こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
総労働時間とは、特定期間における労働時間の合計をいいます。適切な人事労務管理においては、従業員の労働環境を定期的に見直していくことが重要です。
この記事では、労働時間の考え方と計算方法を解説します。
総労働時間とは?
「総労働時間」は労働時間に関する考え方の1つです。ここではまず、総労働時間の基本的な定義について見ていきましょう。
労働時間の定義
そもそも、労働時間と勤務時間は異なる意味を持っています。勤務時間とは、「各従業員の始業から終業までの時間」を指す言葉です。
それに対して、労働時間は「勤務時間から休憩時間を引いた時間」のことを指します。つまり、労働時間は従業員が実際に働いた時間を意味するということです。
労働時間と総労働時間との違いは?
一般的に「総労働時間」というときには、特定の期間における合計の労働時間を示すことが多いです。たとえば、ある従業員について、1週間もしくは1ヶ月あたりの総労働時間を計測するといった具合です。
この場合、総労働時間には通常の労働時間だけでなく、「時間外労働時間」や「休日労働時間」も含めて考えるのが基本です。
法定労働時間と所定労働時間
労働時間は企業側が際限なく決められるというものではありません。既定の枠組みのなかで、ルールを守って設定する必要があるのです。
ここでは、具体的な枠組みとして「所定労働時間」と「法定労働時間」の2つについて解説します。
所定労働時間とは?
所定労働時間とは、各企業が就業規則で定めた労働時間のことです。より詳しく表現すれば、「就業規則や雇用契約書に記載された始業時間から就業時間までの時間のうち、休憩時間を差し引いた時間」を指します。
たとえば、就業規則で始業時間9時、終業時間が18時となっており、休憩時間が1時間である場合、所定労働時間は8時間となります。
法定労働時間とは?
法定労働時間とは、労働基準法によって定められた労働時間の上限のことです。具体的には、「1日あたり8時間以内」「1週間あたり40時間以内」が上限とされており、企業は原則としてこの上限を超えない範囲で所定労働時間を設定しなければなりません。
ただし、労働者と企業の間で「36(さぶろく)協定」を結べば、法定労働時間を超える労働も例外的にみとめられます。その内容については、次のブロックで詳しく解説します。
法定労働時間を超過したら
前述のように、原則として、法定労働時間を超過した所定労働時間を設定することはできません。1分でも法定労働時間外の労働が発生すれば、労働基準法違反となり、企業が罰則の対象となってしまいます。
しかし、「36協定」を結べば、例外的に時間外労働を設定することも可能です。ここでは、36協定の具体的な内容について見ていきましょう。
普通条項
36協定を結んだ場合でも、法定労働時間を超えて労働させられる時間には上限があります。原則としては、「月45時間・年360時間」が法律上の時間外労働の上限とされています。
この決まりが定められた条項を「普通条項」と呼び、時間外労働の基本的なルールとして広く知られています。なお、後述する「変形労働時間制(そのうち3ヶ月を超えた1年単位のもの)」を採用する場合は、「月42時間・年320時間」が上限となります。
特別条項
36協定を結んだとしても、普通条項の範囲を超える時間外労働を設定することは禁じられています。しかし、緊急時の対応が必要なときなどは、「特別条項付き36協定」を結んで、例外的に上限の枠を広げることが可能です。
労働者の過度な負担を避けるために、特別条項の上限については、様々な規定が設けられています。基本的な法定労働時間と36協定の普通条項・特別条項の上限については、以下の一覧表で改めて確認しましょう。
内容 | ||
法定労働時間 | ・1日あたり8時間以内 ・1週間あたり40時間以内 | |
36協定 | 普通条項 | 以下の条件内で時間外労働の設定が可能 ・月45時間まで ・年360時間まで |
特別条項 | 以下の条件内で時間外労働の設定が可能 ・年720時間まで ・「時間外労働+休日労働」の合計が月100時間未満 ・「時間外労働+休日労働」の合計を一定の条件下(※)で平均したときに月80時間以内 ・月45時間を超えられる回数は6回まで |
※2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月のどの部分の平均をとってもすべて1ヶ月あたり80時間以内であること
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労働時間の管理は、自社の人材を守り、育成していくうえで基本的な土台となるテーマです。単に数字を管理するのではなく、そこから得られる多面的な情報を分析し、効果的な人材育成に活かしていくのが理想といえるでしょう。
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総労働時間の上限
それでは、実際に時間外労働を含めると、設定可能な総労働時間の上限はどのように計算できるのでしょうか。ここでは月間と年間のそれぞれについて見ていきましょう。
