こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
ライフキャリアレインボーとは、ひとりの人間の過去から未来における役割の変化を虹の形で表したものです。ライフキャリアレインボーによって社員の現状や今後の方向性の把握ができるため、キャリア支援につなげやすく、社員のエンゲージメント向上が期待できるでしょう。
しかし、どのように活用すれば効果的か、イメージしにくいのではないでしょうか。また、価値観やライフスタイルなどの個人情報にも配慮しなくてはなりません。
この記事ではライフキャリアレインボーの意味やメリット、実践方法を解説します。社員のエンゲージメント向上を図りたい方は、ぜひご覧ください。
ライフキャリアレインボーとは
ライフキャリアレインボーとは、現在を中心として個人の人生の過去から未来までを虹の形にしたものです。家庭・仕事・社会などの役割を明確化することによって「生涯を通した自分らしさ」をキャリアとして表現します。
ライフキャリアレインボーは、教育学者ドナルド・E・スーパー氏によって1950年代に唱えられました。なお、ライフキャリアとは幼少期から老齢期のさまざまなライフイベントを経験することです。
組織内では、職業人としてのライフキャリアの考察を社員に促進させることで、モチベーションの向上や退職後の充実した人生につながると考えられています。
ライフキャリアレインボーの3つの考え方
ライフキャリアレインボーは一見すると複雑ですが、以下の3つを押さえると理解しやすくなります。
1.長期的な時間軸
ライフキャリアレインボーの重要な要素は、「人間の一生」という長期的な時間軸です。
人は子ども・学生・職業人などの役割を時間の経過とともに遂行し、多様な経験を積んでいきます。それらからキャリアアンカー(自分らしさ)を見つけ出せば、キャリアプランやキャリアパスにより反映させやすくなるでしょう。
2.公私のバランス
ライフキャリアレインボーは、公私のバランスも重視しています。仕事や社会的つながりなどの公の立場と、配偶者・親など私の立場のバランスをとりながら多様な経験を積み、自分らしさを探していきます。
3.キャリアアンカー(自分らしさ)
人は時間をかけ、公私を通して多様な経験を積み、キャリアアンカー(自分らしさ)を探していきます。
「自分らしさ」が見つからないと、ステレオタイプなキャリアになりがちになるでしょう。そのため、ライフキャリアレインボーで過去の棚卸しや現状分析を行い、自分ならではの価値観を洗い出します。そのうえでキャリアプランを立て、そこに行き着くキャリアパスを考えることが重要です。
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ライフキャリアレインボー図の作成方法
ライフキャリアレインボーの作り方を以下に解説しますので、社内で導入する際の参考になさってください。
5つのライフステージ
ライフキャリアレインボーには「ライフステージ」という時間軸のベースがあります。
ライフステージは以下の5つに区分され、個人のキャリアは年齢に応じた課題を達成しながら発達すると考えられています。
- 成長段階(0~14歳)
- 探索段階(15~24歳)
- 確立段階(25~44歳)
- 維持段階(45~64歳)
- 解放段階(65歳以上)
8つの役割(ライフロール)
ライフロールとは人が生涯のなかで担う役割のことで、家庭・地域社会・職場などにおいて割り当てられます。社会人以降は職業人であり配偶者・家庭人・親であるなど役割を重複することが一般的といえるでしょう。
ライフキャリアレインボーの8つの役割(ライフロール)は以下の通りです。
- 子ども
- 学生
- 職業人
- 配偶者
- 家庭人
- 親
- 余暇人
- 市民
ワークシートの記入方法
つぎに、ワークシートの記入方法を説明します。まずはワークシートに記入してから、ライフキャリアレインボー図に反映させると作りやすいでしょう。
1.現状を把握する
ワークシートの「現在」の列に、それぞれの役割について具体的な活動や出来事を記入します。記入例のように柱状グラフを作るイメージで色の塗り分けをして、役割の配分を表してください。
それぞれの役割にどのくらいの時間や労力を使っているかを考えて、合計が100%になるように振り分けます。
2.過去を振り返る
過去についても「現在」の列と同じように記入します。5年もしくは10年スパンなどで区切れば、ライフステージの変化やライフイベントが起きた時期を意識しやすいです。
転機となった出来事や夢中になっていた活動、達成感を得た経験などを挙げておくと自身の価値観に気づきやすくなります。
3.将来像を描く
将来については、想定される役割やなりたい姿から、理想のライフロールバランスを描きます。
具体的なアクションや立場、達成時期を想定すれば目標が明確になるため、理想に向けてどのように改善していくかを考える材料になるでしょう。
4.変化に備える
人生には予期せぬ出来事が起こることも少なくないため、ライフキャリアレインボーの全体像を見て、将来の変化に備えます。
ライフキャリアレインボーが注目される背景
ライフキャリアレインボーに注目が集まる背景として、個人や企業、政府などを取り巻く社会情勢の変化が挙げられます。
人生100年時代の到来
個人の平均寿命が延びた「人生100年時代」においては、ライフキャリアの重要性が高まっています。充実した人生を送るには、仕事だけでなくプライベートも重要です。
