こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
「無断欠勤の社員を退職させたい」「どのような流れで退職させたらいいのか分からない」といったお悩みをお持ちではないでしょうか。
無断欠勤は自社に大きな影響を与えるため、続くようであれば退職を勧めることも一つの方法です。しかし、無断欠勤を理由とした退職勧奨は簡単には行なえません。対応を誤ると、トラブルに発展する可能性があります。そこで本記事では、無断欠勤中の社員を退職させる方法や、手続きを解説します。
自社を守りながら、無断欠勤をする社員に適切に対応する方法を紹介するので、ぜひ最後までお読みください。
無断欠勤の社員に退職を促す前に実行すべき対応
無断欠勤の社員を退職させる前に、以下の対応を取りましょう。
- 安否確認する
- 無断欠勤の理由を聞いて指導・教育する
- 無断欠勤の理由に応じて処分を行う
まずは、電話やメールなどで無断欠勤した本人の無事を確認します。事故や急病で無断欠勤となったケースは、連絡が取れないことがあります。何度連絡しても社員の安否が確認できない場合は、社員の家族に聞いてみても良いでしょう。
社員と連絡が取れ、無事が確認できたら、無断欠勤の理由を尋ねます。単なる寝坊や出勤日忘れなどの場合は、再発防止のために指導・教育しましょう。注意したにも関わらず無断欠勤を繰り返すなら、処分を検討します。処分の種類として、顛末(てんまつ)書や減給などがあります。無断欠勤の理由や頻度などを総合的に考慮して、適切な処分を下しましょう。
それでも改善が見られない場合に、退職勧奨を行います。手順を踏まずにいきなり解雇すると、不当だと訴えられる可能性があるため、注意が必要です。
無断欠勤者に退職してもらう3つの方法
無断欠勤の社員に退職してもらう方法は、以下の3つです。
- 退職勧奨する
- 自然退職の手続きを行う
- 懲戒解雇の手続きを行う
社員とのトラブルに発展しないポイントも解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
退職勧奨する
退職勧奨とは、社員に自発的に辞めてもらうように促す行為です。企業と社員、双方の合意に基づいて進めるため、解雇とは異なります。話し合いを行い、お互いが納得した上で、退職してもらいます。
社員が退職を拒んだ場合は、強要してはいけません。退職を強要したら、違法になる可能性があるからです。退職は、あくまでも社員の自由意思ということを留意しておきましょう。
自然退職の手続きを行う
自然退職は、就業規則や雇用契約書で定められている条件を満たしている場合に、労働契約を終了することです。自然退職は、社員や企業の意思表示の有無に関わらず、手続きを進められます。
例えば、理由が明確ではない無断欠勤が1ヶ月以上続いている場合は、退職の意思表示があると判断することがあります。ただし、自然退職として処理するには、ルールを就業規則に明記しておかないといけません。また、最後まで社員と連絡が取れなかったとしても、本人の意思を確認しようと努める必要があります。
自然退職の場合、退職届や退職通知書は不要です。しかし、社員とのトラブルを避けるために、退職通知書を送付することが望ましいです。
懲戒解雇の手続きを行う
懲戒解雇の場合は、解雇権濫用法理に注意が必要です。解雇権濫用法理では、企業が社員を解雇するためには、合理的な理由が必要と定められています。さらに、解雇が社会一般的に相当な処分だと認められなければ、権利濫用として解雇が無効になるので要注意です。
以下に該当する場合は、不当解雇として訴えられる可能性があります。
- 本人や家族に連絡を取っていない
- 無断欠勤の理由がハラスメントや精神疾患などである
- 就業規則に明記されていない
懲戒解雇は、社員の再就職などにも影響を与えるため、慎重に行う必要があります。無断欠勤を理由とした解雇について詳しく知りたい方は、別記事「無断欠勤解雇」をあわせてご確認ください。
参照元:厚生労働省|労働契約の終了に関するルール
無断欠勤による退職手続き6ステップ
無断欠勤による退職の手続きは、以下の6ステップで行います。
- 就業規則を確認する
- 退職とする旨を通告する
- 社会保険の脱退手続きをする
- 離職票を発行する
- 貸与品を回収する
- 就業規則を確認する
正しい手順を踏むと、退職手続きがスムーズに行えます。人事労務担当者は、ぜひ参考にしてみてください。
就業規則を確認する
自然退職として処理しても問題ないか、就業規則を確認して判断しましょう。自然退職に該当する条件は、主に以下のとおりです。
- 無断欠勤
- 契約期間の満了
- 定年
- 休職期間の満了
- 本人の死亡等
就業規則に無断欠勤による退職の条件が明記されていないなら、変更を検討しましょう。就業規則に明記されていないのにも関わらず、退職処理を進めると、不当解雇に当たる可能性があります。
退職とする旨を通告する
自然退職の場合、基本的に退職届や退職通知書は不要です。しかし、トラブル防止のために退職通知書を送付することが望ましいです。退職に関する書類は、内容証明郵便で送りましょう。日時や内容を記録できるため、万が一裁判などに発展した際の証拠として有効になるからです。
また、社員が行方不明などで自宅にいない場合は、内容証明郵便を送るだけでなく、公示送達も検討しましょう。公示送達すると、相手が行方不明で意思表示が確認できなかったことを、法的に証明できます。
