ジョブローテーションで退職リスクが上がる?退職リスクを抑える方法を解説


ジョブローテーションで退職リスクが上がる?退職リスクを抑える方法を解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

ジョブローテーションを取り入れている企業は多いですが、正しく活用しないと退職リスクを高める可能性があります。この記事では、ジョブローテーションのデメリットやジョブローテーションによる退職理由、向いていない企業について解説します。

ジョブローテーションの効果的な活用方法と退職を防ぐためのポイントについてもまとめているため、ぜひ参考にしてください。

ジョブローテーションとは

ジョブローテーションとは、社員を一定期間で異動させて、幅広い業務を経験してもらう仕組みです。一般的には、半年〜2年程度の比較的短期間で担当する業務を変えていきます。部門内での業務変更から勤務地変更を伴う異動まで、さまざまな方法があります。


ジョブローテーションの目的

ジョブローテーションを行うのは「人材育成」「組織の活性化」などが主な目的です。さまざまな業務の経験により、多角的な視点を持った人材が育成でき、新しい発想が生まれやすくなります。


部署や職種の横断的な経験により、自社への理解を深めてもらうことも可能です。ジョブローテーションによって社員の異動が活発になるほど社内の人間関係やネットワークが広がり、組織の活性化も期待できるでしょう。


ジョブローテーションが負担になることも

多くのメリットがあるジョブローテーションですが、社員の負担になる場合もあります。たとえば、職場環境が頻繁に変わることをストレスに感じる社員もいるでしょう。「業務に馴染めない」「人間関係を構築できない」といった理由から、退職につながるリスクもあります。ジョブローテーションは、異動の回数が増えるほど負担に感じやすくなるため、社員に配慮した制度や工夫が必要です。


ジョブローテーションと人事異動の違い

ジョブローテーションと人事異動は、どちらも部署や勤務地が変わる点において共通していますが、それぞれで目的が異なります。ジョブローテーションは幅広い業務知識を身につけることを目的としている一方、人事異動では適性に合った人材の育成と定着が目的です。人事異動では「適性がある」「成果が出せる」と判断されると、長期間同じ業務を担当し、専門性を深められます。


ジョブローテーションのデメリット

ここからは、ジョブローテーションのデメリットを具体的に紹介します。デメリットを知ったうえで、企業・社員双方の負担が軽減できる方法を検討しましょう。


スペシャリストが育ちにくい

ジョブローテーションでは、社員が仕事に慣れた頃に部署が変わるため、専門性が身につきません。制度の性質上、スペシャリストを育てるのには不向きですが、広い知識と経験を持つジェネラリストを育てるのには向いています。


ただし、ジェネラリストばかりでは、企業経営や事業戦略の選択肢が限られてきます。ジョブローテーションを実施する際は、ジェネラリストとスペシャリストのバランスが大切です。


リソースがかかりすぎる

ジョブローテーションでは人材育成に多くのリソースがかかります。半年~2年程度の短いスパンで部署を異動するため、仕事に慣れるまでは他の社員がサポートしなければなりません。業務内容によっては、専門のトレーニングが必要になるケースもあるでしょう。


通常の人事異動に比べるとサポートやトレーニングにかけるリソースが増えてしまうのは、大きな懸念点です。また、育成している社員が退職すると、コストがすべて無駄になってしまう可能性もあります。


退職リスクを高める場合も

ジョブローテーションは、個人の適性を無視したシステムとも言えます。社員が仕事に慣れてきたところで部署が変わってしまうのは、仕事に対するモチベーションの低下やストレスの原因になるケースが少なくありません。モチベーションやエンゲージメントが下がると「この会社で働き続けたい」という気持ちが減り、退職リスクを高めるおそれもあります。


ジョブローテーションによる退職の理由

ジョブローテーションによる退職の理由としては「成長を実感できない」「仕事の権限が持ちにくい」「会社に共感できない」などが挙げられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。


成長を実感できない

優秀な社員ほど「成長が実感できない」という理由で退職を考えるケースがあります。ジョブローテーションでは、1つの業務の経験が浅いまま何度も異動を繰り返すのが通常です。スキルの獲得が実感しづらいなど、働き方に疑問を持つようになると、将来への不安から退職を考えるようになります。


