企業にとって社員の「働きがい」を高めることは、離職率の低下や業績の向上にもつながる要素です。それだけでなく、社員の働きがいを高めることで多くのメリットを得られます。本記事では、働きがいの意味や要素、注目される理由、働きがいのある企業・職場の特徴、働きがいを高める方法などを解説するため、ぜひ参考にしてください。
働きがいとは?
働きがいといっても正しく説明できる人は多くないでしょう。ここでは、働きがいの意味や似た用語との違いについて解説します。
働きがいの定義
働きがいとは、一般的に「働くことで感じる価値や満足度」などを指します。働きがいは個人の価値観によるものなので、明確には定義できません。仕事に対する価値・誇り・意欲・充実感・満足感など、さまざまな要素で構成されています。「仕事が楽しい」「仕事を続けたい」などの感情も働きがいを感じている状態です。
働きやすさとの違い
働きがいは「働く価値がある」という個人の内面から生まれるものです。それに対して働きやすさは「働く苦労が小さく自分の希望に合っている」などの外的要因から生まれるものであり、働きがいという大きな括りのなかに働きやすさが含まれます。
個人の価値観によって多少は異なりますが、一般的に働きやすさを感じる条件としては以下のようなものです。
・社風
・労働時間
・報酬条件
・作業環境
・人間関係
・福利厚生
やりがいとの違い
やりがいとは「社会や他人に貢献したことで得られる満足感」を指します。それに対して働きがいは「報酬や能力など自分の手に入るもの」です。やりがいも満足感が得られるという点で、働きがいという大きな括りのなかに含まれます。
「残業したけれどチームのためになった」「我慢の甲斐あって顧客を獲得した」など企業に貢献して得られる満足感も「やりがい」です。ただし、やりがいだけがあっても、報酬や能力などの手に入るものである「働きがい」がない場合は、モチベーションは低下します。
働きがいが注目される理由
働きがいは、世の中のさまざまな変化や新しい観点から注目されるようになりました。
働き方に対する考え方の変化
少子高齢化によって以前のように大量採用が難しくなったこともあり、現代においては社員の定着率が重要です。近年は、仕事での達成感を重視する人やプライベートの充実を重視する人など、働き方が多様化しています。
企業は社員の離職を防ぐと同時に、定着率を上げなければなりません。社員に働き続けたいと感じてもらえる職場づくりが必要になったことから、働きがいが注目されるようになりました。
事業環境の変化
企業を取り巻く環境は、複雑性・不確実性が増しています。企業は最適な経営判断や商品開発をスピーディに行うことが重要です。スピード感を高めるには、社員が自発的に動くことも必要になるため、企業は働きがいの創出を支援する必要があります。
SDGsの観点
SDGsの8つ目の目標に「働きがいも経済成長も」が設定されて注目されるようになりました。目標には、働きがいのある人間らしい仕事を増やす、中小規模の企業の設立や成長を応援するなどの項目があります。
また、2030年までに働きがいのある人間らしい仕事をできるようにし、同じ仕事に対して同じ給料が支払われるようにするという項目もあるため、企業としてもSDGsに取り組まなければなりません。
働きがいを高めることで得られるメリット
企業が社員の働きがいを高めると、以下のようにさまざまなメリットが得られます。
社員のモチベーションアップ
働きがいを感じられる環境は、社員のモチベーションを高めます。モチベーションが高い社員は、仕事に対して自発的に取り組めるでしょう。また、新しいアイデアを生み出したり、改善の提案をしたりするなど、積極的に取り組めるようにもなります。
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生産性・業績の向上
社員のモチベーションが上がると仕事に対して前向きな気持ちになるため、集中力や効率が高まります。社員各自のパフォーマンスの質が向上するため、企業全体の生産性や業績の向上にもつながるでしょう。
人材の確保・維持
働きがいがある職場は、社員が生き生きと働くイメージがつきやすく、評判の高まりによって優秀な人材が集まることが期待できます。社員が自社に貢献したいという気持ちを持つことで帰属意識が強くなり、離職率が下がるでしょう。優秀な人材が長く定着することで、長期的な戦略の計画・実行も可能になります。
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社員のスキルアップ
