組織風土の改革は企業の業績を上昇させるための方法で、近年は情勢の変化に伴い、企業では組織風土の改革の重要性が高まっているようです。本記事では組織風土の改革の担当者や責任者に向けて、取り組むメリットやデメリット、注意点などを解説します。組織風土の意味や似た言葉との違いなども解説しているため、組織風土の基礎知識を学びたい人は参考にしてください。
組織風土とは?
組織風土の改革を始める前に、詳しい意味や例を確認しておくことが大切です。本章では、組織風土の意味と例を解説します。
組織風土の意味
組織風土とは、組織目標の達成に向けて、全社員が共通認識を持つために必要な考え方や価値観、ルールなどのことです。組織風土は社員1人ひとりの行動や思考、感情に影響を及ぼします。
全社員が共通認識を持って組織目標の達成に取り組むためには、組織風土の改革が欠かせません。よい組織風土を築ければ生産性の向上はもちろん、チームワークや社員の定着率も高まるでしょう。
組織風土の例
成果主義を重視するある企業では、目標の達成度をそのまま評価する制度を導入しました。しかし、評価が下がるのを恐れた社員は達成しやすい目標ばかり立てたため、挑戦しづらい組織風土を築き上げてしまいました。目標の到達度を指標にした評価制度は失敗に終わり、現在は廃止されています。
一方で、顧客第一を重視するある企業は、数値目標、顧客満足度のアンケート結果を反映できる評価制度を導入しました。数値目標の達成だけでなく、顧客へのアフターサポートにも力を入れており、顧客からきめ細やかな対応が高く評価されています。
このように、組織風土は社員のモチベーションや顧客満足度の高さなど、業績につながる影響を与えるため、明確な目的を持って組織風土を築くことが重要です。
組織風土と似たワード
組織風土には、企業風土や組織文化などの似た言葉があります。それぞれの違いを把握することで組織風土への理解を深めましょう。
企業風土との違い
企業風土とは、企業全体が周知している価値観やルールのことです。価値観やルールを浸透させる範囲が企業全体にわたる場合は、企業風土といいます。組織風土は、部署やチームなどの組織に浸透させる価値観やルールのことです。価値観やルールを周知させる範囲の広さによって、企業風土と組織風土を使い分けることができます。
組織文化との違い
組織文化とは、組織内で継承されている価値観やルールのことです。組織文化は、時代や社員の価値観の変化に合わせて柔軟に変わる傾向があります。組織風土は組織文化と比べて組織に深く根付いているため、時代や社員の価値観が変わっても変化しづらいでしょう。組織文化は変化しやすく、組織風土は企業の設立当初から変わらないことが大きな違いといえます。
社風との違い
社風とは、社員が実際に感じている企業の雰囲気や考え方のことです。社風は、企業にどのような組織風土があるのかによって決まります。あくまでも社員1人ひとりが感じることであるため、社員によって認識のばらつきが生まれるケースも少なくありません。組織風土は組織全体で共有されており、全社員が共通認識を持っています。
組織風土を構成する要素
組織風土は、ソフト・ハード・メンタルの3つの要素で構成されていることが特徴です。それぞれの要素について解説します。
組織風土のソフト要素
組織風土におけるソフト要素とは、組織として守るべき価値観やルールが明確に存在するものの、目には見えない要素のことです。社員1人ひとりの考え方や価値観、行動によって形成されています。組織風土のソフト要素の例は以下のとおりです。
・コミュニケーション
・モチベーション
・人間関係
・社員間の信頼関係
・エンゲージメント
・チームワーク
・責任の所在
・組織コミットメント
・組織内のローカルルール
・経営スタイル
たとえば、コミュニケーションを例に挙げると、気軽な相談ができる雰囲気のある企業とそうでない企業があるのは、双方の組織風土が異なるためといえます。
組織風土のハード要素
組織風土におけるハード要素とは、組織内で定められている制度やルールなどの目に見える要素のことです。ハード要素は視覚化されているため、組織風土を改革する際にすり合わせがしやすい傾向があります。ハード要素の主な例は以下のとおりです。
・社訓
・経営理念
・ビジョン
・組織構造
・事業内容
・コンプライアンス
・就業規則
・行動指針
・人事制度
・評価制度
・業務プロセス
組織風土のハード要素は可視化しやすいものの、浸透させるまでに時間がかかります。計画を立てる際は中長期を目標にすることが重要です。
組織風土のメンタル要素
