仕事を辞めそうな人の退職は阻止できるのか
「仕事を辞めたい」と申し出があった場合、覚悟を決めているため、引き留めるのは困難といえます。また、法的に見ても、企業側が「辞めたい」と言っている社員を引き留める権利はありません。一方、「辞めそう」な状態であれば、早期にフォローすることで退職を阻止できる可能性があります。退職を決める前にフォローするには、早期に「辞めそう」な状態に気づくことがポイントです。
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辞めそうな人を事前に把握するメリット
辞めそうな人を事前に把握するメリットは、退職防止だけではありません。どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
退職を阻止できる可能性がある
辞めそうな人を事前に把握することで、退職を阻止するための対策を立てられます。たとえば、業務内容に不満を抱えている場合、希望の働き方をヒアリングし、改善することで問題が解決できるかもしれません。また、早期に悩みに気づくことで、対策の提案がしやすくなり、説得の成功率が上がる可能性があります。
採用コストを削減できる
人材の採用から育成までには多大なコストが発生しています。新入社員が早期離職した場合、損失額は600万円以上になるといわれているため、退職の阻止は多大な費用と時間の削減につながります。
また、離職をできるだけ抑えることで、企業のイメージダウンの回避が可能です。
生産性が低下するリスクを防げる
退職者が出ると在籍している社員が業務を引き継ぐ必要があるため、社員の業務量が増え、生産性が低下する可能性があります。また、辞めそうな社員は仕事へのモチベーションが低くなるケースが多いことも、生産性が低下する原因の1つです。そのため、退職を防ぎ社員のモチベーションを向上させることで、生産性が低下するリスクを防ぐことが可能です。
仕事を辞めそうな人に見られる7つの前兆
社員の「辞めそう」を早期に発見するには、仕事を辞めそうな人に見られる7つの前兆を理解しておきましょう。
コミュニケーションが消極的になる
退職をすると職場の人間関係に関心がなくなるため、周囲との関係が希薄になるケースが少なくありません。人間関係に悩みを持っている社員であれば、コミュニケーションを取ることを苦痛に感じている場合もあります。
以前までは社内イベントなどに参加していた社員が参加しなくなったなどの兆候がある場合、仕事を辞めたいことが理由の可能性があります。また、ランチや飲み会など、仕事外での付き合いが減ることも前兆のサインです。
遅刻や早退の頻度が増える
「仕事を辞めたい」と思うようになると、仕事へのモチベーションが低下し、遅刻や早退などの頻度が増えるケースがあります。そのため、普段と比べて明らかに勤務状況が悪化しているのは、退職を検討していることが理由かもしれません。すでに転職活動を始めていたり、有給休暇の消化が目的であったりする場合も、遅刻や早退が増えることがあるでしょう。
ただし、勤務状況の悪化はメンタルの不調が理由のケースもあるため、注意して見極める必要があります。
新しい仕事に関心がない
以前までは新たな業務に熱心に取り組んでいた人でも、退職を検討すると努力の必要性を感じられず、新しい仕事に関心がなくなります。「辞めたい」と思っているからこそ、新しい仕事を増やしたくないと考えている場合もあるでしょう。
新しい仕事に限らず、以前よりも生産性が落ちている場合も「退職するから評価される必要がない」「辞めるから努力しても意味がない」などと考えている可能性があります。
仕事への愚痴が減った
辞める決意が固くなるほど、仕事への愚痴が減るケースが珍しくありません。今まで愚痴が多かったのに、いきなり止まった場合は「退職するのに愚痴を言っても無意味」と考えている可能性があります。
または、企業への期待がなくなったことが理由の人もいるでしょう。「もう辞めたい」「〇〇が不満」などの愚痴を周囲に頻繁に漏らしている段階は、引き止めやフォローを求めて伝えている場合があります。
会議で発言をしなくなった
モチベーションが低下すると、プロジェクトへの責任感が薄れ、会議に注意が向かない状態になります。そのため、現在の仕事に関心がなくなると、会議での発言が減少します。しかし、仕事への意欲が低下していても、退職は考えていない場合もあるため注意してください。たとえば、会議で発言しても否定ばかりされていたなら「発言しても受け入れられない」と考え、発言しなくなるケースがあります。
