ターンアラウンドマネージャーとは?実務や関連する資格を解説


ターンアラウンドマネージャーとは?実務や関連する資格を解説

当記事ではターンアラウンドマネージャーの役割や求められるスキルや資格を紹介します。変化に富んだ時代に企業の健全経営を維持するために欠かせない人材の特徴を把握し、社内での育成や招へいを検討しましょう。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

当記事ではターンアラウンドマネージャーの役割や求められるスキルや資格を紹介します。近年、日本国内でも知られ始めたターンアラウンドマネージャーは企業の危機を救う重要な人材です。変化に富んだ時代に企業の健全経営を維持するために欠かせない人材の特徴を把握し、社内での育成や招へいを検討しましょう。

ターンアラウンドマネージャーについて

日本国内ではまだ聞き馴染みのないターンアラウンドマネージャーですが、海外企業では広く知られる人材登用です。危機に瀕する企業にとって最後の砦となるターンアラウンドマネージャーについて理解を深めましょう。

ターンアラウンドマネージャーとは?

ターンアラウンドマネージャー(Turnaround Manager)は日本語で企業再生請負人を指す経営用語です。業績が悪化して破綻寸前の企業に赴き、課題点を洗い出して再生をサポートします。海外企業で多く見られるターンアラウンドマネージャーは近年国内の大手企業でも導入が進み、少しずつ広がりを見せているのです。

ターンアラウンドの意味

ターンアラウンドの意味は日本語で事業再生です。事業再生は目の前の課題だけを取り去るのでなく、組織体制や企業の戦略など抜本的な解決を目指します。

ターンアラウンドマネージャーの目的

企業がターンアラウンドマネージャーを配置する目的は限界を向かえる自社を再生・回復させるためです。赤字体質の経営戦略や従業員の意識改革、業務の効率化など多面的に企業が抱える課題を検証し対策を打っていきます。事業再生は一朝一夕で行えるものでなく、さらに専門的な知識や経験が求められるため経営層や財務・労務担当者だけでの解決は困難です。外部からターンアラウンドマネージャーを招き入れることで社内に新しい風を呼び込み、かつ課題解決を目指します。

ターンアラウンドマネージャーの仕事内容

ターンアラウンドマネージャーの実務は多岐にわたり、企業が抱える課題にあわせて業務を遂行します。本章ではターンアラウンドマネージャーの仕事内容を3つ見ていきましょう。事業再生の他に組織改編や企業財務など様々です。

財務・経営戦略

ターンアラウンドマネージャーは企業の根本から課題解決に向けてアプローチします。従来の経営戦略を見直し、課題があれば新たな施策を立案・実行しましょう。企業が多額の債務を抱えている場合は資産の売却や債務放棄の手続きを行い財務状況をリセットする役割も担います。

組織改編・強化

ターンアラウンドマネージャーは企業の組織を抜本的に見直す役割も担います。企業が展開する様々な事業を検証し、不採算部門があれば廃止したり成長が期待できる部門を強化したりすることが大切です。あまり好ましい施策とは言えませんが、生産性が低い部門や人材がいる場合はリストラを検討します。組織改編はデリケートな課題を多く抱えているため、外部から招へいする場合は経営陣と密にコミュニケーションをとりながら進める必要があるでしょう。

事業改革

ターンアラウンドマネージャーは社内だけにとどまらず、取引先の見直しも行います。利益を生み出しにくい仕組みで取引先とやりとりをしている場合は、価格の交渉や業務内容の見直しが必要です。取引先との関係は非常に注意が必要な場面のため、不安を抱える経営陣や業務担当者の支援もあわせて担います。

ターンアラウンドマネージャーに求められる能力


ターンアラウンドマネージャーには4つの能力が求められます。本章ではリーダーシップや決断力、コミュニケーション能力や財務知識など、ターンアラウンドマネージャーに欠かせない能力を見ていきましょう。

1.リーダーシップ

ターンアラウンドマネージャーには強いリーダーシップが求められます。危機に瀕する企業はモチベーションが低下し、従業員は不安を抱えた状態です。ターンアラウンドマネージャーはネガティブな雰囲気に包まれた企業内でエネルギッシュかつリーダーシップを発揮し、率先して改善活動に挑みます。

具体的には、先行きが不透明な不採算部門に対して課題や改善しない場合の結果を伝え現状を把握させましょう。その上でとるべき行動を示し、ターンアラウンドマネージャー自らが業務の見直しや取引先との交渉など行動し、経営陣や従業員の士気を高めながら再生を目指します。

