モラールサーベイとは?
モラールサーベイは社員のモラールを測定するための調査のことです。モラール(Moral)とはフランス語で、日本語に訳すと「士気」や「意欲」といった意味になります。つまり、目的を達成しようとする意欲や態度を意味しています。
モラールサーベイは年に1回から数か月に1回程度実施されるもので、社員のパフォーマンス向上に影響を及ぼす要素を把握できます。
モラールサーベイと他のサーベイとの違い
企業における調査は、モラールサーベイだけではありません。ここでは、その他のサーベイとの違いを解説します。
エンゲージメントサーベイ
エンゲージメントサーベイとは、社員の自社や自社のサービスに対する愛着心や思い入れなどを測る調査のことです。エンゲージメントサーベイでは、企業理念に対する共感度や会社の風土・社風にどの程度馴染んでいるか、上司と部下、同僚との関係性などの項目から、エンゲージメントを測るケースが一般的です。
社員の自社への愛着や仕事に対するモチベーションを調査することで、現状を把握して課題を洗い出し、社員のモチベーション向上につなげることが目的となっています。
組織サーベイ
組織サーベイとは、経営目標の達成に向けて、適切なマネジメントが行われているかなど、組織の健康状態を評価して改善点を洗い出す目的で行われる調査です。組織としての問題点や課題などを解決するために、社員のエンゲージメントやモチベーションなどを把握し、理想と現状とのギャップを測定します。
パルスサーベイ
パルスサーベイとは、社員の状況をリアルタイムで把握するための調査です。1~5分程度で回答できる簡単な質問を、毎日もしくは週1回や月1回というような高い頻度で実施することが特徴です。パルスサーベイは、従業員満足度の向上を目的として行われるもので、リアルタイムでの社員の状態や意識などを把握することが求められます。
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従業員サーベイ
従業員サーベイとは、人事制度などに変更があった際に社員のモチベーションに変化がないかなどを確認するための調査です。人事制度の改定などの際に立てた課題を検証するために使われます。従業員サーベイは、就業規則や人事制度などに変更があったとき、もしくは年に1回か数か月に1回程度行うことが多いでしょう。
モラールサーベイの実施が必要な理由や目的とは?
モラールサーベイを実施する目的は何なのでしょうか。ここでは、モラールサーベイが必要な理由と目的を解説します。
組織の課題を把握・改善を図るため
モラールサーベイを実施することで、社員の組織が掲げる目標や理念、運営に対しての意識を把握できます。これにより、組織としての課題の把握につながるでしょう。調査結果から組織の課題をしっかりと把握できれば、適切な改善策を講じることにもつながります。
組織としての課題や問題を解決し、モラールを高めることによって経営目標の達成に近づきやすくなり、企業としての成長も期待できます。
組織力の強化につなげるため
モラールサーベイを実施して社員の声を反映することで、社員の経営に対する参画意識をさらに高めることができます。組織は同じ理念や目的を持って、対等な立場で働くことによってモラールが高くなります。モラールサーベイによって社員の参画意識が高まれば、同じ目的に向かって進めるようになるため、企業としての成長につながりやすくなるでしょう。
また、社員の声をもとにして適切な人材配置などを実施できるようになります。これにより、社員の満足度が高まり生産性向上につながる可能性もあります。
モラールサーベイの種類
モラールサーベイにはどのような種類があるのでしょうか。ここでは、2つの種類について解説します。
NRK方式
まずは、NRK方式です。NRK方式とは日本労務研究会が開発した手法のことです。1955年に開発されたもので、日本でもっとも古いモラールサーベイです。対象企業は社員規模が300人以上の企業となっています。診断実績が豊富であり、匿名で実施できるためプライバシーの心配があるという場合にもよいでしょう。
調査内容としては、労働条件・人間関係・管理・行動・自我という5つの分野から分析します。また、マークシート方式のため回答も簡単です。
厚生労働省方式
厚生労働省方式とは、日本労務研究会によって開発された手法です。1957年に開発されたもので、NRK方式同様に長い歴史のある手法となっています。厚生労働省方式の対象企業は社員規模20人以上300人未満の企業です。
厚生労働省方式では、仕事・給料・上司など会社全般についてどのような思いを持っているのかを調査することが特徴です。会社全般に対する意識を集計・分析して、現状の意識レベルと世間水準を比較検討できます。
モラールサーベイを実施するメリット
モラールサーベイを実施するメリットは大きく分けて4つあります。ここでは、各メリットを解説します。
他社の状況と比較できる
モラールサーベイを実施することで、他社の状況と比較できるというメリットがあります。たとえば、労務研究会では実施結果の事例を公表しています。また、実施後にどのように課題解決につなげたのかも公表されているため、参考にしやすいでしょう。
