【タイプ別具体例あり】OJTの5つのステップ|失敗する理由と対策も解説


【タイプ別具体例あり】OJTの5つのステップ|失敗する理由と対策も解説

OJTは多くの企業で採用される人材開発手法です。しかし、OJTを上手く運用できていない企業は少なくありません。OJTを活用するためには、他の教育方法との違いや適切な使い分けへの理解が不可欠です。本記事では、OJTの基本的な内容や実践方法、育成対象者の個性に合わせた育成計画の具体例などを紹介します。ぜひ参考にしてください。


人材育成に必要なスキル分析とは?最適な育成方法でパフォーマンスを最大に


OJTの基本的な内容

OJT(On The Job Training)は、実際の業務現場において行われるマンツーマン形式の人材開発手法です。OJTの育成対象者は主に若手社員や新人で、一般的には、対象者の身近な存在である先輩社員が指導者役を務めます。


OJTに向いている業務・向いていない業務

OJTに向いている業務・向いていない業務を解説します。効果的な人材開発につなげるべく範囲を絞ってOJTを実行しましょう。


向いている業務

マニュアル化が難しく、実践を通じてスキルを高めるタイプの業務は、OJTに向いています。たとえば、営業職や技術職などは、OJTを通じて先輩のやり方を模倣させつつ、実践的なスキルを学ばせましょう。


向いていない業務

経理やIT関連などのように、専門知識がなければ難しい業務はOJTに不向きです。ただし、一定レベルの知識を身につけた社員に対しては、OJTをアウトプットの場として活用するとよいでしょう。また、救命救助のような、指導をしている余裕がない業務もOJTには適しません。


OJTと他の教育方法の違い

メンター制度、Off-JT、OJDなどの教育方法も活用されています。OJTと他の教育方法の違いを見ていきましょう。


メンター制度との区別

OJTは、実践的なスキルの習得を目指す教育方法です。一方、メンター制度は、育成対象者の心理面のサポートを重視する教育方法といえます。先輩社員が育成対象者をサポートする点は、メンター制度もOJTも同じです。ただし、メンター制度におけるサポート範囲は、キャリアや人間関係など業務に関する悩み全般に及びます。


Off-JTとの区別

OJTは、実際の業務現場で行われる教育方法です。一方、Off-JT(Off-the-Job Training)は、通常の業務から離れた環境で行われます。代表的なものでは、外部セミナーや社内研修、eラーニング、通信教育などがOff-JTに含まれます。


OJDとの区別

OJTでは、業務遂行にあたり必要なスキルを、主にマンツーマンで習得させます。OJD(On the Job Development)も、基本的にマンツーマンで実施される点はOJTと同じです。ただし、OJDでは、マネジメント関連のスキル習得を目的としています。また、OJTの指導者は主に先輩社員ですが、OJDの場合は上司が指導者となる傾向です。


OJTの採用が進む理由

OJTを採用すると、社員を効率よく育成できるうえに、流出を抑制する効果も期待できるでしょう。OJTの採用が進む理由を解説します。


社員や組織の生産性向上

OJTの採用が進む理由は、効果的に社員や組織の生産性を向上させるためです。OJTを実施すると、若手社員や新人は、業務現場で通用するスキルを速やかに身につけられます。


Off-JTとして座学のみを終えた段階では、実践が伴わない状態であるため、配属されても戦力として認められません。組織の生産性に貢献する人材を早急に育成するためには、OJTが必要です。


社員の自信とモチベーションの向上

社員の自信とモチベーションの向上にも、OJTは貢献します。先輩社員にマンツーマンで仕事を教えてもらえると、仕事へ真摯に取り組む気持ちになり自信もつくでしょう。自信つくことでモチベーションが高まり、スキルの習得や業務に対して高いパフォーマンスを発揮してくれるでしょう。


社員の流出抑制

効果的なOJTは、社員の流出抑制に対しても効果を発揮します。仕事ができない状態で孤立せずに済めば、若手社員や新人は職場環境に対する不安を感じにくくなるでしょう。結果として、自信やモチベーションの高まりから仕事に対するやりがいが生まれ、帰属意識の高まりが期待できます。


