こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
近年、注目を集めるリスクマネジメントという言葉ですが、意外と言葉の意味を知らない方は少なくありません。書店にはリスクマネジメントに関する多くの本が並んでいるものの、いったい何のことを指しているのか分からないという方もいるでしょう。
本記事では、リスクマネジメントの概要と重要性、導入方法や導入時のポイントについて解説します。これからリスクマネジメントを実施したいという方や、いまいち意味がよく分からないという方はぜひ参考にしてください。
リスクマネジメントとは
リスクマネジメントとは、予測できる損失を回避・軽減するために、事前にリスクを分析・評価・モニタリングしておくことです。「リスク管理」と呼ばれていますが、同じ内容だと思って間違いありません。
リスクマネジメントは、企業の経営を安定・拡大させるために重要なものです。リスクマネジメントが機能しなかった結果、世間からの批判を浴びて倒産に追い込まれた企業も少なくありません。
企業の規模や業界、経営状態によって生じるリスクは異なりますが、それらが及ぼす影響を予測しておくようにしましょう。そしてリスクが発生した場合に、損失を回避したり軽減したりするためにも、リスクマネジメントを実施しておく必要があるのです。
リスクヘッジとの違い
リスクマネジメントとリスクヘッジを混同しているというケースがあります。同じリスクという言葉が付いていますが、リスクの分析や対策、モニタリングなどの管理体制の整備が主なリスクマネジメントと違い、リスクヘッジはリスクに対する対策を指す言葉です。
情報漏洩のリスクを想定した場合、使用しているソフトウェアの脆弱性や人的ミスから起こるリスクを検討することをリスクマネジメントと言います。リスクヘッジは、リスクマネジメントの結果決定したセキュリティ強化や教育研修などの具体的な行動のことです。
管理体制か具体的な施策かで、使用する言葉が異なることを覚えておきましょう。
リスクテイクとの違い
リスクマネジメントはリスクが発生した際にどのように対策するかを全体的に管理する考え方です。対して、リスクテイクはリスクを想定し、それが現実となったときの対策を用意したうえで行動することを意味しています。それでは、リスクテイクのメリットはどういったものなのでしょうか。
「リスクテイク」については、こちらの記事をご確認ください。
リスクアセスメントとの違い
リスクマネジメントを実施する中で出てくる言葉に、リスクアセスメントがあります。リスクアセスメントとは、リスクマネジメントのプロセスのひとつで、リスクを特定し分析・評価するまでのフローのことです。
リスクマネジメントの一部分がリスクアセスメントと覚えておけば良いでしょう。リスクマネジメントはリスクアセスメントのほかにも、対応措置や効果測定、管理方法までを含みます。
クライシスマネジメントとの違い
もうひとつ、リスクマネジメントとよく似た言葉に、クライシスマネジメントがあります。いわゆる緊急事態の対策のことで、リスクマネジメントではカバーしきれない深刻な事態の被害を最小限に抑えるためのものです。
具体的にはテロや自然災害などが該当します。リスクマネジメントの中にも外的要因のリスクとして盛りこむことはできますが、それよりも規模が大きく、別枠で考えなければならない問題をクライシスマネジメントで備えると考えましょう。
リスクマネジメントの重要性
大前提として、企業には様々なリスクがあることを念頭に置いておかなければなりません。業界や事業規模によって大きく異なりますが、中には事業継続を脅かすようなリスクも存在しているのは事実です。
これらのリスクに対処し、できる限り被害を受けないようにするためにも、リスクマネジメントは重要と言えます。また、仮に被害を受けてしまった場合でも、その被害を最小限に抑えるようにすることもリスクマネジメントの役割です。
特に注意しておきたいのが外部要因によるリスクです。機器の故障や自社業務内でのトラブルをはじめとする内部要因のリスクは回避できる可能性もあるでしょう。しかし自然災害などの外部要因は、はっきりしたリスクが想定できません。クライシスマネジメントの策定も大切ですが、リスクマネジメントの中で二重・三重の対策を行っていくことも重要です。
リスクマネジメント対象となるリスクの種類
リスクの分類方法はさまざまですが、一般的には純粋リスクと投機的リスクの2種類に分けられます。それぞれどのような内容なのか、詳しく見ていきましょう。
純粋リスク
企業に対して損害や損失のみ発生させるリスクのことを、純粋リスクと言います。後述する投機的リスクと違い、単純に損失を生むだけのリスクです。
純粋リスクを細分化すると、さらに4つのカテゴリに分けられます。
- 財産リスク
- 費用・利益リスク
- 賠償責任リスク
- 人的リスク
