企業のミッションとは?MVVの意味・策定の方法・ポイントなどを解説


企業のミッションとは?MVVの意味・策定の方法・ポイントなどを解説

企業が確かな方向に向かって成長し続けるためには、ミッションを策定する必要があります。適切に策定されたミッションは、社員1人ひとりの行動指針となるだけではなく、企業の使命や存在意義を社会に示すメッセージとしても役立つでしょう。本記事では、ミッションの基本的な概念や策定方法、策定のポイントなどを解説します。


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企業のミッションとは?

企業が策定するミッションは、組織の使命や存在意義を示す指針です。ミッションの概念や、MVVとの関係性などを解説します。


ミッションの意味

ミッションは、企業が社会において果たすべき使命や存在意義を明確に示します。企業理念の主な構成要素である、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の中核を担う概念がミッションです。具体的な目標設定や新規事業の立ち上げ、人事評価の基準などで、ミッションは活用されています。


ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)とは

ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の概念は、オーストリア出身の経営学者で、現代経営理論の礎を築いたピーター・F・ドラッカーによって提唱されました。ドラッカーは著書「Managing in the Next Society」において、MVVの明確化と実践を企業経営における最重要課題として位置づけています。


ミッション、ビジョン、バリューの違い|決める必要性やメリット、事例を解説


ミッションの語源

ミッションの語源は、ラテン語の「mittere(送る、投げ入れる)」に由来します。当初、ミッションは「何かを送る」という意味合いで使われましたが、次第に「神の言葉を人々に伝える」という宗教的な意味を帯びるようになりました。


特にキリスト教関連では「宣教」や「使節団」を表す言葉として用いられるようになり、やがて「使命」「存在意義」という近年の使われ方に至っています。


企業理念・経営理念の意味

組織の要となる価値観を明文化した企業理念・経営理念は、経営哲学や経営思想、社是、フィロソフィー、クレドなど、さまざまな呼び方で表現されてきました。企業理念・経営理念は、一般的に創業者や経営者の信念や哲学に基づくもので、組織全体の行動指針として機能します。


ミッションとビジョン、バリューの関係性

ミッションについて知識を深めるには、ミッションとビジョン、バリューの関係性を理解することが重要です。以下で具体的に解説します。


ミッションとビジョンの関係性

ミッションとビジョンは、企業の方向性を示すものとして関連しています。ミッションは「企業の使命や存在意義(Why)」であり、ビジョンは「ミッションを果たすための具体的な目標(What)」です。つまり、ビジョンは、ミッション実現に向けた理想の企業像を明確化したものといえます。


ミッションとバリューの関係性

ミッションとバリューは、組織の行動について関連しています。ミッションという「企業の使命や存在意義(Why)」を実現するために「企業のやるべきことや行動基準(How)」がバリューです。ミッションだけでは具体的な行動が見えないため、バリューにより組織や個人の行動を明確化する必要があります。


ミッション・ビジョン・バリューのイメージ

ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)について把握するために「桃太郎」の物語をイメージしてみましょう。桃太郎のミッションは、村の平和を守ることです。ミッションを果たすための具体的な目標であるビジョンが、鬼退治という形で表現されています。犬・猿・キジとチームを組み、互いに協力し合って目標達成を目指すというバリューが、彼らのやるべきことや行動基準です。


優れたミッションの条件

ミッションの価値を高めるには、社会や企業の実情をくみ取る必要があります。優れたミッションを策定する条件を把握しておきましょう。


社会的なニーズがある

優れたミッションを策定するためには、社会的なニーズを理解する必要があります。ミッションは企業にとっての使命や存在意義です。社会全体の困りごとや悩みの解決に貢献できるミッションでなければ、企業活動が支持を得られない可能性があります。


組織の特性・強みに合っている

社会的なニーズを押さえることは前提として、企業にマッチするミッションを策定しましょう。市場には、同じような商品やサービスがあふれているためです。他社と差別化できる点を探し、自社のオリジナリティや強みを活かせるミッションを策定してください。


社員からの共感を得られている

ミッションは簡単に達成できるものではありません。社員が共感しやすいミッションを策定し、モチベーションを維持できるよう努めましょう。組織を構成するすべての人が共感できるミッションを持つことで、組織は一丸となり、共通の使命を果たすために努力し続けられます。