経営陣と横並びで再生を進めるのではなく、さらに状況を俯瞰し経やるべきことを示しながら率先して行動する能力がターンアラウンドマネージャーに求められるでしょう。

2.決断力

ターンアラウンドマネージャーには並大抵でない決断力が求められます。破綻か再生かの間際では選択の判断が最悪の結果を招くでしょう。収集したデータや分析をもとに適切な決断をし続け再生を目指す力が求められます。

さらに近年はサイエンスだけにこだわらず自身の感性を用いた決断にも注目が集まっているようです。ターンアラウンドマネージャーを起用する場合は分析力と経験、感性の磨き上げを行い、強い決断力を身につけた人材を選定しましょう。

3.コミュニケーション力

ターンアラウンドマネージャーにはコミュニケーション能力も求められます。どれだけリーダーシップを発揮しても、人がついてこなければ企業の再生はできません。ターンアラウンドマネージャーは企業の立て直しを行いますが、再生後に働くのは従業員です。再生請負人として企業に入った場合は、経営層から一般従業員まで広くコミュニケーションをとり社内の声を反映させ、かつ成長を目指し舵を切る力が求められます。

4.財務や営業の知識

ターンアラウンドマネージャーには人間性に付随する能力だけでなく、専門知識も必要です。企業の財務状況を読み解く知識や手法、取引先との交渉に必要な営業のテクニックも求められます。どれだけ人間性が高くても、企業を再生する力がなくては無意味です。事業を立て直す十分なノウハウにプラスして人間性が求められます。

ターンアラウンドマネージャー起用だけで終わらない、あらゆる人事データを統合して分析

ターンアラウンドマネージャーは企業の再生を一貫して担う重要なポジションですが、仕事内容が多岐にわたるためツールやシステムの導入が必要不可欠です。タレントパレットでは人事労務や財務など、企業にまつわる様々なデータを一元管理できます。ターンアラウンドマネージャーの起用とあわせてシステムをご検討ください。

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ターンアラウンドマネージャーが注目される理由とは


ターンアラウンドマネージャーは3つの理由から注目が高まっています。日本国内では日産のカルロス・ゴーン氏やJALの再生に貢献した稲盛和夫氏が代表的です。本章では近年の国内企業にターンアラウンドマネージャーの起用が目立つ理由を解説します。

事業再生のビジネスが増加傾向にある

かつて事業再生と言えば金融機関が主たる対象でしたが、2003年に「産業再生機構」が設立されてからは事業再生ビジネスに参入する企業が増加し、金融機関だけでなく様々な業界で事業展開がスタートしました。

また、近年はビジネスの多様化や差別化が困難な理由からコンサルティング会社の増加やコンサルティングに依頼する企業が多くあります。そのため、事業再生や自社のテコ入れへのハードルが下がり、ターンアラウンドマネージャーの起用を検討する企業が増えているのです。

経営が昔より複雑化している

かつての日本は需要が供給を上回り、作れば作るだけ売れるビジネスパターンが一般的でした。しかし近年は商品やサービスのコモディティ化が顕著で、強豪との差別化が難しく企業は創意工夫が求められます。また、法律の整備や従業員の働き方改革など様々な要因が経営を複雑にし、新たな思考や経営戦略がなければ企業競争に負けてしまうでしょう。
さらに、VUCA時代の到来により、従来の経営方法が通用せず危機に瀕する企業がターンアラウンドマネージャーの需要を押し上げています。

低迷する企業が突破口としてターンアラウンドマネージャーを起用し、新しい時代や変化にとんだ時代に柔軟に対応できる企業作りに取り組んでいるのです。

新型コロナウイルスの影響

2020年はじめから国内で流行した新型コロナウイルスは企業のあり方に大きな変化をもたらしました。非対面・非接触を推奨し業務の効率化が加速した結果、成長した企業があるものの、販売機会を失ったり需要が無くなったりした業界が軒並み経営難に陥っています。

新型コロナウイルスの流行がおさまり少しずつ従来のビジネスが戻りつつありますが、多くの企業は依然厳しい経営状態です。コロナ時代を生き抜き瀕死の状態で戦う企業の増加もまたターンアラウンドマネージャーが求められる要因のひとつでしょう。

さらに新型コロナウイルスによって各企業がこれまでの事業内容を見直した結果、DXを推進するきっかけとなりました。今すぐの企業再生を求めるケースだけでなく、数十年先を見越して事業転換のためにターンアラウンドマネージャーを起用する動きも見られます。

