シエスタとは?制度導入のメリットや注意点、効果的な仮眠時間を解説


シエスタとは?制度導入のメリットや注意点、効果的な仮眠時間を解説

シエスタとは、スペイン発祥の昼食後に長めの休憩を取る風習のことです。企業でもシエスタ制度を取り入れることで、ストレス対策や生産性向上などの効果が上がると近年注目されています。この記事では、勤務中の仮眠や昼寝などパワーナップの効果、シエスタ制度のメリット・デメリットや注意点を解説します。ぜひ参考にしてください。

スペイン発祥・シエスタとは?

「シエスタ」とは具体的にどのような風習なのでしょうか。ここでは、基礎知識から、企業に導入されるシエスタ制度の目的、昼寝や仮眠の効果、パワーナップ制度との違いまで解説します。

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シエスタとは

シエスタ(siesta)はスペイン語で、スペインやイタリア、ラテンアメリカの一部の地域などで根付いている長い昼休憩の習慣のことです。13〜16時頃の日差しが最もきつい時間帯に酷暑の労働を避ける目的で休憩を取るもので、就労時間は9〜13時、16〜20時頃となります。また、官公庁や学校、店舗などもシエスタの時間帯はクローズします。

勤務先が近い場合は、一時帰宅して1日のメインの食事である昼食を家族でしっかり食べたあとに、1時間程度仮眠したりゆっくりくつろいだりして休憩を満喫し、再び出社します。夕食は21時頃、就寝時間も23時頃と遅めですが、朝は早いため、日本とトータルの勤務・睡眠時間は変わりません。

スペインにおけるシエスタの習慣は、2006年に公務員のシエスタを廃止するなど、昨今は国際基準に合わせて見直し傾向にあります。一方で、昼休憩の合理性と効果も評価され、シエスタの習慣を日本など他国の企業がアレンジして「シエスタ制度」を導入する国も増加しています。

シエスタの目的

南欧や中南米でのシエスタの目的は、気温が高く日差しが強い時間帯は休んで、その後比較的涼しい時間に働くことです。一方、企業にシエスタを取り入れる際の主な目的は、業務の効率化や生産性向上のほか、ワークライフバランスの働き方改革や社員のモチベーション向上などでしょう。

実際、シエスタ制度導入の効果として中途採用希望者が増えたケースもあります。また、仮眠制度の導入で業務の効率化ができた報告がされている事例もあるようです。
 

昼寝や仮眠の効果

昼寝や仮眠には、多くの効果があることが科学的に証明されています。NASAでは1995年頃から睡眠に関する研究を行い、昼に26分間の仮眠を取ることで、認知能力が34%、注意力が54%も向上するという結果を発表しています。この研究は、仮眠が短時間でも脳機能に大きな効果をもたらすことを示しています。

日本でも、厚生労働省が昼間の仮眠(昼寝)を推奨しており、2003年には短時間の仮眠が健康によいと発表しました。2024年2月には「睡眠指針2014」を改訂し、「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を策定して公表する予定です。このガイドでも、短時間の仮眠が推奨されています。

昨今は「パワーナップ(Power Nap、積極的仮眠)」という概念も注目されています。社会心理学者ジェームス・マース氏が提唱し、昼間に短時間の仮眠を取ることで、集中力や生産性が向上するという趣旨です。多くの企業がパワーナップを取り入れ、社員のパフォーマンス向上を図っています。

※参考:健康づくりのための睡眠ガイド 2023 |厚生労働省

パワーナップ制度との違い

パワーナップ制度は、昼休憩以外に15〜30分程度の仮眠を取れる制度です。主に仮眠を取ることに焦点を当て、集中力や生産性の向上を目指し、短時間で効率的に脳をリフレッシュさせることを目的としています。

一方、シエスタ制度は、昼寝を含めた長めの昼休憩を指します。昼寝の他にも食事やリラックスの時間が含まれており、パワーナップ制度に比べて休憩全体を広く捉えるものです。

