研修期間でも給料が必要になる2つの条件!具体的な金額やトラブルを避ける方法を解説!


研修期間でも給料が必要になる2つの条件!具体的な金額やトラブルを避ける方法を解説!

研修中の給料についての企業や人事担当者の認識が甘いために問題になることが度々あります。本記事ではどのような場合に給料の支払い義務が発生するのかを解説します。無用なトラブルを避けた研修を実施したい方は、ぜひ参考にしてみてください。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。


「内定者研修は無給が多いと聞く」「座学のみの社外研修なら給料は不要ではないか」「給料を支払う研修と支払わない研修の違いは何なのか」と疑問に思う方は多いのではないでしょうか。


OJT研修とは異なり、座学のみの研修やセミナーの中には給料の支払い義務がない場合もあります。しかし、曖昧な知識で無給を強要してしまうと後々トラブルとなるため、正しい知識を持つことが重要となります。


本記事では、研修期間中における給料有無の判断や設定基準について解説します。研修や報酬に関するトラブルを避けたい方は、ぜひ最後までお読みください。


研修でも給料の支払いが必要になるケースがある

業務に携わらない社員研修は、労働ではないため無給と判断する方がいます。しかし、研修期間中の給料についての判断は、会社がすべてを決められるわけではなく、先ずは労働基準法に基づくことになります


判断基準は主に「業務遂行に必須の内容か」「参加を強制されているか」であるため、研修の実施場所や業務を伴うかは関係ありません。今後の仕事に役立たせる目的で会社が義務づけた研修は、業務命令の一環として労働時間に含まれ、相当する給料を支払う必要があります。


入社前研修の期間中に、適性がなければ解雇する可能性を考えて給料の支払いについて悩んでいるなら、それは試用期間と混同しているのではないでしょうか。しかし、試用期間であっても解雇は簡単ではなく、不当解雇として訴訟に発展する場合もあるため注意しましょう。


研修期間でも給料の支払いが必要になる2つの条件

研修期間であっても、以下の条件に当てはまる場合、給料の支払い義務が発生します。


研修の受講が労働とみなされる

研修期間中に給料を支払う義務が発生する理由は、労働とみなされるためです。受講させる研修が労働とみなされるかどうかは、労働基準法に則り、拘束性などで判断されます


労働とみなされない研修とは、社員が自主的に受講したり、参加するか選択できたりする自己啓発セミナーや英会話などです。しかし、表面上は任意でも、参加せざるおえない条件が設定されていれば、業務遂行に必要ということで労働とみなされるため注意しましょう。


例えば、研修の内容を知らなければ業務を遂行できない場合や、受講しないことで現場での査定や評価に悪影響が出る場合などが該当します。


内部リンク:「研修セミナー」


業務委託契約ではなく雇用契約を結んでいる

研修は、業務委託契約した人材にも受講させる場合があります。会社と受講者の関係が業務委託契約であれば、労働とみなされても、契約の一部に研修が含まれていなければ研修期間中の給料を支払う義務は発生しません


例えば、エステ業界、リラクゼーション業界や理美容業界などが該当します。雇用契約と業務委託契約の違いは使用従属性の有無であり、使用従属性が認められれば、業務委託契約で締結していても雇用契約とみなされることがあります。


また、雇用契約の入社前でも研修が労働とみなされる場合は、雇用契約を締結することになります。雇用契約であるかどうかが重要となるため、正社員・派遣社員・アルバイトやパートタイムなどの雇用形態は関係ありません。


研修時の給料不払いに関する3つの注意点

インターネットなどで、研修期間中に給料が支払われなかったという情報を得たことにより、支払いについて悩むケースがあるのではないでしょうか。重要なことは、研修が無給になっている理由を知ることです。


具体的には、以下の3つの注意点を押さえて判断しましょう。


  • 訴えられないことは違法性がない証明とはならない
  • 了承は関係なく労働とみなされるかが重要
  • 実習は給料の支払い義務がない


訴えられないことは違法性がない証明とはならない

違法であっても問題化しない原因は、受講者が労働基準監督署へ問い合わせたり、会社に訴えたりしないためです。例えば、入社前の内定者研修は給料が出なくても、雇用してもらえることが決まっており、今後の会社との関係を気にして妥協する場合などがあります。


了承は関係なく労働とみなされるかが重要

労働者側が無給に了承しているケースもあります。労働とみなされる研修を受講して、受講者が給料の支払われない理由として説明を求めた際に、事前に「研修期間は無給」であることに了承したからと回答する場合も少なくありません。


しかし、事前了承の有無は関係なく、受講させる研修が労働とみなされるなら給料の支払い義務は発生します。


実習では給料の支払い義務がない

実習は研修と同じように人材教育や育成を目的としますが、雇用契約ではなく学業として扱われているため、労働とみなされる内容でも給料の支払い義務は発生しません。実習は、学校を通してカリキュラムに沿って行われるもので、単位などを得られる仕組みだからです。


主に、看護師や教員などを目指す学生が該当します。また、外国人技能実習生は技術を学ぶために業務を行っても、学業ではないため外国人技能実習制度に則り給料を支払う義務があります。


研修期間における給料の金額についての3つのポイント

研修期間中の給料は、会社側が設定できるため、通常業務時や入社後の給料と異なっていても違法ではありません。しかし、給料の支払い義務が発生する研修は労働とみなされているため、労働基準法に反しない範囲で設定可能となります。