雰囲気や身だしなみが今までと変わる
何気ない振る舞いに違和感があったり、髪形や服装が以前と違ったりしている社員にも注意が必要です。話しやすいと感じていたのに話しづらさを感じるのであれば、退職を検討していることが理由かもしれません。
また、これまでカジュアルな服装の方がフォーマルな印象に変わったなら、すでに転職活動を始めている可能性があります。反対に、身だしなみが整っている人がだらしなくなった場合は、メンタルの不調や仕事への熱意喪失によって身なりを整える余裕がなくなっていることが考えられます。
周囲の評価に興味がなくなる
退職を決意すると、周囲の評価に興味がなくなることで、仕事へのやる気が見られなくなります。指導をして改善する場合は、退職を決意するほどではない状態でしょう。しかし、改善が見られないのなら、退職の意志が固い可能性があります。
また、周囲への気遣いが減る人も多く、職場の人間関係が悪くなるケースも少なくありません。上司からの評価を気にしなくなるため、我慢していた不満を言い出す場合もあるでしょう。
退職を考える主な理由
退職を決意するには、誰しも何らかの理由があります。ここでは、退職を考える主な理由を紹介します。
評価制度に不満がある
評価制度に不満がある場合、実力や成果を見てもらえないと感じ、不満を抱えるようになります。特に優秀な人材ほど上昇志向が高く、自分のキャリアや評価を認めてくれる職場かどうかは仕事を続けるうえで重要なポイントです。そのため、評価制度に納得ができない場合、スキルを生かせる場所への転職を考えるきっかけになります。
人間関係に不満がある
人間関係の不満は、多くの人が退職を考える理由の1つです。直属の上司や同僚との人間関係が悪い、業務の悩みや不安を共有できる相手がいないなど、人間関係といってもさまざまな不満が考えられます。職場は毎日のように顔を合わせるため、人間関係が悪いと精神的にもストレスが積み重なるでしょう。また、業務に支障が出るケースも珍しくありません。
待遇に不満がある
待遇への不満から、退職を検討する人も少なくありません。
・給与が低い
・労働時間が長い
・土日や祝日に休みを取りにくい
上記に1つでも該当する場合、不満が積み重なり退職を検討するようになります。近年では多様な働き方が求められているため、ライフワークバランスを重視しての退職も増加傾向にあります。
企業の将来性に不安を感じている
企業の将来性に不安を感じると転職を検討する場合があります。企業のビジョンや方向性がはっきりしない、年功序列でなかなかキャリアアップできないなどの環境では、今後のキャリアに不安を感じるため、見切りをつけるきっかけとなるでしょう。
特に若い世代は自身のキャリアのために企業の将来性を厳しい目線で考えるため、希望を見いだせなければ即座に転職を考えます。
やむを得ない事情がある
退職の理由は、職場環境や企業の問題だけではありません。メンタルの不調や育児や介護など、個人のやむを得ない事情での退職もあります。
メンタルの不調で退職を検討する人は珍しくないため、企業にはメンタルヘルス対策への取り組みが求められます。また、国は育児・介護休業法を改正するなどの対策を行っているものの、現時点では退職を選択する人が少なくありません。
急に仕事を辞める人の特徴
いきなり退職を言い出す人には共通する特徴があります。ここからは、急に仕事を辞める人の特徴を紹介します。
真面目
真面目な人は、優秀ではあるものの、上手に手を抜けない傾向があります。不満や愚痴を吐き出して発散するタイプではなく、ストレスをためがちです。また、我慢強い人が多いため、気づけば限界に達していたケースが珍しくありません。感情が表に出にくいことで、周囲も異変に気づけず、急に仕事を辞める場合があります。
おとなしい
おとなしいタイプの人は、自分の仕事で精いっぱいの状態でも、頼まれると仕事を断れないケースが少なくありません。そのため、手一杯になってしまい、ある日突然限界が訪れます。また、真面目な人と同じく不満や悩みを人に相談できないため、1人で何でも抱え込んでしまう傾向があり、心身が疲弊していきます。
こだわりが強い
こだわりが強い人は完璧主義の傾向があり、他人を頼ることが苦手なので、自信を追い込んでしまう人が多くいます。自分のやり方に固執することで、職場に適応しづらく、人間関係がうまくいかないことも珍しくありません。その結果、自分の理想と現実とのギャップに苦しみ、急な退職につながります。
