階層別研修の概要
階層別研修とは、社員を役職や職能資格などで階層分けし、その階層ごとに行う研修です。別名「底上げ教育」「ボトムアップ研修」と呼ばれることもあります。
たとえば、新入社員の階層別研修とは、基本的なビジネスマナーや、社会人としてのマインドセットの習得などです。中堅層クラスの階層別研修は、所属している部署の課題発見力や解決能力を醸成する力を養う内容などを学んでいきます。
各階層に必要なスキルや姿勢を適切に身につけることは、企業全体の底上げにつながります。
階層別研修の目的
階層別研修の目的は、各階層で必要なスキルや姿勢を身につけることです。具体的には、役職や職能、社歴などでグループ分けされた全員が、一定のスキルを得られる教育を行います。
また、階層の平均レベルを上げ、優秀な人材育成につなげることも、階層別研修の目的の1つです。業務の意義を理解し、自らに必要なスキルを意欲的に学ぶ姿勢を習得しながら、知識やスキルを底上げします。そして、階層にふさわしいパフォーマンスを発揮できる状態を、短時間で実現できるようにします。
階層別研修と選抜研修の違い
階層別研修は底上げを目的とするのに対し、選抜研修は引き上げを目的とした研修です。選別研修は、ステップアップする前に必要なスキルや知識を身につけることが目的です。選抜監修の対象となった社員の中から、幹部候補生や管理職候補などを選抜し、さらなる研修をします。
近年行われる階層別研修とは
従来の階層別研修では、研修対象者をグルーピングし、社内で強制的かつ一貫的に均質的な研修をしていました。近年の階層別研修では、研修内を階層ごとに完全に分断し、個々に必要なスキル習得を目指す形を採用するケースが一般的です。
このような階層別研修の内容の変化は、雇用形態の多様化が要因といわれています。終身雇用が弱まり、非正規社員やフリーランス、フレックス制など多様な働き方に合わせ、研修のあり方も変化が求められているためです。
また、階層別研修は従来も行われていましたが、新人や若年層がメインでした。しかし近年は、中堅層や管理職にもスキルアップが求められ、上位の立場の社員に対しても、階層別研修をする企業が増えています。
階層別研修をするメリット
階層別研修をするメリットは、どこにあるのでしょうか。階層別研修の代表的な4つのメリットを解説します。
個人のスキルアップ
階層別研修は、個人のスキルアップが期待できます。同じ階層にいる社員のスキルのバラつきは、安定的な組織運営を実現するうえでリスクが高いです。活躍している同期と一緒に階層別研修を受けることで、若手社員のモチベーションアップになります。
会社全体のレベルが底上げされる
各層のスキルが上がることは、会社全体のレベル底上げにつながります。階層ごとに習得すべきスキルやマインドは異なり、役割の自覚や能力向上を図れるためです。
階層別研修は、自社のビジョンや経営理念の実現にも寄与します。各社員に必要なスキルやマインドの醸成は、戦略的な人材育成に不可欠であり、企業全体の高いパフォーマンスの維持や企業への大きな利益となります。
一同に研修ができ人材育成のコストを抑えられる
階層別研修は、階層ごとに一同の研修ができる点もメリットです。階層ごとに研修を行うため、研修をある程度マニュアル化することもできます。
また、全体に向けて効率的に研修ができるため、社員1人ひとりへの育成の必要がありません。他の人材育成方法と比べると、階層別研修は人材育成の時間や費用のコストを抑えやすいといえるでしょう。
階層内での横のつながりができ、相談や業務の連携がやりやすくなる
業務で関わりがなくても、研修を通して交流する機会を得られます。同じ階層の社員同士のつながりができると、お互いの仕事に関する知識や業務の進め方、悩みなどを共有できます。階層内での横のつながりができると、人材の維持や確保、新しいプロジェクトの発展なども期待できるでしょう。
階層別研修の手法
階層別研修には、どのような手法を元に実施されるのでしょうか。代表的な手法を解説します。
インプット教育
インプット教育とは、スキルや知見を与える(インプットする)研修の種類です。具体的には、集合研修や通信教育、eラーニングなどを用いて取り組む研修を指します。
新入社員教育では、基本的な知識を身につけることを第一とするため、インプット教育を行う割合が高い点が特徴です。近年ではコロナ禍の影響で、感染症対策としてeラーニングを取り入れている企業が増加傾向にあります。
アウトプット教育
アウトプット教育とは、スキルや知識をケースや自社課題を使い、アウトプットする研修の種類です。たとえば、個人発表やグループ発表など、考えていることを言語化して話すといった研修を行います。