仕事の権限が持ちにくい

「仕事の権限が持ちにくい」という理由で、退職を考えるケースも少なくありません。新人の頃は新鮮な気持ちでさまざまな業務に取り組めていても、経験を積むほど責任のある仕事を自分の裁量で行いたいという気持ちが強くなります。ジョブローテーションによって自身の得意な業務ができないと、仕事に対してネガティブな感情が増えて、前向きに取り組めなくなります。


会社に共感できない

ジョブローテーションによって自分の希望する働き方ができないと、企業へのエンゲージメントが失われて、退職を選択するケースがあります。企業側としては、中長期的な経営戦略のもとでジョブローテーションを実施していても、社員の共感が得られなければ高い効果は見込めません。


ジョブローテーションが退職につながる「悪い例」

ジョブローテーションが適切に行われなければ、退職につながる可能性が高くなります。具体的な事例を解説します。


目的のないジョブローテーション

目的が明確になっていないままのジョブローテーションは、社員の退職リスクを高める原因の1つです。惰性で定期的に部署の入れ替えをするようなジョブローテーションは、社員側はメリットを見出せず、モチベーションの低下とともに退職を考えるきっかけとなります。配置変えまでに、上司との面談などで異動の目的や目標を話し合うことが重要です。


本人の意向を汲み取っていない

社員が仕事に打ち込んでいるにもかかわらず、本人の意見を無視した配置換えも退職につながる可能性が高まります。本人のための人材育成策とはいえ、本人の意向を無視していると伝わりません。社員が反発を覚え、退職を考えるきっかけになる可能性もあります。やはり、ジョブローテーションを行う目的や目標をしっかりと伝えることが大切です。


ジョブローテーションに向いていない企業

企業によっては、ジョブローテーションの実施が原因でメリットよりデメリットが大きくなる場合があります。ジョブローテーションに向いていない企業の特徴を3つ紹介します。


専門技術が必要な企業

専門技術が必要な企業では、スペシャリストの育成が求められます。ジョブローテーションは基本的にジェネラリストを育成する人事制度となるため、専門的な技術や知識が必要な企業には向いていません。幅広い業務を経験してもらいたいのであれば、新入社員研修などで数か月のOJTを実施することがおすすめです。


長期的なプロジェクトが多い企業

人材の入れ替わりが激しいと、プロジェクトに支障をきたす可能性が出てきます。とくに、数年かけてプロジェクトが進行している場合、ジョブローテーションは不向きです。長期的なプロジェクトが多い企業は、プロジェクトの区切りで人事異動を行うと、影響を最小限に抑えられます。


創業から間もない企業

創業したての小規模企業では、ジョブローテーションは向いていません。社員数が少ないと人材不足や育成課題などが発生する可能性が高く、退職のリスクも上がります。ジョブローテーションの導入を検討している場合は、ある程度まで社員を増やし、育成体制が整ってからにしましょう。


ジョブローテーションによる退職を防ぐ方法

ジョブローテーションの効果的な活用方法と退職を防ぐ方法について、3つの事例を紹介します。


ジョブローテーションの目的を伝える

ジョブローテーションによる退職の理由には「納得できない」「共感できない」などが挙げられます。社員に理解してもらうためには、何のためのシステムなのか明確に伝えることが重要です。社員にとってのメリットを伝えたうえで理解が得られると、退職リスクを軽減できます。


内容についてのすり合わせを行う

ジョブローテーションの計画について、社員とのすり合わせも大切です。異動先や期間についての予定がまったく知らされていないと、社員のモチベーションは下がります。一方的に通達をするのではなく、事前説明や意思確認をしながら、社員が納得できる形で進めて行きましょう。


ジョブローテーション以外の人材育成を取り入れる

人材育成の方法はジョブローテーションだけではありません。OJT、eラーニング、メンター制度といったさまざまな取り組みのなかから、自社に最適な人材育成の方法を取り入れていきましょう。また、今後はひとつのスキルに特化したスペシャリストが重宝されると考えられるため、専門性を高める育成方法を意識するのがおすすめです。


まとめ

さまざまな業務を経験できるジョブローテーションは、会社への理解を深め、組織を活性化するといったメリットがあります。一方、スペシャリストが育ちにくく、退職リスクを高めてしまう可能性もあります。


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