社員が辞めそうな場合の対処法
辞めそうな社員に気づいた場合、どのようなフォローが有効なのでしょうか。ここでは、社員が辞めそうな場合の対処法を紹介します。
面談で話を聞く
社員に辞めそうな兆候が見えた場合は、面談で話を聞きましょう。相手の気持ちを理解するには、コミュニケーションが欠かせません。不満は人に話すことで気持ちが晴れる可能性があるため、退職を考え直してくれる可能性があります。また、信頼関係を構築するには、オープンなコミュニケーションを積み重ねることが大切です。
一緒に問題解決を目指す
社員の悩みを理解できたなら、一緒に問題解決を目指しましょう。しかし、早期に解決できる問題もあれば、改善するには時間が必要な問題もあります。仕事にやりがいを感じられない場合は、権限のある仕事を任せることで解決できるかもしれません。他の問題であっても、問題解決に向けて協力する姿勢を見せることが重要です。
キャリアプランを考える
キャリアプランが退職の原因なら、社内でキャリアアップする方法を一緒に考えることも手段の1つです。現在の部署でキャリアアップが難しくても、異動が可能なら、転職をしなくてもキャリアアップができることを伝えましょう。現在の会社で活躍できるイメージを具体的に提示することで、社員のやる気につながる可能性があります。
心身に不調がある場合は休養を勧める
社員のメンタルヘルス不調が原因の場合は、産業医と連携して指導を受けましょう。調子の悪いときはネガティブ思考になるため、心身を回復させることで、退職を思い止まるかもしれません。
業務を続けながらの改善が困難な場合は、休職を提案して、社員の心身の健康を最優先に考えましょう。残業や過労が原因の場合は、他の社員も同じ悩みを抱えている可能性があるので注意してください。
社員の退職を防ぐ職場作りのポイント
社員の退職を防ぐには職場環境が重要です。最後に、社員の退職を防ぐ職場作りのポイントを紹介します。
社員の声を伝えやすい環境にする
社員の退職を防ぐには、社員との信頼関係の構築が重要です。定期的に1対1の面談などを実施することで、社員が抱えている悩みや希望に早期に気づくことができるでしょう。直接は話しづらい社員も多くいるため、匿名で意見を伝えられる意見箱の設置も効果的です。部下の話に傾聴することを意識し、社員の声を伝えやすい環境を目指しましょう。
柔軟な働き方を実現する
仕事を続けたいと思っていても、家庭の事情により退職を選ぶしかないケースもあります。育休制度や時短制度、在宅ワークやフレックスタイム制を導入し、柔軟な働き方を実現することで、育児や介護が必要な人も仕事を続けられる可能性があります。また、柔軟な働き方が可能な企業は、世間からの評価にもつながり、優秀な人材が入りやすくなるでしょう。
定期的にストレスチェックを実施する
メンタルの不調による退職を防止するには、定期的なストレスチェックがおすすめです。ストレスチェックとは社員にストレスに関する質問票に回答してもらい、メンタルヘルス対策に役立てるものです。用紙、またはオンラインのどちらかで実施し、受験が終わればストレスがどのような状態なのかを評価します。結果によって、医師の面接指導が必要か判断できます。
モチベーションが向上する職場環境を目指す
モチベーションの低下は退職につながるため、モチベーションが向上する職場環境作りを意識しましょう。そのためには、社員同士のコミュニケーションが積極的になる工夫をすることがポイントです。たとえば、リラクゼーションルームの設置は、休憩中に社員同士の交流の場となるのでおすすめです。
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まとめ
優秀な人材の退職は、企業にとって大きな損失です。辞めそうな社員がいた場合、話を聞いて一緒に問題解決を目指すことで、退職を考え直してくれる可能性があります。そのためには、早い段階でのフォローが必要になるため、辞めそうな人の前兆を理解して社員からのサインを見逃さないようにしましょう。
退職者を増やさないためには、職場環境の改善を心がることも大切です。離職防止に役立つシステムを導入することで、離職予兆をキャッチでき、退職を防げる可能性があります。辞めそうな人をいち早く把握するためにも、タレントパレットが提供するタレントマネジメントシステムの活用をご検討ください。