定量評価を人事評価に活かす方法 | 定性評価との違いや評価時の注意点を解説


定量評価を人事評価に活かす方法 | 定性評価との違いや評価時の注意点を解説

人事評価の手法として、数字で目標を定める定量評価は多くの企業で活用されています。しかし、定量評価の基礎知識やメリット・デメリットを正確に理解できていないと、評価にエラーが出る可能性も少なくありません。

本記事では、定量評価の基本的概要と定性評価との違い、活用における注意点などを解説します。

定量評価による人事評価とは?

定量評価を活用した人事評価とはどのように行うのか、詳しく解説します。


定量評価とは数字を用いて評価をする方法

定量評価とは、具体的な数値で表せるデータを参考に評価をする方法です。たとえば、目標達成率・売上額・顧客獲得件数・コスト削減率・クレーム対応件数など、◯件・◯円・◯%などと表せるもので評価を決めます。


明確な数値が評価に反映されるため、人事担当者や評価者である上長と、評価される社員の意思疎通がしやすいです。また評価結果が明確なため、社員にとっても頑張る方向性がわかりやすいといえます。成果を出すことが求められる社員に、とても向いている評価方法です。


定量評価の対象となる項目

定量評価では、獲得案件数、売上、リピート獲得件数、キャンセル率などさまざまなデータが評価対象になります。業務内容や部署によって重視される数値は異なるため、事前に基準を決めておくことがポイントです。


たとえば、営業職は売上1,000万円以上で評価5、マーケティング職は資料ダウンロード数を月間50件で評価5など、各職務・部署に合わせた明確な評価項目を定めましょう。業務内容だけでなく、年齢なども加味して具体的な基準を設けることが大切です。


「目標管理制度」は定量評価の代表例

定量評価の代表例として、多くの企業で活用されている「目標管理制度」があります。目標管理制度とは、期初時点で社員それぞれに目標を設定させ、期間中にどれだけ達成できたかを評価する方法です。目標を定量化できる内容にすることで、定量評価による人事評価が可能となります。

目標管理制度を活用できるのは、企業内で自身の役割を把握し個人で目標を設定でき、目標達成のためにスケジュール・方法を組み立てられる社員のみです。

定量評価と定性評価の特徴や違い

定量評価とあわせて挙げられる評価方法である「定性評価」について、特徴や定量評価との違いを解説します。


定性評価とは数値で出せないものを対象に評価する方法

定性評価とは、数値で表現できない情報や成果を評価対象にする手法です。定量評価とは対極にある評価方法であり、感覚や経験などが評価に利用される特徴があります。業務に対する意識・勤務態度・工夫など、行動内容や成果は数値化できないため、事前に一定の基準を設けること・人事担当者の知識が必要です。


定性評価を導入することで、数値に関わらない業務に対する社員のモチベーションを高められるでしょう。


定性評価の対象となるデータについて

業務上の成果やプロセスにおいて、数値化できないものは定性評価の対象になり得ます。たとえば、社員の行動力、仕事への姿勢、潜在能力などが該当します。営業職・製造業など成果が出やすい職種に対し、定性評価は業務効率化などが求められる管理部門・外的要因により、数値的な目標達成が困難なSE部門などにおすすめです。


具体的な定性評価対象の例は「勤務態度がよく、業務の処理スピードが早い」「部下に対する教育を積極的に行う」などが挙げられます。


定量評価と定性評価は組み合わせて活用する

定量評価と定性評価は、それぞれ評価対象など特徴が異なります。定量評価だけでは売上・目標達成率について評価されても、そこに至る過程・部下へのフォロー業務などは評価されません。反対に定性評価だけでは、顧客獲得件数・コスト削減率は評価対象外です。


対極にある評価方法ですが、同時に人事評価に取り入れられます。たとえば、数値化できる部分は定量評価で評価し、それ以外の部分は定性評価で評価するといった形で、総合的な評価を実施するのもよいです。

