組織文化とは?定義や4つの種類、重要性、メリット、デメリットを解説


組織文化とは?定義や4つの種類、重要性、メリット、デメリットを解説

組織文化は、企業や組織の方向性の基礎となる重要な概念です。対外的に公表する企業理念やビジョンにも影響するため、社外からの評価にもかかわります。また、社員が組織文化に共感していれば、エンゲージメントや生産性の向上にもつながるでしょう。この記事では、組織文化の概要や定義、重要性、組織文化醸成のメリット・デメリット、組織にとって理想的な文化を構築するための方法を解説します。実際の組織文化の例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

組織文化とは

組織文化とは、組織が過去に選択した行動の積み重ねによる「組織全体の考え方や行動原理」です。組織文化は仕事の進め方やものの考え方など、組織のあらゆる行動・判断に影響を与えます。

たとえば、納品物の品質とスピードのどちらをより優先するかは組織により異なります。このような組織の性格は、組織文化がベースとなって形成されるものでしょう。


また、組織のあり方は時代や市場に合わせて変化するものですが、伝統としてずっと守り続けていくことと、柔軟に変化させていくべきことを選ぶ基準になるのも組織文化です。組織文化は一度醸成されたらずっとそのままではなく、意識してつくったり変化させたりすることもできます。


組織の見える化に役立つシステムの詳しい情報はこちら


3段階の組織文化レベル

アメリカの心理学者であるエドガー・シャインは、3段階の組織文化レベルを提唱しています。レベル1(人工物)、レベル2(標榜された価値観や信条)、レベル3(無意識の認識や思考)の3段階で表され、レベル3が組織にもっとも深く根付いた組織文化の本質です。以下でレベル別に詳しく解説します。


レベル1.人工物(目に見えるもの)

レベル1の「人工物」は、組織文化が目に見える形で表現されたものです。たとえば、社名やブランドロゴ、規則や社訓などがレベル1に当たります。メーカーなら製品、サービス業なら提供サービスの内容も、組織文化が具現化された人工物の例です。社内イベントに組織文化が反映される場合もあるでしょう。


レベル2.標榜された価値観や信条

レベル2の「標榜された価値観や信条」は、経営理念や戦略などレベル1(人工物)の背景となる考え方です。組織の目標や中期経営計画などには組織の価値観・信条が反映されています。組織のメンバー同士の人間関係や雰囲気などもレベル2に含まれるものです。


レベル2はソフト面の要素のなかでも自覚しやすく、ときに議論の対象になるものであるといえるでしょう。


レベル3.無意識の認識や思考

レベル3の「無意識の認識や思考」が組織文化の本質です。組織内で当たり前とされるレベルまで根付いた価値観・考え方なので、普段は議論の対象にすらなりません。


このレベルまで変革したいのであれば、まず意識的に組織の思考回路を捉える必要があります。場合によっては、言語化されていない行動様式も洗い出さなければなりません。


組織文化は組織風土、社風とどのように違うのか

組織文化に似ている概念に「組織風土」と「社風」があります。この3つは明確な違いが定義されているわけではありませんが、以下では一般的な解釈としての違いを解説します。


組織文化と組織風土の違い

組織風土は、組織で自然に発生して定着した独自のルールや習慣です。時間が経って組織の構成員が変化しても組織風土は継承されていきます。


組織文化との違いは、組織文化は意図してつくったり変えていったりするものであるのに対し、組織文化は意図的につくるものではなく結果的にできるものである、という点です。


組織文化と社風の違い

社風は、企業そのものやそこで働く社員の雰囲気・印象です。組織文化や組織風土をベースに自然発生するもので、企業を人に例えると「人柄」に当たるものといえるでしょう。


組織文化、組織風土、社風は相互に関連しており、はっきりと定義が分けられるわけではありませんが、それぞれ異なるニュアンスを持っています。


組織文化はなぜ重要なのか

組織が成長し、目標を達成するためには組織文化が重要です。近年では目に見えるスキルだけでなく、生産性の観点から社員のモチベーションなどの目に見えない要素も重視されるようになっています。この目に見えない要素に組織文化がどのような影響を与えるのか、組織文化の重要性を解説します。


