リスクアセスメントの意味や役割を解説!自社を守り成長させるために理解を深めよう


リスクアセスメントの意味や役割を解説!自社を守り成長させるために理解を深めよう

ビジネスで重要視されているリスクアセスメントは、企業の事故発生リスクを抑えるうえで大事なプロセスです。本記事では、リスクアセスメントの概要や目的、業種ごとに求められる適切なリスクアセスメントをご紹介します。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

近年注目されているリスクアセスメントは、企業の事故発生リスクを抑える重要なプロセスです。リスクアセスメントにきちんと配慮すれば、顧客や取引先など外部からの信頼性が高まり、優秀な人材確保につながります。


そこで本記事では、リスクアセスメントの概要や目的、業種ごとに求められる適切なリスクアセスメントを事例別にご紹介します。

リスクアセスメントとは?

リスクアセスメントとは、企業や団体が労働環境で生じ得る危険性や有害性を可視化し対策を立てるプロセスです。リスク因子の洗い出しから改善策の選定まで、安全管理の徹底に必要な一連のプロセスをマニュアル化することで予期せぬ事故を防止し、労働環境の安定化につなげます。リスクアセスメントは業種ごとに定められており、企業は遵守する義務があります。


リスクアセスメントの遵守は従業員の健康・安全を守るだけでなく、顧客の利便性やサービス向上につながります。

元々は製造業や建設業などにおいて安全管理を行う働きを指す

リスクアセスメントは本来、製造業や建設業など業務上の危険が多い業種の安全指針として導入されました。製造業や建設業では業務の性質上肉体的なリスクが多く、予期せぬケガの防止策が必須です。また、製造業や建設業では特殊な化学物質の取り扱いが求められるほか、アスベストなど有害な粉塵による発がんリスクが高く、目に見えないリスクも無視できません。


そこでアセスメントで統一基準を設けることにより想定される幅広いリスクが可視化され、従業員の身体的・精神的な安全確保につながります。

近年は業種を問わずリスクアセスメントに注目が集まっている

リスクアセスメントの概念はあらゆる業種に拡大され、近年ではほぼすべての業界で導入が進んでいます。肉体的な労働が少ない職場であっても、危険な化学物質を常時取り扱う環境であれば徹底した安全管理が重要です。また介護や保育、医療の現場では、患者・利用者と直接触れ合うことによるリスクも発生します。


このように、想定されるリスク因子と対処法は業種ごとに異なるため、労働環境や企業規模に合ったリスクアセスメントの作成および遵守が重要です。

リスクマネジメントとの違いは?

リスクアセスメントとリスクマネジメントは混同しやすい概念ですが、意味と目的は異なります。リスクアセスメントが危険因子の洗い出しから改善策の選定までを意味するのに対し、リスクマネジメントは実際の改善から評価までを含めたプロセスです。リスクマネジメントの一部としてリスクアセスメントが含まれており、両者をしっかりと遵守してはじめて安全管理義務が達成されます。


リスクマネジメントによって安全管理の大枠のプロセスを作成したうえで、リスクアセスメントで詳細なリスク制御が行われるケースが一般的です。

すべての業種においてリスクアセスメントが重要な理由は3つ

リスクアセスメントの概念がより幅広い業種に拡大した背景は、時代の変化です。企業や団体では現在、以下の3つの観点からリスクアセスメントの徹底が求められています。


  • 労災の防止
  • 優秀な人材確保
  • 災害対策


安全管理の重要性は以前より認識されていましたが、新たなリスク因子の発見により統一した管理基準の策定がより強く求められるようになりました。リスクアセスメントの重要性を体系的に理解すれば、抜本的かつ継続的な安全管理が可能です。それぞれの要因について詳しく見ていきましょう。

労災を未然に防ぐため

リスクアセスメントは、従業員の命を守るうえできわめて重要です。肉体労働がメインの職場では予期せぬケガが発生しやすいでしょう。


そのためあらゆるリスクパターンを事前にすべて洗い出し、それぞれの予防策を明確化することで初めてリスクアセスメントが機能します。予防策だけでなく、万が一事故が発生してしまった場合の対処法も含めた指針作りが重要です。


有害な化学物質を常時取り扱う職場では、薬品による長期的な健康被害の防止もリスクアセスメントに含まれるでしょう。リスクアセスメントを徹底することで労災を未然に防止でき、長期的な労働環境の改善が可能です。

優秀な人材確保のため

リスクアセスメントを重視すれば、優秀な人材の確保につながります。求職者にとって、リスクアセスメントを徹底している企業は安心して働ける職場であり、入社後の長期的なキャリアアップを具体的にイメージしやすいでしょう。企業のウェブサイトや入社説明会などでリスクアセスメントを公開することで求職者へのアピールが可能です。