OJTの5つのステップ

OJTの5つのステップを解説します。ステップを理解したうえで取り組むと、より効果的な人材育成計画を立てられるでしょう。


1.目標と計画の立案

まず、組織が求める理想の人材像を明確に定義したうえで、具体的な育成目標を設定します。次に、目標達成に向けた具体的な育成計画を策定しましょう。


2.指導者の選定

OJTの指導者として、高いコミュニケーションスキルを持ち、育成対象者と世代が近い人材を選びましょう。また、強い責任感や柔軟性も、指導者に欠かせない資質といえます。


3.指導者の研修

OJTを効果的に実施するためには、事前に指導者を対象とした研修が不可欠です。選定した指導者が、十分な育成スキルを有しているとは限りません。適切な指導をしてもらうためには、研修で育成スキルを高めておく必要があります。


4.OJTの実践

OJTを実践し、現場で通じるスキルを向上させましょう。具体的な実践のやり方は後述します。


5.評価と改善

OJTの目標を達成したら、指導者と育成対象者の双方に取り組みを評価させます。課題を次回のOJTに反映させて継続的に改善を図ると、次第に教育の質が高まるでしょう。


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OJTを現場で実践する流れ

OJTを現場で実践する流れは、以下の通りです。


・Show:指導者がやってみせる

・Tell:やって見せたことを説明する

・Do:同じように育成対象者にさせてみる

・Check:育成対象者の取り組みに対してフィードバックする


この「Show・Tell・Do・Check」のサイクルを繰り返すと、育成対象者は段階的にスキルを習得していけます。指導者はただやり方を見せるだけではなく、育成担当者に正しくスキルが身についているか確認しなければいけません。


【具体例】対象者の個性に合わせたOJTの方針

育成対象者にはそれぞれ個性があるため、画一的な方法では成果が出ないかもしれません。対象者の個性に合わせたOJTの方針を解説します。


納得を重視する対象者の場合

「理解したうえで業務に取り組みたい人」や「意義を見出せない作業にモチベーションを保てない人」にOJTを実施する場合は、コミュニケーションを重視してください。対話を通じて、育成対象者の考えや価値観を理解し、信頼関係を構築しましょう。OJTの意義や目的を丁寧に説明して育成対象者の理解と共感を得られると、効果的な指導となる可能性があります。


体験を重視する対象者の場合

「まずは実践してみたい」「理論より先に体験したい」と考える人にOJTを実施する場合は、座学よりも実践的なアプローチを優先するとよいでしょう。体験を重視する人は、結果を振り返ることで、より効果的に知識やスキルを習得できる傾向が見られるためです。


ただし、失敗を避けたい気持ちから実践を恐れる人もいるでしょう。指導者や周囲のメンバーには、育成対象者をフォローする配慮が求められます。


認められたい気持ちが強い対象者の場合

認められたい気持ちが強い対象者にOJTを実施する場合は、具体的な成果や努力を適切に評価し、褒めることで自信をつけさせましょう。ただし、過度な称賛が育成対象者の成長を阻む場合もあるため、指導者や周囲はバランスの取れた対応を心がけてください。少し高めの目標を明確に設定すると、成長への意欲を引き出しやすくなります。


OJTにより企業が得られるメリット

OJTにより企業が得られるメリットを解説します。OJTは育成対象者にだけではなく、指導者や組織にもメリットをもたらす教育方法です。


スキル習得が加速する

OJTを採用すると、実践を通じたアウトプットの機会を高頻度で得られるため、育成対象者にスキルが定着しやすくなります。また、マンツーマンで実施するため、育成対象者個人のレベルやタイプ、成長スピードを考慮した、きめ細やかな育成が可能です。


社内の風通しがよくなる

OJTを通じて指導者と育成対象者間でのコミュニケーションが活発化すると、信頼関係の構築が見込めます。組織全体でOJTに取り組むようになれば、チームや部門の垣根を超えて助け合うようになるでしょう。結果として、組織全体が働きやすく成果を挙げやすい環境となります。


