無断欠勤されても労働分の給料支払義務がある!5つの留意点と減給する際の注意点を解説


無断欠勤されても労働分の給料支払義務がある!5つの留意点と減給する際の注意点を解説

無断欠勤の社員に対して給料の支払い義務はあるのかと、疑問をお持ちの方もいるでしょう。無断欠勤の場合でも、労働分の給料は支払わなければなりません。本記事では、無断欠勤の給料の考え方について解説するので、ぜひ最後までお読みください。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。


「無断欠勤の社員の給料を支払いたくない」「ペナルティとして減給はできるのか」と、お考えの方もいるのではないでしょうか。


結論から言うと、無断欠勤した社員に対して、労働分の給料は全額支払う必要があります。支払いを拒否すると法律違反になり、企業が不利になるので要注意です。


そこで本記事では、無断欠勤の給料の考え方や支払う際のポイントを解説します。無断欠勤者に対して適切に給料を支払うための留意点をまとめているので、ぜひ最後までお読みください。


無断欠勤されても労働分の給料支払義務がある


無断欠勤が続いている場合でも、出勤日分の給料は満額支払わなければなりません。例えば、1ヶ月間のうち半分は労働したものの、残りは全て無断欠勤している場合は、前半の出勤日分の給料を支払います。


企業としては、無断欠勤の社員に給料を払いたくない気持ちはあるでしょう。しかし、労働分の給料を支払わないと、法律違反になります。給与未払いで訴えられ、万が一裁判等になった際は、企業側が不利になるため注意が必要です。


なお、無断欠勤分の給与に関しては「ノーワーク・ノーペイの原則」により、支払い義務はありません。「ノーワーク・ノーペイの原則」は、労働基準法24条に明記されています。労働者が働いていない場合は、使用者(企業)は賃金を支払う義務はないという、給与計算の基本原則です。人事労務担当者は、日頃から勤怠管理を徹底し、出勤・欠勤日をきちんと把握しておくことが大切です。


無断欠勤の給料に関する5つの留意点


無断欠勤の給料に関して押さえておきたいポイントは、以下の5つです。


  • 働いた分の給料は減額して支給できる
  • 支払い方法は企業が指定できる
  • 退職金は減額か無支給にできる
  • 企業の判断で有給休暇を消化できない
  • 支払日から2年間は給料をわたす義務がある


ここでは、無断欠勤した社員が退職することも想定して解説します。給料の支払い方法や金額を巡って、無断欠勤者とトラブルになるのを避けるために、ポイントを確認しておきましょう。


働いた分の給料は減額して支給できる


企業は、社員に対して労働分の給料を支払わなければなりません。しかし、就業規則にルールを記載していれば、減給できるケースがあります。減給できる金額は、法律で定められています。条件は以下の2つです。

  • 減給1回の金額が平均賃金1日分の半額を超えない
  • 減給総額が1賃金支払期の総額10分の1を超えない


平均賃金とは、社員に対して過去3ヵ月間に支払った総額を、期間の総日数で割った金額です。出勤日だけでなく、休日の日数も含めて計算します。3ヵ月(90日)の賃金総額が108万の場合、平均賃金は以下のように計算します。

108万円 ÷ 90日 = 12,000円

計算により、平均賃金は12,000円と求められます。つまり、1回に減給できる額の上限は、平均賃金12,000円の半額である6,000円です。

また、減給総額が1賃金支払期の総額の10分の1を超えてはなりません。1賃金支払期とは、減給対象の日が属する賃金の支払い期間です。賃金締切日が毎月20日なら、例えば1月21日〜2月20日が1賃金支払期です。1賃金支払期の総額が40万円なら、4万円までしか減給はできません。

ちなみに、懲戒処分として、無断欠勤をした社員を降格させ、結果として減給になるケースもあります。無断欠勤を理由とした減給について詳しく知りたい方は、別記事「無断欠勤ペナルティ」をあわせてご確認ください。

支払い方法は企業が指定できる


社員が無断欠勤した後、退職することになっても、企業は給料を支払います。支払い方法は、企業が選択可能です。社員には、支払い方法の選択権がありません。一般的には銀行振り込みで支払いますが、手渡しでも問題ありません。支払い方法を決定したら、該当社員に連絡しましょう。

退職する社員に制服や備品を支給しているなら、返却してもらいましょう。給料を手渡しするなら、同じタイミングで返却してもらうのがおすすめです。企業で支給しているものが返却されない場合、業務上横領罪に当たる可能性があります。郵送でも良い旨を伝え、返却を促しましょう。

退職金は減額か無支給にできる


無断欠勤した社員が退職する場合、退職金について検討しましょう。就業規則に明記しておくと、退職金を減額したり無支給にしたりできます。退職金については、法律で定められていません。企業は、退職金を支給するか、金額はいくらにするかなどを決定できます。社員とのトラブルを避けるためにも、退職金の規定を就業規則に明記しておきましょう。

退職金の金額や支払い方法を記載している部分に減額などのルールも明記されていないと、無断欠勤者に満額支払うことになります。法律で定められていない項目に関しては、就業規則に基づいて退職金を支払う必要があるためです。自社が不利益を被らないために、就業規則の見直しを定期的に行いましょう。

企業の判断で有給休暇を消化できない


無断欠勤した社員が退職する場合に、付与すべき有給休暇が残っているとしても、企業の判断では消化できません。有給休暇を付与するには、社員本人が申請する必要があります。


