムやメンタルヘルスサポートを提供すると効果的です。これらの施策により、社員のストレスが軽減し、パフォーマンスが向上することが期待できます。
まとめ
社員にとって働きやすいと感じる職場を構築することは、業務効率の向上や離職率の低下などさまざまなメリットにつながります。このような良い効果をもたらす要因は、社員のエンゲージメントが上がるためです。
そのため、風通しの良い職場以外にも、社員エンゲージメントを高める施策を実施することが推奨されます。その一環として、社員エンゲージメントに関する専用システムの導入が挙げられます。
タレントパレットを用いて、社員のエンゲージメントを可視化すれば、さまざまな状況に対処することが可能です。たとえば、離職する可能性を、スコアや社員の発言に応じてアラートしてくれます。
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