職務等級制度を概要から導入方法まで徹底解説


職務等級制度を概要から導入方法まで徹底解説

職務等級制度は、人事評価を行う際の制度の1つです。今回は、公正な評価が期待できる職務等級制度がどのような制度なのか説明します。またメリットやデメリットもあるので、詳しく解説します。

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。


職務等級制度は、人事評価を行う際の制度の1つです。それぞれが持つ職務を評価の軸とし、従業員をランク付けして賃金などを決定します。


日本では個人が持つスキルや努力を評価するケースが多い傾向です。しかし、職務等級制度ではスキル・努力などは考慮されません。そこで今回は、公正な評価が期待できる職務等級制度がどのような制度なのか解説していきます。

人事評価に用いる職務等級制度とは?

職務等級制度とは、担当している職務の内容や難易度によって待遇を決める制度です。業務の内容や範囲、必要なスキルなどを職務記述書で明確にし、達成具合に応じて賃金を支払います。

職務の内容によって等級が付けられ、等級が上の従業員ほど賃金が高くなる点も大きな特徴と言えるでしょう。従業員が企業の求める力を発揮できれば、良い待遇で働くことも可能です。企業理念が浸透しやすくなったり、人材育成を効率的に行えるようになったりするなどのメリットも得られるでしょう。

職務等級制度の特徴4選

職務等級制度には、把握しておくべき4つの特徴があります。いずれも職務等級制度を導入する際に重要となるため、ぜひチェックしてみてください。

職務ごとに職務記述書が必要

職務等級制度では、職務記述書が必要になります。業務を円滑に行うために必要な知識や資格・熟練度・危険度・権限や責任・身体的負担・心理的負担などを明らかにし、給与を決める際の指標にするのです。


しかし新たな職務や部門ができた時は、その度に職務記述書を作成しなければいけません。そのため、組織や業務が頻繁に変わる企業にはあまり向いていない制度になります。

原則は同一労働・同一賃金

職務等級制度では、同一労働・同一賃金が原則となっています。同一労働・同一賃金とは、給与や福利厚生などで待遇差をつけることを禁止する制度です。例えば非正規雇用の労働者と正規雇用の労働者で同じ職務を遂行していれば、雇用形態が違っていたとしても支払われる給与は同じになります。


厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」をチェックすると、どれほどの待遇差があると不合理になるのかが例示されているので、ぜひ確認してみてください。

個人的な情報は不要

評価を行う際に個人的な情報は必要ありません。なぜなら、学歴や年齢、勤続年数などの属人的な要素は全く考慮されないためです。高卒でも大卒でも同じ賃金になり、また入社したての従業員もベテラン従業員も同じ賃金で働くことになります。


不平不満を招く可能性もあるので、従業員にしっかりと周知しておきましょう。

給与は職務により決まる

職務等級制度における給与は、職務の内容によって異なります。職務内容が難しくなるほど給与が上がるという仕組みです。職務によって給与が決まるので、労働と賃金の関係性が明らかになります。


「この仕事ができるようになれば給料がアップする」という指標も明確になるので、モチベーションの向上にもつながるでしょう。

職務等級制度の5つのメリット

続いては、職務等級制度における主な5つのメリットを解説します。

業務に特化した従業員を育成しやすい

業務に特化した従業員を育成しやすくなるメリットがあります。なぜなら日本国内の企業はメンバーシップ型雇用(業務内容や勤務地などを限定しない雇用形態)を採用しているケースが多く、特定の業務に特化した従業員は育成しにくい環境になっているからです。


しかし専門性が高い職種も需要が高まりつつあるため、職務等級制度を導入するメリットは大きいでしょう。専門性が必要な業務を行う企業においては、導入する価値のある制度と言えます。