上級管理職では上位研修になるほど、アウトプット教育の割合が多い点が特徴です。近年、対面が求められるアウトプット教育は、実施する企業が減少傾向にあります。
階層別研修の導入ポイント
階層別研修を導入する際、どのようなポイントに気をつければよいのでしょうか。4つのポイントを解説します。
トップから階層別研修を導入する
階層別研修を導入する際には、経営幹部や管理職などから始めるのが望ましい形です。階層別研修によってトップが意識改革できなければ、中堅層や若年層がどれだけ効果的な階層別研修をし、意識を変えても、企業そのものの姿勢は変わりません。まずはトップダウンで取り組むと、組織として一貫性を持ったスムーズな革新につながります。
階層別の目的を明確にする
階層ごとに研修の目的を明確にすると、より研修の効果が高まります。階層別にいくらグルーピングして、階層に適した研修を行っても、研修の目的をよく理解しないまま進めては、意味がありません。
階層別研修する際には、受講者が自らに求められるスキルや役割を理解したうえで、研修を受ける必要があります。
受講者のモチベーションを高める
階層別研修を行う際には、受講者にしっかりとした動機付けを行い、高いモチベーションで受講してもらえる工夫が必要です。上司が部下に研修を強制しても、部下自身が研修に意義を持てなければ、研修の内容を最大限活かせません。
階層の役割や目的、企業からの期待などを正しく認識してもらうことで、モチベーション向上につなげることがポイントです。
PDCAを回す
階層別研修では、PDCAサイクルを取り入れた内容がおすすめです。研修でインプットした知識は、実際の業務のなかでアウトプットしながら身につけることが大切になります。
研修終了後は受講者アンケートを行い、集計や分析などを行って、よりよい研修にアップグレードさせましょう。受講者アンケートの分析は、テキストマイニングで行うと、わかりやすく結果をまとめられます。受講者アンケートの結果をふまえ、研修後のスキルアップや評価の変化を定量的に追うと理想的です。
階層別研修の内容例
新入社員や若手社員、中堅社員、管理職によって、階層別研修はどのように違うのでしょうか。階層別研修の内容を、実際の事例を元に紹介します。
新入社員の内容例
新入社員の階層別研修は、ほぼすべてインプット教育です。主にビジネスマナーやコンプライアンス研修、ビジネス文書の作成などを行います。
今まで学生だった新入社員が、基本的なビジネスマナーを知らずに、会社全体のイメージダウンにつながるリスクを抑制します。継続性とインパクトのある階層別研修を通し、学生から社会人への意識改革を実現させ、社会人として気づきを与えられる内容にすることがポイントです。
若手社員の内容例
若手社員の階層別研修でも新入社員と同様に、ほぼすべてがインプット教育です。基礎スキル向上研修では、業務効率改善につながるWordやExcel、PowerPointなどのツールスキルを身につけます。これらの基礎ツールは、機能を使いきれていないケースが多く、同じ業務でも社員によってスキルの差がでやすい傾向にあるため、若手のうちから習得することが重要です。
OJT研修やメンター制度研修では、先輩社員が後輩に対し、業務に必要な知識やスキルを伝承して学びます。
中堅社員の内容例
中堅社員への階層別研修でも、インプット教育が多い傾向にあります。たとえば課題解決研修では、課題の発見や設定、解決の流れを意識しながら課題解決のプロセスを身につけます。
リーダーシップ研修は、リーダーとして業務を遂行する立場の社員を対象に、コミュニケーションスキルや部下を育てる能力向上を目指す研修です。
コンプライアンス研修では、不祥事防止や企業価値向上のため、遵守すべき法令や企業規則の基本的な理解を通し、リーダーとしての自覚を促します。
管理職の内容例
管理職は会社全体を俯瞰した課題解決や、人材育成、重要な意思決定の判断などが求められます。よって、階層別研修でも、全社的な組織マネジメント研修が実施される傾向にあります。どのような点を意識して組織をリードすべきか、マネージャーとしての役割など、管理職の組織運営力を養います。
管理職の階層別研修は、他の階層での研修と異なり、基本的なビジネススキルや知識などは習得しているとみなされるため、アウトプット教育が多くを占める点が特徴です。
まとめ
階層別研修とは、役職や職能資格などでグルーピングされた社員の階層ごとに行う研修です。階層別研修を実施するメリットは、人材教育コストを抑えられる点です。社員1人ひとりのスキル向上が結果として、企業全体の底上げにつながります。
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