人員配置とは
人員配置は、組織の目標達成を目指して行われるタレントマネジメントの一種です。社員それぞれに割り当てる業務を決めたり、部署やチームへ再配置したりします。
人員配置が実施されるのは、採用や人事異動のほか、昇進や昇格などのタイミングが一般的です。採用段階においては、新卒採用と中途採用で対応が異なる場合があります。
新卒採用の場合、入社後に行う研修での評価を参考に、配属先が決定されやすいです。一方、中途採用は、組織における人材ニーズに合わせて選考されます。そのため、内定者のスキルや知識次第で、配属される部署が決まります。
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人材配置との違い
人員配置と似ている言葉として挙げられるのが人材配置です。人員配置は、組織の計画達成を目的として、社員を特定の業務や部署に割り当てる行為を指します。一方、人材配置は社員が持つ能力や経歴などを参考に、適性のある業務や適切な部署に配置することを目指します。
人員配置と人材配置の違いは、焦点としている部分です。人員配置が組織に焦点を当てている一方、人材配置は個人に焦点を当てています。
人員配置が現在も注目されている背景
人員配置が現在も注目されている背景には、いくつかの理由があります。以下は、代表的な理由とそれぞれの詳細です。人員配置が注目されている理由について知りたい場合は参考にしてください。
タレントマネジメントへの注目度が高まっている
タレントマネジメントを導入する企業の増加に伴い、人員配置も注目を集めています。タレントマネジメントとは、社員が持っているスキルや能力を最大限に発揮させることで、企業の成長を目指す仕組みです。
もともとは1990年代のアメリカが発祥の仕組みで、激しい人材の流動化に対応するために考案されました。しかし、近年の長期雇用の不安定化や価値観の多様化などにより、日本でも注目されています。
自身のスキルや能力を発揮できる人員配置を実現できると、モチベーションの向上につながります。また、業務効率の改善や早期退職の予防なども実現可能です。
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ジョブ型雇用への関心が高まっている
ジョブ型雇用は、社員の能力と職務内容を合致させやすい手法です。ミスマッチを防ぎ、社員の能力を活かすことが利点です。
業務ごとに適切な人材配置を実現しやすく、人件費管理が適正になる効果も期待できます。また、社員は専門的なスキルを磨きやすく、キャリアプランを立てやすくなります。
しかし、アメリカに倣ってジョブ型雇用を導入する際は注意が必要です。アメリカでは社員の解雇のハードルが低いのに対して、日本では社員を解雇することが簡単ではないからです。
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人的資本経営の重要性に注目が集まっている
人的資本経営の重要性に注目集まっているのと同時に、人員配置にも注目が集まっています。人的資本経営は経営手法の1つであり、社員を資本と見なして投資を行い、企業価値を高めます。
なお、人的資本経営は国も重要性を認知して調査している手法です。具体的には、経済産業省が発表した、持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会の報告書にて、人材ポートフォリオの重要性が述べられる形で触れられています。
※参考:持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 (METI/経済産業省)
人員配置における現状・課題
適切な人材配置が必要だと感じている人は多くいます。しかし、現状では適切な人材配置ができている企業は多くありません。
適切な人材配置が実現できていない理由として、経営陣の問題や人事部門のリソース不足などが挙げられます。
特に、経営陣の問題は、適切な人材配置ができていないと感じる理由の半分以上を占めます。具体的な意見として挙げられているのは、以下の通りです。
・慣習や場当たり的な対処で決められている
・人数の過不足のみで判断されている
・社長や経営陣が独断で決めている
以上のように、評価基準が定まっておらず、主観が含まれた評価を基にした人材配置に不満を感じている人は少なくありません。
配置転換についても、一定の条件が確保されれば協力したいと考えている社員は多い傾向にあります。しかし、企業側の不適切な対応により、多くの社員が問題を感じる状態になっています。
人員配置を実施する理由・目的
企業が人員配置を実施する理由や目的はさまざまです。ここからは、企業が人員配置を実施する具体的な理由や目的について解説します。それぞれの理由や目的の詳細についても解説するので、参考にしてください。
経営目標の達成を図るため
適切な人員配置を実施できると、経営目標の達成につながります。社員が自身の希望に沿った人員配置をしてもらえると、モチベーションやパフォーマンスが向上します。
モチベーションやパフォーマンスが向上すれば、社員それぞれのスキルやポテンシャルを引き出すことが可能です。そして、組織全体の生産性向上につながり、最終的に経営目標の達成を実現しやすくなります。
