ポータブルスキルとは?必要性や具体例、重視するメリットについて解説


ポータブルスキルとは?必要性や具体例、重視するメリットについて解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。


特定の職種や業界だけでなく、様々な職種や環境下で活用できるスキルをポータブルスキルといいます。どこでも活用でき、汎用性が高いため、ビジネスの現場で注目を浴びているスキルです。本記事では、ポータブルスキルの意味や必要な理由、具体例、重視するメリット、伸ばし方について解説します。

ポータブルスキルとは



職種や業界を限定せず、幅広く活用できるスキルをポータブルスキルといいます。例えば、情報収集スキルや課題解決スキル、スケジュール調整力、コミュニケーション能力、リーダーシップスキルなどです。

業種や職種が変わっても、職務を遂行する上で活用できるスキルといえるでしょう。ポータブルスキルを身に付けている人は、職場や環境が変わっても柔軟に業務をこなせます。会社においても、ポータブルスキルが全般的に高い人は仕事をスムーズに進めることができるでしょう。周囲の環境が変わっても柔軟に対応でき、コミュニケーション能力も高いため、マネジメントを安心して任せることができます。

「人材育成の一環として、従業員にポータブルスキルを身に付けさせたい」と考えている人事担当者の方もいるでしょう。

テクニカルスキルとの違い

ポータブルスキルと似た言葉に、テクニカルスキルがあります。これらの違いは何でしょうか。

テクニカルスキルとは、特定の業務遂行に必要な専門的な知識や技術、資格などのことです。例えばIT系スキルや介護の技術、医療系の資格、設計図作成などが該当します。これらのスキルは、その分野で仕事をするには欠かせませんが、他の業種や職種では活かすことができません。

ポータブルスキルは汎用性の高いスキルですが、テクニカルスキルには汎用性はありません。しかし、テクニカルスキルを身に付けている人は、専門性の高い業務をスムーズに遂行できます。テクニカルスキルとポータブルスキルの違いについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ。
「ポータブルスキルテクニカルスキル」については、こちらの記事をご確認ください。

関連記事:人材育成に必要なスキルって何? どうやって身につける?

ポータブルスキルの具体例

ポータブルスキルとは具体的にどのようなものか、気になる人もいるでしょう。ここでは、具体例として「コミュニケーション能力」「計画力」「対応力」の3つを解説します。

ポータブルスキルは他にもたくさんあり、ここで紹介するのはごく一部です。他のポータブルスキルについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ。
「ポータブルスキル一覧」については、こちらの記事をご確認ください。

コミュニケーション能力

コミュニケーション能力とは、相手と意思疎通する能力のことです。社内はもちろん、取引先や顧客と信頼関係を築き、円滑に仕事を進めていくために欠かせない能力といえます。

コミュニケーション能力が高い人は、以下の4つの能力を備えています。自分の想いや考えを相手に伝える伝達力、相手の話を丁寧に聞く傾聴力、話した言葉を正確に読み取る理解力、そして相手の意図を汲み、気持ちに寄り添う共感力です。

コミュニケーション能力というと「言語」が重視されがちですが、コミュニケーション能力が高い人は、言語に加えて表情・視線・仕草・声・会話のスピード・服装などの「非言語コミュニケーション」にも気を配っています。

コミュニケーションを深めるには、「相手の目を見て話す」「話を聞いていることを仕草で表す」なども大切だからです。このような気配りによって、きちんと話を聞いて共感していることが伝わるため、信頼してもらうことができるでしょう。

話を始める前に、全体の構成を考えているのも特徴です。ビジネスの場において、思い付いたことから話すと、「話が冗長なだけで内容がなかった」「結局何が言いたいのかわからなかった」と思われるおそれがあります。前もって全体の構成を考えた上で話すと、そのような事態を回避できます。コミュニケーション能力の高い人は、一方的に自分の意見を押し付けることや、ネガティブな話だけをして雰囲気を悪くすることもないでしょう。

分け隔てなく人と接することができる点も特徴です。ビジネスの場には様々な考えを持つ人がいます。年齢層も幅広く、立場が異なる人も多くいるため、「自分と気が合う人とだけ付き合う」ということはできません。コミュニケーション能力が高い人は、どのような立場・年齢・考え方の人とも分け隔てなく交流することができるため、ビジネスの場においては大変貴重です。

コミュニケーション能力が高い人は、部下の話をしっかり聞くことができると同時に、部下の現状を把握してそれぞれの個性に応じた対応ができるため、リーダーの役割を任せられるでしょう。

関連記事:コミュニケーション能力を高める要素とは?高い人の特徴や会社で鍛える方法を解説

計画力

2006年、経済産業省は社会人基礎力の一つとして身に付けておきたい力として、計画力を提唱しました。

社会人基礎力は以下の3つです。

  1. 前に踏み出す力
  2. 考え抜く力
  3. チームで働く力


計画力はこの中の「考え抜く力」の一つとして位置づけられており、具体的には「課題解決のためのプロセスを明確にし、最善の解決策を検討する力」といえます。

計画の策定や課題解決、タスク実行のためには、未来を予測して正しい選択をし、プロセスを詰めなければなりません。ビジネスの場においては、単に計画を立てるだけでなく、計画どおりに実行し、途中でトラブルが起きた場合はそれに対処し、最後までやり遂げなければなりません。

