ターンアラウンドとは?意味やメリット、施策、企業事例などをご紹介


ターンアラウンドとは?意味やメリット、施策、企業事例などをご紹介

変化の多い時代の中で、「経営改革」や「事業再生」を意味する「ターンアラウンド」が多くの企業で注目を浴びています。ターンアラウンドとはどのような意味があり、実際にどのように活用されているのでしょうか。具体的な内容を学び、実務に活かしましょう。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

変化の多い時代の中で、企業は常に成長を求められ、その中で「経営改革」や「事業再生」を意味する「ターンアラウンド」が多くの企業で注目を浴びています。それでは、ターンアラウンドとはどのような意味があり、実際にどのように活用されているのでしょうか。具体的な内容を学び、実務に活かしていきましょう。

今注目を集めている「ターンアラウンド」とは

変化の多い現代の時代背景が影響して、現代の会社経営は不安と改善の連続です。変化に柔軟に対応できない場合、不振にあえぐ事業が後を絶たない背景があるからこそ、ターンアラウンドは注目を集めています。ターンアラウンドは、主に経営学用語として使用されていますが、IT業界でも用いられているため使い分けに気をつけましょう。

ターンアラウンドの意味

まずは経営学用語としてビジネスシーンで用いられているターンアラウンドについてポイントを押さえましょう。よく使われる意味は事業再生や経営改革です。具体的には、業績が芳しくない事業において、抜本的な改革とそれに伴う投資や研究開発を行うことによって、どの程度収益を上げることができるのか、事業に関わる様々な点を改善するための中長期的な計画を打ち出すことを指します。

ターンアラウンドの語源について

そもそも、ターンアラウンドとは「turn around」が語源です。本来の意味合いは方向転換であり、物事が好転する、立ち直るといった意味も含まれます。turnの「方向を変える」、aroundの「まわりに」の二つの単語が組み合わさってできた複合語であり、方向転換といった意味が生まれました。そのため、ビジネスシーンでは経営状況を好転させるための事業再生や経営改革の意味になりました。

IT用語としての「ターンアラウンド」

ターンアラウンドはビジネスシーンだけの言葉ではありません。IT業界でも用いられる言葉ですが、主にターンアラウンドタイムとして使用されています。システムやパソコンへ処理をさせるデータをインプットし、結果をアウトプットした後に次のインプットが可能になるまでに要した時間という意味です。

ターンアラウンドが求められる背景について

ターンアラウンドは、なぜ必要とされているのでしょうか。目まぐるしく変化が起きている現代の中でも、以下の3点が求められる背景としてあげられます。それぞれ詳細に説明します。

  • バブル経済の崩壊
  • 事業再生ファンドビジネスの増加
  • 新型コロナウイルスの影響


バブル経済が崩壊したこと

1990年に起こったバブル崩壊以後、事業の不振を原因として多くの企業が倒産に追い込まれました。経営者は負債を抱えた中での事業方針の転換や、早急な経営再建を進める必要に迫られましたが、2000年代に突入するとインターネットの普及やグローバリズムの加速が巻き起こったことで、経営の複雑化より一層色濃くなりました。その結果、注力すべき事業再生や経営改革に歯止めがかかりました。

このような時代背景のもと、経営の舵取りが難しい環境下においても、スピード感を持って事業再生に取り組むことのできるスキルと的確にプロジェクトを推進できる経験を持ち合わせた人物の需要は高まったといえます。

事業再生ファンドビジネスの増加

事業再生ファンドビジネスとは、投資家から集めた資金を用いて経営再建計画を策定実行することを目的としたビジネスです。事業再生に特化したスキルと経験を有したファンドが企業の抱える課題を解決することを事業モデルとしています。

従来は、金融機関や親会社からの出向を命じられた人材による事業再生が主に行われていました。しかし、目まぐるしく変化する経営環境の中で、スピード感を持って事業再生をするためには、事業再生や経営再建に関する専門知識を有した人材が不可欠です。このような人材の需要の高まりもターンアラウンドが注目を集めている理由です。

新型コロナウイルスの影響

新型コロナウイルスの流行は、今までの経済活動を一変させるだけの社会的インパクトの高い出来事でした。今までの異常が日常に置き換わってしまうような環境の中で、既存のフレームワークでは通用せず、今まで以上に変革を求められるような時代になっています。

