マトリクス組織のデメリットや注意点、従業員の業務に役立てる方法を解説
こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
深刻な人手不足に苦しんでいる企業も多く、近年注目されているのがマトリクス組織です。
しかし、簡単に取り入れられるものではないため、デメリットについてもしっかり頭に入れたうえで、業務に役立てていく必要があるでしょう。
この記事では、マトリクス組織のデメリットや注意点、従業員の業務に役立てる方法などについて詳しく解説します。
マトリクス組織の特徴や歴史、メリットとは
近年マトリクス組織による企業経営が注目されています。ここでは、まず、マトリクス組織の特徴や歴史、メリットについて詳しく解説します。
マトリクス組織の特徴
マトリクス組織とは、1人の従業員が、製造部門や営業部門などの部署に所属するだけではなく、エリアやプロジェクトごとのチームにも所属する組織形態を指します。従業員は職務別の部署と、プロジェクト、もしくはエリアに所属しますので、複数の所属先があるのが特徴です。
マトリクス組織では、縦軸と横軸の指揮系統が設けてあり、マトリクス図表のようになっていることが、この名前がついた由縁です。
マトリクス組織では、従業員は、職務別の指揮系統と、プロジェクトごとの指揮系統と複数の組織の指揮を受けることになります。1人の従業員が複数の仕事で成果を上げやすく、状況に応じた柔軟な対応ができやすいのが特徴といえるでしょう。
ちなみに、「マトリックス組織」と呼ばれることもありますが、内容はまったく同じものです。
マトリクス組織の歴史
日本国内において、多くの企業で採用されているのは、ピラミッド型で指示が上から下へ伝わる組織形態です。トップが方針を決定し、下に流れる方法は事業の決定がスムーズである反面、下に流れる過程において、誤解や伝達ミスなどが起こる可能性があります。
そこで、職務別組織と、プロジェクトごとの組織など複数の組織を組み合わせるマトリクス組織が誕生しました。マトリクス組織は、1960年代にアメリカの航空宇宙産業から始まっています。
コストや納期など複数の管理が必要となる状況で、ピラミッド型だと物事の決定から実行に時間が掛かりすぎるという欠点がありました。そこで、複数の管理ができるマトリクス組織が導入され始め、徐々にアメリカ全土へ、そして世界にも広がっていったのです。
マトリクス組織の種類
マトリクス組織は、大きく下の3種類に分類できます。
・プロジェクトチームの中からプロジェクトマネージャーを選出するバランス型。
・プロジェクト専門のマネージャーが権限を持つストロング型
・プロジェクトの責任者を置かないウィーク型
それぞれのタイプにはそれぞれメリット・デメリットがありますので、一概にどれが良いとはいえません。企業風土や業種などにより、向き不向きがあります。
それぞれの特徴をつかんで、どのタイプの組織にするかを決める必要があるでしょう。
マトリクス組織のメリット
マトリクス組織は、それぞれの部署だけで業務が完結すればそれで終わりではありません。プロジェクトごとに人員が配置されている場合、他の部署と連携しながらプロジェクトを完遂する必要があります。そのため、自然と他部署とのコミュニケーションの回数が増えるでしょう。
その結果、業務を効率的に進められるだけでなく、全体的な動きが俯瞰で見えやすくなる点がメリットの1つです。従業員がさまざまな部署の取り組みを知ることは、個人の能力の向上にもつながります。連携もとりやすくなりますので、業務品質の向上も期待できるでしょう。
職務別やプロジェクトごとのリーダーを置くため、責任が分散され、マネジメントの負担が軽減される点もメリットとして挙げられます。
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マトリクス組織が注目された背景
マトリクス組織は、日本国内におけるいくつかの背景によって、近年注目されている組織体制です。ここからはマトリクス組織が注目された背景について詳しく解説します
少子化による人口減少
日本国内では人材不足に悩む企業が増えています。人材不足の根幹は、そもそも少子化に伴う人口減少が原因です。今後の少子高齢化の流れを見ると、人口が増える見込みは少なく、いかに少ない人員で効率的な経営を行うかがポイントとなります。