会社全体で価値観を共有するため

組織文化は、会社全体で価値観を共有するために重要な役割を果たします。組織内で価値観が共有されていないと、経営者の決定に対して「なぜそのように判断したのか」が社員に伝わらず、反感を買う原因となります。また、明確な判断基準が組織内で共有されていれば、意思決定のスピードも速くなるでしょう。


自分の仕事に対し「何のためにやるのか」がわかっていれば、社員のモチベーションアップにつながります。そのためにも組織文化を醸成し、共通の価値観を持っておくことが重要です。


自社にマッチした人材を確保するため

人材採用の場面でも、組織文化は重要です。採用活動を始める際は、組織にとってどのような人材が望ましいのかが明確になっていないと、採用のミスマッチが起こるリスクがあります。せっかく採用した人が早期退職してしまっては、金銭的・時間的なコストを浪費するだけになりかねません。


一方で、組織文化に共感している人材は定着率が高く、長期にわたってパフォーマンスを発揮してくれます。モチベーションの高さは周囲にも影響するため、既存社員も含めて組織全体のモチベーションを上げることもできるでしょう。


組織文化のもととなる構成要素

組織文化は組織が行う日々の判断・行動の積み重ねから形成されます。ここでは、具体的にどのような要素が組織文化に影響を与え、醸成されるのか解説します。


企業理念

企業理念とは、企業の存在意義や目的を言語化したものです。ただ利益のために事業をするというだけでなく、なぜその事業を行うのか、何を理想としているのかなど、企業理念にはその企業らしさがふんだんに盛り込まれています。


また、組織の価値観がわかりやすく現れるのが企業理念です。そのため、企業理念は社員が共感できる内容であることや、企業理念の背景にある考え方やストーリー、目指すべき目標を組織内に浸透させることが求められます。


経営者や幹部の発言・行動

経営者や取締役などの経営層をはじめとして、組織のリーダーの発言や行動の1つ1つは組織文化に影響します。


社員はリーダーのやり方を見て、この組織における正しい行動を判断していきます。そのためリーダーには、自分の行動は常に社員から見られており、組織文化に影響を与えているという意識を持つことが重要です。


たとえば、日々の経費精算1つとっても、リーダーがあいまいなルールで運用している場合、組織のメンバーにルールに隅々まで従う必要はないと思われかねません。


経営層をはじめとしたリーダーは、小さな発言や行動にも責任を持つべきといえます。


採用・人事評価

どのような人材を採用するか、どのような人材に高い評価を与えるかということも、組織文化に影響を与える要素です。


採用においては、新しく参画するメンバーが組織文化にマッチする人材であれば、組織全体の結束力が高まります。反対に、もし新しいメンバーが組織文化にマッチしていないと、早期退職につながってしまうでしょう。それだけでなく、既存社員のモチベーション低下や退職といった問題も起こりかねません。


また、評価制度は単に昇格・降格の基準になるだけのものではなく、「組織がどのような行動・特性の人材を求めるのか」を社員が判断する材料にもなります。評価制度の策定や変更の際は、社員からどのように見られるかという視点も踏まえることが重要です。


自社に合った組織文化を育てるメリット

自社に適した組織文化を醸成すると、以下のようなメリットがあります。

・社員のエンゲージメントが向上する

・採用力や社員の定着率が向上する

・意思決定スピードが向上する

・社員の自主性が向上する


それぞれ詳しく解説します。


社員のエンゲージメントが向上する

組織文化が醸成され、組織が目指す方向性が定まっていると、社員のエンゲージメント(働きがい)が向上します。


組織の働きがいを向上させるためには「価値観(バリュー)」と「リーダーシップ」が重要です。共感できる価値観が優れたリーダーシップによって組織内で浸透すると、組織の結束力が強まり、経営層への信頼感も高まります。


社員1人ひとりが何のために仕事をするのか、自分の仕事にどのような意義があるのかを認識できるため、自然と組織全体のモチベーションやエンゲージメントが高まるでしょう。


