こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
業務の生産性を上げ、企業の業績を上げるためには、従業員一人ひとりが十分なパフォーマンスを発揮する必要があります。しかし、プレゼンティーズムによって従業員の労働生産性が低下し、損失が発生しているケースもあると想定されます。
そのうえで、プレゼンティーズムがどういったマイナスの要素を与えるのかよく把握しきれてないという管理職の方もいるのではないでしょうか。
この記事では、プレゼンティーズムの概要やマイナスの影響、改善策を解説します。プレゼンティーズムを防ぎ、業務の生産性を上げるためにぜひ最後までお読みください。
プレゼンティーズムとは
プレゼンティーズム(presenteeism)は、心身の不調によって労働生産性が落ちている状態を指します。たとえば、うつや不眠、頭痛などの状態のまま業務に携わっていたり、無理やり出勤している状態であれば、プレゼンティーズムだといえるでしょう。
マネジメント側からすれば、従業員は欠勤することなく業務にあたっているようにみえます。そのため、上司も含めた周囲の人間が不調や労働生産性の低下に気づきにくい点に注意が必要です。結果として、ケアレスミスが続き、最終的には大きなトラブルになる可能性がある点は知っておきましょう。
また、プレゼンティーズムを放置した場合、アブセンティーズムに陥る可能性が高まります。アブセンティーズム(absenteeism)とは、体調不良による欠勤や早退などにより業務が遂行できない状態です。アブセンティーズムでは、プレゼンティーズムと異なり、欠員が出る状態であるため、企業の生産性が下がる原因となります。そして、大きな損失が生まれるといった悪循環に陥ってしまう点には注意が必要です。
プレゼンティーズムが起こる原因
プレゼンティーズムはメンタル要因で発生する問題だといえます。ここからは、プレゼンティーズムが起こる従業員側の要因についてみていきましょう。
周囲に気を遣いすぎる
周囲に気を遣いすぎる性格の方は、プレゼンティーズムに陥りやすいといえます。
勤勉な人ほど「自分が仕事を休むことで、周りの同僚に迷惑がかかる」と考えがちです。たとえば、次のようなケースではプレゼンティーズムに陥りやすくなります。
・睡眠不足やストレス、花粉症や生理痛などに対して、「多少なら我慢できるはず」などと判断してしまう
・環境として「休みを取りづらい、言い出しづらい」と感じさせる職場の風潮がある
周りへの過度な気遣いを続けることで、自分で仕事を抱え込んでしまい、より他者に頼りづらくなるでしょう。その結果として、仕事の成果へのプレッシャーからプレゼンティーズムに陥る可能性が高くなっていきます。
参照:プレゼンティーイズム ―これまでの研究と今後の課題― | 産業医学レビュー
周囲に気を遣いすぎるあまり、過剰労働に陥るリスクや改善策については以下の記事を参考にしてください。
「過重労働」については、こちらの記事をご確認ください。
仕事に対する責任感が強すぎる
高い専門性を持って働く従業員は、仕事に対する責任感から体調を崩しても休まない傾向があります。
ニュージーランドで行われたアンケート調査では、医師を対象に「仕事を休まない理由」について、次のような結果が得られました。
1.患者に対する義務感を感じるため
2.自分を頼りにした患者からの診療の予約が入っているため
責任感は大切なものですが、体調を崩しながら出社を続ければ、プレゼンティーズムに陥ってしまう可能性が高いといえます。仕事に対する責任感に関しては、悪質な企業から搾取されてしまう「やりがい搾取」のリスクについては、以下の記事をご覧ください。
「やりがい搾取」については、こちらの記事をご確認ください。
健康問題に対する意識が低い
健康問題に対する意識が低ければ、体調不良からプレゼンティーズムを引き起こす原因になると想定されます。
イギリスでは、プレゼンティーズムと冠動脈疾患の罹患率に関する研究が行われました。この研究では、あまり健康ではないと思っている労働者が体調不良でも休まずに仕事を続けた場合、適切に病気休業を取った労働者と比較して、冠動脈疾患の罹患率が約2倍になったという結果となっています。
つまり、症状を無視して医療機関を受診しないことで、健康問題が発生し、プレゼンティーズムを引き起こす要因になるといえるでしょう。
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プレゼンティーズムによる損失額と計算方法
ここからは、プレゼンティーズムが及ぼす企業の損失額と計算方法を解説します。プレゼンティーズムはあくまでも状態を示すものですが、実際にどの程度の損失となるのかを把握することで企業内でもより対策を意識するきっかけになるでしょう。
プレゼンティーズムによる損失額
ユナイテッド・ヘルスコミュニケーション株式会社では、プレゼンティーズムによる損失額を具体的に試算し、発表しました。この調査では、国民の平均年収を400万円と仮定し、1日当たりの平均給与額から損失額を計算しています。
発表によると、健康な人のプレゼンティーズムによる推定年間損失額が60万円に対して、超高ストレス者のプレゼンティーズム損失額は139万円でした。また、健康な人のアブセンティーズムによる推定年間損失額が7万円に対して、超高ストレス者のアブセンティーズム損失額は11万円と判明しています。
プレゼンティーズムによる個人の損失額は健康な人と比較して多いといえるでしょう。そのため、企業はストレスを改善できるような環境整備を行いましょう。
参照:ユナイテッド・ヘルスコミュニケーション株式会社 | 本邦初:ストレスによる企業のコスト損失額は
損失額の計算方法
プレゼンティーズムによる損失額は、WHO-HPQスケールによって求められます。
WHO-HPQスケールとは、世界保健機関(WHO)が提供している「健康と仕事のパフォーマンスに関する調査票(HPQ)」から、損失コストを算出するものです。損失額は、健康と仕事のパフォーマンスに関する調査票のうち、3つの質問から求めます。
問1:あなたの仕事において誰でも達成できるような仕事のパフォーマンスを0、もっとも優れた勤務者のパフォーマンスを10と仮定します。10段階評価で、あなたの仕事と似た仕事を担当する勤務者の普段のパフォーマンスを、あなたはどのように評価しますか?
