リーダーシップ論とは?変革の歴史や組織が求めるリーダー像について解説


リーダーシップ論とは?変革の歴史や組織が求めるリーダー像について解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

リーダーシップ論とは、組織を導き結果を出すリーダーの共通項やプロセスを検討する理論のことで、人材の選抜や育成に役立ちます。

リーダーシップ論は、時代によってさまざまな議論がなされ、多数発表されてきました。本記事では、リーダーシップ論の変遷や最新のリーダーシップ論を紹介します。人材育成の仕組みを検討している方や、自社に合うリーダーの人材像を模索している方は、ぜひ参考にしてください。

リーダーシップ論の定義

リーダーシップ論とは、優れたリーダーが持つ資質や行動を研究し、目標達成のポイントを導き出す理論のことです。リーダーシップは日本語に訳すと、「指導力」や「統率力」と表現されます。リーダーにはチームメンバー(フォロワー)を指導し、組織の目標達成のために導く行動が求められるのです。

リーダーシップ論については1900年代から議論が交わされ、現代までに多くの理論が発表されてきました。フォロワーを導くために必要なリーダーシップの形は、時代とともに変化しているといえます。リーダーシップ論の基礎知識については、以下の記事もご覧ください。

「リーダーシップ」については、こちらの記事をご確認ください。

関連記事:リーダーシップとは?概要や必要なスキル、具体的な高め方も解説

組織に求められるリーダーシップ論の変遷



リーダーシップ論は時代の流れによって変化し、複数の理論が発表されました。最初にリーダーシップ論が提唱されたのは1940年代以前です。当時は、優れたリーダーは生まれながらにリーダーの資質を持っているとされていました。しかし、現代では時代に合わせて柔軟に対応できる人材が、リーダーとして求められています。

これまで研究されてきたリーダーシップ論の中で、代表的なものは以下の6つです。

  • 特性理論
  • 行動理論
  • 条件適合理論
  • リーダーシップ交換・交流理論
  • 変革型リーダーシップ理論
  • カリスマ型リーダーシップ理論


時代の流れによって変化したリーダーシップ論について、詳しく解説します。

1. 特性理論

特性理論は、優れたリーダーは生まれながらにしてリーダーの資質を備えているとする理論です。1940年代以前は、特性理論がリーダーシップ論の中心的な考え方でした。

特性理論では、リーダーに適している人材とそうでない人材の違いを分析し、優れたリーダーの特性を複数挙げました。代表的な能力に、知能・指導力・想像力・社交性などがあります。

しかし、特性理論では優れたリーダーに共通する資質が抽象的かつ、すべてのリーダーに共通する項目を導き出せませんでした。特性の判断基準が曖昧な点や、資質を持っていたとしてもリーダーとして結果を出せない場合があるといった問題点も指摘されています。

2. 行動理論

行動理論は、リーダーにもともと備わっている素質の研究ではなく、優れたリーダーはどのような行動を取るのかに注目した理論です。リーダーシップは先天的な素質ではなく、訓練や経験で身につけられる能力だとしています。

行動理論の代表的な考え方がPM理論です。PM理論とは、Performance(目標達成能力)とMaintenance(集団維持能力)の2軸でリーダーを分類する方法のことです。P軸とM軸で評価される点は、以下のとおりです。

P軸:チームで目標を達成するための行動力や指導力、フォロワーの管理力

M軸:フォロワーへの気遣いやコミュニケーション能力

PM理論では、P軸・M軸ともに評価が高いリーダーが理想のリーダー像だと考えています。

PM理論を用いて人材を評価すると、自社に不足している人材や伸ばす必要がある能力を客観的に判断できます。現代でも、日本の大手企業でリーダーシップ人材育成に活用されています。

3. 条件適合理論

1960年代に新たに生まれた理論が、条件適合理論(コンティジェンシー論)です。条件適合理論とは、フォロワーや状況によってリーダーシップの発揮方法を変更する考え方を指します。

あらゆる状況で結果を出せる普遍的なリーダーは存在せず、リーダーは置かれた状況によって取るべき行動が変わると考えられるようになりました。

条件適合理論の代表的な考え方に、「パスゴール理論」があります。パスゴール理論は、フォロワーが目標(ゴール)を達成するために、リーダーはどのように指導(パス)をするべきなのかを考える理論です。

リーダーはフォロワーに対し、集団が置かれている環境的条件とフォロワーの要因を検討した上で、「指示型」「支援型」「参加型」「達成志向型」の4つの中から最適な指導法を選択します。状況に応じてリーダーシップを変化させることで、チームを正しい方向に導けるのです。