ミッションの策定方法

明確かつ適切なミッションを策定するためには、計画的な取り組みが重要です。以下では、ミッション策定の具体的な流れを説明します。


策定のメンバーを選出する

まずは、ミッション策定のメンバーを選出してください。たとえば、ベンチャー企業なら創業者が中心となり、経営陣や各部署のリーダーなどに声をかけてメンバーを選出します。策定にかける期限の設定も重要です。組織の成長に伴って状況が変化した際には、必要に応じてミッションの見直しを検討してください。


ミッションステートメントを作成する

ミッションの浸透には、ミッションステートメントが必要です。ミッションステートメントとは、抽象的になりがちなミッションを行動指針へと落とし込んだものを指します。企業の使命や社員が共有する価値観を詳細に明文化して、ミッションステートメントを作成しましょう。なお、作成したミッションステートメントは、株主や顧客を含む社内外のステークホルダーに発信してください。


社内にミッションを浸透させる

ミッションを浸透させる際は、トップダウンのアプローチが効果的です。経営陣、管理職層、一般社員層へと徐々に展開し、ミッションのスムーズな共有を図りましょう。


人事評価にミッションを反映させると、社員はミッションを意識した行動を自然に取れるようになります。並行して、ミッションを定着させるために、社内研修や定期的なミーティング、社内報などでミッションを繰り返し伝えましょう。


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ミッション策定における注意点

ミッションを策定する際の注意点を解説します。組織内で意見をすり合わせ、世間への影響も考慮しつつミッションを策定しましょう。


意見のすり合わせを怠らない

ミッションを策定する際は、意思決定にかかわるメンバー全員で十分に議論し、さまざまな視点から検討を重ねましょう。ミッション策定後に反対意見が出ると、組織の結束が弱まってしまうためです。ミッションには、正解がありません。他者の意見やアイデアを否定せず、建設的な対話を通じて意見をまとめてください。


ミッションの定義をはっきりさせる

ミッションは抽象的になりがちなため、注意してください。あいまいなままミッションを策定すると、個々の認識の相違により意思疎通に支障が出る恐れがあるためです。ミッションの定義をはっきりさせるために、詳細な内容はビジョンとバリューで具体的に表現しましょう。


ブランディング効果を考える

策定したミッションは、社内外を問わず公表され、企業のイメージ形成に影響を及ぼします。多くの人の支持や共感を得られるミッションを策定し、効果的なブランディングにつなげましょう。ブランディングに成功すると、企業の競争力が高まり、売上向上や優秀な人材の獲得が期待できます。


ミッションの効果的な活用方法

ミッションを活用すると、企業理念や経営理念の言語化が可能です。漠然とした概念をミッションで定義すると、社内外に周知しやすくなります。また、社員にミッションを浸透させると、企業の方向性を理解したうえで具体的な行動を取れるようになるでしょう。


ミッションを公表する際は、キャッチコピーの採用が効果的です。印象的で分かりやすいフレーズによって、ミッションの認知度を向上させましょう。


企業・個人におけるミッションの違い

企業のミッションは、組織全体の目標を指します。一方、個人のミッションは、個人が自らに課すものです。個人のミッションは、その人のキャリアや人生の方向性を明確にします。たとえば、新しい仕事にチャレンジするか検討するとき、業務における優先順位を決めるときなど、判断に迷うシーンにおいて個人のミッションは行動選択の基準となるでしょう。


ミッションステートメントとは?

ミッションステートメントとは、ミッションに基づいた行動指針のことです。ステートメントには、声明や意見といったように、外部に発信するという意味合いがあります。つまり、ミッションとステートメントをかけ合わせたミッションステートメントとは、抽象的になりがちなミッションを大勢がわかるように整理し、発信できる形に整えることです。


ミッションステートメントを定めるメリット

ミッションステートメントは企業力の向上に貢献します。ミッションステートメントを定めるメリットは次のとおりです。


事業を戦略的に進められる

企業の方向性を明確化したミッションステートメントは、事業において重要な判断が求められるシーンで役立ちます。ミッションステートメントを定めておけば、一貫性を保った戦略を立案できるようになるだけではなく、メンバー間で意見が分かれた際の判断基準にすることも可能です。


組織の結束を強められる

ミッションステートメントを組織内で共有すると、目的に対する認識を統一できます。企業の構成要素は、さまざまな価値観・考え方を持つ人材です。ミッションステートメントにより多様なメンバーの結束を強め、チームとしての生産性を高めましょう。