ターンアラウンドマネージャーの収入は経験や成果で異なる

自社にターンアラウンドマネージャーを起用する場合は、起用者のスキルはもちろんどれくらいの人件費がかかるか気になる担当者もいるでしょう。

結論から言うと、ターンアラウンドマネージャーの収入は企業の規模や経験、成果によって大きく異なります。企業を抜本的にテコ入れするのか、財務部分だけを監査するのかなど仕事の範囲によっても金額は変動するでしょう。専門性の高さと責任の重さからターンアラウンドマネージャーの年収は1,000万円以上になるケースが多く見られます。

成功報酬制にする場合は、報酬の設定だけでなくゴールも明確にしましょう。「売上高を〇〇%上昇」「債務整理のサポートと売上高上昇」など、契約前に細かな条件を設定します。自社にターンアラウンドマネージャーの起用を検討する際は、依頼する内容や求めるスキルを考慮した上で紹介やヘッドハンティングに進みましょう。

ターンアラウンドマネージャーに必要な知識・経験

本章ではターンアラウンドマネージャーに求められる知識や経験を紹介します。自社にターンアラウンドマネージャーを起用する場合は、下記の知識と経験を持った人材の選定を行いましょう。

経営や財務に関する知識が必須

ターンアラウンドマネージャーに最も求められる知識は経営や財務、営業の項目です。ターンアラウンドマネージャーは企業全体を俯瞰して課題や強みを見つけ、企業再生の舵を切ります。そのため、経営陣以上に経営全般への理解や経験、財務の知識が求められるでしょう。さらに実業務における課題解決には現場力が欠かせません。バックオフィスの作業フローや営業部門の業務手法への指導なども業務に含まれるため幅広い知識と経験が必要不可欠です。

基本的な経営手法を学んだ上で実戦経験があり、かつ自身が参加する企業にマッチした手法で企業再生のリーダーシップを発揮します。

実際に経営の経験を積む

ターンアラウンドマネージャーには実業務や経営の経験が欠かせません。企業のプレイヤーとして経験を積むことはもちろん、部門責任者や経営層での勤務経験を持つ人材は対象企業を俯瞰しながらも実業務の課題をうまく洗い出せることが特徴です。

現場経験がなく役職者のみ経験してたり、役員経験が長く現場の感覚を忘れていたりする人材は従業員からの不満が噴出しやすかったり、再生案が企業の空論で終わる可能性があったりします。自社でターンアラウンドマネージャーを選出する際は経験値と現場への理解力を考慮しましょう。

日頃から従業員のスキルや経験を把握・管理するとターンアラウンドマネージャーだけでなく様々部門に適任の人材を選定可能になり、企業の事業再生だけでなく成長まで期待できます。

ターンアラウンドマネージャーを起用する方法

低迷する企業にとって最後の砦とも言えるターンアラウンドマネージャーは、一般的に2つの方法で起用します。ターンアラウンドマネージャーをアサインする専門のコンサルティングカンパニーの利用かヘッドハンティングです。本章では自社に適したターンアラウンドマネージャーの見つけ方を紹介します。

1.専門のコンサルティング会社を利用する

ターンアラウンドマネージャーの起用は専門の会社に依頼して探す方法がおすすめです。社内でターンアラウンドマネージャーを育成する場合、教育講座への参加や知識の定着など多くのタスクが伴うため費用と時間を要します。また社内の人材を登用すると、一定数の従業員から不満が噴出して不平等な判断にもつながりかねません。さらに、長年社内で業務に携わっている経験が仇となり、社内の価値観でしか判断できずアイディアの創出が難しい可能性もあるでしょう。

ターンアラウンドマネージャーはコンサルティング会社やハイクラスの求人を扱うサイトで探せます。社内でターンアラウンドマネージャーに求める具体的な業務内容や目標の設定を行った上で、専門の会社に依頼しましょう。

なお、近年はコンサルティング会社が多く存在するため、選定が難しい傾向にあります。自社に適したターンアラウンドマネージャーを起用するために、コンサルティング会社の選定は下記のポイントを注視しましょう。

  • ターンアラウンドマネージャーとして経験がある担当者
  • 有資格者が担当してくれる
  • 高い人間性


ターンアラウンドマネージャーや中小企業診断士として事業再生経験が豊富な人材は、安心して起用できます。また、経験値だけでなく資格を保有している人材にも注目しましょう。さらに、ターンアラウンドマネージャーには高い人間性が求められます。どれだけ経験が豊富でも社内で信頼されなかったり、不興を買ったりするような言動の人は起用を見送りましょう。