計画力のある人は未来を予測し、物事に優先順位を付けることができます。また、実現可能な計画を立て、改善しながら遂行していく力も持っています。事前に起こり得るリスクを洗い出して、リスクの低減に努めることができるでしょう。業務には時間や人材、資金の制約がつきものです。そのため、いかに質を落とすことなく業務を効率化できるかということも問われるでしょう。

プロジェクトやタスクの難易度が高い場合は、事前にトラブルが起きることを想定して複数の計画を立てる、トラブルが起きた場合の対策を練っておくという姿勢も必要です。途中でプロジェクトが止まってしまった場合も、計画力が高ければスケジュールの再調整ができます。

効率的かつ正確にプロジェクトを進められるため、企業にとって計画力の高い人の存在は貴重といえるでしょう。

対応力

対応力とは、課題や問題をはじめとしたあらゆる事態に柔軟に対応する力のことです。近年であれば「感染症対策」などが該当します。感染症対策で、それまでオフラインだった仕事がオンラインになる、これまでのようにお客様のもとに訪問できなくなった、といった事態に遭遇した人は少なくありません。このように、予想していなかったことが突然起きた場合でも、冷静に対応できる力がビジネスの場で求められています。

対応力の高い人は、不測の事態に遭遇しても課題や問題を解決することができます。事前に起こり得るリスクを想定しておいたとしても、ビジネスの場では想定していなかったことが起こるものです。想定しなかった事態になった場合でも、冷静に現状を把握し、優先順位を見極めて正確に対応できるでしょう。

対応力が高い人が同じチーム内にいると、何か問題が発生した場合でも対応してもらえます。そのため、チーム内の他の人は安心して仕事ができるでしょう。対応力は、チームリーダーやマネジャーなどに求められる能力の一つです。

対応力が高い人は事前に様々なリスクを想定し、それに対する準備を欠かさず行っています。そのため、社内でリスクマネジメントを推し進める時にも重要な役割を担えるでしょう。

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ビジネスの場でポータブルスキルが必要な2つの理由



ビジネスの場でポータブルスキルが求められている主な理由は2つあります。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

終身雇用制度の崩壊

かつて、日本では終身雇用制度を採用している企業がたくさんありました。終身雇用制度では、一度会社に入社すると定年までその会社に勤めることができます。そのため、多くの従業員は転職について考えることはありませんでした。

しかし、多くの会社でリストラが行われるようになった今、終身雇用制度は崩壊したといえます。従業員は、いつ会社を辞める必要に迫られるかわかりません。次の会社に就職するためには、汎用性の高いポータブルスキルを持っている必要があります。ポータブルスキルはどの職場でも活かすことができるため、職種や業界を問わず、さまざまな業界への転職が可能になるでしょう。

技術革新

技術革新のスピードが速く、今の業務や業界がなくなる、または大幅に縮小される可能性はゼロではありません。場合によっては、職種や職務がなくなることもあるでしょう。

そこまでではないとしても、テクノロジーの進歩によって手法が大きく変わるケースは珍しくありません。例えば、以前は算盤や電卓を使って手作業で行っていた経理業務について、多くの企業がシステムやツールを導入しています。このような場合、現在の業務に関するテクニカルスキルしか持っていなければ、活躍することはできないでしょう。

一方で汎用性の高いポータブルスキルを身に付けておけば、他の業務や職場、新しい業務体制であっても活用することができます。目まぐるしく変わる変化に対応するためには、ポータブルスキルが必要不可欠といえます。

ポータブルスキルを重視するメリット

企業が社員のポータブルスキルを重視するメリットとして、以下の3つが挙げられます。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

仕事をこなせる

現状把握力や課題解決能力などのポータブルスキルが高い従業員が多いと、効率的に生産性の高い仕事をこなせます。計画力が高ければ、事前にリスクを考慮して準備し、計画どおりにタスクやプロジェクトを遂行できるでしょう。たとえ途中でつまずいたとしても、原因を究明して新たな計画を立てる力があります。

ポータブルスキルが高い人は適応力があって柔軟性に優れているため、様々な業務で活躍できる点も強みです。ポータブルスキルの高い人材を増やすと職種や業務を限定せず様々な場面で活躍できる従業員が増えるでしょう。また、既存の従業員にもポータブルスキルの重要性を説き、研修などを行って高めていくことも大切です。

ポータブルスキルが高い人が多いと、人事異動の際にも最適な人員配置を行うことができます。

コミュニケーション力が高い

ポータブルスキルの一つに、コミュニケーション能力があります。コミュニケーション力が高い人が多いと、仕事を円滑に進められるでしょう。コミュニケーション能力が高い人は、ロジカルシンキングにも長けている人が多いようです。ロジカルシンキングは、チームをまとめることはもちろん、会議やプレゼンテーション、商談などの場面でも活かすことができます。