社員の当事者意識が強まる

社員の当事者意識の強まりも、ミッションステートメントを定め、浸透させるメリットです。ミッションステートメントが組織全体に浸透すると、目的に対する共通認識が形成され、経営陣は円滑な権限委譲が可能となります。責任を任された社員は、当事者意識が強まることでモチベーションが向上しやすく、より自発的に業務に取り組むでしょう。


企業によるミッションの例

企業によるミッションの例を紹介します。自社でミッションを策定する際の参考にしてください。


Google LLCの例

アメリカの大手インターネット企業であるGoogle LLCは、公式サイトに以下のミッションを掲載しています。


「Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすることです」


同社は、社会に対して検索エンジンやWebブラウザを提供し、ユーザーの情報収集をサポートしています。


※引用:Google - Google について、Google の文化、企業ニュース


楽天グループ株式会社の例

インターネット関連事業のパイオニアである楽天グループ株式会社は、公式サイトに以下のミッションを掲載しています。


「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」


同社は、Eコマース・金融・モバイル事業など生活に密着する多様なサービスを展開しています。


※引用:企業理念|楽天グループ株式会社


株式会社メルカリの例

フリマアプリに関する企業事例も解説します。株式会社メルカリの公式サイトには、以下のミッションが掲載されています。


「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」


同社は、多数のユーザーが直接やり取りするプラットフォームを提供し、個人間での商品売買を通じて、循環型社会の実現に貢献しています。


※引用:私たちについて|株式会社メルカリ


株式会社ファーストリテイリングの例

株式会社ファーストリテイリングは、ユニクロ・GUなどのブランドを展開するアパレル業界の大手です。公式サイトには以下のミッションが掲載されています。


「本当に良い服、今までにない新しい価値を持つ服を創造し、世界中のあらゆる人々に、良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供します」

「独自の企業活動を通じて人々の暮らしの充実に貢献し、社会との調和ある発展を目指します」


同社は、高品質な衣類の提供を通じて人々の快適な生活に貢献しています。


※引用:FAST RETAILING WAY (FRグループ企業理念)|FAST RETAILING CO., LTD.


株式会社大創産業(ダイソー)の例

100円ショップとして高い知名度を誇る株式会社大創産業(ダイソー)は、公式サイトに以下のミッションを掲載しています。


「自由な発想で、楽しさと豊かさを提供し続ける

なんだ!ダイソーにあったんだ、こんなものまであったんだ!の感動の追求」


同社は、利便性の高い商品を、気軽に購入しやすい割安な価格にて提供しています。


※引用:社是・経営理念|ダイソー


キリンホールディングス株式会社の例

大手飲料メーカーのキリンホールディングス株式会社は、公式サイトに以下のミッションを掲載しています。


「キリングループは、自然と人を見つめるものづくりで、

「食と健康」の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献します」


同社は、健康を意識した飲料を数多く展開し、豊かな社会作りに寄与しています。


※引用:企業方針|企業情報|キリンホールディングス


スターバックスコーヒージャパン株式会社の例

スターバックスコーヒージャパン株式会社は、公式サイトに以下のミッションを掲載しています。


「この一杯から広がる

心かよわせる瞬間

それぞれのコミュニティとともに—

人と人とのつながりが生みだす

無限の可能性を信じ、育みます」


同社は、快適な店内環境の構築に努め、高品質なコーヒーを楽しめる店舗を全国にチェーン展開しています。


※引用:Our Mission, Promises and Values|スターバックス コーヒー ジャパン


日産自動車株式会社の例

自動車メーカーとして多くの国で活動する日産自動車株式会社は、公式サイトに以下のミッションを掲載しています。


「私たち日産は信頼される企業として独自性に溢れ、

革新的なクルマやサービスを創造し、

その目に見える優れた価値を、

すべてのステークホルダーに提供します」


同社は、他の企業では見られない洗練されたデザインや技術を通じて、付加価値の高い自動車を提供しています。


※引用:NISSAN NEXTを語ろう|スペシャルコンテンツ|新卒採用情報|日産自動車


まとめ

企業のミッションは、組織の使命や存在意義を示すものです。自社の強みを活かし、他社と差別化できるミッションを定め、企業の競争力を高めましょう。ミッションを策定する際は、社内で十分に意見をすり合わせてください。また、ミッションを社内外に浸透させるために、誰もが理解しやすい明確なミッションステートメントを作成しましょう。


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