再雇用制度とは? 65歳、定年後以降に継続雇用するメリットや雇用の流れを解説


再雇用制度とは? 65歳、定年後以降に継続雇用するメリットや雇用の流れを解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

少子高齢化が進む中で、労働人口の減少は大きな問題です。各国との経済競争においても、不利な状況に追い込まれています。

また、以前は60歳が厚生年金の支給対象年齢だったものの、現在は65歳に引き上げられている状況です。そのため、60歳で定年退職してしまった場合年金支給まで5年間のタイムラグが発生するようになりました。

そこで、本人が希望すれば、定年を迎えた従業員をその後も引き続き雇用できる再雇用制度が整備されました。しかし、企業としてよく把握できておらず、再雇用制度を導入できていないケースもあるのではないでしょうか。

この記事では、再雇用制度の概要やメリット・デメリット、契約時の注意点や再雇用契約までの流れを解説します。

再雇用制の中身と勤務延長制度との違い

ここからは再雇用制度の中身とよく混同される「勤務延長制度」の違いについてみていきましょう。

再雇用制度の概要

再雇用制度とは、本人の希望次第で、定年後も引き続き雇用できる制度です。かつては、定められた年齢に達すると、体力も働く意欲もあっても、基本的には退職せざるをえませんでした。
再雇用制度により、意欲とスキルのある従業員を年齢の壁にとらわれることなく雇用できるといえるでしょう。
再雇用する場合は、正社員である必要はなく、契約社員や嘱託社員、パートやアルバイトでも雇用できます。なお、定年者は、退職の翌日か翌々日から引き続き雇用することが原則です。

定年後勤務延長制度の概要と再雇用制度の違い

再雇用制度と混同されやすい勤務延長制度は、定年退職日以降も同一条件で勤務できる制度のことを指します。対して、再雇用制度はいったん退職したうえで、勤務先や勤務内容が変わる可能性がある点が違いだといえます。

定年後勤務延長制度と再雇用制度を比較すると、企業にとって導入しやすいのは再雇用制度だといえるでしょう。給与や条件、雇用形態などが選択できる点や定年制度を変更する必要がないためです。

再雇用制度は法改正で注目を集める

再雇用制度が注目された理由は、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」が改正、2013年4月から施行されたためです。

法律の施行によって、従業員が70歳まで勤務する機会を確保することが求められるようになりました。企業が就業機会を確保する方法としては、以下の措置が代表的です。

・70歳までの定年引き上げ
・定年の廃止
・70歳までの継続雇用制度の導入(再雇用制度・勤務延長制度)
・70歳までの業務委託契約を締結できる制度を導入
・70歳まで継続的に、事業主自らが実施、若しくは事業主が委託、出資する社会貢献事業に従事できる制度を導入

2023年時点では努力義務となっていますが、2025年には義務化されます。
法改正により定年の年齢を引き上げ、高齢者でも働ける社会に変わっていることをはっきりと示す改正といえるでしょう。

再雇用制度を活用する場合の企業側のメリット



ここでは、再雇用制度を活用するメリットについて解説します。再雇用制度を利用して、定年者を引き続き雇用することによって、企業はどのようなメリットを受けられるのでしょうか。

今までのスキルや経験を活用できる

スキルや経験を持った従業員が退職してしまうと、企業側もスキルや経験を失うことになってしまいます。しかし、再雇用制度を活用することによって、スキルや経験を失う機会を先に伸ばすことが可能です。

定年社員が持つ独自性の高いスキルをそのまま活用することで、デジタル技術との融合ができる可能性が高くなり、顧客にとって有益なサービスが提供できる可能性があります。長い間、人材を雇用できるため、これまで以上に人材を活用しやすくなるといえるでしょう。

顧客離れを抑制できる

取引先にとっては、定年によって長い間付き合いがあった担当者が変更になることはマイナス要因になる可能性があります。新しい担当者との信頼関係の構築にも時間がかかるだけでなく、取引 そのものが難しくなる可能性も否定できません。

しかし、再雇用制度によって、担当者を変更する機会が減り、顧客離れのリスクを抑えられます。

採用にかかるコストが減らせる

退職によって人材を失った場合は、企業は新たな人材を雇用 する必要があるといえるでしょう。

実際、新たな従業員の雇用に関しては、募集から面談、採用まで大きな労力と人的コストと費用がかかります。また、近年は人材不足のため、全体的な給与ベースも上昇しており、以前よりも人件費が高くなっている点も採用コストが高くなる要因のひとつです。

再雇用制度によって引き続き雇用できる場合、採用コストの削減も可能となるでしょう。

スキルや経験を残しやすい

企業側は、これまでの業務を通じて培ったスキルや技術を、次の世代に引き継いでもらいたいと考えるケースが多いといえます。再雇用制度を利用すれば、スキルや経験を残せる時間が増える点はメリットの1つです。スキルや知識の承継も加速するでしょう。

経験を重ねていることから、若手社員の見本となることも期待され、人材教育の面でも企業にとってメリットとなる可能性があります。

再雇用制度を活用する場合のデメリット

ここからは 再雇用制度のデメリットについて詳しく見ていきましょう。特に給与や待遇に関しては 再雇用した従業員から不満が出る可能性があります。

給与が下がって同じ業務内容になる可能性がある

再雇用制度では、必ず退職した後に再度雇用契約を結ぶことになります。しかし、再雇用後の待遇は正社員だけではなく、契約社員や嘱託社員、パートなどでも問題ないとされているのが現状です。そのため、業務内容はまったく変わらなかったとしても給与が下がる可能性があります。

企業側は、今までよりも安いコストで再雇用できる点がメリットです。しかし、再雇用者からすれば、給与が下がったうえでモチベーションまで下がる可能性があります。その結果、これまでのようなパフォーマンスが期待できない可能性があることから、企業はモチベーションの低下を食い止める対策が必要です。

