こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
リストラにはさまざまな種類がありますが、一般的に企業が経営再建のために人員整理を行う場合のリストラは、整理解雇を意味します。
整理解雇を実施するためには、さまざまな条件を満たさなければなりません。この記事では、不当解雇にあたるケースやリストラを実施する際の注意点などを解説します。
リストラの定義・種類
「リストラ」というと、経営が悪化した企業が行う整理解雇と捉えられるケースが多いようです。しかし、リストラにはさまざまな種類があります。
例えば降給や降格を含む「配置転換」や、会社に籍を置いたまま勤務地が変わる「出向」、籍を別の企業に移す「転籍」なども、広義のリストラです。
さらに、整理解雇の前に行う義務がある「退職者の募集」や、特定の従業員に退職を勧めることもリストラの一環です。
リストラという言葉には「再構築」という意味があるように、単なるクビではなく、会社が人材を整理するためのあらゆる施策がリストラなのです。
しかし、日本における「リストラ」には「クビ」というイメージがあるため、ネガティブな意味合いで使われるケースが多いかもしれません。
リストラの種類や定義の詳細は、以下の記事で解説しています。
「リストラ」については、こちらの記事をご確認ください。
リストラ (整理解雇)が不当解雇にあたるケース
ここからは、リストラの中の整理解雇について解説します。整理解雇は、労働基準法を始めとするあらゆる法律によって条件が厳しく定められているので、不当解雇にならないように注意してください。
傷病・産前産後の休業期間とその後30日間の解雇
不当解雇にあたる代表的なケースは、「業務上の傷病による休業期間およびその後30日間の解雇」や「産前産後の休業期間およびその後30日間の解雇」などです。こうした理由による解雇は、労働基準法第19条によって禁止されています。
そのため、業務中にケガをして仕事を休んでいる期間(労災休業中)や、休業明けの約1ヵ月間は解雇できません。また、この休業期間の定義については、ケガをする前のように働けずに休む期間も含まれるという判例があります。ただし、治癒後の通院期間は、休業期間には含まれません。
また、産前産後の休業期間取得中や、休業明けの30日間は解雇できません。加えて妊娠、出産、産前産後による休業を取得したことを理由に解雇することは、男女雇用機会均等法でも禁止されています。
退職勧奨(推奨)という形であっても、「本当は辞めたくなかったのに、辞めざるを得なかった」となれば、不当解雇とみなされる可能性があります。
従業員数が少なく、経営状況が厳しい中小企業では、ケガや出産に伴う従業員の休業の扱いには、特に注意が必要です。
国籍・信条・性別などを理由とした解雇
労働基準法第3条では、国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇が禁止されています。昨今は外国人労働者が増加しており、さまざまな背景を持つ従業員が増える可能性が高いでしょう。
しかし、どのような理由があっても国籍、信条、社会的身分を理由とした解雇はできません。企業イメージや職場の規律などを守りたい場合は、就業規則に具体的な禁止事項を定めておきましょう。
また、男女雇用機会均等法第6条では性別を理由に解雇することも禁止されています。例えば、「女性は結婚や妊娠で辞める可能性が高い」という理由で人員整理の対象にするのは、不当解雇にあたります。
男女雇用機会均等法では賃金や処遇、キャリアアップに関しても差別を禁止しているため、その点にも注意してください(男女雇用機会均等法第5条)。
公的機関への通報やトラブル相談などを理由とした解雇
労働基準監督署などへの申告や、公益通報を行ったことを理由に解雇する行為も、労働基準法第104条や公益通報者保護法第3条で禁止されています。
不当なサービス残業や劣悪な労働環境の報告、企業や上司の不正の通報などは、俗に「チクった」と表現される行為です。しかし、こうした申告・通報は労働者の権利として法律によって守られています。たとえ、それによって会社に大きな不利益が発生しても解雇はできません。
また、パワハラやセクハラといった被害の相談・通報を理由に解雇することも、男女雇用機会均等法第11条を始めとする法律で禁止されています。
企業にとって不都合な事実の拡散を防ぐための隠ぺい工作として不当解雇が行われることがありますが、これはあってはならないことです。そうした事態にならないよう、すべての従業員に対して言動を教育し、労働環境を整えることが大切です。
リストラ(整理解雇)を行える条件
ここからは、一般的にリストラとして認識されている「整理解雇」を行うために必要な4つの条件を確認していきましょう。
人員削減を行う客観的な必要性がある
整理解雇の1つ目の条件は、人件費の削減(人員削減)をしなければ、会社の経営が成り立たない状況になっていることです。「業績を向上させたいから」「今後経営状況が悪化しそうだから」という理由では、整理解雇を実施することはできません。
客観的に見て業績の悪化が深刻であり、企業の存続が危うい場合は人員整理の必要性が認められます。
ただし、近年の判例では倒産の危機に直面していなくても、経営上の合理的な理由があれば整理解雇が認められるケースも多いようです。その場合は、次項の解雇回避の努力がどれほどなされているかが重要になります。
