心理的安全性を高めるには?測り方やメリットを解説


心理的安全性を高めるには?測り方やメリットを解説

企業の生産性向上には、心理的安全性が重要だとして注目されています。また、心理的安全性が高まるとイノベーション促進や定着率の改善など、さまざまな効果が期待できます。本記事では、心理的安全性の概要や注目される理由、心理的安全性のメリットや期待できる効果、心理的安全性の測り方などを解説しているため、参考にしてください。

心理的安全性の概要

ここでは、心理的安全性とは何なのか、心理的安全性が注目される理由などについて詳しく解説するため、参考にしてください。


心理的安全性の定義とは

心理的安全性は英語で「psychological safety」と表し、他人からの反応に対して脅威を感じることなく、自分を隠さずに自然体にふるまえる状況を指します。


心理的安全性は、組織行動学を研究していたハーバード大学のエイミー・エドモンドソン氏によって提唱されました。一般的には、「不安や危険性にある行動をしてもチームでは安全という共通の考え方」と定義されます。仕事における心理的安全性は、失敗した場合でもチームで批判・非難されないことなどがあげられます。


心理的安全性が注目される理由とは?

心理的安全性に注目が集まる要因として、Googleがあげられます。Googleでは、人事関連の研究を2012年から実施し、「心理的安全性は成功するチームの構築にもっとも重要なもの」と見解を述べています。2016年のGoogleの発表以降、生産性を向上させる方法として多くの企業が心理的安全性に注目するようになりました。


Google社の「プロジェクトアリストテレス」

「プロジェクトアリストテレス」とは、Googleが行った人事関連の研究の1つです。アリストテレスとは古代ギリシャの哲学者で、「全体は部分の総和に勝る」という言葉からこのプロジェクト名が付けられました。効果的なチームワークを構成する条件を探るために実施され、チームの生産性向上には心理的安全性が重要だと結論付けられています。


心理的安全性を高めるメリットとは

心理的安全性が高まることで、さまざまなメリットが得られます。ここでは、三つのメリットについて解説します。


ポテンシャルが最大限に発揮される

心理的安全性を高めることで、社員がお互いを尊重し合える環境が構築されます。萎縮せずに業務にあたれるため個々の能力を発揮しやすく、結果として社員が自分の実力や能力を活かして活躍できます。組織全体としての生産性向上にもつながるため、心理的安全性を確保して、社員がイキイキと活躍できる環境の構築が重要です。


情報共有の活発化

心理的安全性が高まっていると、自分の意見やアイデアをチーム内で共有することに対する心理的なハードルが下がります。他人からの非難や反応を恐れずに、自由に発言しやすくなるためコミュニケーションが活発に行われるでしょう。これにより、情報共有が活発になり社員同士の相互理解も進むなど、チームワーク醸成につながります。


人材の定着率向上

仕事に対するモチベーションが高まる点もメリットです。お互いに尊重し自由に発言できるなど人間関係が良好であれば、快適に働くことができるため離職率の低下にもつながります。自身の能力を発揮できる職場であると思えることにより、意欲が高い社員が長期的に勤務するなど、定着率の向上に期待できるでしょう。

心理的安全性による効果

心理的安全性を重視することで、さまざまな効果が期待できます。ここでは、3つの効果について解説します。


社員の集中力が上がる

心理的安全性が高くなることで、社員がフロー状態になります。フロー(flow)とは流れを意味する言葉です。フロー状態とは精神的に集中し夢中になること、のめり込むことなどを指します。フロー状態ではドーパミンなどの神経伝達物質が多く分泌され、幸福感が増加してストレスが減少するといわれており、楽しく集中しながら仕事に取り組めます。


イノベーションが生まれやすい

心理的安全性が高いと、社員が前向きかつ建設的に仕事に向き合えるようになります。新しい物事や困難に対しても立ち向かっていくことができるため、イノベーションが生まれやすくなるでしょう。お互いの気持ちを高揚させ、刺激し合うことで新しいアイデアが生み出され、結果として今までの常識を覆すようなイノベーションにつながる可能性もあります。


集団思考からの脱却

反対意見が言えずに萎縮してしまう環境では、非合理な判断を下してしまう集団思考に陥りやすくなります。しかし、心理的安全性が高いと反対意見も述べやすく、自由に発言できるため集団思考から脱却することが可能です。意見の多様性が保たれるため、複合的な視点で業務を進められるという効果もあります。


心理的安全性が低い場合

心理的安全性が低いと、4つの不安を感じるとされています。


・無知だと思われる不安

・無能だと思われる不安

・邪魔をしていると思われる不安

・ネガティブだと思われる不安


心理的安全性が低いと、社員は「自己印象操作」と「自己呈示行動」をしながら働くとされており、自分を偽ることになります。以下では、それぞれの不安について解説します。


無知だと思われる不安

仕事についての質問をした際、「この程度のことも知らないのか」というように非難される環境では、心理的安全性は低くなります。そのため、社員は無知だと思われることを避けるために、疑問やわからないことがあっても質問しなくなります。風通しが悪く相談しにくいと人間関係が悪化し、チームワークの低下につながるでしょう。