採用力や社員の定着率が向上する

組織文化の醸成は、採用力や社員の定着率向上にも影響します。求職者はホームページなどからその企業の理念や考え方を読み取って自分とマッチするか見極めるため、組織文化が正確に反映されたメッセージの発信は重要です。


事業だけでなく求人においても他社との差別化になり、より自社に共感してくれる人材が集まりやすくなります。そうすることで採用のミスマッチも起こりにくくなるでしょう。


また、社員が組織文化に共感していれば、人間関係が円滑で働きやすい環境になります。人間関係を理由とした退職が減少し、既存社員の定着率向上も期待できるでしょう。


意思決定スピードが向上する

組織文化が浸透していると、意思決定のスピードも向上します。組織内で価値観を共有できていれば、判断の背景を細かく説明しなくても意図が伝わるため、コミュニケーションコストが減り、迅速な意思決定が可能です。それだけでなく、判断軸が常に定まっているため一貫した経営判断にもつながります。


また、施策の内容だけでなく、施策の優先順位もスムーズに決定できるでしょう。やるべき施策が数多くある場合、すべてを同時に行うことはできません。組織文化が醸成されていれば、どの施策が組織にとってより重要なのかも、迅速に判断できます。


社員の自主性が向上する

組織文化の醸成は社員の自主性向上にもつながります。組織が目指す方向性をメンバーが理解できていれば、自分が今何をすべきか、また次に何をすべきかまで自ら考えることが可能です。自主的なメンバーが多い組織では細かく指示するコストが節約できるため、生産性が高まります。また、新しい柔軟な発想も生まれやすくなるでしょう。


社員の自主性をどこまで重視するかは組織により異なりますが、自主性を高めたいのであれば、自発的な行動が推奨される雰囲気づくりも重要です。ミスを恐れずに自主的に行動することは良いことだと社員が認識できていれば、行動を起こす際の心理的なハードルが下がります。


組織文化を醸成する際の注意点

組織文化醸成には多くのメリットがある一方、似た考えの人間が集まることで起こりうる以下のようなデメリットもあります。


・組織が排他的になる可能性がある

・考え方や行動がパターン化する


それぞれ詳しく解説します。


組織が排他的になる可能性がある

組織文化が醸成され価値観が共有されるようになると、考え方が似ている人間が組織内で多数派を占めるようになります。ただし、どの組織においてもすべてのメンバーが組織文化に完全に共感できるとは限りません。組織文化に反していても、重要な視点を含む意見を持つメンバーがいる可能性もあるでしょう。


同じ価値観の人間が増えることで同調圧力がかかり、反対意見を上げづらくなると、重要な視点を見落としてしまうリスクが生じます。また、自分の考えを打ち明けられずに肩身の狭い思いをし、退職を考えるメンバーも現れるかもしれません。組織が排他的な雰囲気になっていないか、注意する必要があります。


考え方や行動がパターン化する

組織文化により意思決定のスピードが上がるのはメリットですが、一方で考え方や行動がパターン化するリスクもあります。


時代や市場環境は常に変化していき、組織もその変化に合わせたアップデートが必要です。しかし、組織内に同じ考えの人間が多く集まると社会や市場の変化に鈍感になり、変化しづらくなる可能性があります。また、変化すること自体を嫌う社員が増えるリスクもあるでしょう。


何回も同じ判断軸での決定を繰り返していると思考パターンが膠着化し、次第に新しい視点での発想が生じづらくなる恐れもあります。


組織文化の4タイプ

組織文化は企業により千差万別ですが、大まかに4つのタイプに分かれます。これは、柔軟性重視か安定性重視かを縦軸、内的志向か外的志向かを横軸とする分類方法です。


「家族文化(クラン文化)」「階層文化(ヒエラルキー文化)」「創造型文化(アドホクラシー文化)」「市場指向文化(マーケット文化)」の4タイプがありますが、どのタイプが優れているかは一概にはいえません。自社の目指す方向性とマッチしているかが重要です。


内的志向

柔軟性重視

外的志向

家族文化(クラン文化)

創造型文化(アドホクラシー文化)

