RJP理論とは?採用活動に取り入れるメリットや得られる効果なども詳しく解説


RJP理論とは?採用活動に取り入れるメリットや得られる効果なども詳しく解説

働き方の多様化や労働人口の減少などにより、人手不足で悩んでいる企業は少なくありません。このような環境下で、どうすれば人材が定着するのだろうと、模索する企業や人事担当者も多いことでしょう。その打開策として、RJP理論に注目する企業が増えています。この記事では、RJPの基本からメリットやデメリットを解説します。RJP理論を取り入れる効果なども述べるため、ぜひ参考にしてください。

RJP理論とは

RJPとは、「Realistic Job Preview」の頭文字をとった略語です。直訳すれば、「現実的な仕事情報の事前開示」となります。1970年代にアメリカで提唱された理論で、RJP理論ともいわれています。

RJP理論は、ビジネスでも人材の採用活動で取り入れられている理論です。採用活動時に企業のよい部分だけを求職者に提示せず、悪い部分も含めてありのままを開示します。入社する前に、求職者が企業のよい面と悪い面を把握することが狙いです。

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従来の採用方法との違い

従来の採用方法と、RJPを取り入れた採用方法には違いがあります。その違いは大きく分けて3つのポイントがあり、明確にすることで理解しやすくなるでしょう。1つ目のポイントは、悪い情報を使えるかどうかです。従来の求人は、企業のよい情報だけを伝えています。RJPでは悪い情報も含めて、企業のありのままを伝えます。

2つ目のポイントは、応募数に対する優先順位です。従来の募集では、母集団が優先で適合性は軽視されていました。RJPでは自社に適した人材に絞り適合性を優先します。3つ目のポイントは離職率です。従来の採用方法では、離職率の高さが問題となっています。しかし、RJPを取り入れた場合は、離職率が下がる傾向となります。

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RJPが注目されている理由


RJPが注目される背景には、働き方の多様化により、退職や転職に対するハードルが低くなっていることがあります。入社後、数か月〜数年で離職する人材が増加し、報道でも取り上げられている人事の課題です。人材定着が課題となっている企業も少なくありません。

題を打開する方法としてRJPが注目されています。これまでは、優秀な人材を集めようと懸命に自社の魅力をアピールしていました。しかし、実際に働いてみると大きなギャップを感じることも多く、結果として離職が増加してしまいます。これは、働きやすいイメージのみを与え続けることが原因です。

RJPの理論に基づき、魅力だけでなく改善すべき点も含めて誠実に伝えれば、長く働ける人材のみを集められるようになるでしょう。採用のミスマッチも減るため、人材定着率も上昇します。

RJP理論を取り入れるメリット

企業がRJP理論を取り入れる理由はメリットが多いからです。ここでは、代表的な5つのメリットを解説します。

企業への信頼性が高くなる

RJP理論を取り入れた採用活動を展開すると、企業の信頼性が高くなる傾向です。求職者に対して、企業のよい面ばかりを伝えれば、入社後にギャップを感じ不満や不信感を抱く可能性が高くなります。企業は、RJP理論を取り入れて、採用活動時に悪い面も包み隠さずに誠実に伝えましょう。

求職者に対して誠実で真面目に対応すれば、よい印象を与えられます。結果として、求職者からの信頼も得やすいでしょう。また、入社後のミスマッチを防止する効果も期待できます。

採用コストを削減できる

採用コストは、離職率に比例して高くなりますが、RJP理論を取り入れることで削減も可能です。人材を採用しても、早期退職によりコストが無駄になります。企業情報を適正に提供していないことで、求職者が企業との相性を判断できないことも、早期退職の大きな理由です。

このような状態では、企業に適した人材の応募は少なく、適していない人材が多く応募するかもしれません。そうなれば、採用コストは膨れ上がるばかりです。RJP理論を取り入れた情報提供により、求職者が募集時点で相性を見極められれば、コストも削減できます。

ミスマッチを軽減できる

採用のミスマッチを軽減できることもRJP理論の大きなメリットといえます。採用のミスマッチは、採用者が「こんなはずじゃなかった」と入社後に感じることが始まりです。新規や中途の採用に関係なく、採用された人材は、新しい環境に大きな期待を抱いているものです。

その期待と大きく異なる職場環境であれば、落胆は大きくなり、採用のミスマッチとなります。重要なことは、採用のミスマッチによる改善は難しいことです。人材は、期待した業務内容とは異なるため、入社後も労働へのモチベーションを上げられない状況が続くかもしれません。

この状態は、企業と採用された人材にとって、プラス材料がないといっても過言ではないでしょう。募集時点にRJP理論を取り入れて、企業の悪い面も含めてありのままを伝えていれば、企業と採用者のミスマッチは減少可能です。採用のミスマッチ減少は、先に述べた信頼性向上やコスト削減のプラス材料にもなります。

離職率の低下が期待できる

離職率の低下は、企業にとって大きなメリットです。採用者が入社してから企業の悪い面に気づけば、モチベーションの低下も避けられないかもしれません。採用者の希望や期待と乖離した職場であれば、早期退職のリスクも大きくなるでしょう。

