オンボーディングの概要について
まずはオンボーディングの基本について、以下で解説します。
オンボーディングとは新入社員に向けた教育方法のこと
オンボーディングとは、新入社員に対して実施する教育方法および専用のプログラムのことを指します。新入社員への教育は短期間で終了し、基本的な業務について教えるだけに留まるのが一般的です。ある程度の基礎を教えた段階で、実践の業務新入社員を投入する企業も多いでしょう。
一方、オンボーディングでは新入社員がそれぞれの部署に配属された後も、育成プログラムを継続して会社の業務を教えます。長期的な育成プランとなるため、新人の教育担当者だけでなく、さまざまな社員がオンボーディングで新入社員を支援します。会社が一体となって新入社員の育成を行うのが、オンボーディングの特徴です。
オンボーディングは中途採用の社員にも適用される
オンボーディングは新卒社員だけでなく、中途採用者にも適用されます。中途社員向けの教育プランを別途用意し、自社に馴染めるように長期的な指導を実施します。「中途社員=指導の必要はない」という固定概念をなくし、一からオンボーディングによる教育を実践することが求められるでしょう。
また、中途社員はかつて所属していた会社のやり方や習慣を意図せず仕事に取り入れてしまう可能性があるため、オンボーディングによる指導が有効です。
オンボーディングはカスタマーサクセスにも活用される
オンボーディングは、顧客の成功体験につなげるためのカスタマーサクセスにも応用されます。自社商品・サービスの特徴を理解してもらうために、さまざまな方法で指導や解説をして顧客定着を狙うのもオンボーディングの役割です。
オンボーディングと従来の育成方法との違い
オンボーディングと従来の育成方法には、以下の違いがあります。
オンボーディングと従来の新入社員研修との違いについて
従来の新入社員向け研修は、1〜3か月程度で終了するのが通常です。そのため自社で働くための知識や技術を十分に教えきれないケースがあります。その点、オンボーディングは継続的なサポートを前提とするため、社員が自社に馴染むまでしっかりとサポートができます。
長期的な支援が実施されるため、配置先の部署・チームに合わせて教育プログラムを組むことも可能です。また、社員ごとの特性や長所・短所を踏まえた上で教育内容を変更する柔軟な対応もできます。
オンボーディングとOJTの違いについて
OJTとは、仕事現場で実際に業務に触れてもらいながら社員の訓練をする手法です。早くから業務に携わってもらうことで、仕事をスムーズに覚えてもらえる可能性がある一方で、失敗や叱られることが社員のプレッシャーとなるケースも多いのが欠点となっています。
オンボーディングでは、いきなり実務を体験させることはせずに社員との交流やミーティングなどからじっくりと馴染んでもらうのが特徴です。職場の人間関係を構築してから業務を開始できるため、社員にとって働きやすい・学びやすい環境を構築できます。
オンボーディングへの注目が集まっている背景について
近年、多くの企業がオンボーディングに注目しています。以下では、オンボーディングの注目度が高まっている背景について解説します。
人手不足を回避する手段として注目されている
オンボーディングは採用した人材に長期的な指導をすることで、労働意欲の向上を促せるでしょう。高齢化社会などの影響によって労働人口の減少が続くなか、人手不足を回避するための手段として注目されています。
オンボーディングによって社員が働きやすい環境を作ることは、離職率を改善する効果にも期待できます。
オンボーディングによって得られるメリット
オンボーディングを導入することには、さまざまなメリットがあります。
早期退職のリスクを下げられる
オンボーディングは社員のサポートを長期的に行う施策であるため、早期退職のリスクを低下させて定着率を向上させられるのがメリットです。時間と費用をかけて採用した人材が早期に退職してしまうと、コスト面で会社に大きなダメージがあります。
求人広告費、面接時間、採用を決めるための時間など、さまざまなコストを削減できるのがオンボーディングを導入する理由になるでしょう。
新入社員を早い段階で戦力にできる
オンボーディングは、新入社員が会社の業務や風土に馴染むまで徹底的にサポートする教育方法です。そのため戦力に数えられるまで成長を見守ることができ、実際にどの程度の能力があるのかを正確に把握できます。
仕事を1人で任せられる段階になるまで教育ができるため、早くから成果を出すことにも期待が可能です。
社員エンゲージメントの向上につながる