社員を早く辞めさせるべく、無断欠勤日に与えるべき日数の有給休暇を当てたいと考える方もいるでしょう。しかし、企業の判断で有給休暇を消化すると、社員の権利を侵害するだけでなく、違法行為に該当するので要注意です


また、社員から無断欠勤日を有給休暇にしたいと要望を受けても、承認しないようにしましょう。基本的に有給休暇は、本人が休む前日までに上長や人事労務担当者に申請する必要があるからです。


ただし、体調不良や緊急の場合などは、事後申請を受け入れている企業もあります。無断欠勤の場合、基本的には事後申請による消化の対象にはならないため、社員に説明しましょう。


支払日から2年間は給料をわたす義務がある


無断欠勤者が退職した後でも、支払日から2年間は給料をわたす義務があります。銀行振り込みなら即日支払えますが、手渡しの場合は社員がなかなか給料を受け取りに来ないこともあるでしょう。

社員が取りに来ないまま本来の給与支払い期限を過ぎても、給料をわたす義務はなくなりません。社員が取りに来たら、満額わたしましょう。なお、給料支払日から2年が経過しても社員が受け取りに来なければ、支払う必要はありません。

無断欠勤によって被害を受けたら損害賠償を請求できる可能性がある


無断欠勤が企業に甚大な被害を与えた場合は、損害賠償請求できる可能性があります。損害賠償は減給とは異なり、給料から天引きできないことを留意しておきましょう。


損害賠償を請求できるケースとして、以下が考えられます。


  • 企業の社会的信用を損なった
  • 莫大な売上金額が損失した


ただし、雇用契約書や就業規則に記載してあることが条件です。また、社員に損害賠償の対象になる旨を説明し、承認を得ていた場合に限ります。


損害賠償の請求が認められるためには、原因が社員の無断欠勤だと証明する必要があります。無断欠勤が直接的な原因であると、証明することが難しいのが現状です。裁判には費用と時間がかかります。損失額と裁判費用を考慮した上で、損害賠償を請求するかどうかを決定しましょう。


無断欠勤で給料を減らす際の2つの注意点


無断欠勤を理由に給料を減らす際は、以下の2点に注意が必要です。


  • 就業規則に記載しておく
  • 社員に説明しておく


無断欠勤は基本的に社員に非がありますが、減給は生活に影響を及ぼすため、慎重に対応することが重要です。 後々トラブルにならないよう、注意点はきちんと把握しておきましょう。


就業規則に記載しておく


無断欠勤における給料の減額について、就業規則に明記しておく必要があります。明記していない場合は、減額できません。給料の減額について記載する場合は、以下の条件を満たす必要があります。

  • 減給1回の金額が平均賃金1日分の半額を超えない
  • 減給総額が1賃金支払期の総額10分の1を超えない


就業規則に明記していないなら、内容の追加を検討しましょう。

社員に説明しておく


減給について、就業規則に明記されていることを社員に通知しましょう。人事労務担当者は、業務上就業規則を確認する機会は多いですが、目を通さない社員もいます。可能であれば、入社時のオリエンテーションなどで、無断欠勤をした際の給料について説明しておきましょう。

無断欠勤は、発生しないことが望ましいです。無断欠勤のリスクを、あらかじめ社員に周知しておくと、未然に防ぐ効果が期待できます。万が一社員とトラブルになった際も、事前に周知していれば、企業側が不利になるリスクを軽減できます。

無断欠勤者の給料を検討する前に企業が行うべきこと


企業は、無断欠勤者の給料支払いを考える前に、以下の5点を行いましょう。


  • 社員の安否を確認する
  • 社員の家族に連絡する
  • 自宅を訪問する
  • 就業規則を確認する
  • 内容証明書類を送付する


給与の減額は、あくまで最終手段です。「改善が見られない」「反省している様子がない」などの場合のみ、減給を検討しましょう。また、無断欠勤の理由が事故や病気など、やむを得ないケースもあります。ハラスメントやいじめが原因の場合は、企業に責任があるため、減給は避けた方が無難です。


手順を踏まずに、いきなり給料を減額すると、万が一訴えられた際に不利になる可能性があります。企業を守るためにも、適切な手順で対応することが大切です。無断欠勤で減額する前に行うべきことを詳しく知りたい方は、別記事「無断欠勤連絡こない」をご覧ください。


まとめ


無断欠勤をした場合でも、社員の労働分の給料は必ず支払わなければなりません。ただし、就業規則に記載があれば、減給は可能です。無断欠勤者の給料については、法律で定められていない部分も多く、就業規則に基づいて判断する場合が多いです。


無断欠勤した社員が退職する場合、給与の支払い方法は企業が選択できます。振り込みが一般的ですが、手渡しも可能です。また、企業判断で無断欠勤日を有給休暇にはできません。付与すべき有給休暇が残っていても、勝手に消化すると法律に違反してしまいます。


人事労務担当者は日頃から就業規則を確認し、すぐに対応できる環境を整備しておくことが大切です。しかし他の仕事に追われ、就業規則の確認や検討ができないと、お悩みの方もいるのではないでしょうか。


社員の給与管理には、タレントパレットの導入をご検討ください。タレントパレットには、労務管理システムが備わっており、無断欠勤者への給料計算を効率化できます。データで瞬時に確認できるので、スムーズに手続きできるでしょう。社員数が多い企業では、人事労務担当者の負担軽減が期待できるため、ぜひ導入を検討してみてください。