こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。
近年注目されているナレッジトランスファーについて徹底解説します。本記事を読めば、企業にとって貴重な財産となる従業員の経験とスキルを継承・蓄積できるようになるでしょう。
ナレッジトランスファーとは何か
ナレッジトランスファーとは、近年ビジネスの知識継承で使われるようになった概念です。様々な場面で使われる汎用性の高さから、詳しく解説しますのでぜひご覧ください。
ナレッジトランスファーは日本語で「知識の移転」
ナレッジトランスファー(Knowledge Transfer)とは、日本語で「知識の移転」という意味であり、個人が所有している特定の知識を他人に引き渡すことを指します。
ビジネスシーンで使われるケースが多く、具体的には以下のようなシーンで用いられます。
- 異動・退職時の部下や同僚への業務引き継ぎ
- チーム内の部下や同僚に仕事を教える時
- 組織のスキル底上げ等の戦略的な目的
ナレッジトランスファーは名称が長く言いづらいことから、英語表記の頭文字を取って「KT」、もしくは「ナレトラ」という略称でも呼ばれています。
ナレッジトランスファー実践のメリットは3つ
ナレッジトランスファーを実施することで、企業は主に以下の3つのメリットを得ます。
- 企業力を根本から引き上げる
- 従業員自身のキャリアアップ
- ノウハウの資産化
これらのメリットから、ナレッジトランスファーの実施に取り組む企業は年々増加しています。それではそれぞれのメリットについて詳しく解説します。
企業力を根本から引き上げる
ナレッジトランスファーは、企業力を根本から引き上げることが可能です。企業力の引き上げは、企業競争力の向上につながります。今の世の中、競合他社が存在しない業種などありません。同業他社よりも高い企業力を持つことは、企業存続において常に求められる課題でしょう。
ナレッジトランスファーによる従業員への知識継承は、以下の効果を生むため企業力を大きく引き上げます。
- 生産性の向上
- 人件費の削減
- 優秀な人材確保
- 余剰金活用による新規事業創出
従業員一人ひとりの能力向上は生産性を上げ、業務効率を向上します。それによって不必要なコストが削減でき、その余った資金を優秀な人材確保や宣伝・広告、新規事業創出などに回すことができます。
従業員自身のキャリアアップ
ナレッジトランスファーで一番恩恵にあずかれるのは、その知識を受け継ぐ従業員です。新たな知識を受け継げば、業務ノウハウが上がり、従業員一人ひとりのキャリアアップにつながります。従業員のキャリアアップなくして、企業力の強化はなしえません。
従業員一人ひとりのキャリアアップが結集し、企業力アップにつながり、企業に多大なるメリットを生み出すのです。
また、知識を伝える側も、引き継ぐ際に新たな気づきを得られます。両者にメリットが生まれるのも、ナレッジトランスファーを実施するメリットの1つです。
ノウハウの資産化
従業員のノウハウ(知識)が代々受け継がれ続ければ、企業はそのノウハウを資産化できます。これは、企業にとってかけがえのないメリットです。
転職時に最も重要視される採用条件が、業務経験や知識などのノウハウになります。この2点が優れているほど、転職は有利に進められるでしょう。それほど企業は、従業員のノウハウを重要視しているのです。
長い時間をかけて培った従業員のノウハウの蓄積は、企業にとって大きな資産になります。また、このノウハウは商品化や、講演会の開催などの新たなビジネスにも転用可能です。近年は人材開発に力を入れる企業が少なくありません。収益が見込めるビジネスに成長する可能性は十分あるでしょう。
ナレッジトランスファーは2つの要素から成り立っている
知識と一口に言っても、人間の持つ知識は以下の2つに分類されます。
- 暗黙知の知識
- 形式知の知識
これらの知識は特徴がまったく異なるため、知識の共有や移転方法も大きく違います。
ナレッジトランスファーで引き継ぐ知識には、この2つが存在するので、それらの違いをしっかりと理解しましょう。
1:暗黙知の継承
暗黙知とは、個人が勘や直感によって得た知識です。そのため言語化が難しく、ナレッジトランスファーしづらい知識と言われています。例として、自動車の運転技術が挙げられます。自動車の運転方法は教習所で習えます。しかし、プロ級になるには、運転時間を積んで、運転技術を専門家から教わる必要があります。
2:形式知の継承
形式知とは、言語化できる知識です。言語による体系化が済んだマニュアルやデータだけでなく、口頭での伝達が可能なため、比較的ナレッジトランスファーしやすい知識と言われています。
形式知のナレッジトランスファーで一番身近な例が、小中学校など教育機関で受ける授業です。マニュアル化された教科書や参考書を使って、知識の伝達を受けています。
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ナレッジトランスファーの推進は5つの手法がある
不安なくナレッジトランスファーに取り組めるよう、研究者ナンシー・M・ディクソンが提唱した以下の5つの方法を紹介します。
- 近接移転
- 連続移転
- 遠隔移転
- 専門知移転
- 戦略移転
これらの方法は「業務の発生頻度」と「定型業務と非定型業務どちらか」を基に、誰に対してナレッジトランスファーするのかで分類されています。