先にも述べたように、採用のミスマッチによる離職は、コストを増大させる要因です。RJP理論を取り入れた採用活動を行えば、採用者が入社後のギャップで辛い思いをせずに済むかもしれません。入社後のギャップが小さければ、企業への定着率が上がり、離職率は下がる傾向です。

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応募者の質が向上する

応募者の質が向上することもRJP理論を取り入れるメリットです。企業のありのままの情報を求職者に伝えれば、応募数は減少するかもしれません。しかし、応募してくる人材は、企業に適した人材であることが多いでしょう。応募者数は少なくなりますが、応募者の質は向上します。結果として、企業にマッチングしやすい応募者を獲得しやすくなります。

RJP理論を取り入れるデメリット

RJP理論を取り入れた採用方法にはデメリットもあります。ここでは2つのデメリットを紹介します。

企業イメージが悪化するリスクがある

RJP理論を取り入れれば、採用活動で企業の悪い面も公開することになります。その悪い面だけが目立ち、独り歩きしてしまえば、企業イメージが悪化するリスクになるかもしれません。応募を検討している求職者も、イメージが悪ければ、二の足を踏む可能性があります。

公開するよい面と悪い面のバランスをとりながら、丁寧な説明をすることが重要です。また、バランスのよい情報により、求職者は検討しやすくなるでしょう。そうなれば、企業イメージの悪化も防止できるようになります。

応募者数が減少するリスクがある

求職者は、できるだけ条件のよい企業を探す傾向があります。企業の悪い情報に触れれば、自分に適していないと考えるケースもあるかもしれません。これが原因で、応募者数が減少するリスクになる可能性もあります。応募者数が絞り込まれて採用しやすくなることはメリットです。

しかし、人手不足が深刻な場合は、大きなデメリットといえます。ただし、悪い面も理解した上での応募者は定着率が高いことを忘れてはいけません。応募者減少リスクを視野に入れながら採用活動を展開しましょう。人手不足が深刻な部署は、派遣やアウトソーシングを活用することも1つの手段です。

RJP理論を取り入れて得られる効果

RJP理論を取り入れて採用活動をすれば、4つの効果を得られるでしょう。ここでは、その効果を解説します。

ワクチン効果

ワクチン効果とは、採用者が入社後に失望感を覚えた際に、緩和させる効果です。この効果を得るためには、企業のありのままを求職者に丁寧に伝えることが重要となります。採用者が企業を適正に理解していれば、それが免疫となり、ショックから採用者を守ることになります。

ワクチン効果は、課題を克服する効果も期待できるでしょう。従来の採用活動では、ワクチン(ありのままの情報)がなかったため、早期退職が課題でした。採用前に十分な情報を開示することで、入社後のギャップを抑制し、定着率を上げることができます。

スクリーニング効果

スクリーニング効果とは、求職者が自分に合う企業を選択できることです。企業の悪い面も伝え、自社を理解させることで、スクリーニング効果を得られるでしょう。採用者自身が企業を選択したという事実が大事です。採用者自身が選択することで、「入社できたら辛いこともあるだろうが、自分が働きたいと思える企業なので入社したい」というような気持ちが固まります。

また、自分で選択した企業なので、入社後は責任感をもって仕事に取り組み、定着しやすくなることも期待できるでしょう。求職者が自分に適していないと判断すれば、自ら離脱するため、入社後のミスマッチも抑制できます。

コミットメント効果

コミットメント効果は、企業に対する愛着心を高める効果です。求職者に、ありのままの情報を誠実に伝えることで、企業に好感をもったり愛着心を抱いたりします。「この企業に貢献したい」などの熱意が生まれれば、帰属意識も高まるでしょう。

コミットメント効果により入社した場合は、入社後のエンゲージメントが高い状態になりやすい傾向です。エンゲージメントが高い社員は、離職の可能性が低くなります。仕事の困難や課題も乗り越えるようになりやすいため、生産性の向上も期待できるでしょう。

役割明確化効果

役割明確化効果は、選考段階で応募者に対して求める仕事や期待している内容を明確にできる効果です。入社前に期待できる仕事がわかれば、社員教育が進みやすくなります。応募者は、入社後の働き方をイメージしやすくなり、入社意欲も高まりやすくなるでしょう。

RJPの導入のガイドライン

RJP理論の提唱者は、アメリカの産業心理学者であるJohn P. Wanous(ジョン・ワナウス)氏です。John P. Wanousは、RJP理論を導入するガイドラインを示していて、5つに分かれており、それをわかりやすく細分化すれば次のようになります。

・RJP理論を取り入れた目的を求職者や応募者に説明
・自社の状況を誠実に提供
・自社の情報提供に適したメディアの選択
・誰もが信用できる情報のみを提供
・現役社員のリアルな情報もありのままに提供
・企業の実態に合わせてよい面と悪い面のバランスを検討
・情報開示は採用活動の早期段階で行う

