法定休日は残業代の支払い不要!割増賃金が発生しない4つのケースや計算方法を解説


法定休日は残業代の支払い不要!割増賃金が発生しない4つのケースや計算方法を解説

「法定休日の残業代について知りたい」と考える方は多いのではないでしょうか。社員が法定休日に出勤した場合、企業は割増賃金を支払う必要があります。本記事では、法定休日の条件や具体的な計算方法を解説します。人事労務担当者は、ぜひお読みください。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。


「法定休日の残業代について知りたい」「割増賃金をいくら支払えばいいのか分からない」といったお悩みをお持ちの方もいるのではないでしょうか。


法定休日は労働基準法で定められており、決まった日数を社員に与えることが義務づけられています。社員が法定休日に出勤した場合、企業は割り増しした賃金を支払う必要があります。しかし、計算方法が分からなければ、適切な割増賃金を支払えません。


そこで本記事では、法定休日の条件や計算方法を解説します。法定休日の定義や支払額の求め方だけでなく、労務管理の負担を軽減する手段が分かる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。


法定休日と法定外休日の違い


企業は、法定休日と法定外休日の違いは、以下の通りです。


  • 法定休日は労働基準法で定められている
  • 法定外休日は企業が任意で設定できる


法律上での定義や残業代の計算方法などが異なるため、違いをきちんと理解しておきましょう。


法定休日は労働基準法で定められている


法定休日とは、労働基準法の第35条で定められている休日です。企業は、労働者に対して週に1日以上、あるいは4週で4日以上の休日を与える必要があります。ただし、法定休日を何曜日にするかは、法律で決められていません。

法定休日の曜日は、就業形態などに合わせて自由に設定できます。例えば、完全週休2日制で土日を休日と定めている企業では、日曜日を法定休日に設定している場合が多いです。一方でサービス業やシフト制を導入している企業では、法定休日を平日に設定したり、社員によって異なる曜日を指定したりしています。法令違反すると罰則が課せられるため、企業は法定休日を適切に付与する必要があります。

法定外休日は企業が任意で設定できる


法定外休日は、企業が任意で設定できる休日を指します。労働基準法で具体的な日数は定められていないため、法定外休日を設定するかどうかは企業の自由です。ただし、労働基準法第32条で以下のように定められています。

”使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。(厚生労働省|労働基準法https://jsite.mhlw.go.jp/gifu-roudoukyoku/var/rev0/0115/6296/2014613171824.pdf)”

法定休日のみだと、労働基準法第32条に違反する可能性が高いです。例えば、1週間のうち法定休日を除いた6日間、1日8時間(実働)働いてもらうとします。1週間の労働時間が48時間となり、規定の40時間を超えてしまいます。

労働基準法第32条に違反しないために、多くの企業が法定外休日を定めているのが現状です。完全週休2日制で土日を休日と定めている企業では、土曜日を法定外休日に設定しているケースが多いです。サービス業などシフト制を導入している場合は、労働者の出勤回数が少ない曜日や定休日に合わせて、法定外休日を設定することもあります。

法定休日は残業代が発生しない


法定休日にした場合、残業代は発生しません。その代わり、緊急対応などで法定休日に出勤させると、通常の35%以上割り増しした賃金を支払います。法定休日に出勤させた分の代休を与える場合でも、35%割増率が適用されます。トラブル対応のために法定休日に出勤させ、翌週の平日に代休を与える場合などが該当します。


また、深夜労働させると通常の賃金に25%以上割り増しして支払わなければなりません。最低でも、通常の賃金に60%割り増しして支払う必要があります。法定休日出勤の割増率である35%に、深夜労働の25%を上乗せするためです。法定休日の割増賃金について詳しく知りたい方は、別記事「法定休日割増」をあわせてご確認ください。