組織風土におけるメンタル要素は、可視化できないソフト要素のなかでも、社員の心理面や精神状態に影響を及ぼすといわれています。メンタル要素は社員の感情を揺さぶる可能性が多いため、コントロールするのは難しいでしょう。メンタル要素の主な例は以下のとおりです。
・誰もが自由に発言できる雰囲気か
・積極的に新しいことをチャレンジできる雰囲気か
・上司が部下に対して高圧的な態度を取っていないか
・円滑なコミュニケーションが取れているか
・現場から拾い上げた意見が経営陣に届いているか
メンタル要素の洗い出しを行うには、社員1人ひとりの意見をヒアリングする必要があります。
組織風土の改革が求められる背景
企業が組織風土の改革を求められるのは、終身雇用制度の崩壊や働き方改革などのさまざまな背景があるためです。以下で詳しく解説します。
VUCA時代に対応するため
VUCAとは、先の見通しを立てるのが難しい時代を意味する言葉です。以下の4つの言葉の頭文字を取ったことから、VUCAと呼ばれています。
・Volatility(変動性)
・Uncertainty(不確実性)
・Complexity(複雑性)
・Ambiguity(曖昧性)
VUCA時代に遅れを取らずに企業が柔軟に対応するためには、新しい挑戦を行い続けて進化し、多様な価値観を受け入れられる組織風土を築くことが重要です。
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終身雇用が崩れたため
かつて社員は基本定年まで働き続けられるため、転職を考える人は少ない傾向にありました。しかし、時代や社員の価値観の変化によって終身雇用制度を廃止する企業が増え、社員と企業の関係性が変化しつつあります。企業が人材を確保するためには、社員が「働き続けたい」と思える組織風土を築くことが欠かせません。
働き方改革・テレワークの普及
社会情勢の変化に伴い、働き方改革やテレワークの導入が行われました。社員の働き方に対する価値観が多様化したことも、組織風土の改革が求められる背景の1つです。組織風土の改革は、情勢の変化に合わせて柔軟に対応するために重要と位置付けられています。組織風土を改革するには、現場の社員にも重要性を周知しておくことも必要です。
ダイバーシティ・多様性の重視
ダイバーシティの実現や少子高齢化なども、組織風土の改革の重要性が増している背景の1つです。オフィス勤務だけでなく、テレワークやフリーランスなど働き方が多様化しており、企業は情勢の変化に応じて幅広い年代や性別、習慣、国籍、価値観を持つ人材の受け入れが求められています。多様な人材を受け入れるためには組織風土の変革が欠かせません。
よい組織風土とは
よい組織風土が形成されている企業では、全社員が組織全体の目標を共有し、実現に向けて自発的に行動できる環境が整備されています。社員はモチベーションや仕事への意欲が高くなり、誰もが自由に発言できる雰囲気のなかで働くことができるでしょう。また、円滑なコミュニケーションが取れるため、人間関係によるストレスが少なく、過度な精神的負担が生じません。
よい組織風土によるメリット
企業がよい組織風土を築くことで、エンゲージメントやモチベーションの向上、良好な人間関係の形成などのメリットを得られます。
エンゲージメント・モチベーションの向上
よい組織風土は社員の仕事へのモチベーションを高めるだけでなく、生産性の向上につながります。生産性が向上すれば売上や利益率の向上も見込めるため、業績アップにも役立つでしょう。また、職場環境の改善によって社員が働きやすい環境を提供することで、社員のエンゲージメントの向上、並びに離職率の低下も期待できます。
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心理的安全性の担保
よい組織風土は、社員の心理的安全性を担保できます。心理的安全性とは、自分の言動が周囲の人に受け止めてもらえる安心感を持てる環境のことです。心理的安全性が担保された企業では、社員が自由に発言できる雰囲気があります。社員の意見交換が活発になることで情報伝達が円滑になり、チームワークの向上も図れるでしょう。
人間関係がよくなる
よい組織風土が形成されれば、社員同士が声をかけ合って助け合える職場環境をつくれるため、良好な人間関係を構築できるようになります。人間関係が良好であればコミュニケーションが活性化され、情報伝達によるミスを減らすことも可能です。トラブルが発生しても報連相(報告・連絡・相談)をスムーズに行うことで、早期解決できます。
生産性・パフォーマンスの上昇
よい組織風土になると、社員1人ひとりのパフォーマンスを上げることができるため、企業全体の生産性の向上につながります。組織風土の変革によって社員が積極的に業務を行うようになれば、チームや部署のパフォーマンスを上昇するでしょう。結果的に、企業全体の成長につながり業績アップも期待できます。