結果として、課題解決につながる会議や、説得力の高いプレゼンテーション、成果につながる商談の増加が期待できます。コミュニケーション力が低い人が多いと人間関係のトラブルが増え、そのために仕事を辞める人が出てくるかもしれません。辞める従業員が増えると採用活動を行う必要が生じ、その手間や資金が必要になります。

一方、コミュニケーション能力の高い人が多い場合、従業員同士が揉める、意見の相違によって仲たがいするといった無駄な時間を大幅に削減できるでしょう。それが、業務効率化や利益向上につながるはずです。

マネジメント力がある

ポータブルスキルの一つに、マネジメント力があります。マネジメント力のある人は、部下の仕事の管理や育成、仕事への動機付けなどを行うことができるでしょう。それぞれの部下の性格や特性、強みや弱み、目標などを正確に把握して、チーム内の業務分担を適切に行うことができます。部下が伸び悩んでいる場合は、サポートすることも可能です。

部下の評価についても、他の人に「えこひいき」と感じさせることはないでしょう。部下のモチベーションを上げるような関わり方ができるため、業務効率化やスキルアップといった良い影響を与えることができます。

ポータブルスキルの中のヒューマンスキルは、特にマネジメント層に求められるスキルといえるでしょう。ヒューマンスキルとは他者と良好な人間関係を築き、円滑なコミュニケーションを取るスキルのことです。ヒューマンスキルは、以下の8つの能力に分けられます。

  • ネゴシエーション能力
  • ヒアリング能力
  • リーダーシップ能力
  • プレゼンテーション能力
  • コーチング能力
  • コミュニケーション能力
  • ファシリテーション能力
  • 向上心


いずれも、マネジメント層には欠かせない能力です。人事担当者は、必要に応じてマネジメント層に向けてヒューマンスキル研修を実施しても良いでしょう。

関連記事:マネジメント力とは|スキルと身に付けるための具体案を解説

ポータブルスキルの伸ばし方

「従業員のポータブルスキルをどのように伸ばせば良いかわからない」という担当者の方もいるでしょう。ここでは、ポータブルスキルの伸ばし方について解説します。

社外研修

ポータブルスキルを伸ばすために、社外の研修プログラムを活用しても良いでしょう。ポータブルスキルは多岐にわたるため、社外研修プログラムにも様々な種類があります。

  • コミュニケーション能力開発研修
  • ロジカルシンキング研修
  • セルフコントロール研修
  • プレゼンテーション研修
  • マネジャー向け研修


他にも様々な種類の研修があります。特に必要なスキルや伸ばしたいスキルに注目し、研修を導入してもよいでしょう。集団で受ける研修だけでなく、e-ラーニングのように個別で受けられるスタイルの研修プログラムもあります。複数の研修を受けられるように準備して、各従業員が自分に必要だと思うものを自由に受けられるようにするのもよいでしょう。

社内研修

厚生労働省のサイトでは「ミドル層のキャリアチェンジにおける支援技法」として、ポータブルスキル活用研修の動画や参加者用テキストが用意されています。市販の本やこのような資料を用いて、社内研修を行っても良いでしょう。ポータブルスキルとは何か、どのようなスキルがあるのか、なぜそのスキルが求められているのか、どう高めていけば良いか、といったことをぶことができます。

関連記事:社内研修の内製化とは|メリットや方法・注意するポイントまで解説

人事評価制度の変更

従業員にポータブルスキルの向上に取り組んでもらうためには、人事評価にポータブルスキルの要素を加えるのも有効です。ポータブルスキルは幅広いため、具体的な事例を提示するとともに、評価制度の変更について社員にわかりやすく説明すると良いでしょう。

具体的に「このような行動を取ればこのように評価する」と伝えると、従業員は意識して取り組めるようになります。一度の通達で全員に理解してもらうことは困難です。会社として取り組む場合は定期的にミーティングなどを行い、浸透させることも検討しましょう。ポータブルスキルの向上に努めている社員がいる場合は、社内表彰や社内報などでピックアップして、モデルケースとして紹介するのも有効です。

関連記事:人事評価システムとは?導入するメリットや自社に適したツールの選び方を解説

まとめ

ポータブルスキルは汎用性が高く、持ち運べるスキルの総称です。専門性の高いテクニカルスキルとは違い、業種や業界が変わっても活用できます。変化が激しく、転職者が増えた現代において、注目を浴びているスキルです。

コミュニケーション能力や対応力、計画力を始め、様々なスキルがあります。その中のヒューマンスキルは、特にマネジメント層の人が身に付けておきたい能力です。従業員のポータブルスキルを向上させたい場合は、社内・社外研修を検討しましょう。また、人事評価制度に取り入れると、従業員に意識してもらえる可能性が高まります。

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