4. リーダーシップ交換・交流理論

リーダーシップ交換・交流理論は1970年代に登場し、リーダーとフォロワーの関係性に初めて着目した理論として注目されました。リーダーとフォロワーが価値交換を行うことで、高いパフォーマンスを発揮できるとする理論です。

リーダーはフォロワーに対し、給料や昇給などの目に見える報酬だけでなく、注目・教育などの目に見えない価値も提供します。フォロワーは与えられた報酬や価値に感謝し、リーダーへの貢献や尊敬などを返すようになるのです。リーダーシップ交換・交流理論では、お互いに与え、与えられる関係性を築くことが、良いリーダーシップを発揮することにつながると考えています。

5. 変革型リーダーシップ理論

変革型リーダーシップ理論とは、組織を存続させるために企業を変革させるリーダーシップのことです。1980年代に見られるようになった理論で、変化する時代の流れの中で組織を存続させるには、常に企業は変化していく必要があるとの考えから生まれました。時代の流れを読んで組織やフォロワーに働きかける、能動的なリーダーが求められるようになったのです。

企業業績の悪化や伸び悩みは、従来のやり方に問題があることが多いといわれています。古いやり方にこだわると、業績悪化や倒産のリスクもあるのです。変革型リーダーシップは企業が持つ問題を解決し、新しい事業やビジネススタイルの導入も進められるため、企業の発展に貢献できます。

変革型リーダーシップに求められる素質は、人を惹きつける力やプレゼンテーション能力などです。もともとの素質がある程度求められるため、外部から選出したり、時間をかけて従業員を観察する必要があるでしょう。

6. カリスマ型リーダーシップ理論

カリスマ型リーダーシップ理論は、周りを巻き込み、カリスマ性を発揮する人材がリーダーを務めるべきだという考え方です。カリスマ性を持った人材が周囲に働きかけることで、組織としての団結力や上昇意欲が上がるとしています。

カリスマ型リーダーシップを持つ人材として有名なのは、Appleの創始者であるスティーブ・ジョブズ氏です。ジョブズ氏のアイディアや牽引力により、Appleは世界的なヒット商品を多数生み出しました。

カリスマ型リーダーシップの懸念点は、リーダーが交代した場合にフォロワーの士気が下がるおそれがある点です。「この人に付いていきたい」と思う気持ちが組織のモチベーションになるため、次のリーダーにカリスマ性がない場合は組織が停滞するケースがあります。

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関連記事:リーダーの役割は?向き・不向きの見分け方や必要なスキル、育成方法を解説

最新のリーダーシップ理論5選

リーダーシップ論は、時代に合わせて変化を遂げてきました。近年はさらに研究が進み、新しいリーダーシップ理論も多数登場しています。代表的なリーダーシップ理論は、以下の5つです。

  • オーセンティック・リーダーシップ
  • サーバント・リーダーシップ
  • シェアド・リーダーシップ
  • ティッピング・ポイント・リーダーシップ
  • ポジティブ・リーダーシップ


最近の研究ではリーダーはもともとの素質だけでなく、経験や勉強で育成できるとの考え方も広まりつつあります。最新のリーダーシップ論を学び、自社に必要な人材を育成するためのヒントにしてください。

1. オーセンティック・リーダーシップ

オーセンティック・リーダーシップは、自分自身の価値観や考え方をベースに組織を引っ張っていくリーダー論です。オーセンティックは、日本語に訳すと「本物の」「真正の」などの意味があります。従来のリーダーの意見や行動をなぞるのではなく、自分の信条に従い、自分らしく行動できる人がリーダーシップを取るべきとの考えで生まれました。

オーセンティック・リーダーシップを発揮するためには、地位や名声のために仕事をするのではなく、自分の価値観や倫理観をモットーに行動することが重要です。自身の価値観に沿った一貫性のある発言と行動ができるように、常に学び続けることも求められます。

従来の強いリーダー像に捉われずに自分らしいリーダー像を描けるため、もともと備わっている素質にかかわらず、多くの人が目指せるリーダー像といえるでしょう。

2. サーバント・リーダーシップ

サーバント・リーダーシップは、リーダーがフォロワーを信頼して奉仕し、組織を導いていく考え方です。従来のトップダウン式の指導とは異なり、フォロワーとの信頼関係を重視し、協力し合いながら組織を成長させます。

サーバント・リーダーシップは「奉仕する」といっても、リーダーがフォロワーの言いなりになることではありません。リーダーは組織が目指す方向性や戦略を提示し、フォロワーが目標を達成できるようにサポートするのです。