そのため、優秀かつオリジナリティ溢れる技術や能力、現状を打破できるような推進力は、前例のない危機に直面するような時代においては重宝され、スピード感溢れる事業再生・経営再建におけるニーズが高まっています。

ターンアラウンドのメリットとは

ターンアラウンドのメリットとして、以下の4つが挙げられます。それぞれ詳細に確認していきましょう。

  • 従業員の意識改革を行うことができる
  • 過剰債務の整理ができる
  • 売上不振から脱却できる
  • 経営改革を進めることができる


従業員の意識改革を行うことができる

会社の事業再編や経営改革を行う上で重要なポイントは役員を含めた従業員全体の意識改革です。現状を甘んじて受け入れ変化を好まないマインドは、現状維持バイアスという感情的な要因で意思決定がゆがむ感情バイアスの一つであり、時として経営不振の原因になりうるケースがあります。

企業文化として慣習ばかりに目が行きがちになり、現状維持を好むマインドは、企業が新しいビジネスアイデアやビジネスモデルを生み出す文化の醸成につながらなくなる危険性をはらみます。

ターンアラウンドでは、この慣習的な従業員の意識を改革することで、従来では生み出せなかったアイデアや改善活動が現場から自発的に発信されるようになると考えられています。

過剰債務の整理ができる

ターンアラウンドでは、過剰債務をいかに整理・削減できるかという点が経営課題として重要視されており、会社更生手続きや破産手続きなどの法的な整理も視野に入れた企業再生が必要です。そのため、人員削減や資産売却といったワークアウトと一緒に取り組まれる場合が多いでしょう。

無謀なM&Aなどの過剰な投資を行う場合、投資行為自体が経営を圧迫する直接的な原因となりえます。そのため、早めのターンアラウンド着手は理にかなった経営戦略となりえるでしょう。

売上不振から脱却できる

会社が経営破綻に陥る要因は様々あります。会社を取り巻く環境が目まぐるしく変化していく時代において、無理なM&Aの失敗や長年の不正会計は経営破綻に陥るきっかけとしてめずらしくありません。しかし、このような失敗の根本的な原因は、会社の売上不振です。

売上不振の原因は、外的要因と内的要因の二つに大別できます。外的要因には市場や顧客ニーズの変化などがあり、内的要因は組織内の意思決定能力の欠如、従業員のモラル・意識の低下が挙げられます。

ターンアラウンドでは、事業再生の一環として、売上不振の改善に必要な抜本的な販売戦略やマーケティング戦略の策定を行い、強力に推進します。既存の知見では得られなかったような成長戦略や新規事業戦略、M&A戦略の策定・実施がなされるので、予想以上の売上回復につながるでしょう。

経営改革を進めることができる

ターンアラウンドでは新規事業案の策定や債務整理以外にも、業務プロセスの改善や人事制度の再構築、資金や採算管理体制の再構築など、経営全体に関わる内容の改善を施策として実施するので、抜本的な経営改革につながることが期待できます。

収益を向上させるためには、従業員のコスト意識の醸成が重要なポイントですが、ターンアラウンドではコストカット分析を実施すれば、経理に携わらない従業員にもコスト意識を根付かせることが可能です。

またターンアラウンドはコストカットのみではなく、業務プロセスの改善としてAIやIoTを用いた効率的な業務システムの導入を行ったり、ターンアラウンド完了後の体制を踏まえた人事制度の構築も推し進めたりして、健全な会社経営につなげていきます。

ターンアラウンドの代表的な手法とは


ターンアラウンドの代表的な手法は以下の4点が挙げられます。それぞれ詳細を説明しますので確認していきましょう。

  • 業務プロセスの改善
  • 事業戦略の見直し
  • 人事制度の再構築
  • 管理体制の刷新


業務プロセスの改善

業務プロセスの改善を行うことで得られるメリットは、人件費の削減や企業活動自体の生産性向上に伴う最適化です。ターンアラウンドで行われる主な改善方法として、AIやIoTといった最新技術を活用した業務システムの導入や活用、現場主導型の業務改善プログラムの立案・実行が挙げられます。

AIやIoTといった最新技術を活用した業務システムの導入は、わざわざ時間をかけて取り組む必要のないブルシットジョブと呼ばれる無駄作業の削減や人員配置の最適化につながります。また、日本の製造業は設計→製造→販売までのプロセスが一元化されているビジネスモデルが多く、業務システムの導入による全体最適化が容易です。