知識や経験が大切なポジションですが、企業全体を牽引していくために人間性は重要なポイントです。

2.ヘッドハンティングをする

専門会社での紹介や求人募集だけでなく、ヘッドハンティングも効果があります。業界内のセミナーや交流会はもちろん、人材育成セミナーやツール紹介の場でふさわしい人にアプローチする方法も選択肢のひとつです。

自己啓発セミナーや経営者の講演会に参加する機会が多いならば、様々な人と情報交換を行い、信頼がおける場合にはターンアラウンドマネージャーの起用を検討している旨を相談・打診するのもよいでしょう。

ヘッドハンティングは目利きが必要かつ密なコミュニケーションを要しますが、担当者が自分で専任できるためミスマッチや不安を抱えにくいメリットがあります。

ターンアラウンドマネージャーに関係する資格

本章ではターンアラウンドマネージャーが持っていると役立つ資格を4つ紹介します。いずれも習得は難易度が高く多くの学習時間と経験が求められますが、知識を深める際に資格取得を目標にすると、高いモチベーション維持が可能です。

ターンアラウンドマネージャー(TAM)

CRC 企業再建・承継コンサルタント協同組合が主催する育成講座を受講し試験を突破することで、ターンアラウンドマネージャーの資格が取得可能です。資格は民間資格で、講座を受けた後に試験に進む流れですが、講座は東京(一部は大阪でも実施)にて7日間で計45.5時間+検定試験3.5時間のプログラムをクリアした後に試験を受け、合格を目指します。
受講人数は毎年40名程度で応募があるため、自社で人材育成を検討する際はゆとりあるスケジューリングが大切です。

事業再生アドバイザー(TAA)

事業再生アドバイザーは一般社団法金融検定協会が主催する試験を突破することで取得できる民間資格です。事業再生アドバイザーの資格を取得すると経営への理解が深まるだけでなく、再生支援実務家としての公的活動を行える点がメリットとして挙げられます。

試験は東京・大阪で実施され、5つの試験項目で各5問択一式の50問という試験形式で行われており、ターンアラウンドマネージャーに求められる法務・財務・税務の専門知識はもちろん、具体的な事業支援手法についての知識などを得た人のみが取得できる資格です。

中小企業診断士

中小企業診断協会が主催する国家資格の中小企業診断士は、近年コンサルタント業務を行う企業が従業員に取得を促す人気の資格です。中小企業診断士を目指す場合は、いくつかのステップをクリアします。

はじめに協会が実施する第1次試験の突破を目指しましょう。第1次試験合格後は下記2つのうち、いずれかの方法により、中小企業診断士として登録されます。
1:中小企業診断協会が実施する第2次試験合格後に実務補習を修了する。もしくは診断実務に従事すること。
2:中小企業基盤整備機構または、登録養成機関が実施する養成課程を修了すること。

中小企業診断士の第1次試験は下記7科目の受験が必要です。

  • 経済学・経済政策
  • 財務・会計
  • 企業経営理論
  • 運営管理
  • 経営法務
  • 経営情報システム
  • 中小企業経営・中小企業政策 


すべての試験に合格・実務経験を積んだ後は、いよいよ中小企業診断士登録(経済産業大臣登録)ですが、登録有効期間は5年間と期限が定められています。また登録を更新する場合はm一定の要件を満たすことが必要です。

認定事業再生士(CTP)

認定事業再生師はターンアラウンドマネージャーの資格とあわせて持っておきたい民間資格です。一般社団法人日本ターンアラウンド・マネジメント協会が主催で経営と会計・財務、法律の3科目を受験し、論文式の試験にて合否の判定がなされます。3科目合格後は協会から資格審査の書類が送付されるため認定申込書や推薦状など必要書類を用意して郵送し、書類が通過しだい正式に認定されるでしょう。
試験は選択式の場合が多いですが、CTPに関しては論述式のため文章力や情報を整理する能力も付随して求められます。しかし、試験では具体的な業務イメージを描きながら回答を進めるため、実業務に親しい状態での試験であると言えるでしょう。

まとめ

ターンアラウンドマネージャーは企業の危機を救う重要な人材です。財務や経営、営業など多方面から企業の課題を洗い出し適切な決断・対処を率先し事業再生へと導きます。
起死回生を目指す企業にとって重要な役割を担うターンアラウンドマネージャーは、多忙な合間をぬって対象企業の情報網羅が欠かせません。

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