働きがいを感じると、自主的に知識やスキルを身につけようとする社員も増えてくるでしょう。全体のレベルが底上げされ、より競争力のある組織を目指せるようになります。
働きがいをつくる5つの要素
働きがいは、以下の5つの要素で構成されています。働きがいを高めるための重要なポイントを確認しておきましょう。
信用
信用とは、経営層や上司などのマネジメント層に対して、社員がどのくらい信用しているかということです。マネジメント層のコミュニケーション力、誠実さ、能力などが問われます。マネジメント層と社員の信頼関係が築けない場合は、社員が企業へのエンゲージメントを持てなくなるでしょう。
公正
公正とは、社員が組織内で機会や評価が公平であると感じることです。企業はすべての社員に平等であり、年齢や性別を問わず正当な評価をしなければなりません。
尊敬・尊重
社員がマネジメント層から尊敬・尊重されていることも重要度の高い要素です。マネジメント層は社員に対して、安全かつ衛生的な労働環境を提供しなければなりません。また、サポート、協力、配慮ができているかも問われます。スキル、キャリア、ワークライフバランスなどの支援体制があるかどうかも重要です。
誇り
誇りとは、社員が企業に所属していることを堂々と他人に言える状態です。企業に貢献していると感じたり、所属していることに自信を持っていたりすることも誇りといえます。企業理念や商品・サービスに社会的な価値があることを実感できると、働きがいにもつながるでしょう。
連帯感
一緒に働く社員同士の連帯感を指します。連帯感がある組織とは、単に仲がよいわけではありません。同じ目標のためにチームで頑張ったり、助け合ったりできることが連帯感のある組織です。仲間がいるという安心感はモチベーションにもつながり、仕事に対して前向きにもなれます。
働きがいのある企業・職場の特徴
社員が働きがいを感じながら仕事ができる企業・職場には、どのような特徴があるのでしょうか。手本にしたい企業・職場の6つの特徴を解説します。
働きがいとやりがいを備えている
社員が働きがいを得るには「やりがい」と「働きやすさ」が必要です。働きやすい企業はストレスが少なく、安心して働ける環境が整っています。ただし、労働や福利厚生の制度が整っていればよいわけではありません。社員が気兼ねなく制度を利用できているかも重要になります。
企業の事業が安定している
経営が不安定な企業は将来の見通しが立たず、社員にも不安を与えます。事業が安定していない場合は、賃金が上がらず長時間労働に陥りやすくなるでしょう。事業が安定している場合は、社員が安心でき、前向きに働けるようになります。また、働きがいも高まって企業への貢献度にもつながるでしょう。
理念・ビジョンが明確で浸透している
企業の理念・ビジョンが明確であり、社員に浸透しているのも重要です。社員は進むべき道が明確になっていると主体的に仕事に取り組めます。反対に、理念・ビジョンがわかりづらく浸透していない場合は、社員が働く意味を見出せません。与えられた仕事をただこなすだけになってしまい、社員の自発性は期待できないでしょう。
企業理念とは?経営理念との違いや経営者がビジョンを持つメリットを解説
公正な評価と報酬が与えられている
働きがいをつくる5つの要素の1つでもある公正さには、頑張った分の報酬を得られるなど正しい評価が行われることが重要です。人事評価制度が公平でない場合や評価者の能力が不足している場合は、社員が公正に評価されていないと感じてしまうでしょう。公平かつ一貫性があり、納得感を得られる人事評価制度であることが重要です。
社員の成長支援に取り組んでいる
社員が成長できるチャンスがある企業は働きがいを感じられるでしょう。近年は、研修制度や資格制度が整っていて、キャリア形成を支援している企業も少なくありません。若手社員にも、積極的にチャレンジできる環境やチャンスを与えることも重要です。
社員の意見を聞く機会がある
風通しがよいこと、気兼ねなく意見を発言できることなどは、社員が尊重されていることを実感できる環境です。上下関係がフラットで役職や立場を気にせずにアイデアを出し合えれば、コミュニケーションも活発になり、連帯感を感じられるでしょう。組織が現場の意見を聞く機会を設けることも重要です。
働きがいを高める方法10選
働きがいを高めるために、企業が実践できる具体的な10種類の方法を解説します。できることから始めてみましょう。
1.理念・ビジョンを共有する
