タレントマネジメントシステムの市場規模は?拡大の背景や歴史、今後の展望を解説


タレントマネジメントシステムの市場規模は?拡大の背景や歴史、今後の展望を解説

時代の変化とともに企業の在り方も変わり、タレントマネジメントシステムを取り入れる企業は増えています。実際にタレントマネジメントシステムの市場規模が拡大していることからも、注目が高まっていることが分かるでしょう。この記事ではタレントマネジメントシステムとは何か、その市場規模や今後の展望なども含めて解説します。

タレントマネジメントとは?

タレントマネジメントがどのようなものなのか、タレントマネジメントシステムとあわせて解説します。


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タレントマネジメントの意味

タレントマネジメントとは企業が社員の能力(タレント)を一元管理し、育成や配置に活用する考え方のことです。社員にはそれぞれ異なる能力やスキルがあります。しかし、その力を十分活かせていないケースもあるでしょう。


タレントマネジメントでは人材の能力を最大限発揮してもらい、企業の生産性を高めることを目指します。適性に合った業務を担当できれば、社員のキャリアアップにもつながるでしょう。なお、タレントマネジメントの対象は、非正規職員を含めた全社員です。


タレントマネジメントシステムとは?

タレントマネジメントシステムは、上記のタレントマネジメントを効率的に推進するためのシステムです。社員の情報を統一された形式で一元管理できるため、複数の社員を客観的に比較検討できます。


従来は履歴書や職務経歴書などの紙ベース、表計算ソフトのようなツールを使った方法も用い、社員の情報を管理する方法が一般的でした。しかし、情報の管理や活用がしやすいメリットもあり、近年はタレントマネジメントシステムへの注目が高まっています。


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タレントマネジメントシステムが注目される背景

では、なぜタレントマネジメントシステムが注目されるようになったのでしょうか。その背景を詳しく解説します。


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人材の評価方法の変化

タレントマネジメントシステムが注目される理由の1つは、人事評価や配置を検討するうえでデータが求められるようになったためです。従来は多くの企業で年功序列が採用され、給与は勤続年数に直結していました。


しかし、近年は社員個人の能力や実績の評価が重要視されるようになったことで、客観的な評価が可能なタレントマネジメントシステムが注目されています。タレントマネジメントシステムは社員の情報を一元管理でき、公正な評価につなげられるからです。


ビジネス環境の変化

ビジネス環境の変化も、タレントマネジメントシステムが注目を集める背景になっています。近年では終身雇用制度が崩れ、職を問わず社員の転職が増加しました。人材が流動化していることで、企業にとっては人材確保が重要な課題となっています。


新たな人材を確保するための競争が激化しているため、社員の能力開発に力を入れる必要がでてきました。定着率を上げるためにも、タレントマネジメントシステムは欠かせないものになりつつあります。


ワークライフバランスの普及

正社員や契約社員、フリーランスなど、さまざまな雇用形態の人が同じ企業で働くことも珍しくありません。リモートワークも普及し、近年は働き方が多様化しました。仕事だけではなくプライベートも大切にする人が増え、社員が企業に求めるものも変化しています。


企業側も人手不足を考慮し、ワークライフバランスを重視する傾向が強まってきました。社員に合った教育をしたり、適切に人材を配置したりするためにも、タレントマネジメントシステムは重要です。


DX化と技術向上

データやデジタル技術を活用することが当たり前になり、DX化に伴ってタレントマネジメントシステムを取り入れる企業も増えています。人事を人の手に頼っていた従来とは違い、難しい分析も手間をかけずにできるのは大きなメリットです。


技術の発達はめざましく、高度なシステムも以前に比べると廉価で導入しやすくなりました。タレントマネジメントシステムも幅広い製品が登場しているため、これまでよりも導入するハードルが下がり、取り入れる企業が増えています。


タレントマネジメントの歴史

多くの企業で取り入れられるようになったタレントマネジメントはいつ、どのようにして始まったのか、その歴史は以下の通りです。


タレントマネジメントはアメリカ発祥

タレントマネジメントは、アメリカで1990年代に提唱された概念です。現在のタレントマネジメントは人材育成にも活用されますが、もともとは人材育成にフォーカスされておらず、優秀な人材の発掘を目的としていました。


しかし、人材の発掘重視だけでは、既存社員のモチベーションを保つことは簡単ではありません。そのため、タレントマネジメントの在り方が再考され、人材配置やリテンションを重視する方向に変わってきました。


