多くの企業が生産性の向上やコスト削減を目指している一方で、どのように取り組めばよいのかわからないと悩んでいる担当者様も多いでしょう。この記事では、生産性向上を目指す手段として、全体最適を解説します。
全体最適と混同されやすい部分最適との違いや全体最適を成功に導く手順、全体最適と部分最適をバランスよく導入する方法などもあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
全体最適とは
全体最適とは、組織全体が最適な状態であることを指し、企業経営を行ううえで大切な概念・経営手法です。
英語では「Total Optimization」と表記します。「Optimization」は最適化、「Total Optimization」は「組織全体として最適な状態であること」という意味です。全体最適を実現すれば、組織全体の生産性が向上し、企業の利益アップも期待できるでしょう。
全体最適が求められる背景
全体最適が求められるのには、人材不足や利益の最大化という背景があります。それぞれ詳しく見てみましょう。
人材不足
近年は、少子高齢化などが原因で労働人口が減少しています。人材が十分に確保できないとはいえ、業務縮小はできないのが悩みどころです。労働人口が減少したとしても、企業として生産性を維持・向上させるためには、業務効率化が必要になります。そのため、多くの企業に全体最適が求められるようになりました。
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利益の最大化
組織の一部門が大きな利益を上げたとしても、他部門の生産性が悪ければ企業利益が最大化したとはいえません。組織全体で生産性を高めるためにも、企業として最適な状態になる全体最適が求められるようになりました。
全体最適と混同されやすい部分最適とは
全体最適と混同されやすい用語に部分最適があります。部分最適の意味や全体最適との違いについてチェックしてみましょう。
部分最適とは
部分最適とは、組織の一部あるいは個人が、業務を効率よく遂行できるように最適化された状態です。たとえば、該当部署に対して高額のシステムを導入して生産性を向上させることなどを指します。
「局所最適」「個別最適」などと呼ばれることもあり、全体最適と対義の意味で使われることが多い用語です。英語では「Partial Optimization」という表記され、「部分的な最適化」と訳されます。
全体最適と部分最適の共通点
全体最適と部分最適は、利益を最大化するという目的に関しては共通しています。しかし、部分最適の積み重ねがそのまま全体最適になるとは限りません。
たとえば、営業部門の部分最適が成功して受注数が増えたとしても、製造部門の対応が追い付いていない場合は利益が最大化できておらず、部分最適で終わってしまいます。企業の利益を上げるには、全体最適を意識した経営であることが重要です。
全体最適と部分最適の違い
全体最適は、企業全体の生産性や利益を考える経営者視点です。一般的な社員は自分の部門以上の視点が持ちにくいため、経営層視点で考えることが難しいでしょう。そのため、自社が全体最適を目指していても、部分最適のみで終わってしまうケースがあります。
全体最適・部分最適が向いているケース
全体最適と部分最適では、得られる効果が異なるため、特徴を把握しておく必要があります。それぞれが向いているケースは以下のとおりです。
全体最適が向いているケース
全体最適は、経営層あるいは経営層に近い役職が主導する必要があります。組織としての目標や全体における課題がある場合は、全体最適がおすすめです。
たとえば、目標が「コスト削減」の場合、部分最適によって部門が目標を達成しても、別の部門が達成していない場合は、企業としての目標に到達できないケースがあります。そのため、「コスト削減」を目指すには、全体最適が向いているといえるでしょう。
部分最適が向いているケース
全体最適が決定しており、各部門や社員に対する役割が明確な場合は、部分最適が向いています。特定の部門あるいは特定の工程や業務のみに明確な課題が発生している場合にも、部分最適がおすすめです。また、組織全体を最適化する前に、部分的な改善が必要な場合にも部分最適が向いています。
全体最適のメリット