問2:問1と同じ尺度で、過去1~2年のあなたの普段のパフォーマンスをどのように評価しますか?
問3:問1と同じ尺度で、過去4週間の勤務日におけるあなたの総合的なパフォーマンスを、どのように評価しますか?
健康リスクとの相関分析は絶対的プレゼンティーズム、損失コストを計算する場合には相対的プレゼンティーズムを使用し、以下の計算式で求めましょう。
- 絶対的プレゼンティーズム=問3×10
- 相対的プレゼンティーズム=問3÷問1
一人あたりの損失額は、相対的プレゼンティーズムの数値を賃金に掛けて計算します。
参照:厚生労働省 |「健康経営」の枠組みに基づいた保険者・事業主のコラボヘルスによる健康課題の可視化
効果的な防止策は企業による健康経営
プレゼンティーズムの防止策の1つとして、健康経営を進めることが効果的です。ここでは、概要や効果をみていきましょう。
健康経営とは
健康経営は、従業員の健康を重要な経営指標と捉え、健康増進に積極的に取り組む企業経
営のスタイルです。健康経営を実施すると業績だけでなく、社会的な企業の印象も向上します。
健康経営の具体例は、以下の通りです。
- 定期的な健康診断の実施
- 再検査費用の支援
- 健康に関するセミナーの実施
- 健康的な食事のサポート
健康経営は、国からも推奨されている経営スタイルであり、国が運用する制度の健康経営優良企業認定を受けた場合には、補助金を受けることも可能です。補助金に関しては、要件を満たす必要もあるため、よく確認しましょう。
健康経営による効果
健康経営によって企業の評価だけでなく、業績の向上が見込まれます。アメリカでは、すでに健康経営企業の業績に関する調査が行われており、企業の業績に対して良い結果をもたらすと判断されているといえるでしょう。調査内容は、1999年に優良健康経営表彰企業とS&P500社平均にそれぞれ1万ドル投資したところ、2012年に優良健康経営表彰企業は1万7,871ドルまで上がったのに対して、S&P500社平均は9,923ドルに留まったというものです。
調査結果として株価に現れたように、健康経営は業績として企業に良い影響を与えるといえるでしょう。
健康経営を実施した具体例
ここからは健康経営によって、労働生産性が向上した事例を解説します。いきなり会社の仕組みを大きく変化させるのは難しいものの、自社で取り組める内容から取り組んでいくことが大切です。
健康保険組合
ある健康保険組合では事業主が連携し、5年ごとの中期計画で健康を意識した施策を開始しました。健康診断から分かった進捗結果を「健康白書」や「医療費統計」にまとめて公表し、健康問題を解決する施策につなげています。
かつては社内の高い喫煙率が問題でしたが、禁煙をはじめた人への支援や禁煙しやすい環境づくりを行い、喫煙率が低下しました。また、被扶養者の健康診断受診率が65%と低いことを課題と考え、被扶養者のイベント型検診を実施し、健康診断受診率100%を目指しています。
ITサービス会社
都内のあるシステムインテグレーター企業では、経営トップが率先して健康経営を促進し、働き方改革を実施しました。残業削減と有給取得率が向上した部署に対して、インセンティブとして最大12万円を夏のボーナスに上乗せする施策を行なっています。
施策の結果として、平成22年度の月間残業時間が27時間から、平成27年度には18時間に削減されています。また、年次有給取得日数が平成22年度の12. 0日から、平成27年度の18. 7日まで向上しました。
企業として、健康問題を解決するために、わくわくマイルと呼ばれる制度もスタートしています。わくわくマイルとは、朝食摂取やウォーキングなどの生活習慣5項目と、肥満、糖代謝などの定期健診5項目の結果や改善状況をポイント化し、インセンティブを支給する制度です。
ポイントによるインセンティブを、個人だけでなく組織単位でも支給したところ、制度の参加率99%に上昇しました。
まとめ
企業の業績を上げる方法の1つとして、従業員が心身の不調によって、労働生産性が落ちている状態となるプレゼンティーズムを改善することが重要です。プレゼンティーズムによる推定の年間損失額は、60~140万円にもなります。
プレゼンティーズムの防止策の1つとして、健康経営を行なう方法が有効です。健康経営を行なうために従業員の状況を把握するところからスタートしてみましょう。
従業員の状況を一元で把握する場合、タレントマネジメントシステムであるタレントパレットを活用できます。社員のモチベーションをアンケートを実施し、モチベーションの情報を収集し、分析することも可能です。
組織ごとに状況を自動的に指標化し、改善策を立てられるため、時間や手間がかかりません。健康経営の実施には、ぜひタレントパレットをご活用ください。
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