ウェルビーイングとは?会社で取り組める事例、概要やメリットを紹介


ウェルビーイングとは?会社で取り組める事例、概要やメリットを紹介

ウェルビーイング(Well-being)とは、社員が心身ともに健康でありながら、社会的にも満たされている状態です。近年、ウェルビーイングの考え方を取り入れる会社が増えてきました。本記事では、そもそもウェルビーイングとは何か示した上で、取り入れるメリットや、実際に取り組んでいる会社の成功事例などを解説します。

ウェルビーイング経営の概要

そもそもウェルビーイング経営とは、どのようなものでしょうか。ここでは、概要を解説します。

  

ウェルビーイング経営とは

ウェルビーイング経営とは、社員をはじめとする会社に関わるすべての人の幸福を目指す経営手法です。ウェルビーイング(Well-being)という言葉は、「Well(よい)」と「Being(状態)」を組み合わせて作られました。心身の両方が満たされている状態を表す概念です。


また、世界保健機関(WHO)憲章の前文においては、ウェルビーイングについて以下の通り言及されています。


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Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.

健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。

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ウェルビーイング経営に取り組む上では、肉体的・精神的・社会的な健康はもちろん、キャリア・人間関係・給与といったあらゆる側面において、幸福な状態を目指さなければなりません。


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※引用:公益社団法人日本WHO協会|世界保健機関(WHO)憲章とは


日本のウェルビーイングの現状

国連のThe Sustainable Development Solutions Network (SDSN)は、米国ギャラップ社のデータを基に「世界幸福度リポート2020(World Happiness Report 2020)」をまとめています。各国における調査をベースに、それぞれの人の幸福度に対する自己評価の平均値を算出して、データを分析した結果です。


これによると、2020年度の日本の幸福度は153カ国・地域中62位でした。2018年は54位、2019年は58位だったため、過去と比較すると順位が下がっている状況です。この調査の上位は、主に北欧諸国が占めています。


なお、日本の平均寿命は世界1位です。一方、1人当たりのGDPは、経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国中19位となっています。日本人は自己肯定感が低い人が多く、現状ではウェルビーイングを感じにくい傾向があるといえます。


※参考:The Sustainable Development Solutions Network|World Happiness Report 2020


ウェルビーイングにおける2つの要素

ウェルビーイングには、2つの要素があります。具体的には、心理学的な視点とビジネス的な視点です。それぞれは5つの要素で構成されており、要素を多く満たしているほど幸福度も高い状態だといえます。それぞれ具体的には、どのような内容なのでしょうか。以下で詳しく解説します。


1.PERMAモデル

PERMAモデルは、「ポジティブ心理学」の創始者として知られる、マーティン・セリグマン博士が提唱した考え方です。5つの要素の頭文字を取り、PERMAモデルと呼ばれています。


ポジティブ感情(Positive Emotion)

「ポジティブ感情(Positive Emotion)」は、PERMAのPにあたります。喜び、感謝、愛、楽しみ、希望といったポジティブな心理状態です。ポジティブな感情や、それにつながる経験を増やすことが大切だとされています。なお、充足感や自由を感じた場合も、ポジティブ感情を得ることが可能です。


物事に没頭する(Engagement)

「物事に没頭する(Engagement)」は、PERMAのEです。好きなことに打ち込んでいる間は時間がすぐに過ぎ、充実感が得られるという人も多いでしょう。よって、仕事も夢中で取り組めば、効率や生産性の向上を期待できるとされています。加えてウェルビーイングの実現も可能です。


他者との関係(Relationship)

「他者との関係(Relationship)」は、PERMAのRを表しています。他者とのつながりは、エンゲージメントに大きく影響する要素です。特に、パートナー、家族、上司、同僚などと支え合っていると感じられる場面が多ければ、幸福度はより高まるとされています。


人生の意義や意味を自覚する(Meaning)

「人生の意義や意味を自覚する(Meaning)」は、PERMAのMに該当します。人生の目的や意義を見出せば、幸福な状態を維持できるでしょう。仕事においては、日々の人間関係の難しさや業務量の多さなどに悩む場合も少なくありません。しかし、人生全体の意義を自覚できているなら、肯定的な感情が生まれやすくなります。


