ストレスチェック義務化は50人未満の事業場にも適用される?


ストレスチェック義務化は50人未満の事業場にも適用される?

ストレスチェックは、社員が50人以上いる事業場で義務化されている検査です。50人未満の事業場のストレスチェックは、努力義務という位置付けに留まっているものの、事業場の規模を超えて関心が年々高まっています。

この記事では、ストレスチェックを50人未満の事業場でも実施する理由やメリットなどを解説します。ぜひ参考にしてください。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

ストレスチェックは、社員が50人以上いる事業場で義務化されている検査です。50人未満の事業場のストレスチェックは、努力義務という位置付けに留まっているものの、事業場の規模を超えて関心が年々高まっています。

この記事では、ストレスチェックを50人未満の事業場でも実施する理由やメリットなどを解説します。ぜひ参考にしてください。


ストレスチェックは企業の義務?

事業場で働く社員数によって、ストレスチェックが義務になるか否かは変わります。以下で詳細を解説します。


50人未満の事業場はストレスチェック義務対象外

ストレスチェックは、社員自身のストレスへの気づきの促進や、ストレスの原因となる職場環境の改善につなげることを目的として、2015年度から義務化されました。労働安全衛生法では「常時50人以上の労働者を使用する事業場」が実施の義務対象です。


「50人未満の事業場」は、努力義務(義務の対象外)と位置付けられています。50人未満の事業場は、ストレスチェックの実施にかかる時間や費用のコストが大きいため、実施は任意とされています。


※参考:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて|厚生労働省


ストレスチェックにおける「50人未満の事業場」の基準

労働安全衛生法で定められている「50人未満の事業場」の基準は、法人単位ではありません。たとえば、労働数が100人の法人でも、本社に40人、2つの支店に各30人ずつの社員が従事している場合、ストレスチェックの義務対象から外れます。


本社に60人、2つの支店に各20人ずつの場合は、本社のみが義務の対象です。労働者数としてカウントされる対象は、正社員だけでなく、労働時間のアルバイトや派遣社員なども含みます。


任意でストレスチェックする企業も

先述のとおり、事業場で働く社員の数が50人未満の場合、ストレスチェックの実施は義務ではありません。しかし近年は、50人以上の大規模な事業場だけでなく、50人未満の小規模な事業場においても、ストレスチェックに対する関心が高まっており、任意で検査を実施する企業も多くなってきています。


50人未満の事業場がストレスチェックを実施する理由

なぜ50人未満の事業場がストレスチェックを実施するようになってきているのでしょうか。主な理由を解説します。


少人数だからこそ健康を意識

人数が少ない事業場では、メンタルヘルス不調者が発生した場合、組織への影響が大きくなりやすく、少人数だからこそ社員の健康への意識が大切という認識が広まっています。厚生労働省は50人未満の事業場でも、できるだけストレスチェック実施が望ましいという考えです。事業場の労働者数の垣根を超えて、ストレスチェックが推奨されています。


メンタルヘルス対策を重視

メンタルヘルス対策を重視する企業は、義務でなくてもストレスチェックするケースが多くあります。対面では気づけた社員のメンタルヘルスの小さな変化も、テレワークが定着したことで把握しづらくなりました。ストレスチェックは、社員の健康リテラシーを高め、メンタルヘルス不調を早期発見するため実施されています。


社員数が増加傾向

事業が拡大し、社員数が増加傾向にある企業は、社員1人ひとりへのメンタル面への配慮が疎かになりがちです。そのため、義務でなくてもストレスチェックを実施するケースがあります。義務化の対象になる社員規模に達する前からストレスチェックを導入することで、社員数が50人以上に増えたあともスピーディーかつ効果的に検査が実現します。


ストレスチェックで健康経営の土台作り

健康経営とは、社員の健康管理を経営的な視点で捉え、戦略的に実施することです。企業理念に基づいて社員への健康投資を行い、社員のエンゲージメントやモチベーション向上などを目指します。社員の健康が経営の観点から担保されると、組織の生産性向上をもたらし、結果的に業績向上にもつながると期待されています。


50人未満の事業場でストレスチェックを実施するメリット

任意にもかかわらず、50人未満の事業場でストレスチェックを実施するメリットは、どこにあるのでしょうか。以下で解説します。


労使トラブルの防止

事業者には「安全配慮義務」と呼ばれる義務があり、社員が安全に働けるよう配慮する必要があります。たとえば、業務過多やパワハラなどによって精神疾患を発症した社員が、事業者に対して損害賠償を求める裁判を起こしたケースが過去にありました。


