パーパスの基礎知識をまとめて解説|経営理念との違いや導入メリット・企業事例なども紹介


パーパスの基礎知識をまとめて解説|経営理念との違いや導入メリット・企業事例なども紹介

パーパスとは、社会のなかでの企業の存在意義であり、事業全体の指針となる考え方です。ビジネス環境がめまぐるしく変わるなか、パーパスを問い直す企業が増えています。この記事ではパーパスとは何か、重要視される背景、パーパスを軸に活動するメリット、パーパスの実践を成功させるポイントなどを解説しています。自社施策の参考にしてください。

パーパスとは

パーパスとは企業の存在意義、最も根幹的な指針・目的です。一般的な「パーパス(purpose)」の意味は「目的」や「目標」ですが、ビジネス用語でのパーパスには、もっと強い意志や志が込められています。


パーパスの考え方は、2019年にアメリカのトップ企業が参加する大手経済団体「ビジネス・ラウンドテーブル」が「企業のパーパスに関する宣言」を発表したことで広まりました。この宣言では、企業活動は自らの利益追求だけでなく、ステークホルダー(消費者、取引先企業、社員などの利害関係者)全体への貢献を目指すパーパスを設定するべきだと提言されています。


パーパスと混同しがちな用語

パーパスと混同されがちなのが、経営理念・ミッション・ビジョン・バリューなどの用語です。それぞれの用語の意味とパーパスとの違いを解説します。


パーパスと経営理念の違い

経営理念とは、経営の軸となる考え方、経営者の理念などを表したものです。したがって、経営理念とパーパスには共通した要素が多くあります。


しかし、経営理念では社会とのつながりが意識されない場合が少なくありません。例えば、「業界のイノベーションリーダーを目指す」といった経営理念は、自社の有り方、目標を定めた標語です。一方でパーパスは、社会とのつながりが強く意識されます。


パーパスとビジョンの違い

ビジョンとは企業があるべき理想の姿です。したがって、ビジョンとはパーパスを軸に活動を続けた結果、達成できる企業の姿といえます。つまり、パーパスの具体像がビジョンです。


パーパスとミッションの違い

ミッションとは上述したビジョンを達成するために、企業が社会に対して果たすべき使命です。パーパスでは自社がなぜ存在価値を持つのか(Why)を定義するのに対して、ミッションは何をするべきか(What)を定めます。したがって、パーパスに基づきビジョンを決めなければ、ミッションを検討できません。


パーパスとバリューの違い

バリューとは、自社が提供できる価値・独自性・強みです。バリューは業績向上のための立ち位置を決めるためのものであることが、社会貢献の意味合いが強いパーパスと異なります。バリューはミッションを達成する戦略、アプローチを決める際に検討されます。

関連記事:ビジネスにおけるミッションとは?策定方法や注意点、活用事例をあわせて解説 関連記事:ミッション、ビジョン、バリューの違い|決める必要性やメリット、事例を解説

パーパスが重視されるようになった背景

パーパスが重視されるようになったのは、企業の内部環境、外部環境の変化があげられます。


社員の価値観が変化したから

仕事を通じて社会貢献したい人や、働く意味・意義を求める人が若い世代を中心に増えています。給与アップや昇進では社員にモチベーションを与えにくくなったことから、社会貢献を強く意識したパーパスが組織をまとめるために必要になっています。


投資家の判断基準が変化したから

現在は、2030年までの達成を目指す「持続可能な開発目標」として策定されたSDGsへの取り組みや、脱炭素化への社会的責任を果たしているかなども投資の判断基準に含まれるようになりました。従来のように財務状況だけで将来性を測るのではなく、環境、社会、ガバナンスを含めて投資先を選ぶ「ESG投資」が広がってきています。


つまり、資金調達や取引先のネットワークを構築するためにも、パーパスを掲げて社会に対して何を生み出せるのか発信する必要が出ています。


ビジネス環境の変化が早くなった

テクノロジーの変化によってビジネスモデルの変化が速くなっています。特に近年はコロナ禍によって、ビジネスのオンライン化が急速に進みました。


このような状況のなか、パーパスに基づいて一貫した企業活動を実施できている企業とそうでない企業の格差が広がっています。パーパスが明確な企業は業態やビジネスモデルが変わっても企業価値を持ち続けるケースが多いため、これにならう企業が増えてきました。


パーパスを取り入れた事業活動

パーパスを取り入れた事業活動に、パーパス経営・パーパスドリブン・パーパスブランディングがあります。それぞれどのような活動なのかを解説します。


パーパス経営

パーパス経営とは、パーパスを軸にした経営です。パーパスを重視して企業活動を行い、社会に貢献することを目指します。パーパス経営を採用することで、経営理念を軸にした経営よりも広い視野を持とうとする企業が増えています。


関連記事:パーパス経営に必要な5つの条件とは?概要や広まった背景・取り組むメリットも解説

パーパスドリブン

パーパスドリブンとは、組織全体の活動がパーパスに導かれている状態です。パーパスドリブンを実現するには、社員全員がパーパスを理解している必要があります。したがって、人材育成の一環として、パーパスの周知徹底・研修が必要です。