人件費の削減が可能

人件費を削減できる点も便利です。業務の範囲が明確になり、余計な仕事をせずに済みます。また、残業を大幅に減らせる可能性もあるのです。


年功序列制度を採用していると、年齢を重ねるごとに昇級していきます。一方、職務等級制度であれば業務内容が変更にならない限り、給与は一定です。そのため、生産性は低いのに年功によって給与が高くなっている従業員を減らすことにもつながるでしょう。

客観的な人事評価が可能

客観的な人事評価が可能になるメリットも存在します。職務等級制度だと、管理職が従業員を評価する制度と比べ、簡潔でありながら結果も明確になります。成果に対する評価が数字で示される点から、客観的な視点で公平な人事評価を行えるようになるのです。


客観的な評価は、従業員も納得しやすくなります。モチベーションや生産性の向上にも一役買ってくれるでしょう。

活躍できる人材の採用率が上がる

活躍できる人材の採用率が上がることも期待できます。職務等級制度は、採用したいと考えている人材の能力や職務の内容を明確にした上で採用できます。伸ばしたい分野に特化したスキルや敬遠を持つ従業員を確保しやすくなるのは、企業にとって大きなメリットです。


採用時のミスマッチによる離職率低下、優秀な人材を採用することによる生産性の向上といった効果も期待できます。新卒一括採用ではミスマッチが多くなりがちですが、職務等級制度であればそのリスクは低いです。

給与に対する不満を減らせる

給与に対する不満を減らす効果もあります。職務等級制度の場合、職務記述書で賃金や仕事の内容が明確になっているため、給与が労働の対価であるという意味合いが際立つでしょう。


担当した仕事の成果によって評価するので、客観性も高くなります。それぞれが担当する職務がはっきりしているので、残業を減らしたり、ワークライフバランスの実現もしやすくなったりするでしょう。結果的に、従業員が抱える不満を減らせるのです。

職務等級制度の4つのデメリット

職務等級制度にはメリットもありますが、デメリットもあります。デメリットも把握しておかないと「こんなはずではなかった」と後悔する可能性もあるので、どのような点に注意すべきか確認しておきましょう。

職務記述書の作成・管理が大変

職務記述書の作成や管理が大変になるデメリットが考えられます。職務記述書で職務の内容を定義しなければいけないため、外部環境などが理由で変化が生じたら修正をしなければいけません。職務の変更による待遇や賃金の改定も必須なので、人事担当者の負担は大きくなってしまうでしょう。


人事担当者の負担を軽減するためには、外部のコンサルタントに依頼するのがおすすめです。外部のコンサルタントからは様々なノウハウを教えてもらうこともできるので、デメリットをメリットへ転換できます。社内の負担軽減のためにも、外部委託も検討しましょう。

他業務への対応が不可能

他業務への対応が不可能になってしまう恐れがあります。職務等級制度は特定の業務に特化した人材を育成できますが、従業員の業務が持つ柔軟性を損なうことになりかねません。


メンバーシップ雇用制度ではジョブローテーションで様々な仕事を経験でき、急な人材不足にも対応しやすいです。しかし職務等級制度だと特定の業務に従事し続けるので、人材不足が起こった時に他の部署にサポートしてもらえません。

定着率低下の可能性がある

定着率低下の可能性がある点にも注意が必要です。職務等級制度は、成果主義となっています。そのため、降格してしまう場合も珍しくありません。


つまり、勤続年数が長い従業員に対してはメリットが感じられない制度と言えるでしょう。長く勤める点にメリットを感じられなければ、定着率が低くなる可能性も高まります。その点はしっかりと従業員に説明し、納得してもらうことが重要です。

従業員の向上心が低下する

従業員の向上心が低下するデメリットもあります。職務等級制度では給与の上限が決まっているため、昇級や昇格をモチベーションにして仕事を頑張ることはできません。


「どうせ給料は変わらない」と感じて、従業員が向上心を持てなくなってしまう可能性も高いです。そのような事態を防ぐには、職務等級制度によるメリットをしっかりと伝えるようにしましょう。