これからの人口減少に備え、マトリクス組織が注目されています。マトリクス組織では、ひとりの従業員が複数の部署やプロジェクトに所属することで、マルチタスクに取り組みやすくなります。
従業員の高齢化が進んでいる
国内の人口減少は、そのまま高齢化の加速につながっています。定年などでさらに従業員が減少する可能性が高くなるでしょう。経験の長い従業員の退職は、同時に今までのスキルが失われることを意味します。
スキルを埋めるためには、多くの従業員を雇用する必要がありますが、そもそも人口が減少しているなか、現実的な対策ではありません。定年に近い従業員のスキルを受け継ぐ目的でも、さまざまな部署が絡むマトリクス組織が必要となります。
経験が豊富な従業員が、若手の人材育成ができるのも、マトリクス組織が注目される背景といえるでしょう。
多様なライフスタイルに対応する
働き方改革やコロナ禍において、働き方やライフスタイルに関する人々の考え方が大きく変化しました。
特に、テレワークの普及により、首都圏などの都市部以外に住む人が増えて、首都圏などでの働き手不足が顕著になっています。
人口減少や従業員の高齢化に加え、こういった要因での人材不足もマトリクス組織に注目が集まる要因の1つといえるでしょう。
マトリクス組織体制によるコスト削減
2000年に入り、バブル経済崩壊のあおりを受けた不況が続いたことも、マトリクス組織が注目を集める一因です。
企業は、不況でも利益を上げるためにコスト削減に取り組むことになり、人件費も大きな課題となりました。
ピラミッド型組織では、従業員は1つの部署に特化してしまいます。そのため、柔軟性がなく、人員が足りない部署などに配置替えしにくい点がウィークポイントです。
マトリクス組織体制を取り入れれば、従業員が複数の業務に関わることができ、コストカットが期待できる点が評価されたのです。
マトリクス組織のデメリットとは
マトリクス組織をうまく機能させるために必要なことは、デメリットをしっかりと把握して対策を検討することです。ここからはマトリクス組織のデメリットについて詳しく解説します。
パワーバランスがとりにくい
マトリクス組織では、指揮系統が増えてしまい、パワーバランスがとりにくくなる点がデメリットのひとつです。パワーバランスがうまくとれないと、それぞれの部署やプロジェクトにおいて、混乱や対立を生み出しやすくなってしまいます。
従業員はどちらを優先して取り組むべきか悩んでしまうかもしれません。他の部署からの横入りにより、プロジェクトの進捗がまったく進まないといった問題点も考えられるでしょう。
それぞれのパワーバランスがとりにくい点がデメリットのひとつです。
複雑になってしまう
マトリクス組織では、指揮系統が、部署とプロジェクトなど、複数になってしまいます。意思決定系統が分かれてしまうと、業務の中身が複雑化しやすくなることが考えられます。
それぞれの業務が複雑化してしまうと、大きなトラブルに発展する可能性の高さも否定できません。これは、複数の意思決定権者による、情報の共有ができていないのが原因です。業務が複雑化しやすい点も、デメリットといえるでしょう。
リーダーを決めにくい
部署間のリーダーが増えるなかで、誰をプロジェクトマネージャーにすべきか、決めにくいことがあります。部署間のリーダーが同じプロジェクトに配置されてしまうと、誰の指示を聞くべきかも、わかりにくいことがあるかもしれません。
それぞれの部署に忖度してしまうケースや、部署の利益を優先するあまり意見が対立しやすく、リーダー同士の力関係によってプロジェクトの進行が滞ることがあります。プロジェクトに配属された際に、自分たちの権利を主張しすぎると発生しやすいデメリットです。
人材の振り分けがしにくい
マトリクス組織は端的に言うと、従業員に複数のタスクを兼務させる組織形態です。配属する部署とは異なるプロジェクトにも配置されるため、組織が複雑になってしまいやすく、人材の振り分けが難しくなります。
人事管理システムなどを整備させて置かないと、偏った人員配置になりやすい点もデメリットのひとつと言えるでしょう。
マトリクス組織における注意するポイントとは
ここからは、マトリクス組織のデメリットから、どのような点に注意が必要か解説します。
プロジェクトの目的を明確になっているか
