退社とは
冒頭でも述べたとおり、退社という言葉には「仕事を終えて帰る」と、「勤務している会社を辞める」の2つの意味があります。間違えた場面で使用して周囲に誤解を与えることがないよう、文脈や伝え方に注意が必要です。
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仕事を終えたときの「退社」
仕事を終えて帰る際の「退社」は、日常的に使われる表現です。
特に、その日の業務が終了して職場を後にする際に用いられます。帰宅するタイミングで「退社します」などといった言い方で使用するのは、間違いではありません。ただし、たとえば取引先などから「●●様はいらっしゃいますか?」などといった電話がかかってきた場面では、「●●は退社いたしました」とだけ伝えると、「●●さんは会社を辞めたのか!」などといった誤解を相手に与えかねません。
混乱を避けるためにも、会社を辞めることを意味する「退社」と混同されないように使用することがおすすめです。
会社を辞めたときの「退社」
「退社」は、会社を辞めること、いままで勤務していた会社との雇用関係を終了することを指す場合もあります。この意味での「退社」は、「離職」や「退職」などといった言葉と同義であり、会社との雇用契約が終了することを示すものです。ただし、使いようによっては、退職した事実よりも、ただ単に「今日の勤務が終わって帰宅した」などと受け止められる可能性もあります。きちんと退職した事実を伝えたい場合は、「退社」よりも「退職」を使った方が良いです。
「退社」の英語表現
「退社」は英語ではどのように表現するのか、2つの意味の違いを解説します。
「退職する」の意味合いでは、「leave the company」「retire from the company」などの英語表現が該当します。この意味での「退社する」は、会社を辞めることを指します。つまり、その会社との雇用関係を終了することです。正式な場面や書類で使われることが多く、会社の一員としての立場を離れることを表します。
もう一方の「帰宅する」の意味合いで使用する場合、「leave work」「leave the office」などの表現が用いられます。この意味での「退社する」は、勤務時間が終わり、職場を離れて自宅に帰ることを指します。日常的に使われる表現で、業務終了後にオフィスを後にする際に使います。
「退社」と間違えやすい言葉
「退社」には、類似する言葉が数多く存在します。そのため、「退社」という意味合いで使用したにもかかわらず、用法を間違えている可能性があります。類似する言葉のなかから8つの言葉をピックアップして、それぞれの意味と、使用上の参考となる例文を紹介します。
退職
「退職」は、会社を完全に辞めることを意味する言葉です。長年勤務し続け、定年を迎えて退職するケースもあれば、自己都合やそのほかの止むを得ない理由で中途退職する場合もあります。
退職と同じ意味合いで「退社」が使われることもあります。
例文:
・山田は、先月をもって退職させていただいております
・65歳に達したため、今年5月に長年勤めた会社を定年退職しました。
・退職日までに済ませておくべき手続きを教えてください。
退勤
「退勤」とは、勤務時間が終了して職場から離れることを指す言葉です。一般的に退勤と言えば、オフィスから離れる意味合いで使用されますが、多様な働き方が普及している現在では、リモートワークや在宅勤務で終業時間を迎える場合でも「退勤」が使用されます。
例文:
・時間になりましたので、退勤いたします。
・本日はノー残業デーなので、終業時刻になったら各自退勤してください。
・退勤時間がきちんとわかるよう、タイムレコーダーを忘れずに打刻する必要があります。
離職
「離職」とは、仕事を辞めること全般を指す言葉です。「仕事から離れる」「職務から離れる」など、退職と似た意味合いで使用されます。
例文:
・木村さんは出産と子育てのため、看護の現場からしばらく離職していました。
・離職後は旅行に行ったり、資格取得のための勉強をしたりするなど、有意義な時間を過ごしました。
・以前の仕事を離職した理由を教えてください。
退場
「退場」は、会場や式場、競技場、舞台などから去ることを意味する言葉です。特に、俳優が舞台から去る場面で使用されます。退場は、退職や退勤により会社や職場を離れることとは異なります。
例文:
・その女優は素晴らしい演技を披露した後、舞台の下手へと退場した。
・その選手は試合で無謀なプレーを繰り返し、退場処分となった。
・ご退場の際は忘れ物がないようご注意ください。
退任
「退任」とは、役職や任務、職務などから退くことを意味する言葉です。特定の役職や職務から離れることを指す意味で使用われる場合でも、必ずしも会社を退職するとは限らず、同じ職場に残り続けるケースもあります。
例文:
・山口さんは今年の3月末をもって広島支店の支店長職を退任し、本社へ戻りました。
・私は5月15日をもちまして任期満了となり、役員を退任いたしました。
・現職を退任した後も、相談役として会社に残り続ける予定です。
退学
「退学」とは、何らかの理由で学校を辞めされられることを指す言葉です。学生本人の意思によるものではなく、学校側の決定により去らなければならない場面で使用されます。
学生が自らの意思で学校をやめる場合には、通常、「中退」が使用されます。
例文:
・山田さんは問題行動が多かったため、学校側の判断により退学処分となった。
・高校入学後は不登校が続いて進級できず、最終的に中途退学となりました。
・退学後はさまざまな職を転々とする生活を送っている。
帰宅
「帰宅」とは文字どおり、自宅に帰ることを意味する言葉です。勤務時間が終了して職場を去る「退勤」「退社」とは、「帰る」という動作が含まれている点は同じです。ただ、「退勤」「退社」は必ずしも家に帰るとは限らず、どこかに立ち寄るケースも含みます。
