人員配置図の作成手順とは?導入のメリットや注意点についても解説


人員配置図の作成手順とは?導入のメリットや注意点についても解説

人員配置図とは、企業の人材配置に関する情報を表や図に落とし込んだものです。人員配置図を導入することにより、人材配置の最適化が実現します。この記事では、人材配置を最適化したい企業に向けて、導入するメリットや作成の手順などを解説します。実際に導入して成功した事例も紹介しているので参考にしてみてください。


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人員配置図とは

人員配置図とは、部署や社員の人数、役職などの組織情報を集約して表や図にしたものを指します。人員配置図は1つの親から複数の子に枝分かれしている「ツリー形式」を用いて作成するのが一般的です。


組織の生産性を向上させるためには、適切な人材配置を行うことが重要です。人材配置図を導入することで、社員1人ひとりの経験やスキル、適性を可視化した状態で一元管理できます。社員の能力を最大限に生かすための部署や、役職への配置を検討する際にも活用可能です。


適切な人員の配置は、生産性の向上に加えて社員の満足度ややりがいにもつながります。離職率を低下させるためにも、人員配置図の活用を検討してみてください。


人員配置図が組織で必要な理由

人員配置図が、組織を運営する上で必要とされる理由を解説します。組織の課題を解決する手段の1つとして人員配置図を活用しましょう。


限られたリソースで目標達成

限られたリソースで企業の目標を達成するためにも、組織には人員配置図が必要だとされています。人員配置図を導入することの大きな目標は、長期的に見た企業の成長です。そのため、人材配置図の作成は、起業した時点で行うのが望ましいタイミングです。


長期的な企業の成長に加えて、企業は少子化による労働人口の減少や、売り手市場で辞退者が続出することにより、新しい人材の採用が難しい傾向にあります。また、離職率の増加による人員不足が原因で、業務の効率化を図り目標を達成するために導入する企業もあります。


採用活動や人材育成にはコストがかかるため、限られた人的資本や資金の効果的な運用が必要です。最適な人員配置が求められるため、人員配置図が必要だとされています。


スタッフのパフォーマンス最大化

社員のパフォーマンスを最大化することで、効率的な目標達成につながります。人員配置図を活用することで、社員それぞれが持つ経験・スキル・適正が可視化できるため、最適な人材配置が可能です。社員に関するデータを整理し、把握しておくことで1人ひとりの強み・弱みを考慮した人材配置を実現できます。


業務量に対して適切に人的資本を配置できているか、社員のスキルを生かせる人材配置かなど、組織内の課題を確認しておきましょう。


社員の持っている経験や能力を生かせないミスマッチした人材配置では、社員のモチベーションも向上しません。人材配置のミスマッチを減らし生産性を高めるためにも、人員配置図は有効だといえます。


働き方改革に対応した環境づくり

働き方改革に対応した環境づくりが目的で、人員配置図を作成することがあります。


テレワークや副業、育児・介護との両立など、企業に求められる働き方は多様化しています。社員にとって働きやすい環境を整えなければ、新たな人材からの応募も獲得できず採用につながらないため、選ばれるための環境づくりが大切です。


多様化した働き方のなかでも、組織の目標を叶えるためには最適な人員配置を行わなければなりません。働き方改革へ柔軟に対応し、企業の目標を達成できるように人材を配置するためにも、人員配置図の活用が有効です。


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人員配置図を導入するメリット

人員配置図を導入することで、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。導入後に期待できるメリットについて解説します。


業務効率と生産性の向上

人員配置図を導入することで、業務効率・生産性の向上が期待できます。企業の目標を達成するためにも、社員の特性を把握した適切な人員配置ができなければなりません。


どのような人材が、どこに、どれだけ配置されているのかを可視化できるのが人員配置図です。これを基に人材の配置を行うことで、業務量に対して人材が多い、または少ないといったアンバランスな配置や、業務内容にミスマッチな人材を配置することを避けられます。


