タウンホールミーティングを導入する企業が増加傾向にあり、事業運営に好影響をもたらすケースも少なくありません。そこで本記事では、タウンミーティングの概要をはじめ、導入することで得られるメリットや開催手順、注意点などを詳しく解説します。タウンホールミーティングにおいての質問例、企業の導入事例についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
タウンホールミーティングとは?
タウンホールミーティングとは、経営陣と社員とのミーティング(対話)の場です。アメリカでは以前から広く実施されています。経営層が現場に出向き、社員と意見を交わす場を設けることが一般的です。支店や営業所が多い場合など物理的に集まれない場合は、オンラインで開催されるケースもあります。
実施回数は、月1回、四半期に1回、上期下期の年2回程度など、企業によってさまざまです。通常は30分から1時間程度の時間をかけて行います。
タウンホールミーティングとタウンミーティングの違い
タウンミーティングとは、政治家や行政などが住民と意見交換する対話型の集会を指します。テーマは主に地域住民の生活に関するものです。タウンホールミーティングとタウンミーティングは「対話型の集会」という点においては同じ構造ですが、目的や場面が異なります。
タウンホールミーティングの起源
タウンホールミーティングの起源は、1600年代のアメリカです。政治家と町民が、法律や規制について対話したタウンミーティングが始まりといわれており、現代でも多くの民主主義国で取り入れています。代表的なのは第44代のアメリカ大統領選です。オバマ氏がオンラインでタウンミーティングを開催し、世界中で話題になりました。
タウンホールミーティングが注目されるようになった理由
はじめは行政で行われていたミーティング手法ですが、なぜ民間企業でも注目されるようになったのでしょうか。以下で詳しく解説します。
経営層と社員が交流できる
企業は大きくなるほど経営層と社員の距離が遠くなります。大企業において、社員は通常の業務で経営層と顔を合わせる機会は少ないでしょう。経営層も社員の名前や顔を知らず、どのような考えを持っているのか、どのような経験を積んだのか知らないケースが多くあります。
タウンホールミーティングを行えば、社員は企業理念などの理解を深められます。組織力を強化できるメリットもあるため注目を集めるようになりました。
オンラインで開催できる
タウンホールミーティングはオンラインでも開催可能です。拠点が海外にある企業や参加人数が多い企業にとって、コストを抑えて開催できるオンラインミーティングはメリットがあります。効率的にミーティングできる環境が整ったため、経営層と社員の双方が時間を捻出しやすくなり、活発な意見交換を行うようになった企業は少なくありません。
タウンホールミーティングの開催で得られるメリット
タウンホールミーティングの開催は、以下のように企業に多くのメリットをもたらします。
社内に重要決定事項を浸透させられる
重要決定事項を動画やメール、社内報などの活字で知る場合と、直接会って知る場合では、受け取り方に違いがあります。タウンホールミーティングでは、重要事項が決定に至るまでのプロセス、業務への熱量などを相手の表情を見ながら直接届けられるのがメリットです。質疑応答の時間を設ければ、納得できる説明を受けられるのもメリットといえます。
現場の声を経営に反映させられる
一般的に、現場の声は上司を通して経営層に伝えられます。しかし、タウンホールミーティングでは、経営層に本音を直接伝えることが可能です。現場の声が経営に反映されるケースもあり、社員にとっては貴重な機会となるでしょう。
アメリカの航空エンジンメーカー、GE(ゼネラルエレクトリック)社では、社員が組織改革のアイデアを考えて経営陣にプレゼンし、採否を判断する場としてタウンホールミーティングが開催されています。
課題を早期に発見できる
経営層と社員が日頃から交流している会社ほど風通しがよくなります。タウンホールミーティングを通じて、現場での気づきや顧客の意見などを経営層に伝えられるため、業務上の課題や新たな可能性を早期に発見しやすいでしょう。
社員のエンゲージメントを向上できる