日本におけるタレントマネジメント

日本でも1990年代から、給与システムをはじめとする人事関連のシステムが取り入れられてきました。しかし、当時の人事制度や雇用慣行では、アメリカのようにタレントマネジメントを実施するのは難しい状況でした。日本では2000年代に人事管理システムが登場して業務が効率化され、社員の能力を経営資源として活用する土台もできてきています。


タレントマネジメントシステムの登場

2010年頃になると欧米のタレントマネジメントシステムが、外資系企業を中心に日本でも取り入れられるようになりました。その後、国内の企業でも導入するところが増え、国産のタレントマネジメントシステムも登場するようになっています。


現在では、さまざまな機能を備えたシステムが開発されるようになりました。国内のタレントマネジメントシステム市場規模は拡大しており、今後も成長していくと考えられています。


日本・欧米のタレントマネジメントシステムの違い

多くの国でタレントマネジメントシステムが開発・活用されていますが、どこも同じではありません。日本と欧米でも、後述するような違いがあります。


日本・欧米は雇用の仕組みが異なる

ビジネスの現場では、国や地域を問わずタレントマネジメントシステムが注目され、ニーズが高まっています。もともとタレントマネジメントシステムはアメリカが発祥で、欧米を中心に開発されてきたものです。


欧米のタレントマネジメントシステムをそのまま使うと、日本の制度との間でズレが生じ、機能にも過不足が出る可能性があります。仕組みとしては、欧米の雇用はジョブ型である一方、日本の雇用はメンバーシップ型です。


ジョブ型雇用とは

欧米で一般的なジョブ型雇用とは、企業が設定したポジションに要件の合う人材を確保する雇用の仕組みです。ポジションと人材、業務などをリンクさせているため、職務内容や必要なスキル・資格などを限定し、マッチする人材を採用します。他の部署への異動は難しい側面があるものの、タレントマネジメントシステムとの相性はよい傾向です。


メンバーシップ型雇用とは

日本のメンバーシップ型雇用は、ポジションに対する要件を明確にしません。また、能力の開発やスキルアップなどを目的に行う、ジョブローテーションのような日本特有の制度もあり、欧米の雇用制度とは根本的に異なります。欧米のタレントマネジメントシステムをそのまま適用するのは難しいため、職務要件の整理や人事制度の改革などを検討する必要があります。


国内タレントマネジメントシステムの市場規模

株式会社矢野経済研究所の「HCM市場動向に関する調査(2021年)」を見ると、国内におけるタレントマネジメントシステムの市場規模は、2019年で148億8,200万円でした。翌年の2020年には180億9,600万円となり、22%の増加を達成しています。


野村総合研究所の「ITナビゲーター2021年版」では、タレントマネジメントシステムをはじめとした採用支援サービスや、エンゲージメント管理システムを合わせた市場を公表しています。こちらは2026年に447億円規模になる予想です。市場規模の推移を見ても、タレントマネジメントシステムはビジネスにおいて、重要な要素になると考えられます。


※参考:HCM市場動向に関する調査を実施(2021年)|株式会社矢野経済研究所

※参考:ITナビゲーター2021年版|野村総合研究所


市場は拡大傾向

タレントマネジメントシステムの市場規模は、以下のような変遷を辿っています。「HCM市場動向に関する調査(2021年)」では2019年時点で約148億円だったところ、2020年には約180億円になりました。


この調査が発表された時点では、2021年の予測が約217億円です。さらに2022年は約290億円と予測され、2019年から2022年の3年間で倍近くになると予想されているほど、拡大傾向は続いています。


※参考:HCM市場動向に関する調査を実施(2021年)|株式会社矢野経済研究所


市場規模の予測

「ITナビゲーター2021年版」でも、タレントマネジメントシステムの市場は拡大が続くとの予測が出されました。野村総合研究所の調査では、HRテック市場の規模予測が公表されています。これは、タレントマネジメントシステムに加え、採用支援サービスやエンゲージメント管理システムを合わせた内容です。


HRテック市場規模は2020年時点で773億円でした。2026年には1,995億円の規模にまで拡大するとされ、今後もタレントマネジメントシステムは、企業にとって重要なシステムであると予測できます。


※参考:ITナビゲーター2021年版|野村総合研究所


タレントマネジメントシステムの現状

タレントマネジメントシステムの現状について、一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が発表している「企業IT動向調査報告書 2023」から状況を解説します。


企業規模別の状況

売上高別 「タレントマネジメント」の導入状況を見てみると、売上高が1兆円以上の企業では2022年度の導入済みが60%、試験導入中・導入準備中が17.5%でした。一方で、売上高が1,000億円以上1兆円未満では、導入済みが売上高1兆円以上の企業の半分以下で、30%にも達していません。


