離職防止の重要性とは?離職防止の成功事例や具体的な施策についても解説


離職防止の重要性とは?離職防止の成功事例や具体的な施策についても解説

労働人口の減少に伴い、企業には既存社員の定着率を向上し、人材不足に陥らないようにするための取り組みが欠かせない状況です。本記事では、社員が離職する原因や離職する可能性が高い社員の特徴、離職防止に役立つ具体的な施策を解説します。離職率の増加によるリスクや、離職防止の成功事例についてもまとめているので、ぜひ参考にしてください。


企業の離職防止に有効な対策!原因や放置した場合のリスクを解説


社員が離職する原因

社員が退職を申し出る際には、何らかの不満を抱えているケースが大半です。離職の原因は1つとは限らず、複数の問題が発生していることも少なくありません。まずは、社員が離職する主な原因を見ていきましょう。


待遇への不満

労働時間と給与が見合っていなかったり、福利厚生が乏しかったりすると、待遇に対する不満が生じやすくなります。エンゲージメントの低下を招き、待遇のよい企業への転職を考える社員が増える可能性が高いです。働き方改革やワークライフバランスへの取り組みが不十分な企業は、離職につながる要因を抱えている状態といえます。


業務量の多さ

業務量の多さも社員が離職を決意する大きな原因です。社員1人あたりに過剰な業務量が割り振られていると、定時内に仕事が終わらず、残業して対応することになります。長時間労働が常態化すると心身に不調をきたしやすくなり、退職する社員が増えるといった悪循環に陥りがちです。


人間関係・職場環境へのストレス

上司や同僚、顧客との人間関係がうまく築けていないと離職の可能性は高まります。職場によっては、モラハラやパワハラなど、ハラスメント行為が横行しているケースがあるかもしれません。人間関係や職場環境への不満、ハラスメントに対するストレスなどは社員の退職を招く原因となります。


人事評価への不満

人事評価には、客観的かつ公平性を保てる基準が求められます。明確な基準がない状態での評価は、モチベーション低下に直結する要因です。努力すべき方向性や企業が求める人物像が掴めないと、社員の将来設計にも支障をきたし、退職につながりやすくなります。


教育制度への不満

教育制度が整っていない企業は「今後の成長をイメージできない」「キャリアを積むことが難しい」と感じやすくなります。スキルアップが望めない状況では前向きに働くことができず、社員の退職率も高くなる傾向です。


業務への適正の有無

業務への適正も社員の退職に大きく関係します。スキル不足によりチーム全体に迷惑をかけてしまったり、組織の業務効率を下げてしまったりすると、仕事に対する意欲が削がれる人は少なくありません。相談しづらい環境や失敗を責められるような雰囲気の場合、退職を選択する社員は増加します。


離職する可能性が高い社員の特徴

離職する可能性が高い社員には、いくつかの特徴があります。離職の前兆を掴み、適切なフォローが実施することで離職率の改善を目指しましょう。


コミュニケーションが希薄になる

職場内におけるコミュニケーションが希薄になった社員は、離職を検討している可能性を否定できません。具体的には「雑談の頻度が低下する」「ミーティングで積極的に発言しなくなる」といった兆候が挙げられます。以前と比べて挨拶に元気がなかったり、上司や同僚との関わりが減ったりした場合には注意が必要です。


モチベーションが低い

離職を検討している社員は、仕事に対するモチベーションが低くなりがちです。業務効率が下がったり、ミスが増えたりしている社員は、モチベーションが低下して業務への関心が薄くなっている恐れがあります。モチベーションの低さが必ずしも離職につながるとは限らないものの、状況が悪化する前に適切なフォローが必要です。


業務に対する積極性が低下する

退職を視野に入れている社員は業務に対する積極性も低下します。「新しい業務に消極的」「長期プロジェクトへの参画を避けている」といった行動が目立つ場合は、離職のサインかもしれません。いつでも辞められるよう、責任のある仕事を担当しないよう調整していると考えられます。


遅刻や早退が増える

遅刻や早退が増えた場合も、社員が離職を考えていることが疑われます。上司や同僚からの評価を気にしなくなると、人間関係も悪化しやすくなり、さらに離職の可能性は高まります。また、転職活動を優先したことで遅刻や早退が増えるケースもあります。


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離職率の改善が重要視される理由

企業は多大な手間とコストをかけて人材を採用しており、採用後も人材定着に向けてさまざまな取り組みを実施しています。離職率の改善が重要視される理由を解説します。


人材の確保が難しい

少子高齢化の影響で、日本の労働人口は過去に比べて減少しています。労働人口の減少は人材不足に直結するため、いかに人材を確保・定着させるのかが企業にとっての課題です。また、有効求人倍率の上昇に伴い、求人数に対して求職者が不足している「売り手市場」が続いており、今後さらに状況は厳しくなると予想されています。


※参考:労働力調査(基本集計)2023年(令和5年)平均結果の要約 

※参考:職業紹介-都道府県別有効求人倍率:主要労働統計指標|労働政策研究・研修機構(JILPT)