指導する側も成長できる

指導者側が成長できる点も、OJTのメリットです。指導するにあたり、指導者は業務を振り返り、自身の理解の度合いを確認します。分からない部分を学び直すと、専門性を深められるでしょう。また、指導を通じて、対人関係のスキルも向上させられると考えられます。


育成コストを節約できる

OJTを実施すると、外部研修を実施する場合と比較して、育成コストを節約できる可能性があります。OJTは自社で実施するため、外部講師などに支払う報酬が発生しません。また、コストがかからない教育方法であれば、経営状態の影響を受けにくく、継続的に取り組みやすくなります。


OJTに取り組む企業の課題

OJTのみでは体系的な知識習得が難しく、育成中は一時的に企業の生産性が低下する可能性があります。ここでは、OJTの主な課題を解説します。


体系的な知識習得の機会損失

OJTは実践的なスキル習得に優れていますが、体系的な知識の習得には不向きです。広い視野を持った人材を育成するためには、OJTと組み合わせてOff-JTを別途計画する必要があります。2つの教育方法をバランスよく実践すると、相乗効果により大きな成果を得られるでしょう。


一時的な生産性の低下

若手社員や新人を指導しつつ通常業務を遂行する際、指導者の生産性が一時的に低下する可能性があります。指導者に負担がかかりすぎないように、周囲は適時フォローしなくてはいけません。また、マネジメントする側は、業務の分担や優先順位を必要に応じて見直してください。


OJTに失敗する企業が多い理由と対策

OJTに失敗する企業が多い理由と対策を解説します。失敗の理由を知り、自社の取り組みに反映させましょう。


現場に丸投げになっているため

OJTを現場に丸投げしていると、育成が計画的に進まない場合があります。社員に育成に関するノウハウや指導スキルが備わっているとは限りません。そのため、OJTの必要性は理解できても、育成計画や指導方法の立案に迷いを感じがちです。さらに、OJTの負担が特定の個人に集中すると、重圧から制度自体に反発する声が上がる可能性もあります。


現場に任せきりにせず、人事部門は積極的にOJTに関わりましょう。また、指導者1人に負担を集中させず、チームや部門全体でOJTに取り組む環境を整えてください。


指導者に時間的・精神的な余裕がないため

指導者に十分な時間的・精神的余裕を与えない企業も、OJTに失敗しがちです。指導者は通常の業務に加えて、育成の責任も負います。そのうえ、育成に時間を割かれることで、思うようにパフォーマンスを発揮できないストレスも経験するかもしれません。


指導者に余裕がなくなると、育成対象者が適切な指導を受けられずに放置されるリスクがあります。育成対象者のモチベーションが低下すると、OJTの効果は期待できないでしょう。


OJTの効果を高めるには、指導者が育成に専念できる環境を整備してください。たとえば、指導期間中は通常業務の負荷を軽減させる、OJTへの貢献を適切に人事評価に反映させるなどの配慮が必要です。


指導者の育成スキルに差があるため

指導者の育成スキルにばらつきがある企業も、OJTに失敗しやすい傾向が見られます。業務に関する知識やスキルが豊富な社員でも、他者を育成できるとは限りません。また、指導者の意欲によっても、育成の成果は大きく変わってきます。消極的な指導者のもとでは、若手や新人の成長は伸び悩むでしょう。


指導者の育成スキルを一様に高めるには、事前研修が不可欠です。特に、ティーチングとコーチングのスキル向上を重視しましょう。加えて、育成マニュアルを作成しておくと、指導内容を標準化でき、育成スキルの個人差を抑えられます。


OJTを実施する際のポイント

Off-JTと組み合わせるなどして、OJTの効果を高めましょう。OJTを実施する際のポイントを解説します。


Off-JTを上手く取り入れる

OJTを実施する際は、事前に育成対象者に対してOff-JTを済ませておきましょう。Off-JTで基礎知識を習得してからOJTに移行すると、指導者も育成対象者も、実践的なスキル習得に集中できます。効率よくアウトプットの経験を積めると、効果的な人材育成につながるでしょう。また、基礎知識を習得させる手間を省けると、指導者の負担軽減にもつながります。