サーバント・リーダーシップはフォロワーの話に耳を傾け、寄り添う姿勢が求められるため、傾聴力や共感力が必要です。一人ひとりの個性を伸ばし、可能性を引き出す能力も求められます。フォロワーはリーダーから尊重され、ある程度裁量を持って働けるため、能動的な組織の構築を目指せるでしょう。

3. シェアド・リーダーシップ

シェアド・リーダーシップとは、組織のメンバーが各々リーダーシップを持って行動する状態のことです。明確なリーダーは存在しますが、一人ひとりが適材適所でリーダーシップを持つことで、一人のリーダーに頼る場合よりもパフォーマンスの向上が期待できます。

シェアド・リーダーシップが求められる背景として、VUCA時代に突入していることが挙げられます。VUCAはV(Volatility:変動性)、U(Uncertainty:不確実性)、C(Complexity:複雑性)、A(Ambiguity:曖昧性)の頭文字の造語です。時代の移り変わりが速く、普遍的で多様な考え方が生まれる現代を表しています。世の中に変化が起こった際に、組織の一人ひとりがリーダーシップを持つことで、柔軟な判断や意思決定が下せるようになるのです。

フォロワーは自分の意見を発言できるのはもちろん、常に他のメンバーの意見を取り入れられます。そのため、自主性や結束力が生まれる効果が期待できるでしょう。

4. ティッピング・ポイント・リーダーシップ

ティッピング・ポイント・リーダーシップとは、リーダーの熱意やアイデアで組織を巻き込み、企業に大きな転換をもたらすリーダーシップのことです。ティッピング・ポイント・リーダーシップは、社内の反対意見を説得し、組織内の多くの人の心を動かすことが重要視されます。既存市場が飽和状態となる中、ブルーオーシャンを見つけて先行者利益を得るためには、組織を変えたい、新しい事業を生み出したいといった強い思いを持つ人がリーダーとして必要になるという考えで生まれたリーダーシップです。

少数の熱意ある人の力が組織全体を変えていくリーダーシップであるため、イノベーションやブルーオーシャン戦略に向いています。課題を抱えている企業や変革期にある企業に向いているリーダーシップといえるでしょう。

5. ポジティブ・リーダーシップ

ポジティブ・リーダーシップとは、リーダーのポジティブな意識や行動がフォロワーに伝播し、フォロワーの成長を促すリーダー像のことです。ポジティブな雰囲気や組織を作ることで、組織全体が前向きに行動する効果が期待できます。

ポジティブ・リーダーシップではフォロワーを信じ、一人ひとりの良い面を引き出して伸ばすことが大切です。リーダーから認められることで、フォロワーは自分の価値を感じられ、自信を持ってポジティブな行動を起こせるようになります。

ポジティブ・リーダーシップは、事業が安定している企業が従業員をより成長させたい時に取り入れるとよいリーダーシップです。能動的に働く従業員が増えることによって、企業にさらなる利益をもたらすでしょう。

関連記事:リーダーシップの種類とは?行動・タイプによる違いや必要なスキルも解説

リーダーシップ論の歴史から考える今後のリーダー像



今後求められるリーダーは、フォロワ一人ひとりの能力を活かして成長を促す力や、時代の変化を予測し、それに対応する柔軟性を持つ人材です。また、率先してフォロワーの話に耳を傾けて理解する、アクティブリスナーになることも求められます。

リーダーシップ論は時代背景によって変化し、これまで複数のリーダーシップ像が生まれてきました。現代ではトップダウン型の支配的なリーダーシップよりも、サーバント・リーダーシップやシェアド・リーダーシップのようにフォロワーを支え、協力し合うリーダーシップへと変化しています。

従来のリーダーシップでは牽引力や指導力、カリスマ性などの素質が必要とされていました。しかし、今後のリーダーはコミュニケーション能力や傾聴力、柔軟性などが求められるため、経験や勉強次第で誰もがリーダーシップを発揮できます。

自社でリーダー人材を育てる際には、自社に足りないリーダーや今後必要になるリーダー像を検討した上で選出する必要があります。リーダー候補の人材にはリーダーには種類があることを伝え、組織の課題を共有し、一人ではなくチーム全体で解決できるように意識付けしてください。

まとめ

リーダーシップ論は、1940年代以前に特性論が発表されてから、時代によって変化してきました。従来のリーダーシップではトップダウン型が多く見られましたが、現代は時代によって柔軟に変化し、フォロワーと協力し合いながら目標達成を目指すリーダー像が主流になっています。リーダー一人に頼ることなく、多種多様なスキルや考え方を持った人材が各々活躍することで、組織の向上が目指せる時代になったのです。

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リーダー人材の選定にお悩みの方や、そもそも自社に足りていない人材のタイプを把握できていないとお悩みの方は、ぜひ利用してください。

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