ビジョン・方向性を社員に共有できる
組織風土の変革は、現場の社員と経営陣の価値観を統一するうえで重要です。特に、ハード要素にあたる経営理念やビジョンなどを全社員に周知させることで、企業が掲げる目標を達成するための行動を促せます。目指すべきビジョンや方向性が明確になるため、社員は主体的かつ積極的に行動できるようになるでしょう。
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社員が企業に誇りを持てる
よい組織風土が浸透すれば、社員にとって働きやすい職場環境を整備できるため、自社に対する満足度が高まります。さらに、自社のことを好きになるだけでなく、やりがいを持って業務に取り組むことで、社員の定着率の向上やモチベーションアップにつながるでしょう。社員満足度の向上によって自社の評判が高まれば、社内外の優秀な人材を確保しやすくなります。
組織風土を改革するポイント
自社の組織風土を改革する際は組織体制や戦略を見直したり、現場の社員の意見を取り入れたりすることが大切です。
組織体制・戦略を見直す
組織風土を改革する際は、組織体制や戦略などのハード要素から見直す必要があります。組織風土の改革が必要なのは、既存の体制や戦略がうまく機能していないことが主な原因です。機能不全を起こしている構造を洗い出すことから始めれば、組織風土の改革に取り組みやすくなるうえに成果を得やすくなります。
リーダーシップの発揮方法を見直す
よい組織風土を形成するためには、管理職の意識から変えることが重要です。近年、リーダーの在り方が変化しつつあり、成果だけを追求するのではなく、社内での人間関係を円滑にできるリーダーが求められています。企業が求めるリーダー像を明確にし、どのようなリーダーシップを発揮する人材が必要なのかを検討しましょう。
業務の進め方・プロセスを見直す
組織風土を改革する際は、業務プロセスを見直し、どのように業務を進めるのが適切であるのかを検討することも必要です。業務の進め方やプロセスは企業や組織によって異なります。効率的に業務を進められるようになれば、業務の効率化はもちろん生産性の向上も実現できるでしょう。例として、ペーパーレス化の推進が挙げられます。
社員の意見を取り入れる
組織風土の改革においては、現場で働く社員の意見が欠かせません。現場の社員から意見を拾い上げることで、組織の課題を発見しやすくなります。現場の社員を経営に反映できれば、課題の発見から解決までのプロセスの短縮も可能です。ただし、全社員の意見をすべて取り入れるのは難しいため、解決したい課題に絞って社員の意見をまとめるとよいでしょう。
組織風土を改革する際の注意点
組織風土の改革には時間がかかるだけでなく、トラブルを引き起こすリスクが高まる恐れがあるため注意が必要です。
時間がかかることを理解する
既存の組織風土は長い時間をかけてつくられてきたため、一度根付いた組織風土を変えるには時間がかかります。短期間で組織風土の変革を起こそうと取り組めば失敗する恐れがあり、期待していた効果は得られないかもしれません。組織風土の改革には時間がかかることを理解したうえで、長期的な計画を立てて取り組みましょう。
社内トラブルを引き起こすリスク
前述のとおり、組織風土は長い年月によって培われて社内に根付いているため、体制を大きく変えると社内でトラブルが起こる可能性があります。社員のなかには組織風土の改革に異を唱える人も出てくるでしょう。賛成派と反対派で意見が大きく割れてしまうと、社内の人間関係が悪化しかねません。組織風土を改革する際は社内周知と説明を丁寧に行い、社員から理解を得ておきましょう。
失敗してしまうリスク
組織風土の改革への理解が得られないまま取り組めば、失敗する可能性があります。想定していた組織風土を形成できず、意図せず悪い組織風土を浸透させてしまうかもしれません。組織風土の改革を成功させるためには、自社の現状と課題をしっかり把握してから取り組みを進めましょう。また、一気に変えようとせずに、様子を見ながら継続的に取り組むことが重要です。
まとめ
組織風土は企業内で共通の認識を持つ価値観やルールなどを意味します。組織風土の改革は、社員のモチベーションやエンゲージメントの向上に加えて、企業全体の生産性の向上につなげることが可能です。ただし、失敗や社内トラブルを引き起こすリスクもあるため、社員の理解を得てから実施することをおすすめします。
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