人員の過不足の解消や人件費の適正化を実現するためにも、人員配置を実施する企業は少なくありません。
社員が最大限に活躍できるようにするため
社員それぞれのスキルや希望を考慮した人員配置を実現することで、社員のモチベーションを引き出すことが可能です。環境とのミスマッチを防止し、社員それぞれが能力を最大限発揮して活躍することが期待できます。
また、社員の成長を促すという点でも、人員配置は重要な役割を果たします。部門や部署によって業務内容が異なるため、人員配置を通じて新たなスキルや知識を得ることが可能です。さらに、自社における業務についての理解が深まることで視野が広がります。経営幹部候補の社員に社内業務を把握させるのにも効果的です。
組織のマンネリ化を防ぐため
人員配置を実施することで、部門間のコミュニケーションが促進され、組織全体のモチベーションが改善する可能性があります。また、組織のマンネリ化や硬直化を防ぐのにも効果的です。
社員が自身の適性に合った配置にあると感じると、エンゲージメントが向上しやすいです。エンゲージメントが向上すると、積極的かつ自発的な行動が促され、業務効率や生産性の向上も期待できます。
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人員配置の種類
企業はさまざまな方法で人員配置を最適化し、効率的な組織運営を目指します。具体的な人員配置の種類として挙げられるのは、以下の通りです。
種類 | 内容 |
---|---|
採用 | ・新しい人材を外部から取り入れる ・新卒採用なら研修後に配属先を決める ・中途採用ならスキルや経歴を考慮し、適切な部署に配置する |
異動 | ・社内の人材を再配置する ・部署の拡大や縮小などを目的に実施される |
昇進・昇格 | ・上位の役職に社員を配置する ・昇進や昇格により空いたポジションには新たな人材を配置する |
雇用形態の変化 | ・雇用形態を変更する ・雇用形態を変えつつ部署も変えるケースもある |
リストラ・雇い止め | ・事業の規模を縮小する際に実施される ・人材流出や業務負担の偏りなどに注意が必要 |
人員配置のメリット
人員配置を実施することで、さまざまなメリットを得られます。以下は、人員配置を実施する具体的なメリットとそれぞれの詳細です。人員配置を実施する前に確認してみてください。
業務効率が向上する
社員のスキルや経験、キャリアなどの要素が配置先とマッチすると、業務効率や生産性の向上につながります。
業務効率や生産性の向上によって業務遂行に必要な人員の数が減れば、人件費や経費を削減することが可能です。つまり、コストを最小限に抑えつつ、リターンを最大限にすることも狙えます。
また、人員が過不足なく配置されている状態は、社員にとって働きやすい環境です。適切なマネジメントが実施されていることでも、業務効率や生産性は向上します。
社員のモチベーションアップにつながる
人員配置によって環境が良くなれば、社員のモチベーション向上が実現可能です。まず、業務が効率化し、勤務時間が短縮・適切化されます。長時間労働が減少すれば、さらなるモチベーションアップにつながり、生産性も向上しやすくなります。
さらに、人員配置は人間関係に与える影響も少なくありません。適切な人員配置によって人間関係が良好になれば、業務における連携も容易になり、さまざまなメリットが得られます。具体的には、ストレスの軽減やエンゲージメントの向上などです。
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離職のリスクを低減できる
優秀な人材は、自身のスキルや経験を活かせていないと判断すると、離職しやすくなります。転職市場での価値が高いことも、離職を決断しやすい要因になっています。
そのため、人員配置によって優秀な人材が働きたいと思えるような環境を提供することが大切です。具体的には、スキルや経験とマッチした業務を割り振ったり、相性のよい人材と関係を築きやすくしたりすることです。そして、優秀な人材のモチベーションを向上させることができれば、離職のリスクを低減できます。
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無駄なコストを削減できる
人員配置を適切に行うことで、業務の効率化や生産性の向上につながります。少ない労働時間で多くの成果を得られるようになり、無駄なコストを削減することが可能です。特に、長時間労働の防止や少人数での対応などにより、人件費の削減効果が期待できます。
また、プロジェクトに役立つ専門的なスキルを持つ社員を配置することで、時間やリソースの浪費を防ぎやすくなります。
人員配置のデメリット
人員配置にはデメリットもあるため注意が必要です。まず、人員配置を頻繁に実施すると、スキルを身に付ける前に新しい部署に異動させられてしまい、社員の成長を妨げる可能性があります。
また、人員配置を実施しても直接的に売上や収益が改善するわけではありません。さらに、スキルの習得や人間関係の改善には時間がかかります。短期的な成果が出にくいため、中長期的な視点で取り組むことが求められます。