業務内容や業務量に適した人材を配置できることがメリットです。その結果、社員のモチベーションやパフォーマンスの向上にも期待でき、効率的な業務遂行も実現できます。人員配置図をもとにした人材の配置で業務の効率化を図ることにより、企業全体の生産性を向上、目標を達成しやすくなるでしょう。


社内業務の活性化

社内業務の活性化を図るときにも人員配置図は活用できます。社員に関する情報を一元管理できるため、1人ひとりのスキルや能力、経験を基に適切な人員配置が可能となります。社員のデータを基に計画的な人材育成が可能です。


また、生産性の低下や業務効率が悪くなっているチームや部署があれば、課題を俯瞰して見られます。いち早く課題を抱えるチームや部署を発見し、ヒアリングを行ったうえで必要な対策を講じられるため、早期の対応ができるのも人員配置図を導入するメリットです。


また、人員配置を定期的に見直すことで、業務のマンネリ化や属人化を防ぐことにもつながります。これにより、社内における業務の活性化も期待できます。


定着率の向上

人員配置図を活用することで、社員の企業への定着率を上げることも見込めます。社員の定着率を向上させるには、社員データや組織構成、成果などの情報を鑑みて人材配置を最適化することが重要です。


適した人材配置により働きやすい環境を構築することで、継続して組織に勤めたいという意識を抱かせられます。働きやすい環境の実現は、社員のストレス軽減やメンタルヘルス対策にもつながるでしょう。


また、社員1人ひとりが業績を上げられたり、正しく評価されていると感じたりすることも大切です。スキルや経験を生かせないチーム・部署に配属されることで、思ったように成績を上げられなければ、モチベーションが低下してしまう可能性があります。仕事に対する満足度が向上することは、離職防止対策として有効だといえます。


コスト削減

適切に人材を配置することは、人件費や経費など、必要以上にコストをかけなくても済むというメリットがあります。コスト削減を検討しているのであれば、人員配置図を作成しておくとよいでしょう。


社員をそれぞれのスキルや経験を生かせるチーム・部署に配属することで、生産性が向上し成果も出しやすくなります。社員のモチベーションを上げることで定着率向上・離職防止にもつながるため、採用活動や新たな人材育成にコストを割かずに済みます。


また、コスト削減に加え、費用対効果が高くなるという点もメリットです。社員の定着率が向上することにより、業務効率が上がります。より多くの成果を出せるため、新たな人材を獲得するよりも人件費や経費を回収しやすくなるでしょう。


人員配置図を作成する手段

実際に人員配置図を作成する際、どのような手段を用いればよいのでしょうか。一般的に作成に用いられる方法を解説します。


Excelを活用する

マイクロソフト社が開発・販売を行っているExcelを活用する方法です。手軽に始められるため、まずは人員配置図がどのようなものなのかを知りたい企業にとっては、取りかかりやすい方法です。


一般的に、企業で使用する多くのパソコンには、Excelが導入されています。そのため、人員配置図の作成にあたって、高額な初期費用を投入する必要がありません。


また、人事マネジメントを行っている企業では、無料のテンプレートを配布していることもあります。こうしたテンプレートを利用することで、比較的簡単に始められるのもExcelを活用するメリットです。


一方で、組織内すべての人員管理図を統一しなければ管理が大変であることや、マクロを複雑にすることで、他の担当者への引き継ぎが難しくなるという懸念があります。また、セキュリティ面での対策を別で行う必要があるため、これらの課題を考慮した運用を心がけましょう。


システムやツールを活用する

人材を管理するために開発された専用のシステムやツールを活用して、人材配置図を作成する方法です。事業拡大や人員の増減など、変更に臨機応変な対応が求められる場合でも対応しやすくなります。


社員数が多い企業では情報も膨大になり、管理や欲しい情報を探すまでの工程が煩雑になりがちです。システムやツールによっては社員の顔写真を登録できる場合もあるため、直感的な人員配置が可能になります。ドラッグ&ドロップで配置管理ができる手軽さも、大きなポイントです。