マトリクス組織は、全体を共有しているプロジェクトマネージャーがいると、全体の姿がわかりやすく、目的を明確に伝えやすい組織形態です。つまり、マネージャーのスキルや管理能力がポイントになります。
マネージャーにスキルが備わっていれば、業務が効率化され従業員のスキルアップにつながるでしょう。
反面、マネージャーが確立されていない場合や、スキルに問題がある場合は、前述したパワーバランスの問題や業務の複雑化といったデメリットが目立ってしまいます。
人的資源を効果的に活用できているか
マトリクス組織のデメリットで解説しましたが、マトリクス組織は、人材の振り分けが難しいという問題点があります。マトリクス組織体制でのプロジェクトは、人的資源の偏りがないか、また、適切な人材配置について、工程ごとに確認する必要があります。
これに関しては、各部署だけに任せず、人事管理システムなどを充実させていく必要があるでしょう。複数の視点から人的資源の偏りがないかをチェックすることで、従業員の力を最大限に発揮できます。
情報伝達が円滑に行われているか
マトリクス組織では部署が入り組んでいるケースが多いので、情報が共有されていなければ、進捗度合いがまったくわかりません。常に部署間の情報伝達がきちんと行われているかを確認しなければいけません。
進捗状況の情報伝達を円滑に行うことで部署間の意識が共有でき、マトリクス組織の強みを最大限生かすことにつながります。報告作業を意識して行うと、進捗だけではなく作業効率のアップや品質向上にも役立つでしょう。
マトリクス組織を成功させるためのポイントとは
ここまでは、マトリクス組織のメリットやデメリット、注意点などについて説明しました。これらの特徴から、マトリクス組織を成功させるためのポイントなどについて詳しく解説します。
指示系統にルールを設定する
指示系統が複数になってしまうリスクがある点をデメリットとして挙げました。指示系統をはっきりとさせるためにも、指揮系統にルールを設定するといいでしょう。
マトリクス組織が成功するポイントは、指示系統の一元化です。指揮系統が分かれてしまうと、マトリクス組織の強みがまったく生かせず、逆に悪い方向に進んでしまいます。
設定したルールに沿って指揮系統を決められると、誰をリーダーにするかというような、ささいな対立は起こりません。メリットを最大限に生かした組織となるでしょう。
プロジェクトや部署の改編などに共通認識を持つ
マトリクス組織は、プロジェクトに多数の部署が関わりやすく、ひとりが複数の仕事を兼務する体制です。メンバーの配置に明確な目的がないと、内部の人間にも理解ができないプロジェクトになる可能性があります。
また、従業員にプロジェクトや部署改変に関して理解してもらうことも大切です。改編などに共通認識が持てると理解がとれやすく、プロジェクトに対して、部署の同僚から協力を受けやすくなります。
同じプロジェクトの異なるリーダーが情報を共有する
プロジェクトのリーダー同士が進捗状況や、懸念点などをしっかり共有しなければなりません。プロジェクトの異なるリーダー同士で情報が共有できると、意思疎通がしやすくなるので指示が適切になります。
お互いに困っている点を補い合う関係性が築けると、結果的に企業にとって大きなプラスとなるでしょう。
プロジェクトメンバーで定期的に打ち合わせする
情報共有の重要性は、リーダー同士だけではありません。メンバー同士も定期的に打ち合わせを行い、目的や進捗度合いを共有しておく必要があります。
マトリクス組織は、複雑に部署が絡み合います。意識して認識を共有しないと、マイナス面だけが大きく出てしまうことになりかねません。定期的な打ち合わせなど、強制的に共有の機会を設けましょう。
また、マトリクス組織の企業例を別記事で詳しくまとめています。詳しくはそちらの記事も参考にしてください。
「マトリクス組織企業例」については、こちらの記事をご確認ください。
まとめ
マトリクス組織は複雑化しやすい側面があるので、人事管理面においても、わかりにくくなってしまいがちです。今まで以上に緻密な人事管理が求められるため、タレントパレットなどのシステムで情報を一元管理化しましょう。
これによって、最適な人材配置と、組織の価値の最大化が期待できるでしょう。
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