オンボーディングの実施は、新入社員のエンゲージメントを高められる点でもメリットがあります。社内におけるコミュニケーションや積極的な育成支援を行うことで、会社への帰属意識を向上させられるでしょう。
「この会社で働きたい・成長したい」という認識を持ってもらえれば、将来的な活躍にも期待できます。
オンボーディングを導入するための方法
オンボーディングを実際に導入する際には、以下の方法が参考になります。
オンボーディングの目的を決める
オンボーディングを導入するには、まず教育の目的を明確にします。「〇〇の期間で〇〇ができるようにする」「〇〇のような社員に成長させる」など、具体的な目的をオンボーディングの導入前に決めることがポイントです。
決定した教育目的は社内全体で共有し、社員全員でオンボーディングの支援が行えるように備えます。
オンボーディングの実施におけるプランを構築する
オンボーディングを実施する上で、基本となる教育プランを考案します。期間ごとに指導する内容や目標を設定するケースや、メインとなる施策を決定した上で教育内容を詰めるケースなど、教育プランの構築はさまざまな方法があります。
オンボーディングのプランは実際の成果と照らし合わせて、改善を進めていく必要もあります。オンボーディングを受けた新入社員本人からのフィードバックも参考にし、見直すべきポイントを把握するのもおすすめです。
新入社員からアプローチができる環境を整備する
オンボーディングでは既存社員から指導をするだけでなく、新入社員側から質問や相談が気軽に行える環境を作ります。例えば専用の相談窓口を設置したり、定期的なミーティングを開催して話し合える機会を設けたりするのがポイントです。
一方的な教育は新入社員に合わない方法を押し付ける形になる可能性があるため、相互コミュニケーションを意識するのが重要となります。
オンボーディングの実施におけるポイント・注意点
オンボーディングを実施する際には、以下のポイントと注意点を事前に把握しておくことで成功しやすくなります。
メンター制度やスモールステップ法などの手法を取り入れる
オンボーディングを実施する際には、「メンター制度」や「スモールステップ法」といった相性の良いシステムを同時に活用するのがポイントです。メンター制度とは、年齢や階級が近い人材を教育担当者として設置する方法です。スモールステップ法は、細かい目標を設定しつつ大きな目標達成を目指す手法を意味します。
いずれもオンボーディングの実施時に役立つ手法となるため、積極的な導入が検討されるでしょう。
新入社員が利用できる情報を提供する
会社の基本的な情報や業務内容を繰り返し確認できるように、成長に必要な情報をまとめたデータベースを提供するのもポイントです。基礎的なことは改めて聞き直しづらいため、社員が自主的に把握し直せる環境を作って成長を促すことがオンボーディングの成功につながります。
受け入れ先の部署・チームで目線合わせを行い、一丸となって実施する
オンボーディングを実施する際には、社員を受け入れる部署やチームメンバーが同じ視点を持ち、一丸となって教育ができるように備えるのがポイントです。従来のように研修の担当者だけが教育を行うのではなく、全社員が自主的に社員の指導に関わっていくのがオンボーディングの特徴です。
当事者意識を持ってオンボーディングが行えるようになるまで、部署やチームの認識を引き上げることが求められます。
オンボーディングに特化した人材を育成する
オンボーディングを社内に定着させるために、制度に特化した人材の育成も考えられます。オンボーディングの責任者となる人材を設置し、「分からないことはその社員に聞けば良い」という環境を構築することでスムーズな教育が可能となるでしょう。
一方で、オンボーディングの責任者だけに教育を任せないように、社内全体で指導するという基本は守るのが鉄則です。
まとめ
新入社員や中途社員を教育する際には、オンボーディングによる長期的な指導も検討されます。社内の雰囲気や仕事のやり方に馴染んでもらい、必要な知識・技術を身につけることを優先させる教育方法は、社員にも受け入れる部署やチームにもメリットがあります。
オンボーディングによる教育を検討する際には、「タレントパレット」の「科学的 人事戦略e-BOOK」の活用がおすすめです。人材育成に必要とされるスキルや手法の解説に加えて、研修の計画を立てるポイントなどを説明しています。
この機会に「科学的 人事戦略e-BOOK」をチェックして、オンボーディングに必要な環境を整備してみてはいかがでしょうか。
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