人事評価だけで終わらない、あらゆる人事データを統合して分析

職務等級制度を導入すると、人事評価が明確になります。しかし、メリットだけではなくデメリットもあるので、従業員に詳細を周知しなければいけません。また、適切な評価をするには、様々な人事データを活用する必要があります。


人事データを効率的に活用するためには、人事評価に関する業務をサポートしてくれるタレントパレットがおすすめです。タレントパレットは、柔軟で自由度が高い評価を実現できます。


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職務等級制度・役割等級制度・職能資格制度の比較

職務等級制度は、主に職務等級制度・役割等級制度・職能資格制度の3つに分けられます。続いては、それぞれの制度にはどのような違いがあるのか比較してみましょう。


 

職務等級制度

役割等級制度

職能資格制度

評価の基準

職務内容を評価

※属人的な要素は考慮されない

個人の役割やミッション、それに対する成果

一人ひとりの職務を遂行する能力

特徴

・職務の価値や業績を加味した公平な評価

・職務記述書による等級付け

・本人の能力を評価

・役割を果たせれば、年齢やキャリアに関わらず高く評価される

・仕事をこなすごとに能力が高まる

・職務を遂行する能力による等級付け

賃金

・職務の内容によって変動

・等級の範囲内で評価に応じた賃金の増減もある

・与えられた役割やミッションの遂行具合によって変動

・等級の範囲内で評価に応じた賃金の増減もある

・個人の努力や成長度合いによって変動

・号俸が上がると賃金が増える

・降格は基本的になし

人材

・専門家を育成する

・分業で生産性の向上を目指す

・与えられた使命に責任を持つ

・企業理念を理解する

・ゼネラリストを長期的なスパンで育成する

・他の部署と連携しやすい

職務等級制度を導入する方法

職務等級制度を導入するのであれば、導入までの流れを把握しておく必要があります。職務等級制度を導入する方法についてみていきましょう。

職務等級制度を導入する理由と目的を明確にする

まずは、職務等級制度を導入する理由や目的を明確にします。どのような成果を上げたいと考えているのか、どのような職務を担う人材が必要なのかを見極めなければいけません。理由や目的が明確になっていれば、必要な人材の特徴もピックアップしやすくなります。


スタート地点とゴール地点が決まっていれば、どのようなルートを選ぶのがベストなのかも把握しやすくなるでしょう。

職務分析を行い自社の職務を見える化する

理由や目的が定まったら、職務分析を行って職務を見える化します。この時に作成するのが職務記述書です。自社の職務を細かく分類し、それぞれで求められるスキルや知識、仕事の難易度を職務記述書にまとめていきます。


職務を分ける際に用いられる方法は、以下の4つです。この中から取り入れやすい方法で分類していきましょう。


  • 観察法……職場に出向いて観察する
  • 面接法……従業員と面接して直接ヒアリングする
  • 記述法……アンケートを取って分析する
  • 体験法……従業員の業務を自ら行って分析する

等級数と各等級の業務内容を確定する

続いては、等級数と各等級の業務内容を決めていきます。一般従業員は4段階または5段階に分けるケースが多いです。中にはもっと大まかに分ける場合やより細かく分ける場合もあります。


等級ごとの仕事内容もあわせて決めておきましょう。「これだけは遂行しなければいけない」という目標を明文化することが重要です。

導入後の評価を行う

職務記述書に記載されている業務が抜かりなく行えているか、導入後は評価をしっかりと行いましょう。また、職務記述書に書かれている業務内容にわかりにくい部分がないかも確認しておくべきポイントです。導入してから気が付く部分もあると考えられます。


評価を行った上で修正すべき点がある場合は、早めに修正しましょう。

まとめ

職務等級制度を導入する際、職務記述書の作成が必要不可欠です。しかし紙媒体となると、保管場所に困ってしまうケースも考えられるでしょう。そんな悩みを解決へと導いてくれるのが、紙媒体が不要で職務等級制度を運用できるタレントパレットです。


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