解雇を回避するために最善を尽くしている
整理解雇は、いわば最後の手段です。整理解雇の実施をする前段階として、配置転換や出向、希望退職募集といった、解雇を回避するために最善を尽くしているかどうかが問われます。
その他、新規採用の停止や非正規雇用者の雇い止め、残業規制や労働時間の短縮(ワークシェアリング)などが、解雇回避の努力として挙げられます。
ただし、こうした施策が「十分な解雇回避努力」と認められるかどうかは、企業の状態や施策の内容に応じて個別に判断されます。
一般的には、配置転換や希望退職募集が行われていなければ解雇回避の努力をしていないと判断されますが、企業の状態によっては実施が困難な事情を認められるケースもあります。
一部の判例では、解雇される人の再就職支援が、整理解雇の妥当性を判断する材料になったケースもあるようです。
解雇対象者の選定基準が客観的・合理的である
整理解雇の対象となる従業員を選ぶ際も、合理性が重要です。合理性に欠ける選定とは、個人的な印象や感情によるものや、客観性に欠ける恣意的なものを指します。
また、勤務成績や勤続年数、年齢、会社への貢献度など、「どのように働いてきたか」も合理性のある選出において考慮してください。
また、扶養家族を抱えている、再就職が難しい状況にあるなど、個人の事情を判断材料に含めているか否かも問われます。
客観的で合理的な人選かどうかが不安な場合は、労基関係に詳しい弁護士に相談するとよいでしょう。
労使間で十分に協議を行っている
整理解雇の必要性があり、解雇回避の努力義務や公正な選出がなされていても、手続きに妥当性がなければ不当解雇とみなされかねません。ここでいう手続きの妥当性とは、説明や協議などのことです。
整理解雇を行う際は、その必要性や具体的な内容(時間や規模、方法など)を労働組合や従業員に説明しなければなりません。そして、協議にて、整理解雇が妥当な手段であることを納得してもらう必要があります。
納得を得られるかどうかは、整理解雇に至るまでの努力で決まるでしょう。
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リストラ(整理解雇)の注意点
リストラの一種である整理解雇を実施するには、4つの主要な要件を満たさなければなりません。ただし、解雇自体にも法律で定められたルールがあります。ここからは、就業規則や解雇予告といった、解雇に関するルールについて解説します。
就業規則に解雇の理由を定める
まず「就業規則」と「労働契約書」(労働条件通知書)において、どういった行為が解雇(クビ)につながるかをあらかじめ示しておく必要があります。
解雇には普通解雇、整理解雇、懲戒解雇、論旨解雇など、さまざまな種類があります。特に普通解雇においては、就業規則にどのような規定があり、定められた規定に違反しているかどうかがポイントになります。
例えば遅刻や無断欠勤、勤務態度の悪さや業務命令の違反など、就業規則に違反している場合であれば、普通解雇を行いやすいでしょう(労基法89条、106条なども参照)。
ただし、能力不足や病気などを理由に普通解雇を行った場合は、裁判所がその判断を無効とすることもあり得ます。そのため、普通解雇や懲戒解雇を行う代わりに、退職勧奨(推奨)にするケースも多いようです。
前述のとおり、整理解雇を行うためには経営が悪化しており、解雇回避の努力もなされている必要があります。日本においては、解雇自体のハードルが高いといえるでしょう。
30日前の解雇予告か予告手当を支払う
労働基準法の第20条には、「解雇の予告」についての規定があります。これは、従業員を解雇する場合、少なくとも30日前に予告しなければならないという規定です。
30日前より遅れての予告、あるいは予告をしなかった場合は、日数分の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。
また、解雇に関する口約束はトラブルの原因になります。解雇予告を行う際は「解雇通知書」を作成し、同意の署名をして、双方が書面を保管しておきましょう。
ただし、大きな災害などでやむを得ず事業の継続が困難になった場合や、従業員側に大きな責任がある場合に解雇を行う際は、解雇予告は不要です。
日雇い労働者などの臨時採用の労働者には、基本的に解雇予告は必要ありません。しかし、以下の場合は解雇予告制度の対象になります。
・雇用の試験期間中の労働者:雇い入れた時点から14日を超えた場合
・4ヵ月以内の季節労働者、契約期間が2ヵ月以内の労働者:当初の雇用契約期間を超えて勤務させる場合
・日雇い労働者:継続勤務が1ヵ月を超えた時点
上記の場合は解雇予告制度の対象になりますが、それ以下の期間であれば解雇予告は必要ありません。
まとめ
日本では整理解雇をリストラと呼ぶことがありますが、整理解雇を行う際はさまざまな条件を満たす必要があります。それらのプロセスをおろそかにすると問題やトラブルの原因になるため、慎重に行いましょう。
解雇自体にも、労働基準法による規制やルールがあります。また、男女雇用機会均等法に違反しないかどうかも、注意しなければなりません。
適切な育成を行い、従業員一人ひとりの人材価値を高めていけば、望まないリストラを避けられるでしょう。
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