こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。雇い止めとは、有期雇用労働者との労働契約を期間満了に伴い終了させることで、会社都合退職や自己都合退職とは異なります。
本記事では、雇い止めと会社都合退職・自己都合退職の違いや、トラブルを防止する方法を具体的に紹介します。
雇い止めとは
まずは雇い止めと会社都合退職、自己都合退職との違いについて見ていきましょう。
雇い止めとは
雇い止め(雇止め)とは、有期雇用労働者との労働契約を期間満了後に終了させることです。有期雇用労働者とは、3年以内の期間で企業と雇用契約を結んでいる労働者のことで、一般的には契約社員・アルバイト・パートタイマーなどと呼ばれます。
企業は、繁忙期に人員を増やしたい場合などに有期雇用労働者を採用し、期間満了後に契約を終了させることで、柔軟に雇用調整ができます。正社員の解雇は法律上さまざまな規制がありますが、もともと臨時対応を目的とした有期雇用労働者の雇い止めは、一定の条件を満たしていれば法律上問題ありません。
「雇い止め」については、こちらの記事をご確認ください。
雇い止めと会社都合退職や解雇の違い
会社都合退職とは、解雇・退職勧奨・倒産など会社側の都合で、契約期間中に労働契約を終了させることを指します。解雇とは会社都合退職の一つで、会社の業績悪化や労働者の勤務不良など、やむを得ない事情がある場合に、会社から一方的に労働契約を終了させることです。
解雇をはじめとした会社都合退職は、労働者にとって大きな不利益となるため、認められる理由は法律で制限されています。また、有期雇用労働者はもともと期間が決まっている契約形態であるため、契約期間途中の解雇は正社員以上に厳しく制限されているのが特徴です。
雇い止めと自己都合退職の違い
自己都合退職とは、労働者からの申し出により、契約期間中に労働契約を終了させることや、契約を更新しないことを指します。民法では、労働者が退職日の2週間以上前に契約解消の申し出を行うことで、労働契約を解消できると定められています。
ただし、有期雇用契約の場合は、1年に満たない契約期間中に労働者都合で一方的に退職することは契約違反です。1年を超える雇用契約を結んだ場合は、1年が経過した日以降、労働者からの申し出によりいつでも退職できます。
雇い止めは会社都合で行える?
契約期間の満了による雇い止めは法律上問題ない行為ではありますが、労働者保護の観点から、状況によっては認められないこともあるため注意しましょう。ここでは、雇い止めが無効になる基準や裁判例について解説します。
雇い止めが無効になる基準例
労働契約法第19条では、以下2つのどちらかに該当する場合は、合理的な理由がなければ雇い止めが無効になると定められています。
一つ目は、過去に長期・複数回の契約更新があり、雇い止めが無期雇用労働者の解雇と同視できるケースです。具体的な回数・期間としては、更新回数が3回以上、もしくは契約期間が通算1年を超えている場合が該当します。期間に加えて、仕事内容が正社員と変わらない場合など、客観的に見て正社員と同視できる場合に雇い止めが無効になることがあります。
二つ目は、労働者が契約更新を期待できる理由があるケースです。たとえば、雇用主側から継続雇用を期待させる言動があった場合や、仕事内容が恒常的である場合などが該当します。
雇い止めが認められなかった裁判例
雇い止めが認められなかった裁判例の一つとして、「東芝柳町工場事件」が挙げられます。本件は、契約期間2ヵ月の有期雇用労働者らが、5回〜23回にわたって雇用契約を更新された後に、会社から雇い止めの意思表示を受けたというものです。
本件では、会社側から長期継続雇用や、正社員への登用を期待させる言動があった上、仕事内容は正社員との差異がなく、契約更新手続きについても形骸化している実態が確認されています。判決ではこれらの状況を鑑み、雇止めが「無効」と判断されました。
労務管理だけで終わらない、あらゆる人事データを統合して分析
時代は人材情報「管理」から人材情報「活用」へ!
タレントマネジメントシステム『タレントパレット』で、さまざまな労務課題と向き合えます。
・ペーパーレス化で労務管理、手続きを効率化
・入社手続きや身上届などスマートフォンでも申請可能
・自動チェックで入力漏れ確認も不要
・データをタレントマネジメントに活用
⇒タレントパレットの資料を見てみたい
雇い止めのトラブルを防ぐための方法
続いて、雇い止めのトラブル対策について解説します。
契約期間・更新の有無・基準を労働契約で明示する
一つ目の対策は、労働契約書に更新の有無と、更新の判断基準を明記することです。具体的な更新の判断基準は、厚生労働省の「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について」で以下の例が示されています。
【判断基準の例】
・ 契約期間満了時の業務量により判断する
・ 労働者の勤務成績、態度により判断する
・ 労働者の能力により判断する
また、契約期間や更新回数の上限がある場合は、あらかじめ期間や回数を契約書に明記しておくことで、トラブルを回避できるでしょう。
30日前までに雇い止めの予告をする
二つ目の対策は、30日前までに雇い止めを通知することです。特に、3回以上または1年以上契約が更新されている労働者に対しては、期間満了以外の合理的な理由とともに1ヵ月前の予告が必須となります。具体的な雇い止めの理由については、厚生労働省の「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について」で以下の例が示されています。
【雇い止めの理由例】
・ 前回の契約更新時に、 本契約を更新しないことが合意されていたため
・ 担当していた業務が終了・中止したため
・ 業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため
・ 職務命令に対する違反行為を行ったこと、 無断欠勤をしたこと等勤務不良のため
契約更新手続きは面談などで丁寧に行う
三つ目の対策は、契約更新の手続きを、契約期間満了前に面談などで丁寧に実施することです。説明なく書類を交付して署名押印をさせる、契約期間を過ぎた後に更新手続きを行うなど、手続きが形だけのものになっている場合は、期間に定めのない契約と実質的に変わらないと判断され、雇い止めができなくなることもあります。
臨時的・補助的な仕事に限定する
四つ目の対策は、有期雇用労働者の仕事内容を、臨時的・補助的な仕事に限定することです。たとえば、数ヵ月間の繁忙期のみの雇用や、育児休業者の代替要員としての雇用などが挙げられます。継続的に必要となる業務や正社員と同じ仕事を行っている場合は、期間に定めのない雇用と実質的に変わらないと判断され、雇い止めが認められないことがあります。
同様の有期雇用労働者間で異なる取り扱いをしない
五つ目の対策は、同様の有期雇用労働者間で異なる取り扱いをしないことです。合理的な理由なく特定の労働者のみ雇い止めを行い、ほかの労働者は雇い止めをしない、したことがないというケースでは、雇い止めが認められなかった裁判例も存在します。
能力不足や勤怠不良などで、特定の労働者のみ雇い止めを行う可能性がある場合は、前述した「更新の基準」を契約書などに明記しておくと良いでしょう。その上で、当該労働者の能力不足や勤怠不良を客観的に判断できる材料をしっかりと集めておくこともポイントです。
まとめ
雇い止めは、有期雇用契約の期間満了にともない労働契約を終了させることで、解雇などの会社都合退職とは異なります。雇い止めは解雇ほど厳しい制限はありませんが、労働者を守るために一定の制限があるため、正しい理解と対策が必要です。
契約社員やパートなど雇用形態の種類が多様化すると、人材管理が煩雑になりやすく、管理職の負担が増える可能性もあります。タレントパレットなら、あらゆる人事データを統合し、人材管理を効率化できます。多様な雇用形態に対応できる人事システムをお探しの方は、ぜひタレントパレットをご検討ください。
タレントパレットのHPはこちら