休日出勤させても割増賃金が発生しない4つのケース


休日出勤させたら、必ずしも割増賃金が発生するとは限りません。ここでは、割増賃金の支払いが不要な4つのケースを紹介します。


  • 法定外休日出勤で労働基準法の要件を満たしている場合
  • 振替休日を定めて労働基準法の要件を満たしている場合
  • 管理監督者の社員が出勤した場合
  • 基本給に割増賃金が含まれている場合


誤って割増賃金を支払わないためにも、それぞれの条件を確認しておきましょう。


法定外休日出勤で労働基準法の要件を満たしている場合


法定外休日に出勤させた場合は、基本的に割増賃金を支払う必要がありません。ただし、1週間あたりの労働時間が40時間を超えたら、超過時間に合わせて割増賃金を支払います。例として、法定外休日の土曜日に出勤した場合で考えてみましょう。

月曜日〜金曜日の合計労働時間が38時間の場合、法定外休日に2時間労働させるなら、割増賃金は発生しません。一方で、4時間勤務させたら、40時間を超過した2時間が割増賃金支払いの対象です。超過分の2時間に対して、通常の賃金に25%割り増しして支払う必要があります。

なお、社員に週40時間以上の労働をさせるには「時間外労働・休日労働に関する協定(通称36協定)」の締結が必要です。週40時間以上の労働を命じる可能性があるなら、事前に36協定を締結しましょう。

振替休日を定めて労働基準法の要件を満たしている場合


振替休日は、休日出勤させる代わりに与えます。出勤日よりも前に休日を与える点が、代休と異なります。休日出勤させる日の前日までには決定し、社員に通知しましょう。振替休日を与えると、法定休日に出勤させても割増賃金を支払う必要がありません

ただし、振替休日を与えたとしても1週間の労働時間が40時間を超えたら、割り増しした賃金を支払う必要があります。時間外労働という扱いになり、通常よりも25%以上割り増しした賃金を支払います。振替休日は、休日出勤日と同一の週に設定しないと、割増賃金が発生するケースが多いので要注意です。

管理監督者の社員が出勤した場合


休日に管理監督者が出勤した場合は、割増賃金を支払う必要はありません。管理監督者の条件は、以下のとおりです。

  • 経営者と同等の立場で業務にあたっている
  • 勤務時間に対して厳格な制限を受けていない
  • 賃金面などで役職にふさわしい待遇を受けている


管理監督者に対する割増賃金の支払い義務は、労働基準法第41条で定められています。なお、管理監督者は単純な肩書きや役職では判断されません。実際の業務内容や権限などを、総合的に考慮して判断されます。

管理監督者は、定義が曖昧です。企業は管理監督者の条件を基に、誰が該当するのかはっきりとさせておいた方が良いでしょう。

基本給に割増賃金が含まれている場合


基本給に休日出勤を想定した割増賃金を含んでいる場合は、追加で支払う必要はありません。ただし、雇用契約書や就業規則に明記する必要があります。なお、雇用契約書に記載してある基本給以上の休日出勤が発生した場合は、超過分の割増金額を支払わなければなりません。

例えば雇用契約書に「30時間分の休日出勤割増分を含む」などと記載したとします。30時間を超過した休日出勤に関しては、割増賃金を支払わなければなりません。割増率は、法定休日・法定外休日によって、それぞれのルールに準じます。

【深夜労働の有無別】法定休日出勤の賃金計算方法


法定休日に出勤させた場合は、通常の35%以上の賃金を割り増しして支払います。さらに深夜労働が発生すると、別途割増賃金を支払わなければなりません。ここでは深夜労働の有無別に、社員が法定休日出勤をした場合の計算方法を解説します。賃金計算に関する理解を深めたい方は、参考にしてみてください。


深夜労働させなかった場合


法定休日出勤で、深夜労働をさせなかった場合の割増率は35%です。基礎賃金が1,500円の社員に、法定休日に8時間労働させた場合、以下の計算式で割増賃金を求められます。