また、社員やチーム・部署に関する必要な情報を必要なときに抽出できるため、業務の効率化を図れます。最新情報の更新も手軽にでき、担当者間や社内での情報共有も比較的容易に行えます。規模の大きい企業でも活用できるでしょう。


導入するシステムやツールによっては、人員管理以外の情報とあわせて一元管理できるため、多方面から最適な人員配置を決められるメリットがあります。


人員配置図の作成手順

人員配置図は4つの計画を策定し、その流れに沿って作成します。それぞれの計画に基づいた作成手順を解説します。


1.定員計画

定員計画とは、プロジェクトや通常業務における目標達成のために必要な役職・人材のレベルの大枠を決めて、人件費をあらかじめ計算する計画です。どの程度の予算や人材が必要になるかを決めておかなければ、具体的な人数や費用が必要になるのかが分かりません。


そのためにも、年度ごとに決められている予算も踏まえて、以下の5つに配置する人員数を決定します。


異動・配置転換

・採用

・昇進・昇格

・雇用形態の変更

・リストラ・雇い止め


人材の異動や配置転換の他にも、採用やリストラ・雇い止めなど人材の増減も計画しておきます。


社員への人件費がいくらになるのかによっては、社員のモチベーションや生産性が低下することにもつながるため、慎重に決定しましょう。


2.要員計画

要員計画は、定員計画よりも一歩進んだ段階の計画です。現在の予算や人員配置をもとに各部門を見直し、目標を達成するために適切な人員を配置する計画を指します。


要員計画では雇用形態別の人件費や人員数を考慮して組まなければなりません。そのため、足りない人数を補える人数を算出するだけではなく、社員やパート、アルバイト、業務委託など、雇用形態も考慮して決定します。


業務に対して人員が多すぎたり少なすぎたりすることは、生産性の低下や収益の低下につながります。業務における人員配置のアンバランスや業務とのミスマッチを避けるためにも、要員計画は必要です。


3.人員計画

人員計画は、要員計画をもとに立てます。たとえば「誰にどのくらいの費用を支払うか」「業務に適した人材か」など、人員配置の見直しや雇用形態の変更に関する、より具体的な計画です。要員計画と似ていますが、人員計画の方が現場視点を重視した計画だといえるでしょう。


人員計画は、社員1人ひとりのスキルや経験にマッチした配置になるよう調整します。人事異動や昇進の対象となる社員については、チーム・部署内のバランスも考慮する必要があるため、慎重に配属先を決定しなければなりません。


企業によっては定員計画から代謝計画までを「人員計画」と呼ぶケースもあるため、すれ違いが生じないためにも、どの範囲を意味しているのかを明確にしておく必要があります。


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4.代謝計画

代謝計画とは、要員計画と人員計画との間に生じた差を埋めるための計画です。計画を進めるなかで人員不足や過剰が発生した際に、採用活動や社内異動をすることで過不足分を調整します。


要員計画と人員計画で差が生じることはよくあるため、代謝計画が必要となる可能性も考慮して柔軟に取り組まなければなりません。急な対応で焦らないよう、準備をしておきましょう。


代謝計画は、人材の増減を調整する以外にも、チーム・部署内の活性化を図る目的で行われる場合もあります。人間関係や雰囲気を変えることでさらなる生産性の向上を図りましょう。また、人材育成を目的として、ベテラン社員を新入社員のいるチーム・部署に充てるなどの調整が行われるケースもあります。


人員配置図を導入する際の注意点

人員配置図を導入する際、どのような点に気を付ければよいのでしょうか。いくつかの注意点を解説します。


現状を把握しておく

人員配置の最適化を図るためにも、現状を把握しておくことが重要です。業務量に対する人員数や業務分担、目標達成度合いなどを確認しておくことで、よりよい人員配置が可能になります。