次の人材が育ちにくい場合がある

再雇用制度によって、次の人材が育ちにくいといったデメリットも挙げられます。再雇用契約した従業員が定年退職前と同じポストについている場合、なかなか次世代にポストがまわらないといえるでしょう。

本来なら経験を積まなければならない年代の従業員からすれば、機会損失となってしまう可能性があります。

また、主要な仕事を引き続き再雇用された従業員が担う場合は、世代交代が遅れたうえで業務の属人化がより進んでしまう可能性も否定できません。

雇用が複雑化して管理しにくい

再雇用制度によって、さまざまな雇用形態が生まれることになります。そのため、雇用形態が複雑化する可能性もあるといえるでしょう。再雇用制度は、必ずしも正社員として雇用する必要はなく、嘱託やパートとして採用することも可能です。

正社員以外の雇用形態が増えることによって、場合によっては人事面の管理が複雑になることが想定されるため、より高度な人事管理システムが必要になるでしょう。

活性化しにくい

再雇用制度によって、長い期間働く従業員が増加した場合、、企業の平均年齢が高齢化するため、社内が活性化しにくいというリスクもあります。加えて、人材が変わらなければ、社内の雰囲気を変えることは難しく、新たな変化を求めている企業には、デメリットの1つになるでしょう。

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再雇用制度で雇用する場合に注意する事



ここからは、再雇用制度で定年社員を再雇用する場合に、注意しなければならない点について解説します。

再雇用制度での労働条件

高齢者雇用安定法は、高年齢者が活躍できる環境整備を図る法律です。しかし、同じ労働条件での勤務を義務化しているわけではありません。

嘱託やパートとしての再雇用でも良いとされているため、勤務内容は再雇用前と変わらず、給与だけが下がるといったケースも考えられます。

人事担当者は、雇用者が労働条件について納得し、モチベーションを維持しながら働いてもらえるよう環境と労働条件を整える必要があるといえるでしょう。企業によっては、あえて新たな環境で勤務することで、モチベーションを高めてもらう取り組みを行っているケースもあります。

契約の期間

契約の更新内容についても雇用者と協議しなければなりません。一般的には、1年ごとに契約を更新していく嘱託社員契約が多いのが実状です。再雇用において通算5年を超えて契約更新が繰り返される場合は、「無期転換ルール」を適用することができます。

「無期転換ルール」とは通算5年を超える契約更新があった場合は、期間の定めのない契約に転換することも可能になる制度です。再雇用する企業側も「無期転換ルール」に対する準備を行いましょう。

給与

給与に関しては、一般的には再雇用前の給与より下がるケースが多く、以前の7割から半分程度になってしまうケースもあります。年齢と共に、体力の低下や記憶力の低下など、業務に対する能力が低下する可能性があると想定されるためです。

しかし、給与額次第では、モチベーションの低下につながり再雇用された従業員が職場全体のマイナス要因となってしまうことも考えられます。そのため、どの程度の給与で再雇用するのかといった点については、よく検討が必要です。

休暇

有給休暇については再雇用時にしっかりと伝えておきましょう。
再雇用制度を利用して就業する場合、いったん退職した場合でも雇用契約は存続しているとみなされます。

つまり、有給休暇は日数をそのまま引き継ぐことも可能です。また、年10日の有給休暇所有者は、年5日の有給取得義務に関しては再雇用者であっても変わりません。

再雇用制度を使って契約する流れ

再雇用制度を使った契約の流れについてみていきましょう。再雇用制度は、まだルールがしっかりと認知されていません。契約までの流れをしっかり理解し、トラブルに発展しないように注意しましょう。

再雇用対象者への通達

再雇用対象者には通知が必要です。一般的には、定年退職を迎える1年ほど前には通知を行い、説明する体制を整えておきましょう。再雇用に関する希望を個別に確認し、どの程度の希望者がいるのかを把握することも事前準備の大切なポイントです。

面談

希望者に対して面談を行い、再雇用における要望などを確認しましょう。

企業は雇用者に対し、再雇用の条件を説明する必要があります。特に、給与は今までより下がる可能性が高い点、今までの部下が上司となってしまうことがある点などについては丁寧に話しましょう。雇用者の希望などもヒアリングする必要があります。

労働条件の提示

面談時、若しくは面談後に行われるのは、労働条件の提示です。給与条件の変更や職種の変更契約期間といった労働条件を提示します。

勤務時間はほとんど変わらなかったとしても、給与は大幅に下がる可能性が非常に高いです。また、労働条件をあいまいに伝えてしまった場合は後々のトラブルになってしまうでしょう。

そのため、企業は給与条件が悪くなるとしてもモチベーションを下げないように注意して提示する必要があります。

再雇用契約締結

提示された労働条件に異論がない場合は、再雇用契約締結となります。定年退職の手続きや退職金の支払いが行われたあと、再雇用契約の締結という流れです。

まとめ

2021年の法改正により、多くの企業から再雇用制度が注目されています。
今回の記事では、再雇用制度についてふれ、メリットやデメリットなどに解説しました。労働力の確保ができる反面、モチベーションの低下などといったリスクもあるため、企業は十分な受け入れ体制や説明を行わなければなりません。

また、雇用形態が複雑化した場合は人事管理システムの導入も検討する必要があるでしょう。

再雇用制度の活用によって、複雑になる労務管理にはタレントパレットの活用がおススメです。多彩な人事評価にも対応し、人材の最適配置やデータ分析といった人事労務に関する業務をサポートすることが可能です。
タレントパレットなどを活用しながら、再雇用制度を上手く活用しましょう。

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