また時代の変化や従業員の要望に合わせてリスクアセスメントを柔軟に改善すれば、働く側の不安が解消されて離職率低下につながります。

未曾有の災害に備えるため

リスクアセスメントの徹底は災害対応にも効果的です。災害という不確定要素の強いリスクをあらかじめ想定し、対策プロセスを明確化すれば予期せぬ事象への対応力が向上します。


たとえば、未曽有の洪水被害によって部品の生産拠点そのものが流されてしまうかもしれません。またそこまで深刻な災害ではなくても、突然のゲリラ雷雨により長時間の停電が発生し、工場の冷蔵庫が停止してしまうケースもあるでしょう。


リスクアセスメントで災害対応を具体的にシミュレーションしておけば、将来の災害リスクに備えて従業員や利用者の安全性向上が可能です。

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企業におけるリスクアセスメントの実施方法を解説

企業におけるリスクアセスメントは、一般的に以下の4つのプロセスで行われます。

  • リスクの可視化
  • 改善方法の構築
  • 従業員への周知および改善活動
  • 改善策の評価


企業のリスクアセスメントは原則として、「リスクの洗い出し」から「評価」までのプロセスで完結します。それでは、企業内リスクアセスメントの標準的なプロセスを見ていきましょう。

STEP1:リスクの可視化

リスクアセスメントのスタートラインは、リスクの可視化です。リスク可視化にあたっては、まず作業手順書や機器の取扱説明書、過去の労災事例などの内部資料を収集し、従業員へのモニタリングを加味したうえで想定されるリスクを洗い出します。そして、通常業務のすべての工程を分解し、どの工程でどの種類の事象が発生するかをシミュレーションしなくてはなりません。

たとえば製造業なら、部品の切断工程で従業員の深刻なケガが発生しやすかったり、食品業界なら製造過程で異物が混入しやすかったりと、業種によって注意すべきリスクが異なります。リスクを特定したら、リスク評価が必要です。洗い出されたリスクについて頻度や深刻度を数値化し、評価点数(リスクポイント)に基づいて優先度を序列化します。

リスク特定にあたっては簡潔な文章で表し、原因と結果のセットで共有することで効果的な再発防止が可能です。

STEP2:改善方法の構築

想定されるリスクをすべて洗い出し、深刻度を数値化したら具体的な改善方法を構築します。対策の優先順位はリスク因子によって異なるため、事前の把握が重要です。

想定されるリスク因子には、以下のような種類があります。

リスク因子
対策
計画段階で発見される有害性・危険性
高リスク業務の代替・排除、プロセスの変更
工学的リスク
ガード、インターロック、安全装置導入
人的リスク(ヒューマンエラーなど)
マニュアル共有の徹底、従業員の再教育
物理的リスク
保護アイテムの導入

STEP3:従業員への周知および改善活動

具体的な改善策の特定後は、従業員への周知徹底が重要です。充分な告知期間の後に改善策を実行すれば従業員のモチベーションが高まり、職場環境の確実な改善につながります。

アセスメントは継続的な周知徹底が不可欠です。作成時に一度告知するだけでは周知効果が薄いため、定期的にアセスメントの重要性を伝えることが重要です。
従業員の危機意識が高めれば、職場全体の安全性向上に直結します。従業員への周知徹底が完了したら、事前に決めたプロセスに則って改善策を実施しましょう。

STEP4:評価

リスクアセスメントに基づいて改善策を実施したら、評価フェーズに移ります。評価では以下の点を重視しましょう。

  • 減少したトラブルの種類
  • トラブルの減少率


詳細な分析の結果、職場の安全性が当初の期待通りに改善されなかった場合は原因を特定したうえで再度のアセスメント作成を行い、改善策の実施から評価までを繰り返します。

客観的な数値に基づいた評価を行えばすべての従業員が納得しやすくなり、継続的な安全性向上へのモチベーション形成が可能です。

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リスクアセスメント実施のポイントは4つ


リスクアセスメントを効果的に実施するうえでは、幅広い視野での運用が重要です。リスクアセスメントを実施するうえで重要な4つの注意点を見ていきましょう。

ステークホルダーを意識した活動

リスクアセスメントは社内の指針であると同時に、ステークホルダーに向けた公開資料でもあります。企業が想定すべきステークホルダーは、以下の通りです。

  • 従業員
  • 外部の取引先
  • 顧客
  • 株主


リスクアセスメントに配慮した企業運営はステークホルダーに好印象を与え、企業の評価上昇につながります。リスクアセスメントの拡充を徹底した企業は対外的に安心感を与え、信頼性を向上させるでしょう。