人員配置を最適化する手順
不適切な人員配置は、業務効率の悪化や社員のモチベーション低下を招きかねません。そのため、人員配置を最適化することが大切です。以下は、人員配置を最適化するための手順とその詳細です。
1.業務内容の現状や目標を把握する
業務内容の現状や目標を把握し、最適な人員配置を実現するための準備を進めましょう。具体的には、業務に対する人数の過不足や、必要なスキル・経験を持った社員の有無を確認します。
そして、現状を適切に把握した上で人事評価を行います。なお、人事評価を行う際は、主観ではなく客観的なデータを参考にすることが重要です。以下は、人事評価の際に参考となる情報です。
・採用時の面接情報
・研修の受講履歴
・資格の取得履歴
・異動や昇降格の履歴
2.社員の希望をヒアリングする
最適な人員配置を実現するためには、社員の希望に沿うことも重要です。そのため、社員へのヒアリングを実施しましょう。代表的なヒアリングの内容は以下の通りです。
・人事評価への不満や疑問点の有無
・業務に対する不満や相談したいことの有無
・現在担当している業務以外で興味のある分野
ヒアリングの際は、チェックシートや1on1面談などの仕組みを活用すると効果的です。
3.人員配置を実施する
現状の業務内容や社員の希望などを把握できたら、人員配置を実施します。人員配置は、収集したデータを参考にして進めることが重要です。
また、人員配置を実施する理由や目標を見失わないように注意しましょう。人員配置の実施には時間やコストがかかるため、やみくもに実施すると大きな損失につながる可能性があります。
4.効果測定を実施し、成果を確認する
人員配置は実施するだけでなく、実施後に効果を測定して成果を確認することも重要です。実施前と実施後の比較内容として、以下の項目が挙げられます。
・社員満足度
・生産性や作業効率
・業務量に対する人員の数
・部署内の人間関係
人員配置による効果を確認したら、適切なフォローやフィードバックに役立てましょう。具体的には、メンタルヘルスマネジメントや定期的な面談などが効果的です。
人員配置を成功させるコツとは
人員配置を成功させるには、いくつかのコツを意識することが大切です。ここからは、人員配置を成功させるために役立つコツを解説します。人員配置の実施を検討している場合は、参考にしてください。
企業と社員双方にプラスをもたらす施策として行う
人員配置は、人が足りていない部門や部署への穴埋めとして行うべきではありません。社員のワークライフバランスやキャリアプランなども考慮し、企業と社員の双方に利益をもたらす施策を目指しましょう。
たとえば、異動に関する基準を明確にすると、企業と社員の双方が異動を意識して働きやすくなります。また、社員の希望に沿った人員配置や、自社の目標達成に寄与しやすい施策も意識しましょう。
人事によるフォローとフィードバックを行う
人員配置は、実施するだけでなく、フォローとフィードバックを行うことが重要です。また、配属先の部署だけでなく、人事部によるフォローとフィードバックも推奨されます。
配属先だけでフォローやフィードバックを実施すると、配置プロセスがブラックボックス化する可能性があります。
人事部が包括的な対応をすることで、部署ごとのノウハウを集約して蓄積できます。ノウハウが蓄積されることで、人事配置の最適化やエンゲージメントの向上が期待できます。
システムを活用する
効果的な人員配置を実現するためには、人事労務システムや人材マネジメントシステムなどの活用も検討しましょう。
各種システムを活用すれば、社員の情報を一元管理できます。そのため、人事配置を実施する際に参考となるデータの収集や管理が容易になります。
また、システムによっては、部門や部署などの単位で所属している社員を俯瞰して把握可能です。人員配置の精度や効率の向上につながるため、システムの活用がおすすめです。
戦略的な最適配置とは?企業が抱える人材配置の問題を解消する方法
人員配置を実施する際の注意点
人員配置を実施する際には、いくつか注意すべき点があります。まず、頻繁な人員配置は社員の成長を妨げたり、人事部への不信感を募らせる原因になったりします。そのため、社員それぞれの希望を考慮し、部署に定着させることを優先しましょう。
また、人員配置の実施後にフォローを行うことも重要です。特に、着任後から一定期間が経つとトラブルが表面化しやすいため、長期間にわたってフォローする必要があります。アンケートや面接などで社員の意見を確認し、適切に対応しましょう。
まとめ
人員配置は、業務効率の向上やコスト削減につながることが利点です。一方で、適切な人員配置を実現できないと、社員の成長を妨げる可能性があります。人員配置を効果的にするためには、専用システムの導入が推奨されます。
タレントパレットは、人事データを集約して人材の詳細を可視化できるシステムです。社内に点在していた人事評価や異動履歴を一括で管理できるようになることで、人事に関するさまざまな業務を効率化することが可能です。
人事データの管理や確認を容易にしたり、人事データを有効活用したりしたいと考えている企業の担当者の方は、ぜひタレントパレットを導入してみてください。
戦略的な最適配置とは?企業が抱える人材配置の問題を解消する方法