先述したとおり、組織としての目標や全体における課題があるときは全体最適が向いています。全体最適を行うメリットは以下のとおりです。
生産性が向上する
複数の部門が重複している業務を行っている場合は、全体最適で重複部分を解消することにより、業務の無駄がなくなります。業務の無駄がなくなることで、優先度が高い業務が明確になり業務効率化につながるでしょう。必要のない仕事がなくなって業務効率化が推進されれば、企業としての生産性が向上します。
コストを削減できる
全体最適を導入する際は、初期費用がかかることもあります。しかし、部署間で重複している業務があれば、重複を解消することでリソースを削減できるため、結果的にはコストを減らせるでしょう。コスト削減によって、新規事業や株主配当に利益を回せるようになります。
ミスの防止・減少につながる
全体最適を実現するには、部門同士の連携が必要です。部門間で情報をタイムリーに連携させることで、認識の解釈や情報不足によるミスが減ります。部署間のコミュニケーションが促されると他部署の事情や状況がわかるようになり、協力して仕事を進めやすくなるのもメリットです。
また、全体最適に向けてITツールを導入すれば、計算ミスなどのヒューマンエラーが減り、ミスの防止・減少につながります。
役割が明確になる
全体最適に取り組めば、自ずと各部門の目標や役割が明確になり、社員それぞれの役割や目標に細分化できるようになります。社員は役割や目標が明確になることで働きやすくなり、仕事の精度や効率を高められるようになるでしょう。
h3:意思決定が的確かつスピーディーになる
全体最適を行うと各部門の役割が明確になって、それぞれが保有していた独自情報も集めやすくなります。また、経営層も各部門の状況を把握しやすくなり、企業としての意思決定を的確かつスピーディーに行えるようになるでしょう。
全体最適のデメリット
全体最適には多くのメリットがある一方で、デメリットもあります。メリット・デメリットを把握したうえで導入を検討しましょう。
部門間で対立するケースがある
全体最適を行えば、部門によってはコストが増える、人員に偏りが出るなどの問題が出てくることもあるでしょう。場合によっては、部門間のトラブルを生むこともあります。部門間の対立を防ぐには、経営層が組織としての目標・方向性を示して社員の理解を得ることが重要です。
たとえば、営業部門に契約件数に応じたインセンティブが支払われる場合、生産部門のキャパシティを超えた契約を取ると両部門が衝突します。組織の方向性を明確にし、必要があれば報酬体系を見直すなどの対応が必要です。また、各部門の社員のモチベーションを維持する施策も必要になります。
導入に時間やコストがかかる
全体最適を導入してしばらくは時間やコストがかかりますが、先述したとおり部署間で重複する業務などを解消すれば結果的にコストを減らせます。ただし、全体最適の手段として、ITツールなどを導入する場合は、課題の集約、システム選定、運用ルールの検討などのリソースが必要です。ITツールに慣れるまでの社員教育や教育コストも必要になります。
現場で対応しづらい場合がある
全体最適を経営層が指示をしても、現場での対応が追い付かないケースがあります。繁忙期や労働日数などの兼ね合いで、全体最適に協力したくてもできないケースもあるでしょう。全体最適を導入する際は、期間に余裕を持つことや体制の整備を進めることが大切です。
部分最適のメリット
部分最適は部門や個人での取り組みであるため、スピーディーに取り組めるのがメリットです。目の前のやるべきことを明確化しやすく、課題・問題・改善案などのアイデアも出しやすいでしょう。局所的な改善活動のため、部門や個人で関わりやすく、短期間で成果が出やすいためモチベーションの向上も期待できます。
部分最適のデメリット
部分最適は、部門や個人ごとの小さな範囲のため、特定の工程や業務に焦点を当てられます。しかし、長期的な視点に欠けやすいのがデメリットです。また、対象の課題や問題解決を改善するにあたって、他部門に悪影響を与えてしまうケースもあります。
また、部分最適を目的にすると、全体最適の目標から逸脱してしまう可能性があるため注意が必要です。部分最適を行う際は、全体最適の視点や目標を意識しつつ、各部門と調整を図りながら取り組む必要があります。
全体最適を成功に導く手順
全体最適を成功に導くには、以下のように最適な手順で効率的に行うことが重要です。