ただし、昼寝のみを許可する休憩制度を「シエスタ」と呼ぶ企業もあり、この場合、シエスタはパワーナップよりも広義な意味合いを持つことになります。シエスタ制度は、昼寝を超えて休憩全体を含む概念として使われることが多いのに対し、パワーナップ制度はあくまで短時間の仮眠に特化した制度が多いようです。

シエスタ制度導入で見込めるメリット

シエスタ制度導入で見込まれるメリットを、企業側のメリットと社員が得られるメリットの両方の視点で解説します。

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1.昼寝の結果、生産性が向上

シエスタ制度の導入で、昼寝をすることで生産性の向上が期待できます。午後の眠気対策として効果的で、睡眠不足も解消されるため、集中力がアップし、体力が回復します。社員のパフォーマンスが向上したという結果も報告されています。

また、厚生労働省の資料によれば、起床後15時間以上が経過すると、作業能率は酒気帯び運転と同じ程度に低下し、17時間を過ぎると飲酒運転と同じレベルまで低下することを示しています。シエスタ制度により昼寝を取り入れることで、過度の疲労によるパフォーマンス低下を防ぎ、休息で疲れをリセットできます。結果として、作業の効率化が図られ、生産性の向上が見込まれるでしょう。

※参考:健康づくりのための睡眠指針 2014|厚生労働省

2.ストレスマネジメントとして効果的

シエスタ制度の導入は、ストレスマネジメントにおいても効果的です。シエスタ制度では、ランチ以外に昼休憩を長めに取れるので、リフレッシュする時間が確保できます。昼寝に限らず、散歩やマッサージ、ジムでの運動など、仕事の合間に多様な方法でストレスを解消することが可能です。

このように、シエスタ制度は単なる休憩時間の延長ではなく、社員が心身をリフレッシュし、ストレスをリセットするための時間として活用されます。結果として、ストレスの蓄積を防ぎ、より健康的で効率的な働き方が促進されるでしょう。ストレスマネジメントとしての効果が期待できるシエスタ制度は、社員のメンタルヘルスの維持にも貢献し、全体のパフォーマンス向上にもつながる重要な取り組みとなり得ます。

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3.社員のモチベーション向上で人材獲得にも効果

シエスタ制度の導入は、社員のモチベーション向上に寄与するため、企業側にとっても大きなメリットがあります。社員はリフレッシュする時間を確保できるだけでなく、通院や子どもの送迎など、個人のライフスタイルに合わせた時間の使い方が可能となるため、ワークライフバランスの実現につながります。

さらに、シエスタ制度の導入は、柔軟な働き方や充実した福利厚生を提供する企業としてのイメージアップも可能です。求職者へのアピールポイントとなり、優秀な人材の獲得にも効果を発揮するでしょう。加えて、労働時間のフレックス制度と組み合わせることで、働き方改革の実現にも寄与し、企業全体の競争力向上にもつながります。

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シエスタ制度のデメリットと注意点

ここからは、シエスタ制度におけるデメリットやリスクとシエスタ制度を導入する際の注意点を解説します。

過剰な睡眠は体内時計の乱れになることも

シエスタ制度は多くのメリットをもたらしますが、過剰な睡眠には注意が必要です。昼寝が長すぎると、逆に仕事の効率が落ちるリスクがあります。また、昼寝が長時間になると夜に眠れなくなり、体内時計が乱れてしまう可能性が否めません。さらに、過剰な昼寝によって頭痛が起きやすくなることもあります。

これらのデメリットを避けるためには、昼寝は短時間にとどめることが重要です。総じて、仮眠を取る際には適切な時間設定を守り、昼寝が逆効果にならないよう注意することが必要となるでしょう。
 

退社時刻が遅くなる点に注意

シエスタ制度を導入する際には、退社時刻が遅くなる点に注意が必要です。昼間の長めの休憩時間が原因で、退社時刻が遅くなり、結果的に社員の社内での拘束時間が長くなるケースが考えられます。