階層文化(ヒエラルキー文化)

市場指向文化(マーケット文化)

安定性重視


家族文化(クラン文化)

家族文化(クラン文化)は、柔軟性重視・内的志向の組織文化タイプです。家族経営の企業や中小企業に多く見られます。


社員同士が家族のように親密な関係を築き、組織の一体感や思いやりを重視することが特徴です。周囲への気遣いや気配り、調和が求められるため、仲間同士で協力して絆を深め、みんなで1つの物事を達成したい人には向いている環境といえます。


一方で、メンバー同士で切磋琢磨してスキルを磨いていきたい人や、個人の能力を発揮して次々と成果を出していくことにやりがいを感じる人には、物足りなく感じるかもしれません。


階層文化(ヒエラルキー文化)

階層文化(ヒエラルキー文化)は、安定性重視・内的志向の組織文化タイプです。官僚文化と呼ばれる場合もあり、公共機関に多く見られます。


指示命令系統が厳格でトップダウン式の管理が徹底され、規律や組織の秩序を重視することが特徴です。安定性が高いため組織が維持しやすく、ルールに基づいたものであれば根拠が明確で迅速な判断ができます。


一方で、保守的になりやすいため、リスクを取るようなチャレンジや個人の自由な発想は歓迎されづらい環境です。挑戦や変化を好む人は窮屈に感じやすいといえるでしょう。


創造型文化(アドホクラシー文化)

創造型文化(アドホクラシー文化)は、柔軟性重視・外的志向の組織文化タイプです。IT企業やベンチャー企業に多く見られます。


革新や個人の裁量を重視し、社員の自主性や自由なアイデアを重んじることが特徴です。新しい価値を創造したい人や、変化のスピードが速い環境を好む人に向いており、経営層の意思決定も迅速である傾向があります。


ただし、新しい事業には常にリスクがつきまとい、ルールや経営判断も早々に変化しがちです。個人の裁量が大きい分、何事も自分で考えて決める必要もあります。そのため、職場に安定性を求める人にはストレスの多い環境でしょう。


市場指向文化(マーケット文化)

市場指向文化(マーケット文化)は、安定性重視・外的志向の組織文化タイプです。小売業やサービス業に多く見られます。


市場における競争力や顧客満足度を重視し、成果主義であることが特徴です。経営判断や社員の評価には数字的な根拠を用いるため、客観的にわかりやすく優秀な人材が頭角を表します。成果を上げて能力を高めたい人にとっては、やりがいを感じられる環境でしょう。


ただし、メンバー同士の競争は激しくなりがちで、チームとしての力を高めるよりも個人の成果を上げる方に重点が置かれやすくなります。競争が好きでない人やチームワークで成果を出したい人は疲れてしまいやすい組織文化であるといえるでしょう。


現状の組織文化を分析する方法

組織文化を改革するなら、まずは自社の組織文化を正確に把握して現在地を探りましょう。現在の組織文化がどの程度社員に浸透しているのかを明確にするため、企業理念に対する社員の理解度を把握することも重要です。


組織文化やエンゲージメントの正確な把握のために、フレームワークやツールを利用してみましょう。


以下のホワイトペーパーもぜひ活用してみてください。

失敗しないタレントマネジメントの始め方ガイド


7Sモデル

7Sモデルとは、マッキンゼー・アンド・カンパニー社が提唱した7つの「S」で組織の現状を分析し、理想の状態とのギャップを洗い出すフレームワークです。7つの「S」は、ハード面の3Sとソフト面の4Sに分けられます。


【ハード面の3S】

・戦略(Strategy):組織の目標達成のための具体的な計画や取り組み

・組織(Structure):組織の指示命令系統や役割分担の特徴

・システム(System):会議体や評価制度などの仕組み・ルール


【ソフト面の4S】

・価値観(Shared Value):組織内で共有されているミッション・ビジョンなどの価値観

・スキル(Skill):組織の強みとなる販売力、技術力などの能力

・人材(Staff):人材の分配、育成や教育のプロセス

・スタイル(Style):経営に関するスタイルや風土(トップダウンかボトムアップかなど)