それぞれの概要は以下のとおりです。
近接移転
近接移転とは、発生頻度がひんぱんな定型的業務によって得た知識を、同じ業務をしている別のチームにナレッジトランスファーして活用できるようにする方法です。
ナレッジトランスファーの対象は形式知のため、その方法は情報共有ツールが使われます。しかし、全業務のナレッジを全てツールに上げると情報が混乱する恐れがあるため、以下の2点に気をつけましょう。
- 利用状況をモニターする
- 利用者と対象範囲を絞る
連続移転
連続移転とは、発生頻度の高い業務で得た知識を、同じチームにナレッジトランスファーして、同じチームが同一業務をする際に活用する方法です。
ナレッジトランスファーの対象は形式知だけでなく、暗黙知も含みます。そのため、その方法には定期的なミーティングの開催がおすすめです。
また開催時は以下の2点を厳守してください。
- 全チームメンバーの参加
- 互いに批判しない
必ず知識をチームメンバー全員が共有できるようにし、円滑な知識共有の妨げになる互いの批判は避けるようにしましょう。
遠隔移転
遠隔移転とは、発生頻度が高い非定型業務で得た知識を、別チームが担う非定型業務で活用できるようにナレッジトランスファーする方法です。
ナレッジトランスファーの対象は暗黙知となるため、知識を持つメンバーがチームを行き来する方法が取られています。そのため、知識をトランスファーする担当者には負担となるでしょう。
しかし、担当者にとってはデメリットだけではありません。遠隔移転では、別チームとの意見交換がひんぱんに起こるため、担当者の知識を増やす効果も期待できます。
専門知移転
専門知移転とは、発生頻度の低い定型業務で得た専門知識を、個人やチームへナレッジトランスファーする方法です。
ナレッジトランスファーの対象は形式知ですが、その方法は題目ごとの電子フォーラム開催が推奨されています。形式知ではありますが、専門性の高い内容となるため、理解を深めるには以下のシーンが必要になるからです。
- 質疑応答の場
- 受講者同士のディスカッションの場
戦略移転
戦略移転とは、発生頻度が低い非定形業務で得た知識を別チームにナレッジトランスファーして再利用できるようにする方法です。
M&Aのように極稀にしか起こらない戦略的業務で得た知識のナレッジトランスファーで、下記を担当するチーム作成が最終目的になります。
- 暗黙知
- 形式知
かなり専門性が高いナレッジトランスファーのため、この方法を必要とする企業は限られてくるでしょう。また、専門性が高いがゆえに、知識の収集・解釈・変換すべてをスペシャリストに依頼することが推奨されています。
ナレッジトランスファー推進のコツ
企業内でナレッジトランスファーに取り組むなら、まずはポイントを押さえておく必要があります。以下の4点を押さえた上で取り組めば、社内でのナレッジトランスファー推進もスムーズに進むでしょう。
- 経営陣が主体で進める
- 担当者の決定
- ツールの導入
- 従業員のケア
それでは各ポイントについて、わかりやすく解説します。
経営陣が主体で進める
社をあげてナレッジトランスファーに取り組むなら、経営陣主導で推進することをおすすめします。経営トップが推進すれば、従業員もナレッジトランスファーの重要性を認識しやすく、社内にもナレッジトランスファーの文化が浸透しやすくなるでしょう。
また、経営トップが推進しているとなれば、従業員のモチベーションも上がり、取り組む姿勢も違ってきます。
特にナレッジトランスファーに必要な時間の制約を考えれば、経営トップの理解が不可欠です。
担当者の決定
まずは担当者を決定してください。担当者選びを間違えば、ナレッジトランスファーの推進は上手くいかないでしょう。
またナレッジトランスファーの対象は何でもいいわけではありません。本当に現場で必要とされる情報を見極め、共有すべき範囲を決める必要があります。そのため、担当者には片手間でできるほどかんたんではありません。ナレッジトランスファーの定義をよく認識している人を担当者に選びましょう。
ツールの導入
ナレッジトランスファーしやすい環境作りも欠かせません。実施しやすい環境が整っていなくては、従業員はどうやればいいのかわからず、消極的になってしまいます。
消極的な従業員が多くなれば、ナレッジトランスファーの推進は頓挫するでしょう。知識を移転・共有しやすい環境作りが必要です。
それには、全従業員がオンライン上で必要情報を一元管理できる情報共有ツールをおすすめします。
物理的距離がある従業員同士でも知識の共有ができ、知識の移転も簡単です。
従業員のケア
社内にナレッジトランスファーを浸透させるには、従業員のケアが必要です。
ナレッジトランスファーは本来の業務とは別物のため、従業員には余分な心理的・時間的コストがかかります。
そのため、ナレッジトランスファーの重要性を理解していても、積極的になれない従業員も出てくるでしょう。そうなれば社内での推進はスムーズに進みません。
ナレッジトランスファーは、その負担を軽減できるサポート体制を整える必要があるのです。
まとめ
企業力を上げるためには、社内でのナレッジトランスファー推進は欠かせません。従業員の貴重な知識や情報を蓄積して、それを企業の血肉にしていくべきでしょう。
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