財産リスクは人的なものと自然災害のものの2種類が存在していますが、どちらも会社の財産を失うリスクのことです。ここでいう財産とは現金だけではなく、不動産や設備なども含まれます。
費用・利益リスクは店舗や施設の閉鎖と取引先の倒産など、減収減益や費用負担の増額などが該当します。同じようなものに賠償責任リスクもありますが、こちらは著作権特許権の侵害などで発生する金銭的なリスクです。
最後の人的リスクは、従業員が病気や事故などで出社できなくなり、生産効率が落ちてしまうリスクのことです。
完全に発生を予測することはできませんが、損害保険などでカバーをすることができることも珍しくありません。比較的対策は取りやすく、少し前のリスクマネジメントといえば純粋リスクのみを対象として回避する施策を考えることが一般的だった時期もあります。
投機的リスク
ビジネスリスクとも言われる投機的リスクは、単純に損失を生むだけではなく、場合によっては企業の利益になる可能性も含んでいるリスクのことです。具体的には次の4つが該当します。
- 経済的情勢変動リスク
- 政治的情勢変動リスク
- 法的規制変更リスク
- 技術的情勢変化リスク
特に近年はグローバル化の進展により、投機的リスクに直面する企業が増加傾向にあります。場合によっては大きな利益を生む可能性もあるため、純粋リスクとは違い損失を完全回避するのではなく、いかに小さくできるかがポイントです。
リスクマネジメントを行うにあたっては、さまざまなケースを想定する必要があります。リスクの種類によっては企業活動ができなくなってしまう場合もあるためです。そのため、事例を知ることも大切です。
「リスクマネジメント例」については、こちらの記事をご確認ください。
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リスクマネジメントの導入方法
ここでは、リスクマネジメントの導入方法をいくつかのステップに分けてお伝えします。
「リスクマネジメントプロセス」については、こちらの記事をご確認ください。
社内の体制を整える
リスクマネジメントを実施するには、リスクマネジメントを担当する部署や社内の体制を整える必要があります。リスクマネジメントに最適な人員をアサインしたり、社内研修や教育プログラムで育てていったりといったことが必要です。
また、リスクマネジメントには関連する資格があり、自社による対策を行う場合でも場合によっては、資格が必要なケースもあります。それでは、リスクマネジメントに関する資格はどういったものがあるのでしょうか。
「リスクマネジメント資格」については、こちらの記事をご確認ください。
当然ですが、リスクマネジメントの担当者ではないからと言って、リスクマネジメントを軽視することはできません。社内や部署が一丸となって、リスクマネジメントに取り組む必要があります。
リスクを特定する
社内での体制を構築した後に、リスクの特定を行います。事業内容や目的に対して、どのようなリスクがあるかを抽出する作業です。
リスクマネジメントの管理部署だけがリスク特定に動くのではなく、さまざまな部署や立場の社員からヒアリングを行いましょう。特定の部署だけでリスクを特定しようとすると、抜けや漏れが発生するためです。
また、浮かび上がったリスクはすべて列挙するのが理想的です。起きないだろうと勝手に判断してしまうと、実際に発生した際の評価ができなくなってしまいます。どんなに小さなものであっても、考えうるリスクは全て上げてもらうようにしましょう。
リスクの分析・評価
リスクの分析・評価とは、リスクの影響の大きさや発生確率を、数字的に把握する取り組みです。定量的に見えるようになるため、リスクの重大さで優先順位を付けることもできるようになります。この優先順位を付ける作業のことが、リスクの評価です。
リスクを特定する際に想定されるリスクは膨大な量になるでしょう。全て同時に対応することは不可能なため、まずは分析で定量的な評価に変換し、どの順位に並べるのかを検討するようにすると良いでしょう。リスクの評価ができれば、重大な事象に対する対応が早くなります。
対策を策定する
リスクの分析と評価が終わると、続いて対策を策定します。優先度の高いものから順に対策案を検討していくと良いでしょう。対策の策定はリスクコントロールとリスクファイナンシングという2つの方法があり、それぞれ内容が異なります。
リスクコントロールは、損失の頻度と大きさを押さえることに注力しており、会費や損失削減を目的としています。対してリスクファイナンシングは、発生した損失を金銭で穴埋めする方法のことです。
リスクの種類によって対策が異なるほか、企業規模や事業内容によっても適切な対策は異なります。自社にとって適切な手段を選択して、より具体的な内容を検討するようにしましょう。
PDCAを回す