無能だと思われる不安

業務でミスをした際に責められる環境では、社員はミスを隠すようになってしまいます。また、些細なミスでも報告できない、失敗を認めることができないなど、社員の成長を妨げる結果にもつながります。ミスを隠すことが常態化してしまうと、のちに大きなトラブルに発展するリスクもあるため注意が必要です。


邪魔をしていると思われる不安

会議などで議論が白熱し長引いた場合、自身が邪魔に思われないかという不安に駆られると、自由な発言がしにくくなります。結果として、提案やアイデアを発表することがなくなり、イノベーションが生まれにくくなります。反対意見であっても、筋が通っている意見なら邪魔ととらえず歓迎し、議論を活発化させる文化が重要です。


ネガティブだと思われる不安

建設的な意見を述べたくても、否定的に捉えられてしまう環境では自由な発言が難しくなります。反対意見でも理にかなったものなら議論を発展させ、より良いアイデアの創出につながりますが、発言が難しい職場は画期的なアイデアを逃してしまう可能性があります。また、将来のリスクを見逃してしまう危険性も増加するため注意が必要です。


心理的安全性の測定方法

心理的安全性はどのように測定すればよいのでしょうか。ここでは、心理的安全性を測る方法を解説します。


心理的安全性を調べる7つの質問

心理的安全性を測定するための7つの質問があります。7つの質問が自分自身に当てはまっているかどうかを質問して、心理的安全性を測ります。質問項目は以下のとおりです。


・チームメンバー同士で、課題や難しい問題を指摘し合える

・チームのメンバーは、自分と違うことを理由に他者を拒絶する場合がある

・チームに対してリスクのある行動をしても安全である

・チームの他のメンバーに対して、助けを求めることは難しい

・チームメンバーは誰も、自分の仕事をわざとおとしめるような行動をしない

・チームメンバーとの仕事で、自分の能力と才能が尊重され、活躍できていると思える

・チームのなかでミスをすると、非難される


心理的安全性の回答の見方

7つの質問に対して、「強くそう思う」「そう思う」「どちらともいえない」「あまりそう思わない」「そう思わない」のいずれかで回答してもらって、結果をもとに分析します。ポジティブな内容の回答が多ければ心理的安全性が高く、ネガティブな内容の回答が多数あった場合には心理的安全性が低いという結果です。

心理的安全性を高めるには

心理的安全性を高めるにはどうすればよいのでしょうか。ここでは心理的安全性を高める5つの方法を解説します。


組織内に助け合いの文化を作る

社員が仕事で感じる無知・無能だと思われる不安を解消するために、チームメンバー同士が協力できる環境づくりが重要です。疑問や問題があった場合に助け合える環境であれば、社員は安心して仕事に取り組むことができます。また、できない仕事やミスがあっても、非難されない雰囲気づくりを醸成することも大切です。


多様性や価値観を認める

社員の多様性を認めることによって自由に発言できるようになり、自然体でふるまえるようになります。反対意見だからといって否定するのではなく、異なる意見や価値観があるのが当たり前だと捉え、議論を深めることによって新しいアイデアが生まれる場合もあるでしょう。また、個性を尊重する環境を構築することで、心理的安全性も高まります。


前向きな考え方を推奨する

ネガティブな考え方で仕事をしていると、業務に対する不安が募って萎縮しやすくなります。そのため、職場全体にポジティブな考え方を浸透させましょう。ポジティブな受け答えをする、前向きな思考で業務を振り返るなどします。いきなり考え方を変えることは難しいため、外部講師による講習を実施するのもおすすめです。


風通しを良くする

職場の風通しを良くすることで、年齢や立場などに関係なく建設的な意見が出せる環境を構築できます。また、議論の前にアイスブレイクの時間を設けることも効果的です。アイスブレイクとは議論や商談などの前に行う雑談や簡単なゲームのことで、緊張をほぐす効果がありお互いに打ち解けることができるため、議論の活性化に役立ちます。


心理的安全性に対するリーダーの意識改革

心理的安全性の重要性を組織に浸透させるには、まずリーダーの意識改革が必要です。リーダーが心理的安全性について理解し、率先して行動しましょう。どのような立場の社員でも自由に発言しやすい雰囲気をリーダーが作ります。また、リーダーが方向性を示すことで、社員も仕事の方向性がわかり働きやすくなります。


まとめ

心理的安全性とは、他人からの反応におびえることなく、自由に自分らしく振舞える状況です。心理的安全性を高めることで、生産性向上や人材の定着率向上などさまざまなメリットが得られます。チームの生産性向上にも心理的安全性が重要だとされているため、積極的に心理的安全性の向上に取り組みましょう。


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