現場主導型の業務改善プログラムの立案・実行で現場主導型にすれば、従業員の自発的な活動が促進され、自ら考えて実行する組織づくりにつながります。

事業戦略の見直し

ターンアラウンドでは、事業戦略の見直しとして再生見込みのある既存事業の選別や再生対象となりうる事業・販売戦略の見直しを計画します。経営不振や経営破綻に陥る企業でよく見られる点は、売上不振による既存事業の負債化およびその結果によって引き起こされる財務上の経営悪化です。

経営悪化を解消するための具体的な行動は、生産および販路の拡大や変更、人気コンテンツとのタイアップやマーケティング部門の強化などです。過去にヒット商品を生み出している企業であれば、ヒット商品の復刻などもターンアラウンドの対象に含まれます。また新商品開発では、マーケットインに沿った新商品の投入も挙げられます。

人事制度の再構築

ターンアラウンドでは、再生事業のビジネスプランに沿った人事制度の再構築を実施することがあります。ビジネスモデルの変化や事業戦略の変化に伴い、事業売上高の国内比率と海外比率のバランスが逆転するケースも増えていることから、グローバルな人事制度構築の必要性が高まっています。

日本企業における人事制度として、終身雇用や年功序列を前提とした制度設計が現代においても根強く残っています。しかし、バブル崩壊後においては欧米的な成果主義を前提とした人事制度が主流となり、現代におけるビジネス環境・人事制度にそぐわない企業経営を続けている企業が少なくありません。特にここ最近においては、職務等級に重きをおいた人事制度から役割等級に重きをおいた人事制度に移行する企業も増えており、人事制度の多様化が進んでいます。

管理体制の刷新

事業再生に向けて必要となってくることは収益力の改善であり、ターンアラウンドでも収益力の改善に重きをおいた戦略立案と実行を推進します。その結果、徹底した管理体制の構築は重要な責務といえるでしょう。資金・採算管理や効率的な業務運営は必須であり、月次・セグメント別の決算・予算管理ができる体制構築を目指します。

また、採算性のある業務運営を行うためには、従業員一人一人のコスト意識の向上は必須です。そのため、現場の全従業員が適切なコスト管理ができるよう、細やかな教育体制の確立もターンアラウンドでは重要視されています。

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ターンアラウンドを活用した企業事例を5つ紹介

実際にターンアラウンドを取り入れた企業の事例について。以下の5つの事例を紹介します。

  • 株式会社ダイエー
  • 日本マクドナルドホールディングス株式会社
  • 日産自動車株式会社
  • カネボウ株式会社
  • 日本航空株式会社


事例1:株式会社ダイエー

株式会社ダイエーがターンアラウンドを活用した背景には、バブル時代に行った様々な土地購入と無理な事業拡大があります。土地購入においては将来の価格上昇を見込んだ将来の含み益を狙うビジネスモデルでした。その結果、バブル崩壊とともに多額の債務を負うこととなり、経営不振に陥りました。

2004年に産業支援機構による経営再建が決定され、本格的な企業再生が始まりました。主に実行されたことは、既存ビジネスの再編および不採算事業の縮小でした。しかし、赤字体質から脱却することはできず、2014年には上場廃止およびイオンの完全子会社となり、事実上消滅しました。

事例2:日本マクドナルドホールディングス株式会社

日本マクドナルドホールディングス株式会社がターンアラウンドを活用するに至った背景には、中国の期限切れ食肉の使用による長期にわたる業績不振が原因でした。主に行われたターンアラウンドは、収益性の確保できる店舗の厳選と不採算店舗の閉鎖による投資資金の確保、店舗人員の最適化、フランチャイズオーナーに対する財務施策の継続などでした。

その他にも、人気商品の再販や有名なアプリゲームとのコラボなど、話題性の高いマーケティング戦略も実施した結果、2017年には第四半期における累計全店売上の前年度比もプラスに転じたため、ターンアラウンドが成功した事例といえるでしょう。

事例3:日産自動車株式会社

日産自動車株式会社では、1990年代に経営危機に陥り、フランスのルノーとの間に業務提携を結びました。そこで最高執行責任者として就任したカルロス・ゴーン氏による事業再編が行われました。

主に実施されたターンアラウンドは、生産拠点の集約や子会社の統廃合といった業務プロセスの改善と、人員削減など大幅なリストラを行いました。また新商品の投入やブランディングにも着手した結果、1998年には約2兆円もあった負債を、2006年には全額返済し、12%まで下落していた国内シェアを20%まで回復するなど、ターンアラウンドを成功させています。