社員にとって、普段関わることのない経営層との交流は貴重な機会になります。経営層の説明を聞いて、安心して仕事に取り組めると感じる社員も多いでしょう。また、社員自身や周囲の意見が取り入れられると、企業の一員であると自覚できます。社員のエンゲージメントが向上することで離職率の低下にもつながるのは、企業として大きなメリットといえるでしょう。
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MVVを浸透させられる
タウンホールミーティングの目的の1つとして、MVVの浸透も挙げられます。MVVは以下の頭文字を取った用語です。
・Mission(ミッション):企業の使命や目的
・Vision(ビジョン):ミッションを実現させた将来像
・Value(バリュー):企業の価値や行動基準
MVVは、企業の存在意義や社会的正当性を示すために欠かせません。経営層のメッセージを顔が見える状態で直接現場に届けて対話をすることで、社員に信頼してもらいやすくなります。
SNSと併用できる
タウンホールミーティングはSNSと併用することも可能です。SNSを活用することで、直接意見をいえない、周囲の視線が気になる、ネガティブな意見は伝えにくい、参加人数が限られているなどの課題を解決できます。
タウンホールミーティングを実施しているものの、期待したほど効果が上がらない場合や、今後の導入に向けて新たな仕組みを探している場合は、SNSの活用を検討してみましょう。
タウンホールミーティングを開催する手順
タウンホールミーティングを開催するには、以下のような手順が必要です。それぞれのポイントを押さえつつ解説します。
1.ニーズを把握する
まずは、社内における現時点での経営層と社員のコミュニケーションの状況、課題、ニーズを把握しましょう。タウンホールミーティングを開催するにあたり、どのような情報共有が必要か、社員が知りたいと思っているテーマは何かを理解・整理することが大切です。
2.目標や目的を設定する
タウンホールミーティングによって「何を達成させたいか」を明確にするために、目標や目的を設定しましょう。企業によって異なるものの、一般的には「コミュニケーションの強化」「透明性の向上」「MVVの浸透」など、組織文化の強化や社員の参加促進などが目標・目的として設定されます。
3.参加対象者を選定する
目標・目的に応じて参加対象者を選定します。参加者の特性を理解して、コンテンツやアジェンダの調整を行いましょう。さまざまな部門や役職から選定することがポイントです。それぞれの立場での視点や経験を反映させると、異なる立場からの情報も得られ、より充実したミーティングになるでしょう。
4.日程と頻度を決める
開催頻度は先述したとおり、月1回、四半期に1回、上期下期の年2回程度など企業によって異なります。開催日程は業界の特性に適した時期を選びつつ、社員の業務スケジュールも考慮しましょう。日程や頻度は、社内の状況を確認しながら柔軟に調整するのもポイントです。
5.テーマを決める
事前に定めた目標や目的に沿って、タウンホールミーティングで話し合うテーマを決めましょう。一般的には、以下のようなテーマが選ばれます。
・業績の振り返り
・全社目標に向けた進捗状況
・今後の事業計画
・ビジネスにおける最新情報の意見交換
・社員表彰
テーマに合わせて、トピック、発表者、時間配分なども決めておきましょう。
6.コミュニケーションツールを選定する
参加者が利用しやすい環境を整えるために、使用するプラットフォームやコミュニケーションツールを選定します。オンライン環境を活用する場合は、音声や動画の配信だけでなく、録画配信、点呼、アンケート配信のツールなどを活用すると、より効果的なミーティングが行えます。
7.参加者へ知らせる
タウンホールミーティングの内容が決まったら、社内メールやSNS、ポスターなどを活用して参加者に知らせ、積極的な参加を呼びかけます。開催日時、参加方法、目的・開催意義などを明記しておくことが重要です。
8.リソースを確保して技術確認を行う
タウンホールミーティングを円滑に進めるために、会場の手配、オンラインツールの設定、必要機材の準備などのリソースを抜けのないように確保し、技術確認も行っておきましょう。発表者のプレゼンリハーサルも済ませておくと安心です。進行やタイムキーピングの担当者も交えて、スムーズに実施できるように準備しておきます。
9.参加者が参加しやすい環境を整える
