ダイバーシティ・インクルージョンの問題点は?定義や概要も解説


ダイバーシティ・インクルージョンの問題点は?定義や概要も解説

ダイバーシティやインクルージョンが社会に浸透しはじめ、個人や組織の多様化が急速に進んでいます。企業には、多様性を活かす包容力が求められるようになりました。この記事では、ダイバーシティやインクルージョンの定義からメリットや問題点などを解説します。自社における多様化への取り組みの参考にしてください。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

ダイバーシティやインクルージョンが社会に浸透しはじめ、個人や組織の多様化が急速に進んでいます。企業には、多様性を活かす包容力が求められるようになりました。この記事では、ダイバーシティやインクルージョンの定義からメリットや問題点などを解説します。自社における多様化への取り組みの参考にしてください。


ダイバーシティとは

ダイバーシティとは、日本語に直すと多様性という意味です。社会には国籍や性別、年齢、価値観、宗教観などが異なるさまざまな人がいます。ダイバーシティはこのような多種多様な人が、1つの企業などにいる環境や状態です。

ビジネスでは、企業が多種多様な人材を偏見や差別がない状態で平等に雇用し、平等な待遇を提供することを、ダイバーシティマネジメントやダイバーシティ経営といいます。ダイバーシティの方向性を示すものとしては、経済産業省が発表した「ダイバーシティ2.0」があります。

「ダイバーシティ2.0」は、企業が中長期的に取り組む課題や内容を明確にしたものです。ダイバーシティにより、企業価値を生み出し続ける経営上の取り組みを表しています。2017年に経済産業省が中心となって策定し、2019年には改訂版が発表されました。

※参考:ダイバーシティ2.0一歩先の競争戦略へ|経済産業省

インクルージョンとは

インクルージョンとは、日本語で「包括」「一体化」などに訳されています。具体的には、多種多様な人を包括して受け入れることです。近年では、ビジネスの上でも取り入れられている概念でもあります。

企業では、性別の異なる人や国籍が異なる人、既婚者や未婚者など、さまざまな属性の人が働いています。お互いが相手の多様性を認め、企業内で一体感を持って働くことが、ビジネスにおけるインクルージョンといえるでしょう。

ダイバーシティとインクルージョンについて

ダイバーシティとインクルージョンは似て非なるものです。ダイバーシティは、多様性の共存を意味し、インクルージョンはダイバーシティを受け入れることです。しかし、同時並行して進めることにより、企業に大きなメリットをもたらします。ここでは、それぞれの概念や違いについて解説します。

ダイバーシティとインクルージョンの概念

ダイバーシティのビジネスシーンでの概念は、多様な属性や個性、バックグラウンドをもつ多種多様な人材が1つの企業で働いている状態です。インクルージョンのビジネスシーンでの概念は、多種多様な人材がお互いの多様性を認め合うことが始まりとなります。

そのうえで、一体感を持ったり同じ目標に向かって進んだりすることが、インクルージョンの概念です。企業はダイバーシティの概念をもとに、一歩進んだインクルージョンの概念を取り入れることが求められています。

ダイバーシティとインクルージョンの違い

ダイバーシティとインクルージョンは、人材活用の場面でよく使われる言葉です。しかし、それぞれ異なる意味があります。

ダイバーシティは、多様性や多種多様な人々が同じ空間にいる環境などを意味します。一方、インクルージョンは、多様性や多種多様な人々を受け入れて尊重することです。ダイバーシティの概念を受け入れ、お互いを尊重しながら、みんなで目的に向かうことが、企業に求められる姿勢です。成功した場合には、想像を超えるイノベーションを得られるでしょう。

ダイバーシティ・インクルージョンが重要である背景

企業がダイバーシティ・インクルージョンに取り組むためには、その背景を知っておくことが大事です。ここでは、これらが重要となった背景を解説します。

少子高齢化に伴う労働人口の減少

ダイバーシティ・インクルージョンが重要となった背景の1つが、幅広い人材の獲得です。日本では少子高齢化が進み、労働人口も減少しています。人材不足が社会的問題となり、慢性的な人材不足の企業も少なくありません。

人材を獲得するための競争も激化している状況です。ダイバーシティ・インクルージョンを自社に取り込み、幅広く人材を集めなければ、人材不足を解消できない状況となっていることが背景にあります。

多様化する価値観

社員の価値観も多様化しています。社員それぞれまた違った理想の働き方があり、1つの企業でずっと働き続けるのではなく、転職や独立をする人も少なくありません。一方、これまでは終身雇用制度や年功序列制度といった企業文化が普通でした。

現在では、多様な価値観を顕在化させている社員も増えています。プライベートの充実を求めたり、ワークライフバランスの実現を目指したりすることなどが代表的な例です。企業はダイバーシティ・インクルージョンを取り入れ、さまざまな働き方を認めることが求められています。

グローバル化の浸透

日本企業のグローバル化が進んでいることも、ダイバーシティ・インクルージョンの重要性が高まっている理由の1つです。海外企業と関わったり、販路を世界に広げたりすることは、今後も増え続けるでしょう。企業は、グローバル化を進め国籍などにとらわれずに、社員を登用しなければなりません。海外の多様性を認めて、関係を構築することが急務です。