タックマンモデル

タックマンモデルは、心理学者のタックマンが提唱した組織の成長段階を分析できるモデルです。タックマンモデルによれば、組織には以下の5つのステージがあります。

形成期

組織が形成されたばかりの時期。コミュニケーションを取る際に不安や緊張が生じる。メンバー同士の交流を深める施策や、早期の目標設定が重要。

混乱期

意見のぶつかり合いが生じる時期。メンバー同士の軋轢が生じる場合もあり、表面的な交流は逆効果になる。リーダーが調整役となり、納得できるまで話し合うことが重要。

統一期

混乱期の衝突を乗り越えて、メンバーが同じ目標に向かって歩み始める時期。メンバーはお互いの違いを受け入れ、コミュニケーションが活発になる。組織全体が向かおうとしている方向性が正しいか確認することが重要。

機能期

メンバーの結束により高いパフォーマンスを発揮し、成功を積み上げる時期。この時期をできるだけ長く維持することが重要。リーダーには細かい指示よりも、メンバーのケアが求められる。

散会期

目標を達成したり期間が満了したりして解散する時期。メンバーはプロジェクトを通して得た経験やスキルを次の仕事に生かすことができる。リーダーによる適切なフィードバックも重要。


組織が現在どの成長段階にあるかによって、適切な施策は変わります。また、現在組織内で生じている衝突がすべて悪いとも限りません。問題を共に乗り越える経験を経て、より結束力を高めることが重要です。


組織文化の分析にフレームワークを使う場合の注意点

組織文化の分析にフレームワークを使用する際は、フレームワークに当てはめること自体が目的にならないよう注意しましょう。


アンケートや面談を行う場合、社員にも負担がかかります。通常業務を圧迫しないか、社員が疲弊していないかという点にも配慮が必要です。社員への負担が大きすぎると考えられる場合は、無理をしてまで型どおりに進める必要はありません。状況によっては、中断や方法の変更も検討しましょう。


「自社の組織文化を把握する」という目標を見失わず、別の手段も含めてもっとも適切な方法を選択することが重要です。


自社に合った組織文化をつくる方法

自社の現状と理想の状態を把握できたら、自社に合った組織文化の醸成を始めましょう。具体的な手順を解説します。


経営者が目指す方向性を示す

まずは企業のリーダーである経営者が、自社が目指すべき方向性を示しましょう。既存のビジョンがすでに存在する場合、自社の現状と理想を踏まえて見直しの必要がないか検討する必要があります。


社員に方向性を示す際には、経営者が目指すものをわかりやすく伝えましょう。何を目指しているのかだけでなく、その背景も含めて伝えることが重要です。経営者の思いが伝われば多くの社員が正しく企業理念を理解し、共感してもらいやすくなります。誰かの言葉ではなく自分の言葉で、根気よく丁寧に考えを伝えましょう。


行動を変化させる環境を整える

目指すべき方向性を示せたら、理想とする状態に向かって組織全体で進んでいけるよう環境を整備しましょう。


ルールや制度などのハード面を、目指すべき方向性に合わせて見直す必要があります。メンバーの主体性を高めたいのであれば、ワークショップなど自由な発言ができる場を設ける、1on1でメンバーのことを掘り下げるようにヒアリング項目を改善するなどの施策が考えられるでしょう。


社員の行動規範を評価する「バリュー評価」を取り入れるのも有効です。大きく組織文化を変革する場合、組織改変が必要になる場合もあるでしょう。


組織文化を浸透・アップデートさせる

組織文化改革のための施策を打ったら、組織文化がきちんと浸透しているか定期的に確認しましょう。


新しい組織文化は簡単に浸透するものではないため、このステップには根気が必要です。メンバーとの面談やアンケートなどを通して現状を確認し、辛抱強く取り組みましょう。組織文化を体現できている人の評価を上げるなど、評価制度を活用すると社員が方向性を理解しやすくなります。


組織は、時代や市場の変化に応じてアップデートすることが必要です。組織が停滞しないよう、組織文化も進化させていきましょう。変化を過度に恐れない組織文化を維持することが重要です。