達成感(Accomplishment)

「達成感(Accomplishment)」は、PERMAのAです。目標を達成すると、人は幸福な状態になると考えられています。達成しようとする姿勢そのものに活力を見出せるため、たとえうまくいかなくてもさらなる挑戦が可能です。仕事においても明確な目標を立てれば、資格取得やスキルの習得などに積極的に取り組めるでしょう。それらの目標を達成できた場合、充実感や幸福感を得られます。


2.ギャラップ社のモデル

ギャラップ社は、アメリカで世論調査やコンサルティングのサービスを提供している会社です。ビジネスの視点でウェルビーイングを捉えているため、その具体的な要素について以下で解説します。


キャリアウェルビーイング(Career well-being)

「キャリアウェルビーイング(Career well-being)」とは、キャリアの幸福度です。ここでのキャリアには仕事だけでなく、子育て、趣味、ボランティア活動といった私生活の取り組みも含まれています。ポイントは、仕事とプライベートの両方で幸福を得られるよう工夫することです。


ソーシャルウェルビーイング(Social Wellbeing)

「ソーシャルウェルビーイング(Social Wellbeing)」とは、人間関係の幸福度です。交友関係の広さや量だけでなく、深さも重要なカギとなります。職場の上司、同僚、部下、経営陣、家族、友人などとの間に深い愛情や信頼を築けるかどうかが重要です。


ファイナンシャルウェルビーイング(Financial Wellbeing)

「ファイナンシャルウェルビーイング(Financial Wellbeing)」とは、経済的な幸福度です。納得できるレベルの報酬を得られているかだけでなく、生活を安定させられる程度の資産を確保できているかも判断基準になります。金銭に関する懸念は精神面の不安につながるため、経済的な余裕を持つことが大切です。


フィジカルウェルビーイング(Physical Wellbeing)

「フィジカルウェルビーイング(Physical Wellbeing)」とは、身体的・精神的な幸福度です。身体が健康であっても、強いストレスを感じていれば幸福な状態とはいえないため、肉体と精神の両面の幸福が重視されています。その人が望む仕事や生活を実現できていることが大切です。心身が幸福であれば、仕事に対するやる気もアップするでしょう。


コミュニティウェルビーイング(Community Wellbeing)

「コミュニティウェルビーイング(Community Wellbeing)」とは、地域社会での幸福度です。人は家族、友人、仕事のチーム、部署だけでなく、職場全体や居住地などの地域社会における、より広いコミュニティにも属しています。生活や仕事に関わるコミュニティでの親密さは、ウェルビーイングを実現するための重要なポイントです。


会社にウェルビーイングが求められている理由

なぜ会社にウェルビーイングが求められているのでしょうか。ここでは、その理由を解説します。


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働き方改革によるワーク・ライフ・バランスの推進

2019年4月に働き方改革が施行されて以来、世の中の働き方は大きく変化しました。たとえば、フレックスタイム制の導入、残業時間の上限規制、雇用形態に捉われない公正な待遇の確保などです。そのような状況下で、労働環境や待遇の改善に加えて、社員のウェルビーイングを重視する考え方が普及しています。


人材不足による生産性の低下

内閣府が公表した「令和5年版高齢社会白書」によれば、令和4年時点での生産年齢人口は7,421万人でした。また、生産年齢人口は令和14年には6,971万人、令和52年には4,535万人になるとの推計も行われています。生産年齢人口が減少していくなかでは、各会社の労働力不足と生産性の向上が大きな課題です。


社員1人ひとりが能力を十分に発揮し、長く活躍できる環境を整えなければなりません。そのためには、社員の心身の健康とともに、社会的に満たされた状態を実現する必要があります。


※参考:内閣府|令和5年版高齢社会白書(全体版)


経済産業省が推進する「健康経営」

健康経営とは、社員の健康管理を経営の目線から捉えて戦略的に実践することです。経済産業省が推進しています。会社として健康経営に取り組めば、社員の健康を守れるだけでなく、世の中からのイメージアップや、新規顧客の獲得率の上昇も期待できるでしょう。また、採用力や定着率も向上する可能性があります。