他社の調査結果と自社の調査結果を比較することで、自社の状況を客観的に把握できるようになります。客観的に自社の状況を見られるようになるため、問題点や課題の把握などもしやすくなります。
社員の経営への参加意識を高められる
モラールサーベイを実施することで、社員の声や意見を把握しやすくなります。社員の声を積極的に経営に反映することで、社員の意見を大事にしている、社員の声を反映している会社というあり方を示すことが可能です。
結果として、社員の経営への参加意識を高めることができるでしょう。経営に自分の意見が反映されていると思うことで、組織力が強化され組織全体でよい循環を生み出すことにつながります。
生産性向上が期待できる
モラールサーベイによって課題が解決できれば、チームや個人としての生産性向上が期待できます。社員は働くうえで、多少なりとも問題や課題を抱えているものです。モラールサーベイの実施によって、社員が抱える問題や課題を把握しやすくなり、課題解決のきっかけを作ることも可能です。課題解決によって社員の生産性が向上すれば企業全体の生産性が高まります。業績向上にもつながるため、企業としても成長できるでしょう。
社員の離職防止につながる
モラールサーベイの実施によって、離職防止につながる可能性もあります。モラールサーベイの結果を受けて適切な改善策を講じれば、社員の満足度が向上して離職防止につながるでしょう。
不満が溜まったままでは、優秀な社員が他社へ転職してしまう可能性が高まります。しかし、モラールサーベイなら社員の本音や意見を汲み上げることができるため、不満を解消しやすくなるでしょう。離職につながるような不満を解消できれば、離職率は低下します。
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モラールサーベイを実施するデメリット
モラールサーベイの実施にはデメリットもあります。ここでは、2つのデメリットを解説します。
実施コストが発生する
モラールサーベイの実施には、コストが発生します。たとえば、モラールサーベイを運用する社員の手間や回答にかかる時間、外部機関を活用する際には委託費用などのコストも発生します。そのため、予算の確保が必要です。また、目的を明確にしたうえでモラールサーベイを実施しなければコストに見合った成果を得られない可能性もあるため、注意しましょう。
実施するだけでは社員の不満を招く
モラールサーベイは実施して終了ではありません。実施するだけで課題の解決につながるような施策を行わないでいると、社員の不満を招く恐れがあります。「調査に協力したのに何も変わっていない」「実施するだけで改善されてない」という状態が続くと不満が大きくなる可能性があるため注意が必要です。
モラールサーベイを実施する際には、企業としての課題や問題に真摯に取り組む覚悟を持って行いましょう。
モラールサーベイを実施する手順
モラールサーベイはどのように実施すればよいのでしょうか。ここでは、モラールサーベイの実施手順を解説します。
1.目的の明確化と社員への説明を行う
まずは、モラールサーベイをなぜ実施するのか、その目的を明確化しておくことが重要です。モラールサーベイを実施する目的が曖昧なままだと、調査を実施してもやりっぱなしになってしまい、課題解決につながらない可能性があります。そのため、目的は必ず明確にしておきましょう。
また、社員から理解を得ることも重要です。モラールサーベイを実施する目的や実施内容などをしっかりと説明するなどして、社員に理解してもらうようにしましょう。
2.モラールサーベイの実施と分析を行う
実際にモラールサーベイを実施します。調査を行う際には、回答に対する匿名性を確保するように細心の注意を払いましょう。
調査結果を集計したら、分析を行います。たとえば、役職ごとにモラールを分析する、モラールの高い項目と低い項目を抽出するなどして、調査結果を分析していきましょう。モラールサーベイの実施から結果がわかるまで時間がかかりすぎると、社員の関心度が低下したり不満がたまったりする可能性があるため、早めの集計・分析することがポイントです。
3.社員へのフィードバックを行う
結果を分析したあとは、社員に対するフィードバックを行います。レポートにまとめるなどして、できるだけ早めにフィードバックを行いましょう。
また、フィードバックは調査結果をそのまま伝えるだけでは不十分です。分析した結果、課題があるのなら課題解決のためにどのような改善策が必要なのか、今後の方針などまで提示することが大切です。改善策には社員の意見を取り入れるようにするとよいでしょう。
モラールサーベイの質問項目・費用
モラールサーベイはどのような質問項目が必要なのでしょうか。ここでは、NRK方式で実施するモラールサーベイの質問項目と費用を解説します。
質問項目
モラールサーベイは、95問からなる標準質問からなっています。大きく分けると5つの分野から成り立っており、そのなかで17種目95項目というように細かく分けられています。質問項目の例は以下のとおりです。