売上高100億円未満の企業では、導入の検討すらされていない割合が75.1%です。調査の結果から、売上高が高い企業ほど、タレントマネジメントシステムを積極的に導入しようとする傾向があります。


※参考:企業IT動向調査報告書 2023|一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)


業界別の状況

「企業IT動向調査報告書 2023」では、新規テクノロジーの業種グループ別導入済み割合もまとめています。2022年度でタレントマネジメントシステムの導入が最も進んでいるのは、導入済み割合が23.8%の金融・保険業でした。


2位は社会インフラ業の23.3%で、1位の金融・保険業に近い割合で導入が進んでいます。一方でサービス業や運輸・倉庫・不動産業は14%台、小売・外食業が12%台です。最も導入済みの割合が低かったのは、基礎素材型製造業の9.5%となっており、業界によってタレントマネジメントシステムの普及率は大きく異なります。


※参考:企業IT動向調査報告書 2023|一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)


タレントマネジメントシステムのグローバル市場規模

タレントマネジメントは国内で拡大傾向が続き、まだまだ拡大すると予測されています。グローバル市場も同様に拡大していくと考えられ、その年間成長率の予測は10%以上です。特にアメリカをはじめとする諸外国での成長率が高く、タレントマネジメントシステムの市場規模は、少なくとも2030年代にかけてグローバル規模でも拡大が続くでしょう。


タレントマネジメントシステムの展望

国内のタレントマネジメントシステムの市場規模や現状、グローバル市場規模を確認したところで、今後の展望も確認しておきましょう。


人事部門の重要性が高まる

働き方や雇用の在り方は、従来に比べても変化しています。今では、終身雇用制度が当たり前でなくなり、社員が転職するのは珍しくありません。人材の流動化が進む状況において、企業の人材確保はより重要になります。


採用に関することだけではなく、自社の人材に対する教育や能力開発にも力を入れる必要が高まるため、タレントマネジメントシステムの役割も拡大するでしょう。人事部門の重要性が、これまで以上に高くなることが予想されます。


戦略人事が必要とされる

戦略人事とは企業の経営戦略に人事部が関与し、人的資本である社員を有効に活用していこうとする手法です。社員の能力を戦略的に活用するためには、タレントマネジメントシステムの存在が欠かせません。


システムによって社員ごとの能力やスキルが見える化され、業務との適性を公平に評価しやすくなります。今後は、より戦略人事による人的資本の最大化につなげるための手法として、タレントマネジメントシステムの重要性が高まるでしょう。


人的資本経営が重視される

人的資本経営とは、社員がもつ知識やスキルなどを資本とみなし、その価値を最大限に活かそうとする経営手法です。2019年には、人的資本に関する情報開示のガイドライン、ISO30414が公表されています。


日本政府も企業に対して経営情報の開示を求める方針を打ち出しており、2023年には有価証券報告書への人的資本の記載義務も定められました。この方針に対応するため、今後はタレントマネジメントシステムにも人的資本に関する開示項目や、情報を自動集計する機能が加えられる可能性があります。


タレントマネジメントシステムの市場拡大で求められるもの

タレントマネジメントシステムの市場が拡大するなか、企業に求められるものとして、特に以下の2点が重要です。


自社の制度見直し

タレントマネジメントシステムは、人材教育や適切な人材配置などに利用できるのはもちろん、前述したように戦略人事への利用も広がっています。とはいえ、アメリカが発祥のタレントマネジメントの手法を最大限利用しようとすると、国内の企業では制度のアジャストが必要です。


終身雇用制度を背景としたメンバーシップ型雇用を採用している日本企業が、タレントマネジメントシステムを効果的に活用するためには、自社制度の見直しなどが求められます。


ミクロな才能をマクロにつなげる取り組み

社員ごとの能力やスキルは、ミクロ的だといえます。それに対して企業全体の生産性は、マクロ的だといえるでしょう。企業が人的資本経営を重視し、さらに発展していくためには、ミクロなタレントを育てるだけではなく、最終的にマクロ的な経営戦略につなげる取り組みが必要になります。


タレントマネジメントに取り組む際は、ミクロ的な部分だけにフォーカスするのではなく、マクロ的な企業としての目標も見据えておくことが重要です。


まとめ

タレントマネジメントシステムは1990年代にアメリカで提唱され、欧米を中心に発展しました。日本でも人材の評価方法やビジネス環境の変化、ワークライフバランスの普及など、社会の変化とともに注目され、市場規模が拡大しています。


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