退社時刻が遅くなる状況が続くと、プライベートの時間が圧迫され、ワークライフバランスが崩れる恐れがあるでしょう。そのため、シエスタ制度を導入する際には、業務時間の見直しやフレキシブルな勤務時間制度の整備がポイントです。仕組みを整えることで、社員の負担を軽減し、制度の効果を最大限に生かせます。

シエスタ制度の国内外の導入事例

眠気や疲労による生産性低下を防ぐために、シエスタ制度を導入する企業が国内外で増加している昨今の状況や国内外の導入事例を解説します。

世界的な大手の有名な海外企業の導入事例

シエスタ制度やパワーナップ制度は、GoogleやNike、Uber、P&Gなどの世界規模の有名企業でも導入されています。これらの大企業は、社員の生産性向上や健康促進のために、昼寝の重要性を早くから認識しているのでしょう。

Nikeは、社員の働き方の多様性を尊重し、朝型と夜型の人間がいると捉えています。そのため、全員がフレキシブルに働けるよう、シエスタ用の部屋を設け、昼寝やリフレッシュの時間を確保しました。社員は自分のリズムに合わせた休息を取れるため、集中力やパフォーマンスが向上しています。

Googleは2012年に福利厚生の一環として、EnergyPodという昼寝専用チェアを導入しました。コーヒーやシャワーも提供し、社員が短時間でリフレッシュできる環境を整えています。これらの取り組みで、午後の業務に向けて活力を取り戻し、高い生産性を維持できるように工夫されています。

日本企業のシエスタ制度導入事例も豊富

日本企業でもシエスタ制度の導入事例は豊富で、多彩な企業が独自のアプローチで取り入れています。三菱地所やGMOインターネット株式会社、株式会社ヒューゴ、株式会社ノンバーバル、スパイスファクトリー株式会社などがその代表例です。

「自由休憩制度」や「プチシエスタ制度」など、呼び名や具体的な制度内容は異なりますが、共通して昼間の仮眠や休憩時間を設けることで社員の生産性や健康を向上させています。

たとえば、GMOインターネット株式会社では、社員が自由に昼休憩を取れる「自由休憩制度」を導入し、集中力や仕事の効率を高める効果が見られているそうです。また、株式会社ノンバーバルやスパイスファクトリー株式会社でも、短時間の仮眠を推奨する「プチシエスタ制度」を採用し、社員のリフレッシュと業務効率の向上に成功しています。

シエスタ制度の導入方法と運用する際のポイント

シエスタ制度の具体的な導入方法とシエスタ制度を効果的に運用するためのポイントを解説します。

シエスタ制度の具体的な導入方法

シエスタ制度を導入する際には、退社時間を後ろにずらして、1日8時間の労働時間を確保する方法が一般的です。労働基準法に基づき、8時間を超える労働には1時間の休憩が必要ですが、休憩時間を1時間以上に延長しても法的には問題ありません。

ただし、労働基準法を遵守するだけでなく、社員の意見も取り入れることが重要です。社員とのコミュニケーションを通じて、適切な休憩時間と業務時間のバランスを取り、シエスタ制度を効果的に導入することが求められます。
 

シエスタ制度を利用しやすい環境・雰囲気づくり

シエスタ制度を運用する際には、社員が利用しやすい環境や雰囲気をつくることも大切です。社内の意識改革が必要なため、人事部や部署の上長が積極的に社員に制度を周知し、自らシエスタを利用する姿勢を示すことがポイントです。

周知がうまくいけば、社員は気兼ねなく、気軽に制度を利用できる雰囲気が生まれるでしょう。休憩スペースに専用の部屋を設けるなど、物理的な環境整備も重要です。シエスタ制度を効果的に運用できれば、社員のリフレッシュと生産性向上を迅速に促進できます。
 

社外対応や業務に支障が出ない配慮

シエスタ制度を運用する際には、社外対応や業務に支障が出ないように十分な配慮が必要です。特に、社外とのやりとりに支障が出ないよう、シエスタ中でも対応できる体制を整えることが重要です。