事例4:カネボウ株式会社

カネボウ株式会社がターンアラウンドを活用するに至った背景には、1960年代に事業の中核であった化粧品事業以外の分野において様々な新規事業の立ち上げを行い、多角化経営に乗り出したことが挙げられます。結果は、中核事業である化粧品事業以外は赤字経営に陥りました。そこで経営陣は赤字経営を隠すために粉飾決算を繰り返し、2003年9月には629億円もの債務超過を抱える事態に陥りました。

そこでカネボウ株式会社で活用されたターンアラウンドは、収益性の高い事業である化粧品事業と繊維事業を本社から分離・独立させ、不採算事業である他事業においてはリストラ等の組織再編を実施し、見事に再建に成功しました。

事例5:日本航空株式会社

日本航空株式会社はもともと国営の航空会社でした。1987年に完全民営化されたのち、ホテル事業や教育事業、IT事業など多角的な事業拡大を進めます。しかし、国営企業時代からの長年にわたる放漫経営が原因となり、ターンアラウンドを活用することとなりました。

実際に行われたターンアラウンドは、収益性の高い路線と不採算性の高い路線の取捨選択、不採算事業の事業規模の縮小、複数回の人員整理、子会社の売却などです。主には債権放棄や公的資金の注入が経営再建に大きく寄与したとされていますが、2012年3月期には営業黒字を計上ができ、東証一部に再上場できました。

成功するターンアラウンドに必要なスキルとは


成功するターンアラウンドに必要な思考とは何があるのでしょうか。主に必要とされている思考は、論理思考やクリエイティブ思考といった思考スキル、そして複数の専門的な知識に裏打ちされた実務スキルです。これらのスキルについて、紹介します。

思考スキルその1:論理的思考

ターンアラウンドに必要な思考スキルその1として、論理的思考について紹介します。ビジネスにおける論理的思考を一言で表現すると「因果関係で命題と命題をつなぐ力」です。

例えば、「売上の減少は、競合店舗が近隣へ出店したからである」という事例について考えてみましょう。この状況だけ見ると、「売上の減少」の原因は「競合店舗が近隣へ出店したこと」と考えがちです。しかし、売上減少の原因を近隣への競合店舗の出店のみでしか考察しておらず、顧客の購買行動に影響を与える他の要因の可能性について考えていません。

他の要因について思考を張り巡らせる習慣をつけることが論理的思考を育みます。また常に因果の論理を考えながら仕事を行うことが重要なポイントです。

思考スキルその2:クリエイティブ思考

ターンアラウンドに必要な思考スキルその2として、クリエイティブ思考について紹介します。一般的にクリエイティブ思考というと、天才的なクリエイターやアーティストがひらめいたアイデアのことを指すことが多いです。しかし、このアイデアは再現性があるのでしょうか。

ビジネスでは、再現性を強く求められます。なぜなら、再現性がなければ実務の現場の知識として活用できず、再建対象の企業に必要な情報を共有することができないからです。そのため、ターンアラウンドを成功させるには、一瞬の天才的思考ではなく、論理に基づいた再現性のある思考内容を言語化できるスキルが必要です。

ターンアラウンドを成功させるために必要な経営スキルや知識とは

次に、ターンアラウンドを成功させるために必要な経営スキルや知識について、以下の内容について紹介します。

  • 財務・管理会計に関するスキルや知識
  • マーケティング・企業戦略に関するスキルや知識
  • オペレーションに関するスキルや知識
  • 統計学に関するスキルや知識
  • 会社に関する法律のスキルや知識
  • 税金に関するスキルや知識
  • 旧金融検査マニュアルに関するスキルや知識


財務・管理会計に関するスキルや知識

まずはじめに財務に関するスキルや知識として、事業再生における財務調査を実行するスキルや財務会計論の知識について紹介します。財務に関する知識については、主に債権者である金融機関の協力を得るために必要です。なぜなら、債務者である再建対象企業の、現時点での資産超過または債務超過レベルや正常的な収益性について調査をし、正確な決算書として誠実に公表することが、金融機関の協力を得るための近道となるからです。

次に、管理会計に関するスキルや知識として収益性分析や管理会計論について紹介します。これらのスキルや知識は、ターンアラウンドを実行するにあたって再建予定の企業における事業の収益性を正確に判断する必要があるからです。