社員のなかには、普段関わりの少ない経営者層と接する場面に緊張する人もいます。開催にあたって、参加者がリラックスしつつ、積極的に参加できる環境を整備することが重要です。オンライン開催の場合は、チャット機能の活用、絵文字リアクション機能などの活用を推奨するのもよいでしょう。社員が積極的に参加できるような要素を取り入れると効果的です。
10.フィードバックを集めて進捗を管理する
タウンホールミーティングを実施した後は、参加者からのフィードバックを収集することが大切です。よかった点はもちろん、改善点を把握することで次回のミーティングに生かせます。タウンホールミーティングで発表されたテーマに対して、決定事項があった場合は、その後の進捗状況を管理できるプロセスも構築しましょう。
11.PDCAサイクルを活用する
社員からのフィードバックを収集したら成果を振り返り、PDCAを回しましょう。得られた情報を基にコンテンツ内容を改善し、必要に応じて変更します。PDCAサイクルを繰り返すことで持続的な改善を目指し、組織のパフォーマンス向上につなげましょう。
タウンホールミーティングの課題
タウンホールミーティングには多くのメリットがある一方で、課題もいくつかあります。以下のような課題を解決することで、より高度なタウンホールミーティングを開催できるでしょう。
質疑応答の質
タウンホールミーティングでは、質疑応答の時間を設けるのが一般的です。しかし、場合によっては、内容が薄い質問や当たり障りのない質問ばかりになってしまうこともあります。社員側の質問力も問われるため、実りあるタウンホールミーティングにするためには、いくつかの質問例を準備しておくのもおすすめです。
部門間の連携
タウンホールミーティングを主催するのは、経営層や人事部門となることが一般的です。ただし、タウンホールミーティングを成功させるためには、主催部署ばかりではなく、経営層、広報、IT部門などの複数の部署やチームの連携が欠かせません。
関係者のスケジュール調整
社員数が多い大企業などは、関係者を一堂に集めるのが難しいケースもあるでしょう。参加者がシフト勤務の場合は、タウンホールミーティングの開催時間が勤務時間外のケースも考えられます。
オンライン開催ではない場合は、遠方の支社にいる社員ほど本社に来るのが困難になるうえ、業務を中断しなければなりません。顔を合わせなくても問題ない場合は、オンライン形式で行った方がコストも抑えられます。
外資系企業の言語問題
外資系企業は日系企業に比べ、タウンホールミーティングを行う頻度が多い傾向にあります。企業内の共通語が英語の場合は、質問も英語で行うように指定されることもあるでしょう。とはいえ、英語力に不安がある社員は、質問せずに黙ってしまうかもしれません。
質問しない社員に対しては、関心がないように見えてしまう可能性もあります。英語の質問は日本語で行うよりも難易度が上がるため、事前に質問をいくつか用意しておくように促しましょう。
タウンホールミーティングの注意点
タウンホールミーティングを開催するにあたり、以下の点に注意しましょう。
事前に参加者には課題と目的を共有する
参加者には、事前にタウンホールミーティングの課題と目的を共有しておきましょう。何のために集められたのか分からないまま参加しても、有意義な意見交換はできません。事前の通知は、共有が必要な資料とあわせて、漏れ・抜けのないように文書で行うのがおすすめです。当日持参するものがあれば明記しておきましょう。
ファシリテーターを選定する
ファシリテーターを選定しておくのも重要です。ファシリテーターは、発言を促したり、時間を管理したりする役割があります。経営層がファシリテーターを兼ねると発言が長引いてしまうことがあるため、進行を専門としたファシリテーターを設置しましょう。
対話しやすい環境づくりを進める
参加する社員の緊張感を和らげるためにも、対話しやすい環境づくりを心がけましょう。活発な議論を期待するなら、以下のような準備をしておくのもおすすめです。
・参加者が気軽に質問できるようチャットツールの利用
・簡単な問いかけができる投票機能
・ディスカッションをする時間の確保
目的とゴールを設定する
何事も目的とゴールを決めておくとスムーズに進められます。タウンホールミーティングを何のために開催するのか、どのような発言・行動をすれば、次のアクションにつながるかなども伝えておきましょう。ただし、事前に告知しておくことが重要です。さらに、タウンホールミーティングの冒頭にも口頭で伝えると目的意識が高まります。
オンライン開催の準備・周知を行う