※参考:経済産業省|健康経営


多様化する社会への対応

日本の社会は大きく変化しており、働く人のニーズも多様化しています。具体的には、共働き世帯の増加、単身世帯の増加、家事・育児・介護と仕事の両立などです。さらに、労働人口の減少の問題もあるため、国籍・人種・性別を問わない人材の受け入れも必要になっています。


たとえば、高齢者の再雇用、育休・産休取得後の復帰、外国人労働者の採用の推進などが重要です。社員それぞれの多様な考えや働き方に対する意識を考慮し、本来の能力を発揮できる環境を積極的に整えなければなりません。


コロナ禍・テレワークなどによるメンタルヘルスの変化

新型コロナウイルス感染症の流行がきっかけとなり、テレワークが定着した会社も多いようです。場所を問わず働けるようになった一方で、コミュニケーションの不足や、物理的な問題などの課題も浮き彫りになりました。


また、仕事の相談ができないことでメンタルの不調が現れる社員も発生しています。そのような状況では、労働環境の改善、定期的なサポート、ストレスチェックといった対策が必要です。


会社でウェルビーイングを取り入れると得られるメリット

会社でウェルビーイングを取り入れると、さまざまなメリットを得られるでしょう。以下で詳しく解説します。


生産性アップにつながる

ウェルビーイングを取り入れれば、社員1人ひとりにとって働きやすい状況を実現しやすく、仕事の生産性の向上も期待できます。心身ともに健康な状態になり、個人や組織全体のパフォーマンスも高まるでしょう。結果として、会社の売上や利益率がアップする可能性があります。


コスト削減につながる

社員が心身ともに健康な状態を維持できると、医療費も削減可能です。社員がケガや病気をすれば、治療のために医療費がかかります。労災が発生した場合は、会社も費用を負担しなければなりません。ウェルビーイングの取り組みにより社員の健康を保てれば、社員も会社も医療費の負担を軽減できます。


離職率の低下・新たな人材の確保につながる

ウェルビーイングの取り組みは、会社に対する社員の帰属意識や貢献意欲も高める効果を期待できます。それにより、離職の防止が可能です。離職率が低下すれば会社のイメージや価値が上がるため、採用活動で優秀な人材を確保しやすくなります。採用コストの削減やノウハウの流出の防止も期待できるでしょう。


ウェルビーイング経営の会社事例

ウェルビーイング経営に成功している会社は多く存在するため、以下で具体的な事例を解説します。


大新技研株式会社

大新技研株式会社は、エンジニアリング事業、ファクトリー・オートメーションシステム事業、医療ソリューション事業において、付加価値のあるシステムを提供している会社です。健康経営を重視し、半年に1回の頻度で、タレントパレットのヘルスチェック機能を活用しています。


注目すべき点は、すべての社員の健康状態を確認してデータを集めるだけでなく、その結果をもとに新たな取り組みを行っているところです。たとえば、社員の運動不足の課題に対してウォーキングイベントを実施したり、食生活の課題に対して健康教室を開催したりしています。


千寿製薬株式会社

千寿製薬株式会社は、医療用医薬品、一般用医薬品、動物用医薬品を扱っている製薬メーカーです。社員のヘルスケアを重視し、タレントマネジメントシステムのストレスチェック機能を活用しています。操作性が高く、受検から産業医の連携まで完結できるようになりました。


同社は、社員と会社の立場は対等であり、会社は社員の働きやすさや働きがいを高める必要があると考えています。そのために人事制度の見直しや働き方改革に取り組み、社員と会社がともに高め合う文化の醸成を目指しているそうです。


株式会社プレナス

株式会社プレナスは、1976年の設立以来、ほっともっと、やよい軒、MKレストランを全国に展開している会社です。人材管理や人手不足を課題として挙げており、社員のエンゲージメントの向上を目指しています。たとえば、評価結果が報酬に直接反映される仕組みを作り、社員の納得感を得られるようにしました。