1.方針を決定する
全体最適を導入する際は、自社の方向性や目標を明確にし、経営層が各部門の管理者や社員へ伝えることが重要です。経営層の本気が伝わられなければ、各部門が独自の判断で取り組み、部分最適で終わってしまうケースもあるでしょう。
また、各部門の対立や社員の反発を防ぐためにも、全体最適を実現しなくてはいけない理由を明確にしておく必要があります。
2.社員に周知して理解を得る
現場の社員は経営層の視点が持ちにくく、経営や利益を思い描きにくいでしょう。まずは社員に向けて、全体最適を行う背景や成功した際のメリット、実現に向けた具体的な方法を周知して理解を得ることが重要です。全体最適が成功した際のメリットが伝われば、社員同士で協力し合う雰囲気ができます。
また、部門の管理者が部分最適を行わないように、考え方や方針について詳細な説明をしておくことも大切です。
3.社内コミュニケーションを推進する
全体最適は、それぞれの社員が協力し合って取り組む必要があります。業務の洗い出しや解決策の考案などを行うときは、多くのコミュニケーションが必要です。部門間のコミュニケーションが求められることもあります。
必要があれば、部門間の連携や風通しのよさを向上するため、気楽に交流できる場を作ったりイベントを開催したりして、社内コミュニケーションを推進するのもよいでしょう。
4.ITツールを活用する
ITツールを活用すれば、全体最適の取り組みが効率的に行えます。ITツールで各部門の業務を一括管理することで、重複して行っていた業務を削減できることもあるでしょう。
全体最適と部分最適をバランスよく導入する方法
部門最適は、全体最適の手段のひとつです。全体最適と部分最適の両方のバランスを取ることで、効率的に目標を達成できることもあります。全体最適と部分最適をバランスよく導入する方法は以下のとおりです。
共通目標を掲げる
全体最適と部門最適のバランスを取るためには、共通の目標を達成することが不可欠です。部分目標は全体最適を達成するための手段として考え、目標を意識できるように可視化して共有しましょう。
情報共有を強化する
部門間で情報共有を適切に行わなければ、部分最適の取り組みが逸れてしまうケースがあります。部門最適を行う際は、個人と部門、経営層と部門など、情報共有の意識を高く持つことが重要です。情報共有を強化することで、部門間で起きるトラブルを未然に防ぐこともできます。
KPIを設定する
KPIとは、目標に対する達成度合いを評価する指標です。目標の達成度合いを数値で定量的に算出できます。KPIは全体最適と部分最適のそれぞれで設定しましょう。部分最適のKPI設定時には、全体最適に影響はないか、他部門や社員に悪影響や歪みを与えないかを考慮して無理のない数値にすることがポイントです。
組織文化の醸成を目指す
全体最適と部分最適のバランスを取るには、経営層と社員が全体最適の価値や重要性を理解する組織文化の醸成を目指すことが必要です。組織文化が醸成されていれば、社員が部分最適を優先することなく、全体最適のために動けるようになります。経営層と社員が、共通の最終目標に向けて進めるような組織作りを行うことが大切です。
システムを活用した全体最適の事例
システムを活用すれば、効率よく全体最適を行うことができます。自動化ツールによって、定型業務の手間を省いてミスを減らせるようになるでしょう。ビジネスチャットツールは部門間のコミュニケーションを促進し、コミュニケーション不足で生じる業務の重複やミスを減らせます。
タレントマネジメントシステムを活用すれば、社員の能力を生かせる人材配置ができてパフォーマンスを最大化させられるでしょう。
まとめ
企業として生産性の向上やコスト削減を目指すなら、全体最適の導入がおすすめです。この記事では、全体最適の概要や部分最適との違い、メリット・デメリットなどを解説しました。全体最適を成功に導く手順や部分最適とのバランスの取り方についても紹介したので、ぜひ参考にしてください。
全体最適を成功させるには、システムを導入して業務を最適化させるのもよいでしょう。タレントパレットは、あらゆる人材データから最適な配置案を生成できるタレントマネジメントシステムです。社員を異動させた場合の人件費や保有資格などへの影響度を自動的に算出できるので、全体最適をスムーズに進められます。詳細については以下の情報をご覧ください。