また、仕事や育児・介護などを乗り切ってサバイブするためには、より計画的に生きる必要があります。
長生きが当然になったのは、人類史上初めてのことです。何歳まで働くか、老後をどのように楽しむかなど試行錯誤の段階ともいえます。そのため過去の棚卸しや現状分析によって、未来へのヒントにつながるライフキャリアレインボーが注目されているのです。
企業の役割の変化
企業の役割は「終身雇用」から「社会で活躍できるための支援の継続」に変化しています。
昨今ではパラレルキャリアや越境学習などの社外活動が認められつつある状況です。
キャリア開発においても、社員がキャリア設計をして企業はサポートする役割になりました。
働き方の多様化
終身雇用が当たり前でなくなったことや、働き方改革や新型コロナ禍を通じて、働き方が多様化しました。
人材不足も課題となっているため、パート雇用やパラレルワーク、リモートワークなどの働き方が普及します。
就業意識も変化し、生活環境や価値観を重視した働き方も現れました。
政府主導によるキャリア支援の推進
政府は、労働者の自発的なキャリア開発と、企業によるキャリア支援の促進を求めています。それに伴い、共働き世代は増加を続けているため、子育てと仕事の両立を可能にするキャリア支援の重要性も増しているのです。
企業がライフキャリアレインボーを実施するメリット
ライフキャリアレインボーによって社員のライフキャリアを把握すれば、効果的な支援につながりやすくなるためエンゲージメント向上などが期待できます。
社員のキャリア自律を促進させモチベーションを高める
キャリア自律とは、社員がキャリア作りと学習に対して意欲的に取り組み続けることです。
ライフキャリアレインボーは、生涯を通してキャリアを構築するという視点を持たせてくれます。そのため社員自身がキャリア作りに主体的に取り組むことを促す効果があるのです。
仕事や学習が、人生というキャリアをよりよくする要素であるとの理解を促進すれば、モチベーションの向上が期待できます。
ライフキャリアの把握がエンゲージメント向上につながる
社員の現在のライフキャリアやキャリアプランが把握できれば、それぞれの状況に合わせたサポートやキャリア支援の提供につながりやすくなり、社員満足度の向上が期待できます。
たとえば乳幼児がいる社員には短時間勤務制度を適用するなど、就業形態や業務内容に反映すれば、社員に働きやすい環境を提供できるでしょう。
社員の知見が広がる
家族・地域社会との関係性や交流によって、仕事だけでは得られない経験を積むことができるため知見が広がります。社外で得たスキルや人脈は、企業に還元される可能性もあるでしょう。
本業とは別のキャリアを築くパラレルキャリアなどで得た経験も、新しいアイデアとして業務に活きるかもしれません。
ライフキャリアレインボーを企業で実践する方法
社員のライフキャリアを把握するために、ライフキャリアレインボーを社内で実践する方法について説明します。
1.ライフキャリアレインボーの様式を用意する
まずは以下のようなワークシートとライフキャリアレインボーの様式を準備します。
ワークシートの様式
2.ライフキャリアレインボーの作成を社員に依頼する
社員にワークシートへの記入をお願いします。
書き方の順序は以下の通りに行えばスムーズにできるでしょう。
- 現状を把握する
- 過去を振り返る
- 将来像を描く
- 変化に備える
3.ライフキャリアレインボーを分析する
社員のライフキャリアレインボーから、現状の課題や将来の計画などを分析し、ライフキャリアを把握します。
4.キャリアパスに反映させる
ライフキャリアレインボーを分析した結果から、社員ごとに適したキャリア支援ができそうであれば行います。
ライフキャリアレインボーを社内で実施する際の注意点と代替策
ライフキャリアレインボーを社内で実施する場合には、プライバシーへの配慮が必要です。ライフキャリアレインボーの導入が難しければ、代わりに面談などでニーズを把握してもよいでしょう。
社員のプライバシーに配慮する
ライフキャリアレインボーは、家族としての役割や社会活動を記入するプロセスがあるため、個人情報の取り扱いには充分に注意してください。
ライフキャリアレインボーは、個人よりも第三者が分析したほうがより客観的に評価できます。また、社員のライフキャリアを把握すれば企業側もより必要な支援ができ、社員のエンゲージメントが向上するなどのメリットもあるでしょう。
ただし、働き方が多様化した近年では、社員の価値観やライフスタイルはさまざまです。プライベートを企業に知られたくないなどの反対意見が多い場合は、回収や分析をしないほうがよいでしょう。
そのような場合は、社員各自がライフキャリアレインボーを記入し、分析するにとどめます。
代替策として面談を行う
ライフキャリアの把握の代替策として、1on1の面談時に社員にさりげなく現状の悩みや将来のプランについてヒアリングするとよいでしょう。可能であれば希望に沿った働き方の提供やキャリア支援が行えます。
まとめ
ライフキャリアレインボーは「生涯を通した自分らしさ」をキャリアとして表現するものです。仕事・家庭・社会での役割を通して一人ひとりの現状や方向性が見えるため、企業は社員に適切なサポートを行う判断材料として使うことができます。
ただし、プライバシーには充分に配慮しなくてはなりません。ライフキャリアレインボーの実施が難しいのであれば、代替策として社員との面談から必要なサポートを把握し、支援につなげてもよいでしょう。
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