また、タレントマネジメントシステムのアンケート機能で、毎月パルスサーベイを実施しています。社員のコンディションをチェックし、問題があればヒアリングを経て、配置換えなどの具体的な対策につなげられるようにしました。情報の蓄積が可能なため、長い目でフォローできるようになっています。


株式会社オリエントコーポレーション

株式会社オリエントコーポレーションは、個品割賦、オートローン、ショッピングクレジットをはじめとする、さまざまな決済商品やサービスをワンストップで提供している会社です。エンゲージメントの向上を重要な課題の1つと捉え、幅広い取り組みを展開しています。


たとえば、全社を横断して各部門の責任者を集め、アフターコロナ体制を構築するためのプロジェクトチームを結成しました。また、テレワークのためにパソコンを配布し、本社部門のテレワーク率を50%にするという目標を掲げています。さらに、在宅での勤務が難しい審査部門については、月ごとの変形労働時間制を適用して、働きやすさを確保する取り組みを開始しました。


セガサミーホールディングス株式会社

セガサミーホールディングス株式会社は、エンタテインメントコンテンツ事業、遊技機事業、リゾート事業に取り組む会社です。エンゲージメントを向上させるための対策として、個人評価、組織評価、日々のコミュニケーションなどに力を入れています。


また、タレントパレットのテキストマイニングを活用し、不安要素がある社員を抽出したり、他の新入社員とは異なる特徴を持つ社員がいないか、チェックしたりする取り組みを始めました。タレントパレットの動物占いの内容も、コミュニケーションのきっかけになっています。


会社でウェルビーイング経営を成功させる方法

会社でウェルビーイング経営を成功させるには、どうすればよいのでしょうか。ここでは、具体的な方法を解説します。


経営層、管理職の意識改革

ウェルビーイング経営の成功のためには、経営層や管理職の意識改革から取り組む必要があります。社員の声を集めて改革しようとしても、経営層や管理職から否定されると新たな取り組みを展開できないからです。具体的には、メンタルケアや教育研修などを実施すると効果を期待できます。


労働環境の整備

労働時間を正しく記録し、残業が多い部署や人について改善を試みましょう。具体的には、幅広い雇用形態や働き方に対応し、柔軟に働けるようにする必要があります。テレワークの導入だけでなく、仕切られたボックス型の席やカウンター席を設けて、オフィス内の働きやすさを見直すことも大切です。それにより、業務効率化を期待できます。また、有給休暇の取得に対してインセンティブを与える制度を設け、社員の前で表彰する方法も効果的です。


福利厚生の充実

福利厚生を充実させれば、社員のリフレッシュや幸福度の向上などにつながります。たとえば、社内スポーツクラブの設置、スポーツジムの優待券、宿泊施設の優待券、社員食堂の設置・メニューの充実などです。社員のニーズを考慮し、必要とされている福利厚生を用意しましょう。


社員の意見の可視化

ウェルビーイング経営においては、社員の意見を正確に把握しなければなりません。そのために、アンケート調査を実施して得られた社員の意見を可視化しましょう。具体的にはデータを数値化し、実際の効果や課題が分かるようにする必要があります。また、過去のデータと比較すると、状況の変化についても把握が容易です。


コミュニケーションツールの活用

社内のコミュニケーションが活発になれば、業務効率の向上や人間関係の悩み解消などにつながります。たとえば、職場の休憩スペースに飲料や菓子などを置き、気軽に雑談できる環境を作る対策も効果的です。さらに、社内で利用できるチャットツールや、SNSなどのコミュニケーションツールを導入すると、場所や時間を問わず社員同士で交流しやすくなります。


まとめ

ウェルビーイング経営は、社員の幸福度を高めてビジネスの成功を目指す経営手法です。変化の激しい昨今ではさまざまな課題が生じており、それらに対応する方法としても重視されています。ウェルビーイング経営を実現するには、社員の思考を正確に捉えて必要な対策を実行していく必要があるでしょう。


タレントパレットは、社員のスキルや能力を把握して人事業務の効率化を実現できるツールです。大手企業をはじめとする多くの会社に導入されており、コンサルティングの知見も有しています。ウェルビーイング経営を実現する方法についても熟知しているため、ぜひ活用を検討してください。


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