採用者の離職率が高い

厚生労働省の調査によると、令和2年3月卒業者の就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者が37.0%、新規大卒就職者が32.3%でした。つまり、高卒と大卒のどちらも採用者の3割が3年以内に退職している状況です。勤続年数が短い社員が増えると、採用や教育にかけたコストが無駄となり、企業にとっては大きな損失となります。


※参考:新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します|厚生労働省

転職が容易になっている

転職する人の割合は年々増加傾向にあり、企業には人材流出への対策が求められています。離職率が悪化して人材が不足しはじめると、組織が正常に機能しなくなるリスクもあります。また、人手不足によって社員のエンゲージメントが低下することで、さらなる離職を招き、深刻な人手不足に陥る可能性も考えられます。


※参考:転職動向調査2023年版(2022年実績) | マイナビキャリアリサーチLab


離職防止に役立つ施策

社員の離職を防止するためには、企業の積極的な働きかけが欠かせません。ここからは、離職防止に役立つ施策を解説します。


社内状況を把握する

離職率改善の取り組みとして、まずは社内の状況を把握するところからはじめます。社員や退職者へのヒアリングを通して自社の課題を明らかにし、最適なアプローチ方法を検討しましょう。


社員と定期的に面談する

社員と定期的に面談することで、企業に対する不満や組織が抱えている問題点を把握しやすくなります。広く現場の声を集めたい場合は、1on1ミーティングやチームミーティングなど、比較的小規模の会議を開催しましょう。社員の意見から企業の問題点や改善点を洗い出し、優先順位付けしたうえで対処していきます。


退職者から退職理由を聞く

退職を希望している社員に対して、具体的な退職理由や不満に感じた点を聞き出すのも効果的な方法です。実際の離職につながった原因が分かれば、離職防止の施策を考えやすくなります。ただし、必ずしも本音を伝えてくれるとは限らない点に留意し、参考材料の1つとして役立てていきましょう。


社内コミュニケーションを活発にする

良好な人間関係が築けていれば、職場の雰囲気もよくなり社員の離職を防げます。社内コミュニケーションについても社員に任せきりにせず、企業として活性化するためのツールや仕組みを積極的に導入しましょう。


社内SNSを活用する

社内SNSとは社内のみで利用できるSNSのことで、円滑なコミュニケーションをサポートしてくれるツールです。メールと比べて利用しやすく、ちょっとした雑談にも向いています。相談しやすい環境の構築は人間関係のストレス減少につながるので、離職防止に有効な施策です。


1on1ミーティングを実施する

1on1ミーティングとは、上司と部下による1対1の面談を指します。上司から一方的に指示や指導をされるのではなく、双方の対話型コミュニケーションを重視する手法です。1on1ミーティングにより、部下の不安や悩みを聞き出すことができれば、人間関係を原因とした離職防止策として機能します。


メンター制度を設ける

メンター制度も離職防止につながる施策の1つです。メンター制度とは、先輩と後輩のマンツーマンで目標設定や振り返りをしたり、コミュニケーションを取ったりする仕組みのことです。


新入社員に対して入社3~10年の若手社員をサポート役につけることで、精神面のフォローがしやすくなります。社員同士で不安や悩みについて相談できるようになると、モチベーションの向上や定着率アップなどの効果が期待できます。


労働環境を整備する

労働環境に不満があると社員の離職率は高くなります。人事評価制度を見直したり、新しい働き方を取り入れたり、時代に合わせた環境づくりが大切です。


労働時間の管理を徹底する

労働基準法の改正により、時間外労働の上限は原則月45時間、年360時間までとなっています。企業はこれを遵守しなければなりません。社員の労働時間が正確に管理できていない場合は、勤怠管理システムの導入や社員の労働時間を可視化する方法が有効です。労働時間の徹底した管理は、特定の社員に対する仕事の偏りを是正する効果もあります。


人事評価制度を改善する

基本的に、社員の昇給や昇進は人事評価によって左右されます。人事評価制度が適切に運用されていなかったり、評価される基準が不透明だったりすると「正当に評価されない」といった不満が生じやすくなるため注意が必要です。努力や成果が適切に評価される制度を構築し、評価に応じて処遇を改善するなど、社員が納得できるような運用を目指しましょう。


裁量を拡大する

社員それぞれに一定の裁量を与えることで、仕事への意欲が高まり、組織全体の成長につながる可能性があります。また、会社への貢献意識が育まれることで社員の定着率が向上し、離職率の改善も見込めます。


給与・賞与を見直す

給与や賞与に不満を持っている社員のなかには、転職で状況を打破しようと考える人もいます。離職防止策としては、納得してもらえる額の給与・賞与を提示できるのが望ましいものの、他の社員との兼ね合いもあり変更しづらいでしょう。たとえば、法改正や組織の再編などのタイミングで、抜本的な改革を行うとよいかもしれません。