1,500円×1.35×8時間=16,200円

法定休日労働の賃金は、16,200円です。同一の条件で通常の労働日に出勤させた場合は、12,000円支払います。つまり、法定休日に勤務させた場合、通常の労働日よりも4,200円多く支払うということです。

深夜労働させた場合


深夜労働とは、22時〜5時(厚生労働省が認めた場合は23時〜6時)に働いてもらうことです。深夜労働に対する賃金は法律で定められており、日中の休日出勤や残業に加えて、別途25%以上の割増率を適用する必要があります。


例えば、基礎賃金が1,500円の社員が、法定休日出勤で午後4時から翌日の午前1時まで勤務したとします。午後7時から午後8時までの1時間休憩した場合、労働時間は8時間です。

午後4時から午後7時まで、午後8時から午後10時までの5時間には、35%以上の割増率が適用されます。午後10時から翌日の午前1時までの3時間は、60%以上の割り増しした賃金を支払います。計算式は、以下の通りです。

1,500円×1.35×5時間+1,500円×1.6×3時間=17,325円

法定休日に深夜労働した社員に対して、17,325円支払う必要があるとわかります。

【代休・振替休日別】法定休日出勤の賃金計算方法


代休と振替休日は、法律での定義が異なるため、賃金の計算方法が異なります。それぞれの計算方法を理解しておきましょう。


振替休日を取得させた場合


振替休日を取得した場合は、法定労働時間内(週40時間)の労働なら、割増賃金は発生しません。ただし、振替休日を翌週に移動して、法定労働時間を超えた場合は、超過時間ごとに25%割り増しした賃金を支払います

法定休日に出勤し、1週間の労働時間が42時間になったら、2時間の時間外労働が発生したとみなされます。基礎賃金を1,500円として、2時間に対して25%の割増率を適用する場合、以下の式で賃金を計算可能です。

1,500円×1.25×2時間=3,750円

法定労働時間を超えた2時間分の賃金は、3,750円と求められます。振替休日を与えたら、法定労働時間を超えた場合のみ、超過分に対して25%割り増しすることに留意しておきましょう。

代休を取得させた場合


代休とは、法定休日に出勤させた場合、後日埋め合わせとして与える休日を指します。振替休日と異なるのは、あらかじめ休日を設定していない点です。例えば、急なトラブルなどで出勤したケースなどが考えられます。


代休の場合、通常の勤務分の賃金は、相殺可能です。就業規則に記載しておけば、休日出勤の割増分のみ支払えば問題ありません。基礎賃金が1,500円の社員に法定休日出勤を命じ、8時間労働させた場合、以下の計算式で割増分の賃金を求められます。

1,500円×0.35×8時間=4,200円

賃金を相殺した場合は、休日出勤に対して4,200円支払います。

法定外休日の賃金計算方法


法定外休日は、1週間の労働時間が40時間を超えなければ、賃金の割り増しは不要です。しかし、40時間を超えた場合は、超過分に関して25%の割増率が適用されます。


基礎賃金が1,500円の社員に法定外休日に8時間労働させ、うち2時間が法定労働時間を超過した場合の計算式は、以下の通りです。


1,500円×6時間+1,500円×1.25×2時間=12,750円

企業は、社員に対して12,750円支払います。また、深夜労働を行った場合は、別途25%以上割り増しします。さらに、時間外労働が1ヵ月で60時間を超えた場合は、50%以上の割増率が適用されるため、残業時間の管理には注意しましょう。

法定外休日について詳しく知りたい方は、別記事「法定外休日とは」をあわせてご確認ください。


法定休日残業のまとめ


休日出勤の割増賃金額は、法定休日か法定外休日によって異なります。「必要な給与が支払われていない」などのトラブルを防ぐためにも、きちんと理解しておくことが大切です。しかし、多くの社員を抱えていると、賃金管理が煩雑になるでしょう。


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