不採算事業の特定や収益性の高い商品群の特定など、企業再建の可能性を判断する材料集めに活用するスキルと知識は経営者に欠かせません。

マーケティング・企業戦略に関するスキルや知識

マーケティングに関するスキルや知識は事業再生の現場では必須の要件ですが、巷には大量の書籍や情報が提供されており、全体像の把握や体形的な習得には多くの時間が必要です。例えばコトラーのマーケティング・マネジメントや心理学・文化人類学などが現代のマーケティング理論の基礎として紹介されています。しかし、重要な点は理論の習得と実践経験です。また理論と現場のギャップが大きいため、インプットと同時にアウトプットを心がけることが必要です。

企業戦略に関するスキルや知識は、知識とスキルの乖離が非常に大きいです。現代の企業戦略では、外部環境の分析に主軸をおいたポーターのポジショニング理論と内部環境の分析に主軸をおいたバーニーの資源ベース理論が主流になっています。二つの基本的な理論を習得したとしても、実査の企業戦略立案時には既存のフレームワークでは通用しない場面も多く、マーケティング理論と同様にインプットとアウトプットが重要です。

オペレーションに関するスキルや知識

オペレーションに関するスキルや知識は、定説的に学ぶことが難しい分野ではあるものの、事業再生の現場では必須の項目です。基本的な考え方は「滞りなく情報やモノ・仕事が流れる環境をつくる」ことです。

オペレーションに関しては、管理会計などのフレームワークでは学ばない分野であるため、別枠組であるスループット会計を学んでおくのがおすすめです。スループット分野を学ぶことでボトルネック工程の理解が深まり、ボトルネック工程と非ボトルネック工程の管理方法の違いを学べます。

統計学に関するスキルや知識

再建対象になりうる多くの中小企業では、「データから解を考える」といった視点が欠けているので、統計学は押さえておきましょう。しかし、ビッグデータを活用して使いこなすまでのレベルは必要ありません。例えば、相関分析や単回帰分析および重回帰分析程度の基本的な統計処理ができれば、今まで見えてこなかった新たな視点がデータで可視化されるようになります。

統計学は事実であるデータを基礎としているので、データの傾向から導き出されるものは何であるか考える学問です。直感的な印象ではなく、因果関係の明確なロジックを用いて目の前の現象を解釈する強みがあります。

喫緊の差し迫った状況下において、複数の手を打たなければいけない場面において、速やかに情報収集できる点は、ターンアラウンドを成功させるために必須の知識やスキルといえます。

会社に関する法律のスキルや知識

事業再生の現場において、法律的な問題に直面する場面は多々あります。事業再編における会社分割や多種多様な手続きについても、法律が求めるスケジュールにもとづいて処理を行う必要があります。退職した労働者の未払い賃金問題は労働基準法、お客様のクレームは消費者保護法など、企業活動を行う上で各種法律は切っても切れない関係といえます。そのため、この分野に関しては法律の専門家である弁護士に協力を仰ぐことをおすすめします。

税金に関するスキルや知識

事業再生の現場においては、税金に関するスキルや知識も必須です。特に法人税法、所得税法、相続税法、組織再編税制、事業継承税制等の法律的な知識が必要な場面は多く存在します。様々な再建スキームの中でどの税法をあてはめて考える必要があるのか、難解なケースが多く、税制に関する知識が不足していると税務リスクが極めて高い取引にも関わらず、知らずに実行してしまうなど、取り返しのつかない結果を招く可能性もあるので要注意です。

また、組織再編を検討するにあたって組織再編スキームを自身で描くスキルも欠かせません。思い描く再建スキームをいかに税効果を考慮に入れ、課税リスクを下げて実現できるかがプロフェッショナルの腕の見せ所といえるでしょう。

旧金融検査マニュアルに関するスキルや知識

旧金融検査マニュアルに関するスキルや知識については、金融支援の交渉で必要です。1999年7月に公表された金融検査マニュアルは、2019年12月の廃止に至るまで金融機関の融資ランク付けの基準として長く用いられてきました。そのため、2019年12月以降の改訂版マニュアル公表後においても現場での困難を避けるため、慣れ親しんだ旧マニュアルに基づいた自己算定方法が認められています。

今後、基準変更が行われることは実務的に難しいため、旧マニュアルの知識があれば金融機関との交渉スキルの向上につながるでしょう。各金融機関の債権分類等の考え方に、今後も旧マニュアルの内容は影響を与えるため、事業再生のプロフェッショナルとして精通していることが求められます。