金額については、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。


  • 減額の場合は合意が必須
  • 最低賃金以上は原則支払う
  • 最低賃金を下回る場合には労働基準監督署への手続きが必要


減額の場合は合意が必須

研修期間は通常の業務時よりも給料が減額されている会社はありますが、違法性はありません。しかし、労働であるため会社と社員の間での合意は必須です。


労働条件通知書や就業規則にあらかじめ明記されていなければ、社員の承諾を得ていないことになるため、勝手に減額することはできません。


最低賃金以上は原則支払う

会社が設定できる給料金額は、労働基準法に則るため、各都道府県の最低賃金が下限となります。また、予定していた研修時間に終わらなかったり、通常の業務終了後に研修に参加させたりする場合に、残業とみなされれば残業代を支払う義務も発生します。


最低賃金を下回る場合は労働基準監督署への手続きが必要

研修期間中の給料は原則最低賃金以上ですが、管轄の労働基準監督署に、最低賃金の減額の特例許可申請をして、都道府県労働局長の許可を得られれば、特例として下回る設定も可能です。具体的には、労働者が以下の条件を満たす場合となります。


  1. 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
  2. 試の使用期間中の者
  3. 基礎的な技能及び知識を習得させるための職業訓練を受ける者
  4. 軽易な業務に従事する者
  5. 断続的労働に従事する者


減額率の上限は、厚生労働省によって決められています。減額対象者の職務の内容、成果、能力、経験などを総合的に勘案し、減額率を定めることになります。


参照元:最低賃金法第7条の減額の特例許可事務マニュアル|厚生労働省


研修期間中の給料や手当に関する良くあるトラブルとその対策3選

会社が法律に則っていても、金銭が絡むとトラブルに発展しやすいものです。会社に違法性がなかったとしても、受講者の退職につながるケースもあるため、違法性の有無だけに囚われないようにしましょう


受講者の思い込みや勘違いがトラブルの発端となる原因は、労働基準法を始めとする法律に詳しくはなく、インターネット上や周りの情報を鵜呑みにしていることです。特に重要なのは、以下の3つです。


  • 支払われる給料の金額について
  • 研修の任意と強制の違い
  • 労災保険の対象


支払われる給料の金額について

研修期間中の給料について支払い義務が発生しても、金額は通常の業務時と同じである必要はなく、労働基準法に則った範囲で会社が設定可能です。しかし、受講者は、研修期間中の給料は通常通り支払われると決めつけていて、給料明細をみてトラブルになるケースがあります。


対策は、事前に給料金額が通常の業務時と違う旨を説明することです。給料は労働の対価として支払われるのであって、通常の業務の一部として扱うわけではないことを理解してもらうことが重要となります。


研修の任意と強制の違い

会社が主催もしくは推薦した研修やセミナーでも、労働とみなされない場合は、給料の支払い義務は発生しません。しかし、受講者は会社に主催もしくは推薦したからと、参加した分は給料や手当てなどが出ると思い込み、後日請求してきてトラブルになります。


対策としては、研修やセミナーの受講について案内する際に、それぞれ給料及び交通費などの手当てが出ないことを伝えておきましょう。また説明の仕方は、必要性が低いと判断されれば効果は低くなり、強制だと判断されれば支払い義務が発生するため注意が必要です。


労災保険の対象

給料を支払う義務のない研修は、労働とみなされないため、研修中や移動時のケガなどは労災保険の対象となりません。しかし、受講者は会社が主催した研修中のケガなのに、労災保険が適用できないことに対して訴えてくるケースがあります。


対策として、労働とみなされない研修内容でケガする可能性のある場合には傷害保険を用意し、受講者には労災保険の対象外である旨を事前説明する必要があります。


オンライン研修などの給料について

社員研修には、自宅などでオンライン研修やeラーニングシステムを用いて、自主学習させる形態もあります。自宅で受講することになっても、労働とみなされれば、集合研修などと同じく給料の支払い義務が発生します。


社外や自宅でも受講できる内容となると、座学のみで実施する研修と同等となる場合が多いでしょう。もし、給料の支払い義務を不要とさせるなら、受講場所・時間帯、受講態度に制限がなく、任意にさせる必要があります。


しかし、研修内容に関わらず、無給で任意ということは、受講者の積極性が低く、研修の効果が出にくくなるため注意しましょう。別途学習意欲を高める取り組みや、フォロー研修などがおすすめです。また、管理も重要となるため、適切な人材管理システムの導入も検討しましょう。


内部リンク:「研修オンライン」


タレントパレットのHPはこちら

研修の給料のまとめ

研修は、以下2つの条件の両方に当てはまる場合、給料の支払い義務が発生します。


  • 研修の受講が労働とみなされる
  • 業務委託契約ではなく雇用契約を結んでいる


違法性の有無に関係なく、金銭が絡めばトラブルに発展しやすく、不満や離職につながります。給料だけでなく、社員を育成させるため研修の内容にも気を配ることが必要です。


タレントマネジメントなら、研修やeラーニングの受講履歴を一元管理可能で、社員一人ひとりに最適な育成計画を実現できるため、ぜひ導入を検討しよう。


タレントパレットのHPはこちら