働きがいがあるといわれる企業や組織は、理念・ビジョンが明確であり、社員にもしっかり浸透しています。社員は経営の一部を担っているという意識ができているので、仕事への動機を持ちやすく、働きがいも向上しやすくなるでしょう。さらに、入社時から理念・ビジョンを理解できていれば認識の相違を防げるため、退職リスクも低下します。
2.キャリアマネジメントを強化する
社員の承認欲求を満たし、モチベーションを高めると前向きな行動を促せます。キャリアステップをマネジメント層と社員とで描き、適切に評価することで社員は認められていると実感できるでしょう。仕事にやりがいを感じられているかを考える機会や、キャリアステップの機会を企業が支援することも必要です。
3.スキル研修を実施する
社員が成長を感じられる機会として、専門的なスキルや知識が身につく研修を行うことも大切です。自己成長の機会は、仕事に対する手応え、充足感、張り合いにもつながるため、働きがいを高められるでしょう。
4.仕事の意義・重要性を共有する
働きがいは仕事の価値や満足感で得られるため、仕事の意義や重要性を社員自身が十分に理解できているかどうかが大切です。社員に「どのように仕事に貢献できているのか」「どれだけ大切な仕事を任されているのか」を実感してもらう機会を与えましょう。理念・ビジョンを、マネジメント層が業務指標やプロジェクトに落とし込めているかも重要です。
5.目標設定ができる環境を整備する
社員自身で目標を設定することができれば、仕事に取り組む意欲も高まります。企業側は、社員が目標を設定しやすい環境を整えましょう。マネジメント層は目標達成に向けて、フィードバックやアドバイスなどのサポート体制を構築することも重要です。
6.適材適所の人材配置をする
社員は得意な分野や成長できる環境で働くと働きがいを感じやすくなります。一方で、ミスマッチな環境では「こんなはずじゃない」「もっとできるのに」などの考えが生まれて意欲が低下しやすくなり、成果も出しづらくなるでしょう。社員の適性、希望、相性などをしっかり把握した適材適所の人材配置が求められます。
7.適正な評価制度を設置・整備する
「いつも頑張っているね」「期待しているよ」など、言葉での賞賛は評価と捉えることができます。しかし、ただ褒めているだけで評価につながっていない場合は「本当は評価されていない」という認識を生んでしまうため逆効果です。適正な評価制度こそ、働きがいを高めます。
また、評価制度は報酬と連動しているため、社員は満足感や意欲を高めやすいでしょう。どのようなポイントが評価につながりやすいのかを社員が理解できれば、意欲も向上しやすくなります。
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8.福利厚生や労働環境を整える
福利厚生や労働環境の整備は、モチベーションを保つのに有効で、働きやすさにもつながります。社員の満足度を向上できれば、離職率の低下も防げるでしょう。具体的には、オフィス環境の改善、ワークライフバランスの考慮、健康支援、フレキシブルな勤務形態の導入などの方法があります。社員が求める制度をアンケートで調査するのもよいでしょう。
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9.コミュニケーションや連携を強化する
社員同士のコミュニケーションを活性化させるのも重要です。コミュニケーションが高まると質問や相談がしやすくなり、仕事の生産性が上がったり新しいアイデアが生まれたりします。一方で、コミュニケーションによる問題が発生している場合は、自由に意見や提案をしやすい風通しのよい雰囲気をつくることが重要です。
たとえば、異なる部署や階層とのコミュニケーションの促進、1on1ミーティング、チーム内での情報共有の場を設けるなどの方法があります。
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10.ツールを活用して把握・分析する
社員の満足度やエンゲージメントは、ツールを活用して測定・分析することも可能です。社員の本音を定期的に把握・分析して改善策を講じることは、働きがいの向上に欠かせません。
まとめ
社員の働きがいを高めると企業にさまざまなメリットをもたらします。社員の満足度やエンゲージメントが高まると、社員が誇りを持って働けるようになり、企業への貢献度も高まるでしょう。
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