オンライン開催の場合は、途中で通信切断が発生すると議論が進まなくなります。そのため、ネットワークインフラを整えておくことが重要です。通信が切断してしまう一般的な原因は通信速度と通信量のため、以下の内容を参加者に周知しておくのもよいでしょう。
・パソコンで参加する場合は、他のアプリケーションを極力閉じておく
・モバイルで参加する場合は、速度制限の条件を確認しておく
複数回に分けての開催も検討する
タウンホールミーティングを一度だけ開催しても、関係者を漏れなく参加させるのは難しいでしょう。無理に会場手配を進めたり参加者のスケジュールを調整したりするのではなく、複数回に分けた開催を検討してください。
タウンホールミーティングの質問例
タウンホールミーティングでは、質疑応答の質が問われます。ここでは、質問例と回答例を紹介します。
直面している課題や今後の組織構造について
会社の将来を考える社員から、今後の課題に備えることは何かと問われるケースは多いでしょう。経営層は、今後の課題の解決方法を確認して具体的に回答しなければなりません。組織構造に関する理解は、企業の安定性や成長を維持するために欠かせない要素です。組織構造の変更が迫っている場合は、社員に理解を促す必要があります。
売上高や今後の成長について
売上高や今後の成長も寄せられやすい質問です。社員の士気に大きく影響し、離職率の低下にもつながるため、経営層はスマートな回答が求められます。「長期的な成長に何が必要か?」などは、自社の成長へ向けて相互協力に効果的な質問です。すべての社員に可能性やチャンスを提示できる質の高い質問といえるでしょう。
プロジェクトについて
今後のプロジェクト参加への質問は企業の将来性が分かる質問です。企業の方向性や計画性を知るのにも効果的な質問といえるでしょう。
M&Aについて
M&Aは会社を刷新し、新鮮さを吹き込む効果があります。自社にM&Aの可能性がある場合は、どのような効果を期待しているのか、企業の成長や拡大にどのように影響するかなど、具体的に回答しましょう。
リーダー育成や管理者研修について
「リーダーとなり得る人材はいるか?」などは、社員がリーダーに必要な要素を確認できる質問です。リーダー育成に関する質問は、リーダー候補者のスキルや姿勢を学ぶチャンスになります。また、管理者の育成方法に関する質問があれば、経営ビジョンの実現に向かう姿勢も伝えられるでしょう。
タウンホールミーティングを導入している企業事例
最後に、タウンホールミーティングを導入している企業事例を3つ紹介します。
電機メーカーの事例
国内外に社員がいる大手電機メーカーでは、タウンホールミーティングで定期的に対話を行っています。社員が経営層と直接意見交換を行い、現場の声を反映させることが目的です。また、経営方針の共有や社員との距離を縮めるため、オンラインツールを駆使して全社規模での対話を行い、社内の一体感を醸成している電機メーカーもあります。
銀行の事例
ある大手銀行では、組織全体の透明性を高め、経営方針を迅速かつ効果的に社員へ浸透させるために、タウンホールミーティングを導入しました。急速な金融環境の変化に対応するため、現場の声を経営に生かし、迅速な意思決定と柔軟な対応が求められた背景があります。
経営方針やビジョンを全社員に共有することで、社員の理解や協力を促し、組織全体のエンゲージメントを向上させる狙いもありました。特定のグループに焦点を当てたミーティングを行うことで、多様な視点からの意見交換が実現され、組織の活性化に寄与しているようです。
保険会社の事例
大手の保険会社では、リモートワークの増加によって社内コミュニケーションが減少し、一体感が薄れることを懸念していました。そこで、社内の一体感と活力を高めることを目的に、タウンホールミーティングを導入しています。
社員の意見や質問を匿名で受け付け、経営層が真摯に対応する直接的な対話によって、社内コミュニケーションの活性化を狙いつつ、協力的で活気に満ちた組織づくりに取り組んでいるようです。
まとめ
タウンホールミーティングは、企業の経営層と社員が直接対話する場を提供し、透明性や信頼感を高める目的で多くの企業が導入しています。タウンホールミーティングの定期的な開催とPDCAサイクルの活用により、継続的な改善を目指し、組織全体の活性化を図ることが可能です。
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