ターンアラウンドとワークアウトの違いとは

ターンアラウンドとワークアウトは、企業の経営立て直しを行うための手法として用いられている言葉ですが、厳密には意味合いが異なります。ターンアラウンドは、経営困難に陥った企業が抱える根源的な課題解決を長期的に行う場合に用いられ、ワークアウトはリストラや資産売却などによって短期間での収益改善を目指す場合に用いられます。

ワークアウト自体の意味は「価値のない仕事をはじき出す」であり、不要な仕事、いわゆる不採算事業や採算性の低い人的資本を捨て、短期的なプランによる課題解決をするという特徴を持ち合わせています。

ターンアラウンドマネージャーとして活躍するためにはするためには

ターンアラウンドに関する実務を実行する担当者として、ターンアラウンドマネージャーという職務が現在注目を浴びています。ターンアラウンドマネージャーとして活躍するために必要な情報として、以下の3つを見ていきましょう。

  • ターンアラウンドマネージャーとは
  • ターンアラウンドマネージャーに求められるスキルとは
  • ターンアラウンドマネージャーに関する資格とは


ターンアラウンドマネージャーとは

ターンアラウンドマネージャーとは、経営不振や経営困難な状況に陥りそうな、もしくは陥った企業の再生を請け負う担当者を指します。企業の抱える課題に向き合い、組織再編などを視野に入れた観点で企業を再生させる重責を担います。

能力や成果によっては1000万円以上の報酬を得られるターンアラウンドマネージャーも存在します。

主な業務は企業再生に向けた多角的な施策の立案や実施です。従来は財務的処理に限定されていましたが、今では企業財務、経営戦略の刷新、企業文化の再構築、事業・組織再編なども対象としており、策定された事業計画に則り、一定期間内に完遂することを求められます。

ターンアラウンドマネージャーに求められるスキルとは

ターンアラウンドマネージャーに求められるスキルとは、以下の4つのスキルとされています。

  • 決断力
  • 誠実さ
  • 財務や営業など事業に関する知識
  • 明確な意志


企業再生において、人員削減や事業部の統廃合など非常に厳しい経営判断を迫られる場面は多々あります。どのような場面でも企業の再生に最善の手段であれば、スピード感を持って決断をするために、決断力は必要なスキルです。

またどれほど優秀なターンアラウンドマネージャーでも、一人の力だけで企業を再生させることはほぼ不可能です。ターンアラウンドマネージャーの判断に賛同して、ついてきてくれる仲間を企業の内外に持つためにも誠実であることを忘れてはなりません。

また、企業再生のためには債権放棄や資産売却、M&Aなどの財務知識や新規取引先の開拓などの営業スキルを求められる場面も出てきます。そのため、財務知識や営業スキルも必須項目です。

最後に、どんな困難な状況下においても「必ずこの企業の再生をやり遂げる」といった強い意志を持ち続けることが、ターンアラウンドマネージャーとしての成功には必要不可欠でしょう。

ターンアラウンドマネージャーに関連する資格とは

ターンアラウンドマネージャーとして働くにあたり、持っておくと良い資格について以下の3つを紹介します。

  • ターンアラウンドマネージャー(TAM)
  • 事業再生アドバイザー(TAA)
  • 認定企業再生士(CTP)


それぞれの資格はともに、企業再生を全うするために必要な財務・法律・経営知識を体系的に学んで習得する必要があります。指定の学習項目を習得すれば、受験資格を取得できます。

ただし、認定企業再生士だけは3年以上の実務経験や5件以上の事業再生実績、正会員3名からの推薦が必要となるなどの条件が受験資格の取得に必要である点に注意しましょう。

まとめ

目まぐるしく状況や環境が変化している現代社会において、会社の経営や事業の運営は困難を極めています。いつ自社の状況や事業の経営・運営が行きづらくなるかは未知数です。経営不振や経営困難に陥るかもしれない、または陥ってしまった場合には、企業再生や事業再編に関する専門的な知識とスキルを持ち合わせた人材によって、企業のターンアラウンドの需要が高まるでしょう。

タレントパレットでは、ターンアラウンドを行うにあたって、社内にある多種多様なデータを用いて分析を行い、分析結果から経営や人事課題解決に向けた根拠のある施策を打ち出すための機能を備えています。企業活動に関する情報のデータベースとしてだけでなく、定期的な組織診断をシステムで実行できるので、組織の改善状況を可視化できます。

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