・勤務時間
・給与の決め方
・部下の訓練
・教育への熱意
・帰属感など
モラールサーベイの質問項目は、オーソドックスな内容となっています。そのため、業種や職種に合わせて測定したい指標がある場合には、質問を追加することも可能です。
費用
モラールサーベイの費用は、調査対象人数によって異なります。たとえば、400人までなら基本調査費用と診断費用、報告関係費用を合計した費用は、480,000円(税別)です。ただし、他にもオプションを追加することで費用が発生するケースもあります。
たとえば、追加質問設定や詳細報告書作成などを追加する場合には、オプション費用がかかります。自社の予算と必要な調査を比較したうえで、オプションが必要かどうかをよく検討するとよいでしょう。
モラールサーベイを実施する際のポイント
モラールサーベイを実施する際には、3つのポイントを押さえましょう。ここでは、各ポイントについて解説します。
継続的に実施する
モラールサーベイは継続的に実施することが求められます。1回調査して終了ではなく、定期的に実施することが大切です。一度きりの調査では、社員の意見の変化を把握することができません。そのため、最低でも年に1回はモラールサーベイを実施しましょう。定期的に実施することによって、社員の変化を適切に把握することができ、課題の把握や改善などにつなげやすくなります。
社員の本音を引き出すための配慮を心がける
モラールサーベイを実施する際には、社員が本音で回答できるように配慮する必要があります。たとえば、匿名性を確保することで回答者がわからないようにするとよいでしょう。回答がバレるのではないかという不安があると、本音を引き出すことが難しくなります。
回答者がわからない状態で実施すれば、より安心して回答できるようになるでしょう。また、親しみやすい口調で調査することもポイントです。気楽に回答できるような状態を整えましょう。
すべての声にリアクションする
モラールサーベイを実施したあとは、すべての声にリアクションをしましょう。ここの回答に対して丁寧かつ適切に対応することで、社員の満足度が高まります。一方で、回答したのに無視された、何を言っても変わらないといった状況では、不満が増大する可能性があるため、社員の声を聞き入れる覚悟を持って臨むことが大切です。
モラールサーベイを実施する際の注意点
モラールサーベイを実施する場合には、注意したいポイントがあります。ここでは、2つの注意点を解説します。
情報管理を徹底する
モラールサーベイの実施後は、回答結果や内容が他人の目に触れないようにしっかりと管理しましょう。モラールサーベイでは、組織に対する不満や人間関係の問題などが記載されているケースもあります。匿名で実施したとしても、回答結果が人の目に触れると内容が漏れてしまう可能性があるため注意しましょう。
回答内容が漏れてしまうと不信感を抱かせてしまい、組織への不満がたまります。そのため、閲覧者を限定するなど情報管理を徹底することが大切です。
社員の本音から目を背けない
モラールサーベイでは、社員からの厳しい意見や不満などが書かれる可能性もあります。目を背けたくなるような厳しい声が寄せられることもあるでしょう。このような意見から目をそらさずにしっかりと向き合うことが大切です。
これらの声から目を背けてスルーしてしまうと、さらなる不満が発生するリスクが高まります。そのため、どのような厳しい意見であってもしっかり受け止めるという覚悟を持ってモラールサーベイを実施することが重要です。
社員エンゲージメントを可視化するならタレントパレット
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モラールサーベイに関するQ&A
ここでは、モラールサーベイに関してよくある質問とその回答を紹介するため、参考にしてください。
モラールサーベイのどのくらいの頻度で行えばいい?
モラールサーベイは最低でも年に1回は実施したいです。不定期だと、社員の意見の変化などがわかりにくくなるため、できるだけ定期的に行いましょう。可能であれば、数か月に1回程度定期的に行うのが理想です。数か月に1回サーベイを実施することで、社員の状態や変化などを把握しやすくなります。
モラールとモチベーションの違いは?
モラールとは組織における士気や労働意欲などを意味する言葉です。一般的には、組織や集団の団結力や士気などのニュアンスを含んだ言葉として使われます。一方、モチベーションは主に動機を意味します。つまり、社員それぞれのやる気を意味する概念であり、個人の動機や個人の目標達成へのエネルギーなどを指します。
まとめ
モラールサーベイとは、社員の士気や労働意欲などを調査することです。モラールサーベイを実施することにより、社員の経営への参加意識向上や生産性の向上、離職防止などが期待できます。モラールサーベイは一度切りではなく、継続的に実施し匿名性を確保するなどの工夫が必要です。
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