例文:
・本日は体調不良のため、帰宅させていただきます。
・帰宅後は、夕食を食べ、スマホで動画を観たりしてのんびり過ごしています。
・彼は夜遅くに帰宅した。
辞職
「辞職」は、個人が自らの意思で現在の職務や役職を辞めることを意味する言葉です。退職と同様、会社を辞める意味合いも含まれています。一般的には、課長以上の役職者が現職を辞めて退職する際に使用される傾向があります。
例文:
・私は昨年3月末をもって取締役を辞職し、30年間の会社員生活に終止符を打ちました。
・政治不信の責任を取り、原田内閣は総辞職した。
・坂口会長は健康不安を理由に辞職を願い出た。
「退社」の使い方とは
先述のとおり、「退社」には「仕事を終えて帰る」「会社を辞める」の2つの異なる意味があるため、混乱や誤解が生じないよう、適切に使用することが大切です。
「退社」の主な6つの使い方をそれぞれ見ていきましょう。
仕事を終えて帰宅する場合
これは、通常の勤務時間が終わった後、職場を離れて帰宅することを意味する使い方です。特に、定時に上がる場合は、時間どおりに業務を終えて帰ることを強調する意味で使用されます。
たとえば、終業時間後、帰宅した社員宛てに得意先から電話がかかってきた場合、「〇〇は本日退社いたしましたので、明日改めてご連絡させていたただきます」などと返答します。
例文:
・今日は定時に退社します。
・本日、山口はすでに退社いたしました。
・本日は定時で退社し、明日も定時に出社予定です。
会社を辞める場合
これは、「退職する」という意味で「退社」を使用する方法です。定年まで勤め上げた会社を退職する場合、あるいは中途退職する場合でも、会社を辞める意味合いで使用されます。
会話文よりも、正式な文書や報告などで使われることが多い表現です。
例文:
・彼は長年勤めた会社を退社しました。
・小山田氏は7月5日付で退社いたしました旨をご報告申し上げます。
・お問い合わせいただいた山田は、昨年末をもって退社しております。
会議や業務の終了後に帰宅する場合
これは、会議や特定の業務が終了した後、職場を離れて帰宅することを意味する使い方です。「定時に上がる」という意味合いではなく、特定の業務が終わったらすぐに帰宅することを示しています。
例文:
・会議が終わり次第、退社します。
・取引先から戻ったら、すぐ退社する予定です。
・本日は、今の仕事が終わったらすぐに退社する予定なので、報告は明日の出社後でもよろしいでしょうか。
正式な場面での退職通知の場合
このケースでは、正式に会社を退職する予定・意思を相手に伝えます。退職の日付を明確にして、会社との雇用関係が終了することを知らせるために使用します。
例文:
・私は来月末で退社いたします。
・弊社取締役の山田は、来月7日をもって退社の予定です。
・一身上の都合により、来年3月末をもって退社させていただきます。
一時的な外出や外回りの終了後に帰社しない場合
たとえば、出先での業務が終わり、オフィスに戻らずに直接帰宅することを意味する使い方です。営業や出張など、外での業務を終えた後に直帰する場合に使用されます。
例文:
・外回りの仕事が終わったので、そのまま退社します。
・本日は出張先から戻り次第、会社に戻らず退社する予定です。
・課長には、本日は会社に戻らず退社するので、報告は明日いたしますとお伝えください。
年末や長期休暇前の挨拶として
年末や長期休暇前に使われる表現で、その年や期間の業務がすべて終了して帰宅することを伝えるケースです。同僚や取引先に対して、年末の挨拶を行う際にも使用されます。
例文:
・本年の業務はこれで終了し、退社いたします。皆様、良いお年をお迎えください。
・本日はこれにて退社させていただきます。明日から夏季休暇に入り、次の出社は8月20日の予定です。
・明日からゴールデンウィークで海外旅行に出発するので、今日は定時に退社します。木村さんも良い休暇をお過ごしください。
履歴書での「退社」の使い方
「退社」は、履歴書の職歴欄でも、会社を辞めたことを記載する際に使われる表現です。
ただし、「退社」には「勤務を終えて会社から出る」という意味合いもあるため、より厳密な「退職」を使う方が、会社を辞めたことが伝わりやすいです。したがって、「退社」よりも「退職」を使う方がおすすめです。
自営業者や公務員、医療従事者などの場合は「退社」ではなく「退職」、研究所の職員などが退職する場合は「退所」、官公庁を辞する場合は「退庁」とするのが正しい記載の仕方です。
勤務先の性質や役職の種類などに応じて、適切な表現を使用するのがおすすめです。
アルバイトやパートなどにおける「退職」は?
履歴書にアルバイトやパート、契約社員の職歴を書く際も、「退社」「退職」のいずれかの言葉を記載することが可能です。
入社時期と退社時期は通常どおり記載し、「〇〇株式会社入社(契約社員)」のように雇用形態を明記しましょう。
なお、履歴書を作成・提出した段階で、まだ現状の職場で勤務を続けている場合は、「〇〇年〇月〇日 退職(退社)予定」あるいは「現職は〇〇年〇月〇日をもって退社(退職)予定です」などと記載する必要があります。
応募先には、今の職場から退職する予定と意思を明確に伝えましょう。
まとめ
「退社」には「仕事を終えて帰る」と「勤務していた会社を辞める」の2つの意味合いがあります。混同して誤解を与えないよう適切に使い分けることが大切です。「退社」と類似している「退勤」「退職」「離職」などの言葉も、厳密な意味を把握して適切な場面で使うよう意識しましょう。定時で上がる場合や、直帰する場合、履歴書で使用する場合など、微妙に異なる状況での使い分けも重要です。
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