本人と連絡が取れていなくても、企業が意思表示したことが認められます。内容証明郵便や公示送達の送付後は、証拠として控えを保管しておきましょう。
社会保険の脱退手続きをする
企業が加入している社会保険には、健康保険・厚生年金保険があります。企業は、退職日の翌日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を所轄の年金事務所へ提出しなければなりません。
退職が確定したら、本人だけでなく被扶養者の保険証も回収する必要があります。被扶養者とは、本人の配偶者や子どもなどが該当します。無断欠勤中で本人と連絡が取れない、保険証を紛失したなどで回収できない場合は、協会けんぽに申告しましょう。
離職票を発行する
企業は、退職日の翌日から10日以内に、ハローワークへ離職証明書を提出し、離職票を発行してもらう必要があります。離職票は、社員が退職後に失業保険を受け取るために必要な書類です。たとえ、無断欠勤で退職する場合でも、失業保険の受給資格があるため、忘れずに手続きしましょう。
なお、事故や病気などで、社員がすぐに失業保険を受け取れないケースも考えられます。その場合は、本人が管轄のハローワークに必要書類を提出すれば、受け取り期間が最大3年間延長できます。
期間は、退職日から30日経過した翌日から1ヵ月以内です。社員が失業保険を利用できるように、企業は早急に対応することが重要です。
貸与品を回収する
退職者に貸与している備品などを回収します。企業によって異なりますが、代表的な備品は、以下のとおりです。
- パソコン・スマートフォン
- 社員証
- セキュリティーカード
- 制服
- 事務用品等
貸与品の返却拒否は、業務上横領罪にあたる可能性があります。企業は、きちんと返却するように促しましょう。退職者と連絡がつかない、あるいは備品が返却されない場合は、内容証明郵便を送って意思表示したことを証明するのも一つの手段です。
社員の私物を返却する
退職者の私物がデスクやロッカーなどに残っている場合は、引き取りに来てもらう、あるいは郵送して返却します。無断欠勤の場合は、最後まで連絡が取れない場合もあるでしょう。しかし、退職者の私物を勝手に処分してはいけません。
無断で処分すると、民法上の不法行為に当たり、退職者から損害賠償を請求される可能性があるからです。郵送する際は、事前に「◯月◯日までに引き取りが完了しない場合は、自宅に郵送する」などと通知しましょう。
無断欠勤する社員を退職させる際の3つの注意点
無断欠勤を理由に社員を退職させる際は、以下の3点に注意しましょう。
- 退職させる前に社員に連絡する
- 労働分の賃金を全額支払う
- 社員の有給を勝手に消化しない
無断欠勤は基本的に社員に過失がありますが、慎重に行わないとトラブルに発展する可能性があります。スムーズに退職してもらうためにも、注意事項を確認しておきましょう。
退職させる前に社員に連絡する
退職させる際は、事前に該当社員に告知します。無断欠勤は契約違反ですが、いきなり退職させるのは難しいのが現状です。退職はあくまで最終手段と考え、企業は無断欠勤をしている社員と連絡を取るために努めましょう。
無断欠勤の原因が分からないのに一方的に退職手続きを進めると、社員が復帰を申し出たときにトラブルになるからです。なお、無断欠勤の理由によっては、退職勧奨が適切ではないケースがあります。
- 事故・病気
- ハラスメント・いじめ
- 精神疾患
上記が理由の場合は、企業から退職を促せません。一方的に退職処理を進めると、不当解雇などで訴えられた際に不利になるため、慎重に対応しましょう。退職を促す前に行うべきことについて詳しく知りたい方は、別記事「無断欠勤」をあわせてご確認ください。
労働分の賃金を全額支払う
無断欠勤で退職する場合でも、在籍時に働いた分の賃金は支払う必要があります。例えば、入社3日目から無断欠勤した場合は、入社後2日間の賃金を支払います。ただし、就業規則に記載があれば、賃金を減給可能です。減給の金額は、以下の条件に基づいて決定します。
- 月給の10分の1以下まで
- 平均賃金の1日分の半額以下まで
また、退職金に関しては支給義務がないため、就業規則に従うのが一般的です。無断欠勤を理由とした退職金の減額や不支給は、就業規則に基づいて実行しましょう。
社員の有給を勝手に消化しない
企業の判断では、社員が無断欠勤した日を有給休暇に変更できません。有給休暇の付与には、本人による申請が必要だからです。無断欠勤によって迷惑を被ったため、有給休暇を早く消化して退職してもらいたいと考える方もいるでしょう。
しかし、企業の判断で消化できないため、社員に申請してもらう必要があります。企業は年に5日は有給休暇を消化してもらわないと、罰則を受けるので要注意です。
しかし、入社から半年位未満であったり、出勤率が80%未満であったりする場合は、対象外になる可能性もあります。労働基準法第39条で定められているので、十分に確認してから対応しましょう。
まとめ
無断欠勤での退職は、簡単に行えるものではありません。退職手続きを進める前に、無断欠勤者と連絡を取ろうとする姿勢が大切です。退職させる方法は複数あるので、無断欠勤の理由や状況に応じて、適切に選択しましょう。
万が一訴えられた場合に備えて、退職に関する書類は、控えを取っておくことがおすすめです。紙の書類はなくすリスクがあるので、データでも保存しておきましょう。
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