たとえば、急な電話や問い合わせに対応できるよう、電話当番制を採用するなどの工夫が求められます。そうすればシエスタ制度を活用しつつも、業務の流れを止めることなく、スムーズに運営することが可能となります。適切な運用体制を整えることで、制度のメリットを最大限に生かせるでしょう。

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効果的な仮眠時間の目安

シエスタ制度の導入にあたって、効果的な仮眠時間の目安を解説するので参考にしてください。

10〜20分の短時間にする

効果的な仮眠時間の目安として、10〜20分の短時間のみ寝るようにすることが推奨されます。最適な昼寝時間は15分から20分とされており、これ以上の睡眠時間は逆に悪影響を及ぼすことがあります。

30分以上の仮眠を取ると、深い眠りに入ってしまい、起きたときにかえって眠気が強くなり、仕事の効率が下がるリスクをはらんでいます。寝過ぎを防ぐためには仮眠前にアラームを設定し、30分以上は寝ないように工夫すると良いでしょう。短時間の仮眠に留められれば、ちょうどよくリフレッシュでき、午後のパフォーマンスを高めるための効果的な手段になります。

12〜15時までに仮眠

効果的な仮眠時間帯の目安として、12時から15時までに仮眠を済ませることが推奨されます。この時間帯に仮眠を取ることで、夜の睡眠に悪影響を与えるリスクを避けることができます。

夕方以降に仮眠を取ると、夜間の睡眠が妨げられ、体内リズムが乱れる可能性が高くなります。また、体内時計の働きにより、昼の14〜16時頃には眠気のピークが訪れるため、この時間帯に仮眠を取ることで、最も効果的にリフレッシュでき、午後のパフォーマンスを向上させることができるでしょう。

良質な仮眠(昼寝)のコツ

ここからは、良質な仮眠や昼寝をするためのコツやポイント、テクニックなどを解説します。

仮眠前にカフェインを摂取する「コーヒーナップ」

良質な仮眠を取るためのコツとして、「コーヒーナップ」が注目されています。これは、カフェインの効果が摂取から約20分後に現れる特徴を利用した方法です。仮眠前にホットコーヒーを飲んでから寝ることで、仮眠が終わる頃にカフェインが効き始め、スムーズに目覚められます。

アイスコーヒーよりもホットコーヒーの方が覚醒効果の出るタイミングが安定しているため、より効果的です。ホットコーヒーを飲めば、仮眠から目覚めた後にすっきりとした状態で午後の活動を始められるでしょう。
 

座った姿勢で眠る

良質な仮眠を取るためには、横にならず、座ったまま眠るとよいでしょう。机に突っ伏した状態や椅子の背もたれに寄りかかって寝ることで、首にある交感神経節が適度に刺激され、短時間の仮眠でもすっきりと目覚めやすくなります。

横にならないことで、深い眠りに入りにくく、仮眠後にスムーズに目覚めることも期待できます。伏せて寝る際には、首や腕を支えるために枕やクッションを用意すると、より快適に仮眠が取れます。この方法を取り入れることで、短時間でも質の良い睡眠が得られるでしょう。
 

適度に暗くし、心地よい環境に

良質な仮眠を取るためには、適度に暗くし、心地よい環境を整えることも大切です。周囲が明るいままだと、眠りのホルモンであるメラトニンの分泌が減って、睡眠の質が低下してしまいがちです。

仮眠を取る際は、奥まった場所を選ぶか、アイマスクの着用がおすすめです。また、パソコンのディスプレイの光も睡眠に影響を与えるため、仮眠前には注意しましょう。

さらに、脳の活動を抑えて眠りを促すホワイトノイズなどを利用すると、心地よい環境になります。環境を整える工夫により、短時間でも質の高い仮眠を取りやすくなるでしょう。

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まとめ

シエスタは伝統的にスペインやラテンアメリカの文化で見られる習慣で、昼食後に長めの休憩時間を取るものです。しかし、適度な昼寝や仮眠が個人の健康や仕事の効率に大きな影響を与える研究や調査が進んだこともあり、シエスタは現代社会でも積極的に取り入れられています。

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