リスクアセスメントの徹底によって社会的な評価が高まり、外部から優秀な人材が多く集まれば業務の質が向上し、さらなる抜本的なリスクマネジメントの実践につながります。

危険を未然に防ぐ意識を持つ

リスクアセスメントの本質的な目的はアクシデントの予防です。事故の発生後の対処では適切なリスクアセスメントとは言えません。想定される危険因子をすべての従業員が把握し、問題意識や具体的な対処法を共有すれば長期的に事故が起きにくい企業体質の土台が形成されます。

予期せぬ事故を防ぐためには、事故は必ず起きるものという意識をすべての従業員に徹底するプロセスが重要です。どんな工程でも事故のリスクはゼロにできません。

事故防止の意識徹底と発生した事故の記録を地道に行うことでリスクアセスメントがより拡充され、安全に働きやすい職場づくりにつながります。

現場に落とし込んだ実行

リスクアセスメントは、現場と連動した内容でなくてはなりません。経営層が理念先行で策定したリスクアセスメントでは机上の空論であり、現場との乖離が生まれてしまいます。

スタートラインの時点で現場の意向を丁寧にヒヤリングし、実際の資料や記録を収集することで問題点が可視化され、実務と連動したリスクアセスメントの作成・共有が可能です。リスクアセスメントの共有および実践が進まない場合は指針自体が形骸化しないか、定期的なヒヤリングを通してチェックしましょう。

【業種別】リスクアセスメントのポイントを紹介

適切なリスクアセスメントの内容は業種ごとに異なります。そこで以下の業種に絞り、望ましいリスクアセスメントを見ていきましょう。

  • 製造業
  • 建築業
  • 医療介護
  • 保育・教育

製造業

製造業は大型機械の取扱による負傷など、重大事故が起きやすい業種です。製造業では部品の生産から加工、運搬に至るまでほとんどのプロセスで大型機械を使用するため、業務中の負傷リスクが高まります。

製造業のリスクアセスメントでは危険業務の廃止や代替、保護アイテムの導入などの対策が有効です。

建築業

転落や物品の落下などの事故が多い建築業では、すべての産業のうちおよそ3割を占める死亡事故が発生しています。そのうえ、建築業では下請け・孫請けを主体とした複雑な請負構造が標準であり、アクシデント発生時の責任の所在がわかりにくいのが問題です。

建築業では労働安全衛生法の規定に則り、以下の点を考慮したリスクアセスメントの策定が求められます。

  • 複数の事業者がひとつの現場で作業する可能性があること
  • 案件ごとに作業のプロセスやルールが異なること


新人の従業員にとって理解しやすいリスクアセスメントを意識すれば、ベテランを含めたすべての従業員が働きやすい職場づくりが可能です。

医療・介護

医療・介護業界では従業員と利用者間の事故が多数発生しています。従業員の疲労やマニュアルの不徹底による利用者の負傷や死亡事故の防止には、起こり得るアクシデントを包括的に想定したリスクアセスメントの策定が重要です。

ヒューマンエラーによる事故が多発するなら使いやすい介護機器を導入したりマニュアルを刷新したりするだけでも事故の発生リスクが抑えられるでしょう。万が一事故が発生した場合の解決プロセスの明確化も有効です。もちろん、業務にともなう負傷や慢性疾患など従業員側のケアも合わせて行いましょう。

保育・学校

教育現場でも重大事故のリスクがつきまといます。保育園や幼稚園、小学校では特にケガのリスクが高まり、適切な対処を怠ると虐待が疑われたり監督不行き届きと見なされたりと二次的な被害が想定され、注意が必要です。

物理的なケガの場合、ピアノやテーブルなど重量物の配置を工夫することで防げます。また保育園の場合、園児の昼寝中は部屋を暗くするため暗所での作業によりケガが発生しないよう注意が必要です。さらに調理室がある教育施設の場合、食中毒や感染症のリスクに備え、室内の温度管理や衛生管理の徹底が求められます。

従業員と児童双方の安全を守ることで事故のリスクをコントロールすれば、働きやすい職場づくりが可能です。

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まとめ

リスクアセスメントは職場での危険因子を洗い出し、事故を防止するための指針として知られています。企業がリスクアセスメントを徹底することで、働きやすい職場の整備が可能です。業務ごとに求められるリスクアセスメントの内容を把握し、すべての従業員で共有して重大事故を防いで働きやすさを向上させましょう。

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