育成の目標を明確にする

OJTのゴールを部門ごとに設定し、可能な限り目標を数値化しましょう。育成の目標が明確であるほど、指導者と育成対象者の認識が一致し、両者の努力によりOJTの効果を高められます。数値化が困難な場合でも、できる限り客観的な基準を用意してください。また、進捗状況を明確に把握するために、段階単位での目標も設定しておきましょう。


繰り返し練習させる

1回成功しただけでは、スキルが確実に身についたとはいえません。同様の状況を意図的に繰り返し経験させ、育成対象者に段階的にスキルを定着させましょう。難易度や条件を少しずつ変えつつ実践を続けると、応用力が鍛えられ柔軟性も身につきます。


デジタルツールを活用する

テレワークに対応したOJTのためには、デジタルツールの活用が効果的です。たとえば、Web会議システムを使うと、互いの表情を確認しながら、指導者と育成対象者がコミュニケーションを取れます。デジタルツールにより密にコミュニケーションを取ると、育成対象者のモチベーションを維持しやすくなるでしょう。


また、育成を適正に進めるには、現状と育成段階において社員のスキル把握が不可欠です。タレントマネジメントシステムを導入すると、スキルの一元管理に役立ちます。


OJTの指導者に必要なスキル

OJTの指導者に必要なスキルを解説します。ポイントとなるスキルは、直接的な指導と自発的な学びを促す誘導の2つです。


1.対象者を指導するスキル

対象者を指導するスキルとは、ティーチングスキルのことです。ティーチングでは、決められた内容を相手に一方的に伝えます。マニュアル化された作業手順のように、具体的な情報を分かりやすく伝える際には、ティーチングが有効です。


2.対象者をサポートするスキル

対象者をサポートするスキルとは、コーチングスキルのことです。コーチングスキルに長けた指導者は、育成対象者が自ら答えを見出すように適切に誘導できます。直接答えを示すのではなく、適切な質問や課題設定を通じて、育成対象者自身に考えさせましょう。問題解決能力や自主性を育むと、自発的に学び成長する人材の育成につながります。


OJTの指導者に対する研修のポイント

OJTの指導者に対する研修のポイントを解説します。OJTへの理解を深めさせ、育成に役立つスキルセットを習得させましょう。


OJTへの理解促進

研修では、OJTの目的や、自身に求められている役割を理解してもらいます。OJTへの理解が深まるにつれ、指導者のモチベーションは高まり、より積極的に育成にかかわるようになるでしょう。


OJTに役立つスキルや知識の習得

以下の内容も、OJTの指導者に対する研修のカリキュラムに加えることをおすすめします。


・対象者世代の傾向に関する知識の習得

・育成計画の立案方法の習得

・業務の質・量の設定方法の習得

・指導スキルの習得

・フィードバックの仕方の習得


上記要素を研修カリキュラムに組み込むことで、指導者はOJTのスキルセットを包括的に習得できるでしょう。


派遣社員に対するOJTの進め方

育成対象者が派遣社員でも、基本的に正社員と同様のOJTを実施するべきです。ただし、派遣元が研修を実施している場合は、重複を避けるためOJTの省略も可能です。派遣元と連携して、効率的かつ効果的な育成計画を検討しましょう。


まとめ

OJTを効果的に進めるには、指導者の負担を軽減する環境を整える、指導者を対象とした研修を開催するなどの取り組みを検討しましょう。育成対象者の個性はそれぞれ異なるため、それぞれの人となりを重視したアプローチも重要といえます。本記事で紹介したアプローチの具体例も参考に、OJTによる人材育成計画を検討してください


なお、社員のスキルを一元管理するためには、タレントマネジメントシステムが役立ちます。タレントパレットは、OJTをはじめとする人材育成プロセスを効率化し、最適化するための強力なツールです。


コンサルティングの知見も豊富で、大手企業をはじめ、多くの企業がタレントパレットを活用しています。OJTを検討中の人は、ぜひタレントパレットの導入をご検討ください。


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