福利厚生を充実させる

福利厚生とは、給与や賞与とは別に社員やその家族に提供する報酬やサービスのことです。福利厚生は、法律によって提供が義務づけられている「法定福利厚生」、企業が自由に設定できる「法定外福利厚生」の2種類があります。社員のニーズや企業の風土に合致する福利厚生があると、社員の満足度が向上して離職の防止に貢献できます。


柔軟な働き方を取り入れる

テレワーク・フレックス・時短勤務などの柔軟な働き方を取り入れると、さまざまな事情を持つ社員の離職を防止できます。特に「会社に不満はないが、育児や介護といった事情で離職するしかない人」を減らせる点は大きなメリットです。多様な働き方が選択できることで、社員は安心して働きやすくなり、企業のイメージも向上します。


教育制度を見直す

教育制度の見直しも有効な離職防止策です。若手・中堅・ベテランなど、属性に応じた研修の設定により、長期的な視点でのスキルアップが実現できます。


研修制度を充実させる

研修制度が整っていないと、スキルアップを実感できず、仕事に対する意欲も上がりません。企業が研修やワークショップの機会を設けたり、資格取得に手当を支給したりすることで、社員が適切にスキルアップできる環境を整えましょう。


マネジメントスキルを向上させる

教育制度の見直しでは、管理者向けの研修を設定し、マネジメントスキルを向上させることも大切です。上司が適切なマネジメントスキルを持っていれば、チーム内のコミュニケーションが円滑になり、人間関係のストレス軽減が見込めます。人間関係のストレスが減ると職場の雰囲気もよくなり、離職率も改善します。


離職率の増加によるリスク

離職率が増加すると、企業にどのようなリスクをもたらすのでしょうか。離職率の増加による主なリスクと、対策を講じない場合のデメリットを解説します。


人材の流出

離職率の増加により人材の流出が続くと、企業の成長スピードも鈍化します。人手不足の慢性化によって労働環境の悪化を招き、残った社員の負担はさらに大きなものとなるでしょう。


少ない人数で許容量を超えた業務を続けるとミスが発生しやすくなり、業務効率も低下します。人手不足が深刻な状況に陥ると組織が正常に機能しなくなり、企業活動にも悪影響を与えるでしょう。


採用・教育コストの増加

退職する社員が増えると、人材の採用や教育にかかるコストは高くなります。社員1人の採用・教育にかかるコストは100万円以上になるとされており、離職率が高くなるほど企業の利益を圧迫しかねません。


既存社員の負担増加

離職者が担当していた業務は、新しい社員が配属されるまでは、チーム内で分担して対応します。他の業務を担当しているところに業務が追加されるため、既存社員の負担増加は避けられません。人材の確保が難しい昨今、新しい社員の配属に時間がかかるケースも多く、業務量の多さに不満を抱いた社員が次々と離職してしまうリスクがあります。


企業イメージの悪化

離職率が高い企業はイメージが悪くなりがちです。企業イメージの悪化は、採用活動においてもデメリットです。ハラスメントの横行を疑われたり、いわゆるブラック企業だと判断されたりする恐れがあり、優秀な人材が確保しづらくなります。離職率の低さをアピールポイントにできないと採用活動をしても人が集まらず、人手不足が悪化しかねません。


離職者が多い業界

厚生労働省が発表した「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)」によると、大卒の新規学卒就職者のうち、就職後3年以内の離職者が多い業界上位5つは次の表の通りです。


産業 離職率
宿泊業・飲食サービス業 51.4%
生活関連サービス業・娯楽業 48.0%
教育・学習支援業 46.0%
医療・福祉 38.8%
小売業 38.5%

宿泊業・飲食サービス業は半数以上が退職しており、離職者の多さに課題を抱えていることが分かります。労働時間が長くなりやすい生活関連サービス業・娯楽業をはじめ、教育・学習支援業も40%以上の高い離職率です。


※参考:新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します|厚生労働省


離職防止の成功事例

離職防止の成功事例として、株式会社プレナスの事例を紹介します。株式会社プレナスは、ほっともっと・やよい軒・MKレストランの3ブランドを展開している企業です。「人材管理」「人手不足」という課題を解決するためにタレントパレットを導入し、採用強化・エンゲージメント向上・離職防止をワンストップで実現しています。


具体的な離職防止策として取り組んだのは、アンケート機能を活用した社員のコンディションチェックです。毎月、人間関係や健康状態について5段階で評価し、コンディションがよくない社員に対して早期フォローを実施することで、高い成果を上げています。


まとめ

企業が活動を続けていくためには、優秀な人材の確保と定着が欠かせません。今後、労働人口のさらなる減少が予想されるなかで、企業には離職防止への積極的な取り組みが求められています。


タレントマネジメントシステム「タレントパレット」では、人材データを分析・活用することで社員の状態を把握し、離職予兆を事前にキャッチすることが可能です。離職率の高い飲食サービスや医療・福祉、小売などの業界での導入実績も豊富にあります。役立つ資料もダウンロードできるので、まずはお気軽にお問い合わせください。


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