パーパスブランディング

パーパスブランディングとは、パーパスを顧客に周知して共感してもらうことでブランド価値を高める手法です。パーパスは商品やデザインのように簡単には変わらないため、長期間にわたって一貫したブランディングが可能です。


パーパスを軸に事業を進めるメリット

パーパスを実践すると、社員のパフォーマンスや経営体質などに好ましい影響が出ます。


社員エンゲージメントが高まる

パーパスを軸に事業を進めると、社員エンゲージメントが高まります。社員に共感できるパーパスを設定できれば、生計を立てる以外に働く意義を与えられるからです。結果として企業への貢献意識が高まり、帰属意識も育ちます。


パーパス導入による効果は、社員エンゲージメントを測定できる人材マネジメントシステムなどのITツールを用いれば、効率的に測定できます。


過度な利益追求からの脱却

パーパスを導入すると、過度な利益追求からの脱却を図れます。パーパスにはステークホルダー全体に評価してもらい、その結果として企業価値や業績を高める考え方があるからです。したがって、利益を最優先する企業では実現できない、広い視野に立った事業活動が可能です。


ビジネス戦略を柔軟に立てられる

パーパスという企業活動の軸があることで、さまざまな手段を柔軟に選べるようになります。例えば、コロナ禍や物価高騰などの外部変化が起きた際に、ビジネスモデルの変更を余儀なくされた企業は少なくありません。このような場合でも、パーパスを満たすための施策は何であるかという視点で考えられるため、選択肢の自由度は高まり、意思決定も迅速になります。


パーパスを取り入れるときのチェックポイント

パーパスに実態がともなわないことを「パーパスウォッシュ」といいます。エコや地球環境保護を掲げている際には「グリーンウォッシュ」とも呼ばれます。パーパスを機能させるには、どのようなことに注意すべきでしょうか。


社員に受け入れられるパーパスか

社員が共感できないパーパスを設定しても日々の活動とリンクしないため、成果は上がりません。パーパスを設定するに当たっては、社員のモチベーションを高められるか検討する必要があります。例えば社員全体にアンケートを実施して、どのような活動や分野に関心があるかをリサーチするのも1つの方法です。


自社の強みを生かせるパーパスか検討する

自社の個性や強みが生きるパーパスなのか検討することも重要です。具体的な施策につながる要素がなければ、「地球環境を守る」などの漠然としたきれい事で終わってしまいます。したがって、パーパスをまとめる担当者は、自社でできることを明確にする必要があります。仮に人事担当者なら、自社人材のスキルや個性を理解するようにしましょう。


世界的な潮流(SDGs)に沿ったパーパスか

パーパスを設定する際は、世界的な潮流であるSDGsの考え方に沿うことも重要です。環境や社会に対する配慮をしている企業に対し、優先的に投資しようとする動きが広がっています。ステークホルダーの共感を得るために、SDGsの観点からもパーパスを検討することが大切です。


パーパスを掲げている企業事例

パーパスを掲げている企業事例を3社紹介します。いずれもパーパスを軸に据えることで、時代に沿った企業価値を見つけています。


ビジネス・ラウンドテーブル

アメリカのトップ企業が参加する大手経済団体「ビジネス・ラウンドテーブル」は、2019年に発表した「企業のパーパスに関する宣言」で、株式会社の経営原則とされている株主資本主義を批判し、ステークホルダー資本主義への転換を提言しています。


ステークホルダー資本主義とは、自社の顧客・提携企業・地域社会など、すべてのステークホルダーへの配慮が企業活動には欠かせないとした考え方です。この背景には、株主の利益を最優先する従来の考え方だけでは間違った経営判断につながりやすいという危惧があります。


某食品メーカー

某食品メーカーでは、経営陣と社員が対話を重ね、地球的な視野に立って食と健康、生活の質の向上に貢献するという内容のパーパスを掲げています。


また、パーパスドリブンを推進するために、ベストプラクティスの表彰やエンゲージメント・サーベイというITツールによる社員エンゲージメントの測定などを実施しています。パーパスの実践には、社員の共感が欠かせないことがよくわかる事例です。


某電機メーカー

某電機メーカーは、発想力と技術を融合させて顧客を感動させようというパーパスを作成しました。同社は実に多彩な事業を展開しているため、全社員が同じ方向を向けるようなパーパスがなければ、組織としての一体性を持ちにくかったからです。実際、コロナ禍においては、このパーパスによって社員が団結し、さまざまな困難に対応できたということです。


同社はパーパスを直感的に理解できる3分弱の動画を制作し、公式サイトで配信するなど情報共有を進めています。社内外にパーパスを浸透させるためには、こうした研修や広報の戦略も必要です。


まとめ

自社の根本的な存在意義を定義したパーパスが注目されています。背景には、社員の価値観が多様化したこと、社会貢献が重視されていること、ビジネス環境の変化が激しくなったことがあります。パーパスによって組織力を高めるには、社員が共感できるパーパスを設定し、さらにパーパスを浸透させるための人材教育を継続することが重要です。


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