定量評価を人事評価に導入するメリット

定量評価を人事評価に導入するメリットについて、解説します。デメリットとあわせてチェックし、導入の検討に役立ててください。


定量評価のメリット1. 社員に評価の内容を納得してもらいやすい

定量評価は数値を使った評価方法となるため、評価の基準や決定理由が明確になりやすいです。客観的な判断ができるため、目標達成ができたか判断に迷わずに済みます。そのため社員ごとの能力さを把握しやすく、人事の負担が少ないメリットがあります。社員も明確な数値を目にすることで、評価の内容に納得しやすいです。


定量評価のメリット2. 具体的な目標設定がしやすい

数値を基準とする定量評価では、具体的な目標設定がしやすい点もメリットでしょう。社員が次のステップへと進むための目標を数値で表せるため、何をすればよいかが分かりやすいです。また、目標を数字で設定するため、設定後もどの程度目標を達成できたか適宜把握できます。進捗に合わせて、目標達成のために仕事を工夫できる点も特長です。


定量評価のメリット3. 社員間に競争意識を生み出せる

定量評価を活用する場合、社員間で競争が起きやすくなります。具体的な数値でそれぞれの成果が発表されるため、社員同士で切磋琢磨し合える環境が作りやすいです。競争意識が芽生えることで、各社員のモチベーションを高められます。数値で不足している部分が分かるため、欠点の克服・長所の活用など仕事への工夫が増えるでしょう。


定量評価を取り入れることによるデメリット

定量評価を人事評価に取り入れることで、起こり得るデメリットについて解説します。


定量評価のデメリット1. 結果だけを追求する社員が増えるリスクがある

定量評価を基準にすると、結果だけを重視する社員が増える可能性があります。定量評価ではプロセスを評価されないため、「結果さえ出ればいい」と考える社員も少なくありません。その結果、たとえば成約率を増やすために強引な勧誘が増えれば、売上が上がっても会社の評価は下がるリスクがあります。


定量評価のデメリット2. 人間関係に悪影響を与える可能性がある

定量評価は社員間に競争関係を作り出す効果に期待できるが、一方で人間関係に悪影響を与える可能性もあります。努力して成果が出た社員と偶然成果が出た社員が、同じ評価を受けるのが定量評価です。この場合、努力した社員のモチベーションが低下するかもしれません。人事および上司が管理・フォローをしなければ、足の引っ張り合いが起きるリスクもあります。

定量評価を活用する際の注意点

定量評価を活用する際、社員のモチベーション低下・企業の評価を下げないために注意すべきポイントについて解説します。


定量評価の目標がノルマにならないように注意する

定量評価における数値はあくまで指標であり、達成すべきノルマではありません。ノルマとして認識されてしまうと、結果を重視してプロセスを軽視する社員が出てくる恐れがあります。社員・顧客・企業にとって逆効果にならないように、あくまで目標であると周知することが大切です。


定量評価では仮に目標とした数値に達していなくても、成果が出ていれば評価の対象になります。その点を社員と共有し、目標を達成するために無理をしないように注意しましょう。


定量評価の結果はフィードバックして次に活かす

定量評価では、ただ数値を確認して終わりにしてしまうケースも多いです。給与・昇格によるフィードバック以外に、口頭で評価結果について話せる時間があると理想的といえます。なぜその数値になったのか、さらに高い目標をクリアするにはどうすればよいのかをフィードバックし、確認する習慣を作ることが必要です。


フィードバックを丁寧に行うことで、社員が納得できたりモチベーションがアップしたりすることにつながります。


定量評価だけでなく、定性評価と組み合わせるやり方もある

定量評価だけでなく、姿勢や態度などの定性評価と組み合わせることもあります。定量評価で成果を評価し、定性評価でプロセスを評価できるため、業務に関する全般的な評価が可能です。定性評価も含めることで、人事評価の基準が成果主義に陥りづらくなります。


まとめ

定量評価は顧客獲得件数・コスト削減率など、明確な数値で表せるデータを参考に評価をする方法です。客観的に評価結果を判断できるため社員に納得してもらいやすい一方で、成果主義に傾いてしまう恐れがあります。数値で表せないフォロー業務などを評価する定性評価と組み合わせ、総合的な評価を行う企業も多いです。

適した形で定量評価を取り入れることで、効果的な人事評価を行いましょう。