年度初めと終わりの在籍人数と年度途中で増員・減員する見込みの社員数も把握しておきましょう。これらのデータから改善点や課題を発見できるケースもよくあります。


また、チーム・部署内の状況を把握するためにも、実際に社員へヒアリングを行うのも有効な手段です。データからは読み取れなかった思わぬ情報を得られる場合があります。


目標を明確化しておく

企業で達成したい目標を確認し明確化しておくことは、人員配置の最適化につながります。目標を把握しておくことで、達成のために必要な人材像や人員数などを設定できます。


現状も考慮した目標設定を行うのであれば1か月・半年・1年のように期間を区切って目標を作成しましょう。短い期間ごとで設定するため、段階的に目標を達成でき、どのくらい達成したのかも把握しやすくなります。


また、目標達成に向けた課題も見つけられるため、必要な人材や人員数などを具体的に設定できます。


人材情報をそろえておく

最適な人材を配置するためにも、社員1人ひとりの情報をそろえておくことも意識しておきましょう。把握しておくとよい人材の情報には以下の項目が挙げられます。


・スキルや能力

・経験

・雇用形態

・労働時間

・稼働日

・目標

・人件費 など


社員とのコミュニケーションや面談などを通して、情報を収集しましょう。最新情報が得られたら、適宜更新してデータを蓄積してください。


チーム・部署の目標や課題にマッチした人材を選定できるよう、そろえた情報は特定の人物以外も管理・可視化できる状態にしておくことをおすすめします。特定の人物のみが把握している状況になってしまうと、人材配置の最適化が中途半端になり、結果的に効率が下がってしまうこともあります。


人員配置後に分析しておく

実際に人員配置した後は、分析をすることで次回の人員配置に役立てられます。契約数や利益率など、人員配置前後での具体的にどのような変化があったかを測定しましょう。効果を分析することで、人員配置における改善点や課題が見つかります。


異動があった社員に対しては、アンケートやヒアリングを行うことで、満足度や課題を確認することが重要です。一方的に配置を見直されてしまった社員からは、不満が発生することもあります。人員配置によるブラックボックス化を避けるためにも、社員に対するフォローやフィードバックを行ってください。


人員配置図を導入している企業の成功事例

実際に人員配置図を導入して成功した企業の事例を紹介します。導入を検討しているのであれば、ロールモデルとして参考にしてみてください。


ヤマト運輸株式会社

ヤマト運輸株式会社では、適材適所な人員配置を目指し、3年ごとにジョブローテーションを行っています。多彩な業務を経験することで、社員それぞれの成長を促すとともに1人ひとりが自身のキャリアプランの検討ができるようになりました。


ラーニングプラットフォームや社内講師を導入するなどの教育体制を整えることで、それぞれのキャリアプランに合わせた研修を実施しています。


ジョブローテーションやキャリアプランに合わせた研修などを通して、ワークライフバランスの推進を行うとともに、長期的な人材育成に成功した企業だといえます。


双日株式会社

双日株式会社では、過去に経営領域に若手社員をアサインすることで、持続的成長を図っていました。しかし、若手社員の早期成長が課題となったため、人員配置図を導入し、社内全体で人材と組織情報が見える化できるよう運用しています。


これにより、社員の評価やキャリアプラン、社員同士の相性などの情報も一元管理・蓄積が可能となりました。蓄積したデータをもとに人員配置をすることに加え、若手社員が活躍できる人員配置を行うことで、持続的な人材育成に成功した企業です。


株式会社サイバーエージェント

株式会社サイバーエージェントでは、適材適所の人員配置のための取り組みが行われています。


月に1回、システムを使用して、社員のキャリアプランや現状、課題などの情報を収集し蓄積しています。現在の部署で1年以上働いている社員に向けて、他部署やグループ会社へ異動できる制度も整えているというのが特徴です。


戦略的な人員配置のための会議も開催されており、企業と社員がそろって成長できるような環境づくりを行っています。適材適所の人員配置により、企業と社員のミスマッチや業務に関する課題の発見・改善に成功している企業です。


まとめ

企業の目標を達成するためには、人員の最適化が重要です。手順に沿って人員配置図を作成し、活用することで計画的な人材育成や社員のモチベーションアップ、生産性の向上などが期待できます。人員配置図を導入するのであれば、システムやツールを活用するとよいでしょう。


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