ダイバーシティ・インクルージョンのメリット

ダイバーシティ・インクルージョンを企業に取り入れることによって、たくさんのメリットが生じます。ここでは、代表的なメリットを3つ紹介します。

イノベーションを創出できる

ダイバーシティ・インクルージョンを前向きに取り入れた企業には、さまざまな属性を持った人材が集まっています。多様な人材が企業を発展させる方向に向かい、同じ目標を目指すことにより、業績向上への好循環を期待することが可能です。

多様な人材が、生み出すアイデアや発想能力を、インクルージョンの概念により統合すれば、大きなイノベーションを創出できるでしょう。多様化する市場ニーズに対しても、柔軟な発想やレベルの高いスキルにより、迅速な対応が可能となります。

企業評価が向上する

ダイバーシティ・インクルージョンを企業に取り入れることにより、社員に働きやすい労働環境を提供できるでしょう。働きやすい労働環境は、社員の満足度にも反映されます。社員の満足度は、品質の向上や業務効率の改善にもつながります。

多様性を確保すれば、取締役会などの監督機能も向上させることが可能です。取引先やユーザーから、良い評価を受けられるようになれば、さらなる企業価値の向上が期待できます。

人材確保が容易になる

ダイバーシティ・インクルージョンを取り入れることによって、多様な働き方を認められるため、優秀な人材を採用しやすくなります。組織構成に多様性をもたらせ、採用条件を柔軟にできれば、必然的に採用の対象者が増えます。

求職者は、多様な働き方を実践している企業に魅力を感じるものです。働きやすい環境を整備し、採用した社員たちが前向きに働き、働く満足度が高くなれば、企業に愛着が湧き定着率も高まります。

ダイバーシティ・インクルージョンのデメリット

ダイバーシティ・インクルージョンが社内で浸透すれば、価値観が異なる人材が集まります。バックボーンや言語などの属性も異なるため、コミュニケーションで課題が出る可能性が高まるでしょう。

本来の意図とは異なる受け取り方や受け取られ方により、人間関係が気まずくなるケースがあるかもしれません。また、大切な情報を正確に伝えられないケースでは、認識の齟齬が予期しないトラブルに発展する場合もあります。円滑なコミュニケーションをとるためには、事前の対策が重要です。

ダイバーシティ・インクルージョンの問題点

ダイバーシティ・インクルージョンを、企業が取り入れる場合には問題点の克服が重要です。ここでは、どのような問題点があるのかを解説します。

無意識の偏見が起きる可能性がある

多くの社員は、ダイバーシティ・インクルージョンの考え方や概念が、大切であると認識しています。そのため、社内での取り組みに対して、反対意見が出ることは少ないでしょう。残念ながら人間は、無意識に他者への偏見を持ってしまうケースがあります。

無意識の偏見は自分では気づきにくく、誰もが持っていると考えられています。大事なのは誰が、どのような偏見を持っているかを気づくことであり、伝え教えることです。無意識の偏見を知った社員は、先入観をなくす努力が必要です。

多様性を受け入れる意識が足りていない

日本企業では、多様性を受け入れる土壌や意識が足りていないことも問題です。これまでに培ってきた、企業文化や日本の習慣からの脱却は容易ではありません。徹底的な意識改革をするためには、説明会やセミナー開催などを通して、多様性を受け入れる意識を根付かせる必要があります。

コミュニケーションが取りにくいケースもある

前述のとおり、多種多様な人材が集まれば、コミュニケーションがうまく取れないケースも少なくありません。共通言語がなければ言葉の壁が生まれ、言葉の壁で意思疎通が難しくなります。そのため、コミュニケーションをとれる環境づくりが必要です。社員に英語教育を行い、翻訳ツールの使用方法を周知しましょう。

チームワークやパフォーマンスの一時的な低下

無意識の偏見や固定観念、先入観などが根強く残っているような状況も少なくありません。その状態では、社員それぞれに違和感や不快感が生じるでしょう。また、誤解が積み重なればチームワークが低下します。働く時間や場所がバラバラになれば、連携が取りにくくなります。

このような状況では混乱が生じ、パフォーマンスが一時的に低下することは避けられません。相互理解を深めるための時間を設け、コミュニケーションを円滑にしましょう。それぞれの社員の働き方や仕事の進捗状況などは、共有することが大切です。

待遇や評価が複雑になれば不平不満の発生原因になる

多種多様な人材が働くようになれば、人事評価が複雑になります。待遇や評価の複雑化は、不平不満の温床にもなるので注意が必要です。まずは、社員それぞれの違いを尊重しながら、働きやすい待遇を提供し、全社的に周知しましょう。

不公平を感じる社員には、目安箱などの活用が効果的です。職務を明確化し、評価体系を周知することで、不平不満が出にくくなります。評価制度の見直しについては、柔軟に行うことが大事です。

まとめ

ダイバーシティは、多様性があり多種多様な言語や価値観をもつ人々が同じ組織に存在している状況です。インクルージョンは、ダイバーシティの状況下でお互いを認めあいながら、力を合わせることになります。企業は社員の多様性を避けて通ることは難しくなるでしょう。

人材を確保するためにも、ダイバーシティ・インクルージョンの概念を理解し、自社に取り入れることが必要です。タレントパレットを導入することで科学的人事戦略が実現できます。ダイバーシティ・インクルージョンを取り入れ、次世代人材の採用や育成を求めるなら、「タレントパレット」の利用をぜひご検討ください。

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