企業の組織文化例5選

組織文化は企業によってさまざまで、自社の組織文化と事業が結びついていれば他社との差別化が可能です。ここでは、実際の企業の組織文化の事例を紹介します。


株式会社ニトリホールディングス

株式会社ニトリホールディングスは、大型家具やインテリア用品をリーズナブルな価格で提供する「ニトリ」をはじめとして、住まいの楽しさや豊かさを支える商品を展開する会社です。


株式会社ニトリホールディングスは、「住まいの豊さを世界の人々に提供する」というロマンを原点に、2032年に3,000店舗、売上高3兆円を達成することを目標とする中長期経営計画(30年ビジョン)を掲げています。


この目標を達成するための人事施策として、ニトリでは必要なスキルを持つ人材を外部から連れてくるのではなく、ニトリの理念を理解している人材を育成することを重視しています。株式会社ニトリホールディングスは、この方法で35期連続増収増益を達成しました。組織文化を重視することで会社の軸がぶれず、発展につながっている例であるといえます。


株式会社ニチレイ

株式会社ニチレイは、加工食品を中心に水産・畜産・低温物流・不動産・バイオサイエンスなど幅広い事業を展開しています。36のグループ会社を有する同社の共通する理念が「人を大事にする」ことです。しかし、以前は単なる人事管理から脱却できていない面もある点が課題でした。


そこで同社では人材を理解するためのシステムを導入し、社内公募や人材データの活用による女性活躍推進と次世代人材の育成、TPI適性検査など、ツールの機能も活用して人事施策に取り組みました。


今後は人事異動や戦略を検討する際、勘と経験に頼っていた今までのやり方を進化させ、データを活用して人材を発掘する方針です。「健康経営銘柄2023」や「安全衛生優良企業」にも認定されている同社は、人を大事にする組織文化を徹底し発展させていった企業の例といえます。


横浜銀行(株式会社コンコルディア・フィナンシャルグループ)

株式会社コンコルディア・フィナンシャルグループは、神奈川県横浜市を中心に展開する都市銀行である横浜銀行を傘下に持つグループです。


同社は「従業員が誇りを持って働ける魅力ある会社であり続ける」を経営理念として掲げ、そのなかで人財に関する基本ポリシーである「グループ人財ポリシー」を掲げています。


近年は金融機関でもビジネスモデルの変化や働き方の多様化が求められており、横浜銀行でも働きがいを向上させる施策に取り組んできました。この「はまぎん総活躍プロジェクト」では、「グングン編」「ワクワク編」「イキイキ編」とネーミングされた施策を通して、人財の育成や年齢にとらわれない活躍、柔軟な働き方を支援しています。金融機関には堅実なイメージもありますが、時代や市場に合わせて組織文化を改革している例といえます。


株式会社大西

株式会社大西は、大阪府を本拠地として衣料品・雑貨の卸売、店舗什器・備品の販売といった流通事業をグループ展開する会社です。2021年には創業90周年を迎えており、100年目を見据えて経営理念と人事制度の変革をはじめとする組織変革に取り組んでいます。


このプロジェクトが目指しているのは、「ボトムアップで自走する組織へ」をテーマにした組織文化の抜本的な改革です。重要テーマの1つである「主体的な自己キャリア開発」では、人材管理ツールのアンケート機能も活用して施策を推進しました。まもなく創業100周年という老舗の企業が、未来を見据えて積極的に組織文化の変革を行っている例といえます。


まとめ

組織文化は組織の行動の積み重ねで醸成されるものである一方、意識して変革することも可能です。自社の組織文化を改革するには、まず現在地を正しく把握し、社員の理解を得ながら浸透させていきましょう。


タレントパレットは、経験と勘ではなくデータを基にした科学的な人事を支援するタレントマネジメントシステムです。人事に関する全てのデータを一元化することで、組織の力を最大化し、高度な意思決定や人事施策を実現します。タレントマネジメントシステムを活用し、自社に適した組織文化を醸成しましょう。


組織の見える化に役立つシステムの詳しい情報はこちら

失敗しないタレントマネジメントの始め方ガイド