定まったリスクマネジメントは、PDCAサイクルに則って運用していきます。策定当初は万全だと思っていた対策や優先順位が、実際に運用を始めてみると実はそうではなかったという事実に行きつくことも珍しくありません。
対策を実施(Do)し、モニタリング(Check)した結果、改善策を検討する(Action)ことが重要です。これらを回し続けることで、優先順位の変更や対策の明確化が測れるでしょう。新たなリスクが発生した場合も迅速に対応できるようになるため、PDCAサイクルの要領でリスクマネジメントを運用していくことが重要です。
リスクマネジメント導入時のポイント
リスクマネジメントを導入する際は、同時に以下の2つを実施しておくと良いでしょう。
- BCPを策定する
- 従業員に研修を行う
それぞれの内容や導入したほうが良いという理由を解説します。
BCPを策定する
リスクマネジメントと同時に、BCPを策定するとより高い効果を発揮するでしょう。BCPとは「事業継続計画」のことで、万が一の事態に備えた対応を記した計画書です。
不測の事態でも企業を存続させるためという目的と同時に、災害時の早期復旧に繋がるという目的で作成している企業も増えてきました。情報の目的はリスクマネジメントにも共通するものがあり、双方を補完・強化できるものです。
また、BCPは企業や従業員だけではなく、その家族を守るためにも機能します。取引先の方にも繋がるため、リスクマネジメントと関係がなかったとしても作成するのがおすすめです。
従業員に研修を行う
導入に際しては、リスクマネジメントに関する研修を行いましょう。
リスクマネジメントは、いきなり実施できるものではなく、ある程度のコミュニケーションスキルや管理スキルが必要となります。また、自分で学習するだけでなく、研修によってスキルや考え方を習得することも可能です。
「リスクマネジメント研修」については、こちらの記事をご確認ください。
認定審査のリスクマネジメント対策
2020年3月より、日本次世代企業普及機構(ホワイト財団)の認定審査の設問に、リスクマネジメントの項目が追加されました。項目は次の5つです。
- 労働安全衛生
- 情報セキュリティ
- BCP の更新
- 災害対応計画
- 重要機密情報のバックアップ
それぞれ内容を包括する項目もあるため、本記事では3つの項目について詳しく解説します。
労働安全衛生
労働安全衛生法によって定められた職場における労働者の安全と健康の確保が、ホワイト財団の認定審査に盛り込まれました。労働安全衛生法は、経営者は労働者の安全と健康・快適な職場づくりを形成するための管理者を選任し、その人物に対して必要な教育を施す義務があるとする法律です。
リスクマネジメントの観点で言えば、労働安全衛生法に基づいた目標の設定とそれを達成するための管理や評価・改善が該当します。
情報セキュリティ
インターネットや各種システム、コンピューターを利用する際の情報漏洩やウイルス感染を防止するための対策も盛り込まれました。情報セキュリティポリシーの周知徹底が重要なポイントとなりますが、これらが具体的に機能しているのかなどを分析・評価します。
同じような内容に重要機密情報のバックアップがあります。ウイルス感染などに端を発した、情報漏洩やシステムの停止などを防ぐ目的で定められたものです。いずれの場合も、機器の使い方や情報セキュリティに関するリスクマネジメントが求められます。
BCPの更新
BCPの重要性については先の章で解説しましたが、さらに重要なこととして更新が必要な点があります。災害対策や感染症対策など、時代の変化とともに内容を変更していかなければ形骸化してしまい、いざというとき役立たなくなってしまうからです。
BCPを定期的に更新することで、万が一の事態に対するリスクマネジメントとなるでしょう。作ったまま放置せず、特定の期間を設けて見直すようにしてください。
まとめ
リスクマネジメントは、企業の存続と健全な事業拡大のために必要なものです。企業とリスクは切っても切れない関係であるため、発生しうるリスクを把握し必要な対策を用意しておくことが重要です。
リスクマネジメントは、安定経営を維持するには欠かせない要素と言われています。策定がまだであったり、作っただけで見直していなかったりするのであれば、この機会にぜひ見直してみてください。
「タレントパレット」では、各部署のデータを集めて経営や人事課題の解決に役立つ機能が備わっています。マンパワーでリスクを洗い出すことも大切ですが、システムによって判明している課題もリスクマネジメントのリスクとして扱うことができるでしょう。
ほかにも人事の異動シミュレーションや、人事考課表の出力などが可能です。システムを使って経営のリスクを抽出したい、人事の困りごとを解決したい方は、ぜひ「タレントパレット」の導入をご検討ください。
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