1月あたりの総労働時間上限
1ヶ月あたりの総労働時間上限は、厳密に言えば月の日数によって異なります。そこで、以下の手順で、特別条項を含んだ場合の総労働時間の上限を計算していきましょう。
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たとえば、土日や祝日を休みとすると、2023年の6月の所定労働日数は22日です。そのため、通常の労働時間の上限は「22日×8時間=176時間」となります。
続いて、時間外労働・休日労働の上限は、特別条項の「1ヶ月100時間未満」を守って設定しなければならないので、最大でも100時間と考えられます。そこで、所定労働日数が22日なら、上限は「176時間+100時間=276時間」と計算できました。
ただし、この数字はあくまでも理論上の最大値であり、「所定労働日数に応じて通常の労働時間が短くなる」「2~6ヶ月のすべてにおいて平均80時間以内」という条件を踏まえると、実際にはさらに短くなると考えておく必要があります。
年間の総労働時間上限
1年間の総労働時間上限は、以下の手順で計算できます。
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1年間の週数は、うるう年を除くと「365日÷7日=約52.14(うるう年なら約52.29)」と計算できます。この数字に、1週あたりの法定労働時間である40時間をかけると、年間の法定労働時間は「約2085.7時間」となります。
ここに、特別条項の上限である年720時間以内という条件を加えると、年間の総労働時間の上限は「2805.7時間」と計算できます。ただし、特別条項はあくまでも例外的な事情がなければ認められない点に注意が必要です。
変則的な労働時間
労働時間の取り決めについては、法定労働時間の範囲内であれば、労働者の柔軟な働き方を実現するうえで様々な形式に変形することも可能とされています。ここでは、代表的な種類をご紹介します。
フレックスタイム制
簡単に言えば、労働者が自主的に始業時間・終業時刻を決められるという方式です。フレックスタイム制を導入するうえでは、1~3ヶ月以内の一定期間内で一定時間の労働をすることと定めたうえで、期間内の労働時間が「1週あたり平均40時間以内」に収まることが条件とされています。
変形労働時間制
「1週間・1ヶ月・1年」といった一定期間において、期間内の労働時間が「1週あたり平均40時間以内」に収まるのであれば、特定の日や週に法定労働時間を超えた労働時間を設定できるという制度です。
みなし労働時間制
実際の労働時間に関わらず、あらかじめ労使間で取り決めた労働時間数に相当する分の賃金を支払う制度です。みなし労働時間制には「事業場外みなし労働時間制」と「裁量労働制」の2種類があり、さらに裁量労働制は業務の内容に応じて「専門型」と「企画業務型」の2つに分かれます。
総労働時間に含まれる時間と含まれない時間
総労働時間の中に含まれる時間と、含まれない時間がある点に注意しておきましょう。それぞれのポイントについて解説します。
休憩時間
賃金の支払い義務がある労働時間の中には、休憩時間は含まれません。社内にいる時間が例えば8時間であったとしても、そのすべてが労働時間になるわけではないのです。
昼休憩として45分の休憩を認めているのなら、労働時間は7時間15分ということになります。
有給休暇
有給休暇は実際に働いている時間ではないので、実労働時間としては扱われません。ただし、所定労働時間としてはカウントされるため、事業主には賃金の支払い義務が発生します。
始業前の掃除や朝礼
始業前の掃除や朝礼への参加が強制的で、常に行われているものであれば、労働時間として見なされます。会社として行っているのであれば、適切に労務管理が行われているかをチェックしてみましょう。
暗黙の指示による残業
通常の業務時間内で終わらないような業務量であったり、遅くまで会社に残ることが常習化していたりするのであれば労働時間であると判断される可能性が高いでしょう。
命じられて参加する研修
会社から強制されて参加する研修は、労働時間と見なされます。例えば、会社が本来休みの日に参加させられる研修などが該当するでしょう。
まとめ
従業員の健康維持やワークライフバランスの実現のためには、総労働時間の把握が重要です。労働時間に含まれるものと含まれないものを正しく理解し、従業員の不満が生じないように適切な労務管理を行いましょう。
しかし、個々の従業員の労働環境を丁寧にチェックするのは大変な作業でもあります。そこで活用したいのが、「タレントマネジメントシステム」です。
タレントマネジメントシステムとは、人材の能力やスキルを最大限に発揮してもらうために、人材データを集約・一元管理して、高度な意思決定を可能にするシステムをいいます。人材一人ひとりのスキルや保有資格、経歴などのデータをもとに、計画的な人材育成や高度な配置戦略を練るために活用できます。また、タレントマネジメントシステムである『タレントパレット』は、データに基づいた科学的な人事を実現するためのシステムです。
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