RJP理論を取り入れるのであれば、ガイドラインに沿うようにしましょう。企業によって手順は異なりますが、求職者や採用者にありのままの情報を提供することが大事です。

RJP理論を取り入れるのに適した人材の採用活動

採用活動の方法は多種多様です。ここでは、RJP理論を取り入れるのに適した採用活動について解説します。

カジュアル面談を利用した採用活動

カジュアル面談は、企業と求職者などがリラックスしながら対話し、相互理解を深めることが目的です。人材の選考に入る前のカジュアル面談は、RJP理論を取り入れるために適しています。求職者側から見れば、応募に進むかどうかを確定する前に行われる面談です。

企業によっては、選考中に行われるケースもあります。カジュアル面談に、RJP理論を取り入れることは、面談中に企業のありのままを伝える機会です。求職者の知りたい企業の現状を、ありのままに伝えるチャンスでもあります。カジュアル面談は、応募者を増やすことも1つの目的ですが、企業への好感度を高めることのほうが重要です。

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インターンシップによる採用


インターンシップとは、学生などが就業前に企業などで就業体験をすることです。インターンシップで、RJP理論に沿ったコミュニケーションを取れば、企業のよい面も悪い面も理解しやすくなるでしょう。誠実に対応すれば、入社意向が高くなりやすいことも特徴です。

途採用向けの入社前職場体験も、インターンシップと同じようにRJP理論を取り入れると、同じ効果を得やすくなります。紹介予定派遣も現場を理解できる採用方法であり、インターンシップと同じようにRJP理論を取り入れましょう。そうすることで、入社意向を高められます。

紹介予定派遣とは、まずは派遣社員として働いて、期間満了後に派遣先企業への直接雇用を交渉する仕組みです。これらのどの採用方法も、RJP理論を取り入れるために適している採用活動といえます。

リファラル採用

リファラル採用とは、社員に知人を紹介してもらって応募者を選考する方法です。リファラル採用もRJP理論を取り入れやすい採用方法であり、RJP理論を取り入れるメリットを得やすい採用活動でもあります。

そもそも社員と応募者が知人であり、企業の特徴を率直に伝えやすい土壌があるため、企業への理解も深めやすいでしょう。企業の理解が深まっていれば、入社後のギャップを大幅に軽減できます。

もし課題が生じて悩んでも、知人である社員がフォローするので、定着率が高まるでしょう。知人である社員は、必然的にメンターとしての役割を担います。人事担当者は社員にRJP理論を伝えたり、メンターとしての役割などを教育したりしなければなりません。

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社員のインタビューコンテンツを発信

社員のインタビューコンテツの発信は、直接的な採用活動ではありません。しかし、インターンシップやリファラル採用などで、RJP理論を取り入れた場合に役立つコンテンツとなります。すべての採用活動に、活用することも可能です。インタビューする社員は、新卒や中途採用を問わずに、求職者が気になるコンテンツとなるものを重視しましょう。

また、インタビュー内容は、RJP理論を取り入れた内容にすることが大事です。企業のよい面と悪い面を、社員の生の声として伝えれば、求職者は職場をイメージしやすくなるでしょう。社員インタビューは、採用オウンドメディアやSNS、動画配信、ブログなどでも発信できます。

RJPを導入する際の注意点

RJP理論を取り入れる際には、いくつかの注意点があります。ここでは、重要な注意点を3つ解説します。

情報発信のバランスをとる

RJP理論を取り入れた場合は、企業の採用情報発信のバランスが重要です。よい面は70~80%で、悪い面は20~30%とするように心がけましょう。悪い面は具体的に伝え、それに対する企業の対応をポジティブな情報として伝えることがポイントです。ポジティブな情報が実態に即していなければ、RJP理論を取り入れる意味がなくなるため注意しましょう。

受け入れ部署との連携を強化する

RJP理論を取り入れた採用活動では、受け入れ部署との連携強化が不可欠です。受け入れ部署が望んでいる人材のイメージを人事が把握できなければ、受け入れ部署は求める人材を得られません。求職者に対しての企業説明や部署説明と、実態が異なれば採用者が大きなギャップを感じるでしょう。

このような状況では、RJP理論を取り入れる意味がなくなります。人事担当者は、受け入れ部署での環境や仕事の難易度などをつぶさに調べなければなりません。受け入れ部署との意思疎通も必要です。発信した情報が間違っていれば、早期退職者を増やす原因にもなります。

求職者がイメージしやすい内容にする

働き方の多様化により、求職者が企業を選ぶ状況が続いています。従来のように企業が求職者を選ぶというような考え方では、人材の採用や定着は難しいでしょう。RJP理論では、人材を確保し定着させることが目的です。発信する情報は、求職者が企業をイメージしやすい情報でなければなりません。

そのためには、求職者の立場で採用情報を組み立てることが効果的です。採用情報や企業情報に、適切なRJP理論を取り込むことが重要といえます。

まとめ

人口が減少し、労働人口が減り続けている環境下で、十分な人材を確保することが難しくなってきました。さらに、優秀な人材を確保することは、人事の大きな課題です。そのなかで、RJP理論を取り入れることで優秀な人材を獲得し、人材の定着率を上げている企業も少なくありません。RJP理論を取り入れても恥じないような職場環境づくりも、企業の課題といえるでしょう。

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