安全配慮義務の項目には、メンタルヘルス対策も含まれます。ストレスチェックを定期的に実施すれば、社員と使用者のトラブルを未然に防げるうえ、さらに社員のメンタルヘルス疾患の早期発見が可能です。


離職防止・求人費削減

高ストレス者が多い職場は、離職者が増える傾向にあります。離職が多いと人員補充のために求人を出す必要があり、費用がかかります。採用や教育などに関わる社員の負担も大きくなり、新たなストレスのきっかけになりかねません。ストレスチェックを実施すれば人員の定着率アップにつながり、求人費の削減にもなります。


メンタルヘルス不調の早期発見

ストレスチェックを定期的に行えば、社員のメンタルヘルスの不調を早期に発見しやすくなります。ストレスチェックの個々のデータを集め、集団データ分析を用いることで他部署や同業種などの数値との比較も可能です。職場の状況を可視化することで、今までは気づけなかった経営課題の発見に役立ちます。


モチベーションや生産性の向上

過度なストレス下では、集中力の散漫や無気力状態などに陥るように、社員のモチベーションと仕事の生産性には一定の関連性があります。ストレスチェックによってストレス要因を明らかにできれば、職場内で心の健康が保つことが可能です。結果として業務効率が上がり、生産性の向上につながります。


ストレスチェックが推奨される50人未満の事業場

50人未満の事業場でストレスチェックが推奨されるケースには、どのような傾向があるのでしょうか。以下で特徴を解説します。


本部がストレスチェックをしている

本部や他の事業場がストレスチェックをしている場合、ストレスチェックの実施体制が整っていると考えられます。そのため、本部の支配下にある支店や事業場などでも検査が実施されるケースが少なくありません。


すべての事業場を実施対象とすると、ストレスの傾向を読み取りやすくなります。ストレスチェックを行う際には、本社の産業保健スタッフをはじめとした、ストレスチェック制度の知識をもっている方に管理・指導を受けながら検査を行うとよいでしょう。


メンタルヘルス不調者がいる

過去にメンタルヘルス不調者がいた職場や、現在、メンタルヘルス不調の懸念がある社員がいるなどのケースでは、50人未満の事業場でもストレスチェックが行われる場合があります。メンタルヘルス不調者がいる場合、職場にストレス要因が隠されている可能性が否定できません。ストレスチェックを活用することで、新たなメンタルヘルス不調者の発生を防げます。


業務負荷が高い

長時間労働や人員不足などが常態化している場合、50人未満の事業場でもストレスチェックが行われるケースがあります。業務負荷の高い職場環境では、高ストレス者のいる社員がいる可能性が高いため、事業場の規模にかかわらず健全な職場環境を保つことが求められるためです。


社員が業務のストレスについて口頭で説明するのは難しい場合もあり、ストレスチェックを通じて状況を把握します。


50人未満の事業場のメンタルヘルス対策

50人未満の事業場では、どのようなメンタルヘルスの対策が講じられるのでしょうか。主な対策を解説します。


メンタルヘルス対策の方針を表明する

50人未満の職場でメンタルヘルス対策を行う際には、まず社員に「メンタルヘルス対策の方針」を表明することが重要です。義務ではなくてもストレスチェックを実施する理由を説明したうえで、どういった流れでストレスチェックを行うか示しましょう。メリットや効果も説明することで、より多くの社員からの協力が得やすくなります。


メンタルヘルス対策を継続的に実施する

メンタルヘルス対策は、短期的に効果が現れるものではなく、結果が出るまでに一定の時間がかかります。効果が目に見えなくても、諦めずに継続して定期的に実施することが大切です。


社員のなかで認識にズレがあると、ストレスチェックに意義を見出せなくなったり、社員からの協力を得にくくなったりする可能性があります。対策を講じる際には中長期的な施策を計画し、現場の社員の意見を取り入れることも大切です。


まとめ

ストレスチェックは、社員自身のストレスへの気づきの促進や、ストレスの原因となる職場環境の改善につなげることを目的として、50人以上の事業場に義務化されている検査です。近年は、50人以下の小規模な事業場においてもメンタルヘルスが重視され、ストレスチェックが実施されるケースが増えています。


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